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[映像基礎講座]Vol.06 作品の良し悪しの左右は"音"である~プロダクション録音部編

#映像基礎講座

2021-01-14 掲載

txt:渡辺健一 構成:編集部

地味だけど作品のクオリティを左右する大事なこと

映画やCMでの音に関する技術を提供する録音部。予算が少ないCM現場では録音部がいない場合もあるくらい、地味なポジションなのだが、いざ納品の段になって音のクオリティーが低くて大問題になることもよく聞く話だ。

そこで、今回は録音部の実態と仕事の内容を解説していきたい。

録音部は撮影現場での音の責任者

映像基礎講座06

録音部の仕事は、現場でマイクブームを掲げてショットガンマイクを操ったり、ミキサー(最近はレコーダー)で最適な音を確保し、カメラへ送りつつ、MA(映像編集時の音の編集)で必要な予備の音を録音しておくことである。

実際には、撮影シーンに最適なマイク等の機材選択、機材のセッティング、録音を行う。映像編集での音に関してはMA技術者の仕事で、録音部が関わることは少ない。しかし、MAの技術を持った録音部の方が仕上がりが良くなることは事実であり、録音からMAまで行う場合もある。

近年は、映像予算が低くなっていることもあり、助手なしの録音が目立つ。しかし、音のクオリティーは、予算の高低に関係なく求められるため、ワンマンでオペレートする高い技術が求められているのだ。

役割としては、録音部トップの録音技師が主にマイク設置のプラン設計、ミキサー操作を行う。助手は規模によって人数が異なるが、マイクブームを操るブームマンが録音技師に次ぐポジションだ。録音技師はインカムでブームマンにマイクの距離や角度を指示する。ブームマンは、マイク操作(マイクワーク)を繰り返しながら、「音の演出」(後述)を身に付けるということになる。

録音部に求められる4つの仕事

録音部に求められる技術は、大きく分けて4つある。

  1. どんな場所でも明瞭なセリフを録音すること
  2. 映像に応じた音の演出をすること
  3. 予算に応じた最適な機材選定
  4. あっという間に準備を完了すること
(1)どんな場所でも明瞭なセリフを録音すること

明瞭なセリフを録音することは、当然に求められることだ。しかし、実際現場に入ると、非常に難しいことに直面する。同録スタジオ(セリフを録音することを前提に作られたスタジオ)では、高い技術がなくても明瞭なセリフを録音できるが、ロケでは、環境の音に邪魔されて明瞭な音を録音することが難しくなる。例えば工場中で機械が大きな音を出している中、役者がささやくというのは、最も難しい録音になる。

我々録音部は、あらゆる状況の中で、まるでスタジオで録音したかのような音を録音することが求められる。そのためには、機材を熟知しなければならない。

(2)映像に応じた音の演出をすること

テレビ番組では、どのようなシーンでも人の声が最も大きく聞きやすい録音を行う。一方、映画では、映像に合わせた音作りをする。具体的に言えば、遠くの音は遠い音で録音するのだ。遠くの音というのは、単に音が小さいということではない。音には距離感があって、それを適切に作らないといけないのだ。

例えば遠くの音を小さい音で表現すると、セリフが不明瞭になり聞き取りにくくなる。聞き取りやすくするために音量を上げてしまうと、近い音になってします。つまり、音の大小で距離を表現することができないということだ。実際には、マイクと役者の距離を調整したり、ショットガンマイクの音の画角をずらして音のピントを外すことで距離感を作る。

また、音にも主観と客観があり、カメラが誰かの主観の目線になっていれば、音も主観の音にしなければならない。カメラが客観的な映像になっていれば、音も然りである。このような音のチョイスを「音の演出」と呼ぶ。

さて、音の演出だが、本来は監督の仕事だ。しかし、監督が音に無頓着な場合もあり、指示されないことも多く、音の演出プランを提案しても意味がわからない人もいる。具体的に言えば、映像が客観で表現し、役者のセリフが内面を吐露していれば、音は主観の方が良いことが多い。また、主役が内面を吐露していれば主観の音が自然に聞こえるし、脇役の吐露であれば客観の音がいいというように、シーンによって演出プランはいくつもあるということだ。監督がそこまで理解していればいいのだが、実際にはそんなことを知らない監督も多いので、録音部は台本の内容に応じて自分で音の演出をすることになる。

(3)予算に応じた最適な機材選定

実際の撮影に臨む場合、台本に応じた機材見積もりを行う。撮影場所、出演者の人数、役者の動作(アクションや殺陣があるかどうかなど)で、必要な人件費、使う機材を選定し、予算を見積もる。例えば大勢がいっぺんに会話するシーンがあれば、助手の人数が多くなるし、歩きながらの会話でも、助手の人数が必要になる。実際には、先に予算が決まっていて、その中で最適な機材を選ぶという現場も多い。最も小さな構成はテレビ方式で、録音部一人で、無線マイク2セット&ショットガンマイクとなる。

(4)あっという間に準備を完了すること

そして、実は一番現場で求められるのが、準備をあっという間に終わらせることだ。映画の技術スタッフの中では、準備時間が一番少ないのが録音部だ。ほぼすべてのスタッフが勘違いしているのだが、音はマイクを向ければ録音できると思われている。しかし、カメラの画作りと同じで、最適な音を作るためには時間がかかる。その辺りが周知されていないことは困ったものだ。

録音技師に求められる技術とは

録音部に必要な技術は、マイクの性質と選び方、ミキサーやレコーダーの使い方は当然として、カメラの録音機能、台本を理解する能力、MA技術、マイク操作、音声に関する電気知識、無線マイクに関する無線技術、現場の対応となる。

特に重要なのは、マイクに関する知識だ。マイクはカメラレンズの選定と同じか、それ以上に多様だ。役者の声質に応じたマイク選びも必要になる。加えて、マイク操作は非常に重要で難しい。

そして、最終的には、耳を鍛えることが必要になる。何がいい音ということを聞き分ける必要があるのだが、現場をこなさないと身に付かないものである。

録音部のワークフロー

ZOOM H3-VR
ロケハンにはVRマイクZOOM H3-VRを携行。環境音を把握するのに使う

録音部は、撮影部や照明部と違って、ロケハンに付き合うことはまれだ。台本や撮影場所やスケジュールが決まった後で呼ばれることが多い。本当であれば、ロケハンに参加することで、音の演出について監督とコミュニケーションを取れるのだが、実際にはそういう現場は少ない。CMとなると、いきなり現場に呼ばれることも多い。

つまり、録音部は台本と香盤(撮影スケジュール)だけを見て、必要な機材を選定することから仕事が始まる。撮影現場の音の状況については、カメラマンから情報を収集することになる。

録音機材は、撮影に応じて用意するが、レンタルすることも多い。また、録音機材は、細かい部品が数多く、乾電池も非常にたくさん消費する。そういった機材管理も重要な仕事である。

現場での仕事は、役者がメイクしているうちに無線マイクを仕込むことから始まる。しかし、実際には無線マイクが最適なのかどうかは演出プランで変わってくる。それゆえ、使うかどうかは別にして、MAで加工しやすい音が録音できる無線マイクを常用することになるのだが、同時にショットガンマイクの準備も必要となる。

現場で音を録音するかは、カメラや照明と違って、スタンドイン(代役)でテストすることができないのが特徴だ。つまり、役者本人の声と動作があって初めてマイク調整やマイク位置の決定ができるのだ。具体的に言えば、マイクの距離は、その人本人でないと決められないし(声質や声量による)、演技によっても制約されるからだ。ここを理解していない監督やカメラマンが多くて、非常に腹立たしい。役者が入ってからマイク調整をし始めると、もっと前に準備できなかったのかと睨む演出家さえいる。

「(本人じゃないとテストできねぇだよ)」と心の中で怒るのもしばしばだ。

録音部の機材

プロの録音部が使う機材を紹介しよう。

■ショットガンマイク
MKH 416
ゼンハイザーのMKH 416

映像の世界観を音で表現するのに使うのがショットガンマイクだ。ショットガンと聞いて望遠マイクを想像する人も多いと思うが、実は望遠レンズのように一部分を切り取って録音できるマイクなど存在しない。ショットガンマイクは、マイクの先端方向の音が非常に明瞭かつ自然に録れるマイクのことだ。横方向や後ろの音も聞こえるのだが、前方の音にフォーカスが合っているように聞こえるのがショットガンマイクで、横や後ろは、遠方の音に聞こえる。

映画では、このショットガンマイクを多用する。定番はゼンハイザーのMKH 416だ。最近はRODE社のNTG3Bを使う人も増えた。MKH 416の半値程度だが、非常にいいマイクだ。

■無線マイク

無線式のラベリアマイクは、役者のセリフを録るのに適したマイクだ。ショットガンマイクは非常にマイクワークが難しいのに対して、無線マイクは取り付け方さえ覚えれば、非常に明瞭なセリフが録音できる。失敗も少ないし、音量調整も難しくない。製品としては、ソニーのUWPシリーズがテレビでも映画でも定番になった。数十万円するラムザの放送用マイクに比べて低音が若干痩せた音だが、それに気づくのは音のプロくらいのもだろう。

RODE Wiress GO
RODE Wiress GO

最近はデジタル式の無線マイクも増えた。RODEのWireless GOやゼンハイザーのXSワイヤレスデジタルなどだ。デジタル式無線マイクは、音声をデジタル化して送受信を行う。そのために音が届くのに遅延が生じるのだが、最近のデジタル式マイクはその遅延がかなり小さくなっており、通常は気づかれないレベルになっている。

ソニーUWPシリーズ
ソニーUWPシリーズ

先ほどのソニーUWPシリーズはアナログ式で遅延問題はない一方で、混信を避けるため、現場ごとに周波数の利用状況をチェックしてから本番を迎えなければならない。例えばホテルや結婚式場では、UWPシリーズと同じ800MHz帯のB波を使用しており、司会者のマイクがこちらへ飛び込んできたり、逆に会場のスピーカーへこちらの音が飛び込んでしまったりする。音が飛び込まないにしても、音が途切れ途切れになってしまうこともある。それゆえに、本番前に十分なテストが必要だ。これが意外と面倒な作業だ。

一方、デジタル式の場合、そういった混信回避はマイクが勝手に行ってくれる。我々は何もせずに機械任せで大丈夫なのだ。ただ、最近のデジタル式無線マイクは2.4HGz帯を使っており、電波の性格上、障害物による電波の不到達が生じやすい。胸のポケットに送信器を入れ、その役者が後ろを向いた瞬間に音が途切れることもあり得るのだ。実際には10m以内であればそういったことはまず起きないが、安全を見越せば5m以内での運用がベターだ。

いずれにせよ、デジタル式無線マイクは現場では非常に高い機動力を発揮する。音質的には取り付けるラベリアマイクの性能による。Wireless GoもXSワイヤレスデジタルも、プラグインパワーで動作するマイクが取り付けられるが、筆者としては同じメーカーのマイクを使うのがベターだと思う。ちなみに中華製の安いマイクをつけたことがあったが、かなり音質が悪くなった。これはマイクの性能と言うよりも、プラグインパワーの仕様の問題だと思う。プラグインパワーはマイクを駆動する電源のことだが、メーカーによって仕様がバラバラなので、例えば5V仕様のマイクを2.8V仕様(Wireless Goなど)に使えば、電圧が足りないので音質が下がるのは仕方ないと言える。

プロの現場をこなすには、最低でも2台の無線マイクが必要で、できれば4台以上あるとあらゆる場面でやりくりができると思う。ちなみに筆者は新旧含めると8台の無線マイクを所有している。

■フィールドミキサー

数年前までは、録音機能のないミキサーを使っていたが、録音機能の入ったデジタル式のフィールドレコーダーが各社から出ており、価格的にも非常に安く手に入るようになった。前述したが、ミックスした音をカメラで録音する場合と、フィールドミキサーでマイクごとの音声を録音してMAで仕上げるのでは、後者が圧倒的にクオリティーが上がる。逆に言えば、どんなに高性能なマイクを使っても、ミックスをカメラに録音するのでは宝の持ち腐れになる。

ZOOM F8n
ZOOM F8n

映画で定番になっているのがZOOM社のF8nだ。8chのフィールドレコーダーで、映画録音に必要な機能が満載されている。1つは、ファイル名を「シーン番号カット番号+トラック番号(テイク番号)」にすることができる。具体的には「S23C01」とファイル名を決めると、録音ボタンを押すと「S23C01-T01」というフォルダが自動生成され、その中にマイクごとの音声ファイルが「S23C01-T01-Tr1.wav (マイク1)」「S23C01-T01-Tr2.wav(マイク2)」「S23C01-T01-TrL_R.wav(ステレオミックス)」となる。次に録音ボタンを押すと「S23C01-T02」というように自動的にトラック番号が繰り上がる。「SCENE INC」というショートカットキーを押すと「S23C02-T01」というように、カット番号が繰り上がる。つまり、一度ファイル名を入力したら、あとは簡単操作でカット番号とトラック番号が繰り上がるのだ。これによって、編集時に音を見つけ出すのが非常に簡単になるし、記録さん(スクリプター)のいない現場では、簡易の記録としても重宝される。

F8nの弟分であるF6は6chレコーダーで、機能としてはF8nと同等だ。後発ということもあって、記録性能は向上していて、32bit収録が可能だ。これのメリットは、ダイナミックレンジが広いことで、音割れの危険性が非常に少なくなる。また、F6は非常にコンパクトで、ソニーのLバッテリーが使えるため、F8nに比べて非常に機動力があるのもメリットだ。

■マイク周辺機器

ショットガンマイクを操作するにはマイクブームが不可欠だ。マイクブームは軽くてしならないものがいい。カーボン製の2.7mがあれば、ほとんどの現場で通用する。映画では4.5mの長竿を使うこともあるが、非常にまれだ。

K-Tec KA-113CCR
K-Tec KA-113CCRを現場で使用

筆者はK-Tec社のKA-113CCRという首が折れるブームを使っている。持ち手部分は垂直に立てて、途中を折ってマイクを差し出す方式のため、ミキサーを操作しながらマイクを差し出せる。ワンマンオペレーションでは非常に便利なマイクブームだ。

なぜマイクブームを使うのか疑問をお持ちの方もいるかもしれない。望遠マイクを使えばいいじゃないか。前述のように、どんなに高価なマイクでも、カメラの望遠レンズのように一部分を切り取るような録音はできない。しかも、クリアに音が録音できるのは、マイク先端から離しても1m以内なのだ。映画やテレビのようにクリアな音を撮るにはマイクを役者の50cm程度にまで近づける必要があるのだ。それを行うのがマイクブームである。

そのほか、XLRケーブルは2m、3m、5m、10m、20mと用意している。ただ、最近はデジタル式無線マイクを多用していて、ケーブル接続は減ってきている。

最近の傾向

映像基礎講座06_01

最近は、セパレートの録音が増えた。セパレートというのは、カメラに音を送らず、編集時に1つにする手法だ。昔はカチンコの音でシンクロしたのだが、最近は編集アプリが進化したので、編集ソフトが勝手に映像と音を合わせてくれる。

それゆえ、録音はマルチトラックで行う。マルチトラックというのは、複数のマイクをそれぞれ別にファイルに録音する機能のことだ。

大きな現場では、カメラとレコーダーをシンクロするためにタイムコードを使うこともある。この辺りは、ポストプロダクション(MA)でどうするかで異なる。

ここで演出や撮影の人に分かってもらいたいのは、音質を上げるにはセパレートが圧倒的に有利だということ。ミキサーでステレオにミックした音では、MAで音質を上げるには限界があるし、カメラ自体の録音性能が48KHz16bitとMAでのクオリティー確保に若干のデミリットがあるのだ。ダイナミックレンジの広さでは24bitの方がMA時の加工にメリットが多い。

また、編集環境も変わってきている。これまでプロの現場ではAvidなどの映像編集ツールで編集し、音はPro Toolsというのが王道だった。編集アプリはAdobe Premiere ProとかグラスバレーEDIUSが増えたのだが、音の編集、つまりMAの定番はPro Toolsが圧倒的に多い。これは、MAスタジオがもともと音楽(音響)系なことが多く、そのノウハウでMAをやっているというのが多いように思う。

ところが最近は、Premiere Proで編集、AuditionでMAということも増えてきた。この1つのアプリでの連携は非常に楽で、Premiere ProのプロジェクトファイルをAuditionでそのまま読み込め、マルチトラックで音編集ができるのだ。

録音部の仕事は、現場のみならずMAを担当することも増えてきた。これからの録音部はMA技術を持つべきだろう。MAがわかると、現場でどうすれば良いのかがわかるようになり、短時間で高い技術を手に入れることができる。機材も安価になっており、最新のデジタル機器の進化はめざましい。その辺りをポイントに録音部の仕事をやってみてはどうだろか。

txt:渡辺健一 構成:編集部


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[ DATE : 2021-01-14 ]
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