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[映像基礎講座]Vol.02 1本の映画ができるまで~プリプロダクション映画編

#映像基礎講座

2020-09-10 掲載

txt:島村漱 構成:編集部

映画の製作現場から

前回は、全体の映画とCMの映像制作の簡潔な流れを記したが、ここからはそれぞれを少しだけ詳しく述べていこう。撮影される内容が映画であれCMであれ、撮影など現場での具体的な作業を実現するためには、しっかりと準備されなければならないことは、ご承知かと思う。今回は映画の製作現場からみてみよう。なお、同記事内容はひとつの見解、解説となることを予めご了承いただきたい。

なにごとも“準備”が大事

映画はそう簡単に完成に至るものではない。むしろ準備段階がしっかり出来ていないといざ現場に入ったときには色々トラブルが起きる場合が大変多いことはいうまでもない。

「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」予告映像

これは実際に起きた話である。監督テリー・ギリアムが構想30年の末に完成させた「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」という映画があるが、1988年頃に企画がスタートして、2000年にスペインで撮影が始まった。しかしクランイン初日、いざ撮影を始めると現場周辺を軍用機が飛び交いやむなく中断、二日目には大雨に襲われ鉄砲水で撮影機材が流されるというとんでもない損害を受け、ロケ地も風景が変化しながらもなんとか撮影を継続した。

しかしまたもやの事件!ドン・キホーテ役の俳優の腰痛が悪化!!撮影が再び中断された。そして資金繰りや様々なトラブルが合計9回も起こり、しばしの間とん挫したが、2018年にやっと完成した。この経過は「ロスト・イン・ラ・マンチャ」というドキュメンタリー映画として記録され公開もされている。これは大変有名な話であるがとんでもない事だ。

「ロスト・イン・ラ・マンチャ」特別映像&予告映像

しかし、この逸話はそれほど準備段階での確認が大切である、ということではないだろうか?

映画製作におけるプリプロダクションとは

映画は「プリプロダクション」「プロダクション」「ポストプロダクション」と3つのパートを経て完成する。今回は映画製作の“準備段階”にあたる「プリプロダクション」について紹介していく。この準備期間が作品にとってとても大事なのだ。映画製作のプリプロダクションの流れは以下の図の通り。

映画製作におけるプリプロダクションの流れ
■Step1.企画立案と製作委員会

プリプロダクションで最初に行うのは「企画立案」である。前回でも述べたが、昔の映画製作は会社組織で進められていた。もちろん映画製作会社は現在も厳然と存在している。東映・松竹・東宝などは依然として製作を続けているが、多くは一社製作ではなく「製作委員会」を組織し、この製作委員会を中心に製作している。もちろん全てを一社で製作している場合もあるかもしれないが、資金的にも負担が大きいことなどから、この製作委員会(組合のようなもの)方式が取り入れられている。

製作委員会の各クライアントが資金調達に応えてくれるか?公開時に、より多くの観客が映画館に興味をもち、興行成績が上がる内容であるか?公開後のDVD化で売れそうか?など、徹底的に調査を行う。通常の商品などと同じように企画段階における「マーケティング」作業が行われる。この時点での立役者はプロデューサーの中でも製作総指揮(エグゼクティブプロデューサー)であり、ともに活躍する担当プロデューサー達である。

また、作品に相応しい監督や脚本家、そして主役級キャスト候補などの選択もスタートする。特にキャスト面は集客に大きく影響を及ぼすことは間違いない。また、作品の脚本はいわば「作品の設計図」である。製作サイドにおいても相当神経を使い脚本家の選考に入るのは当然である。場合によっては監督自ら脚本を執筆することもよくある。

企画立案時にはその作品が全くのオリジナルであるか?原作があるものか?それが小説か?あるいは漫画の実写化であるのか?事件などの下敷きがあり、主人公などが実在人物などか?など、それぞれについては、著作権・許諾などもすべてクリアされていなければならない。

■Step2.企画書作成

クライアントに向けに、製作委員会への勧誘のための魅力ある企画書を作成する作業に入る。企画書には、

  • 作品のタイトル(仮の場合もある)
  • 映画のジャンル(シリアスドラマ?喜劇?などなど)
  • テーマ
  • 企画の意図
  • 観客のターゲット
  • そしてプロットやあらすじ
  • 製作期間
  • 予算
  • 公開予定時期

など、必要な内容を記述する。製作委員会に積極的に参加してもらうことで資金調達に応えてもらうために、作品の魅力をアピールした内容の企画書が作り上げられる。

■Step3.シナリオハンティングと予算見積書等作成

予算関係の面でも本格的に具体的な数字として予算見積などが作られていく。そのために、おおよその撮影場所などもシナリオハンティング(通称シナハン)が実施される。また、特に美術面(撮影用ロケセットなど)が具体化されないと予算も立てられないので、かなり綿密にシナハンは行われる。場合によっては家屋なども本物に近い形で建築された街を造り、後にそのセットを施設として見学用に公開することもある。京都の東映太秦映画村はその代表的な例かもしれない。

東映太秦映画村の全景(引用元:東映太秦映画村Webページ

また、1987年公開の映画「二十四の瞳」で小豆島に建造されたロケセットは今も娯楽施設として公開されており、映画撮影でも「八日目の蝉」などでロケセットとして使われるほど本格的な建造物だ。2020年の米アカデミー賞作品賞を受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」のように街全体がセットという例もある。山崎貴監督の「ALWAYS三丁目の夕日」も同じように、街並みは群馬館林市やスタジオに建てられた。このような例は沢山ある。そのために、早い時点から美術デザイナーも参加してセットデザインの図面を描いていく。

■Step4.脚本(シナリオ)執筆から決定稿へ

脚本執筆作業の進行も決定稿を目指し進行する。シナハンに基づきストーリー・プロット(小説・演劇・映画などの筋・構想<国語辞典から引用>)・箱書き(各シーンごとに要点<5W1Hなど>を書き加えたもの)そしてシナリオへと進められる。そしてシナリオは以下の3つで構成される。

  • 柱(場所・時間など)
  • ト書き(人物の動作やその場の状況などを記する)
  • セリフ(登場人物の会話)

基本的に説明的なセリフは良くないとされている。成り行きや経過などの説明はできる限り映像で理解できるように執筆されていく。

■Step5.ロケーションハンティング(通称:ロケハン)

シナリオがほぼ決定稿になると、ロケーション部分を監督だけではなく撮影キャメラマン、チーフ助手、照明技師・照明チーフなど、必要部署関係者がロケハンに参加する。監督とキャメラマンはメインのカットをはじめ、カット割りを考えていく。各カットのキャメラ位置やサイズ、使用レンズ、そのシーンを的確に表現する場をつくる照明の配光などを次々と決めていく。キャメラマンと照明技師とは作品全体のトーン含めその場の雰囲気をどう活かし、よりベストなイメージを作り上げるかを真剣に話していく。また、その際、人物のバックなどの処理や気になるところは全て制作進行や助監督などに確認を依頼し、制作部は撮影当日までには解決しておかねばならない。

また現場における各種の業者関連の手配。基本的に以下に記する機材などは、機材レンタル業者で撮影期間中に必要な機材を借用する。撮影機材・照明機材・録音機材・特殊機材(クレーンやドーリーなど)ロケ先宿泊関連・ロケバス・食事関連(ケイタリングカーや弁当)など、決めなければならない事項は限りなくある。これらは製作部(制作部も)に該当するスタッフも含めて手分けして行う。

メインスタッフによるロケハンなどから出てくる問題点などの検討会議。その結果、ロケ―ションやロケセットでの実施部分と撮影スタジオ内セットで実施部分が具体的かつ明確に分けられていく。

その結果を経て「香盤表」(進行スケジュール表)の作成も助監督などがスケジュールに沿い作成。各シーン事に役者の出番、衣装、小道具、消え物(食事シーン等の食べ物など)、必要な事項、撮影時間、特機類の有無、車両手配などがぎっしり書き込まれた香盤表が各部に配布される。

■Step6.各部門打合せ・準備と本読み→オールスタッフ打合せ
立命館松竹スタジオの和室セット(写真撮影・提供:立命館大学 映像学部 品田隆教授)

美術関連で、ある程度先立ってスタジオには必要なセットが組まれていくが、そのセットの上部には部屋の光や外光などとなるライトを吊り下げたり、安全に固定したりする設備がつくられている。そして指定の位置までは手すりで安全が確保されたキャットウオークという作業ステップを足場にバトンなどにライトをセッティングしていくか、あるいはバトン自体をある程度下部まで下げてライトをセットし上部に上げる方式もある。壁面にあるスイッチでコントロールし、バトンを上下するシステムになっている。

キャットウォーク(写真資料提供:株式会社PARLAY 八田直哉氏) (写真資料提供:株式会社PARLAY 八田直哉氏)

まだ本当にごく一部のスタジオにはキャットウオークがないため、専門の業者に「二重」(にじゅう)という木製の足場をセット上部から吊り下げてもらい、そこにライトを乗せる方式も残っている。

撮影スタートが迫ってくると、各部門ごとの打合せ・本読みなども慌しく行われていく。こうした作業で不具合な部分はブラッシュアップする必要がある。我々も時折言うが、準備段階がしっかりできていれば現場は大変スムーズに進行する。時として余裕が出るものである。最終的に撮影に入る前にはオールスタッフ打合せが行われる。

■撮影部
ミッチェルマークII。筆者が会社在籍時によく使用していた機材(電通CRXにて)

撮影部サイドではフィルムが使用される場合はどのフィルム(感度・タイプなど)を使用するか?キャメラはどれを使用するか?どのレンズを使用するか?(レンズはコーティングやメーカーにより色に違いがある)、さらにレンズのフォーカス確認などは、使用キャメラに装着して事前に必ずセカンド助手を中心に実施する。

また、デジタルキャメラを使用する場合はどの機種を使用するか?そしてフィルム機材と同じようにレンズ全体の画調に合わせ選択される。最近のデジタルキャメラには昔のフィルムのトーンや再現域をそのまま記憶させたものもある。さらにレンズのフォーカス送りをリモートで行う「リモート・フォーカスコントローラー」などのチェックも確実になされる。

そしていよいよ撮影開始間近になれば、撮影現場の無事と作品のヒットを願いお祓いなどが行われる。ここまでくると準備万端「よーい、スタート!!」の声が聞こえるのも近い。


次回は、「プリプロダクション」CM編をお届けする。

島村 漱(しまむら そう)
1960年立命館大学経済学部卒、某広告代理店系映像制作会社 技術部撮影課に入社。1993年に同社を定年退職後、映像関連人材派遣会社大阪支社立上げをサポート後退社。1995年フリー撮影者となり、その傍ら映像系専門学校の講師を務める。2001年に宝塚大学(旧宝塚造形芸術大学)映画コース教授、2007年に立命館大学映像学部の立ち上げに協力後、撮影・照明技術担当の一員となり客員教授として授業担当、現在に至る。(協)日本映画撮影監督協会所属監事
協力:スタジオエースワン / Media Garden / 立命館大学 映像学部 txt:島村漱 構成:編集部
Vol.01 [映像基礎講座] Vol.03(近日公開)▶

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[ DATE : 2020-09-10 ]
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