txt:平野陽子(大広) 構成:編集部

オール・デジタルで始まったCES2021

その年の重要なテクノロジートレンドを体現する企業が務めるKeynoteトップバッターは、大手通信会社Verizonのハンス・ベストバーグCEO。2019年のKeynoteでも5Gを語り、米国での普及に本腰を入れるVerizonの取り組みと将来像、各社のプレス発表で見えたのは、5Gを通じて「役立つ」技術が「楽しむ」技術をも具体化していく姿だ。今回はそんな5Gが映像業界を後押しすることを見ていこう。

5Gの歩みと、コロナ禍で輪郭がくっきりした活用先

2018年から言及され、各社の様々なサービスプロトタイプ発表の前提となる技術として扱われてきた5G。米国では、2021年は本格普及の年となる。先だって行われたCTAの「Trends to Watch」でも、米国と中国は5G普及の先頭を走る。

パイオニアでもあるVerizonは、2019年のKeynoteで"5Gのための「8つの通貨」"と表現し、

  1. スループット(処理速度)
  2. サービス導入
  3. モバイル対応
  4. 接続デバイス
  5. エネルギー効率
  6. データ量
  7. レイテンシー(遅延時間の短さ)
  8. 信頼性

の8項目を軸に取り組んできた。

2021年、ベストバーグCEOは改めて、Verizonが5Gで提供するメリットは、

  • 4Gの10倍の速度
  • 超低遅延
  • 1平方キロメートルあたり100万台密度の同時デバイス接続
  • 時速500kmの移動耐久性

であり、それがどのような活用をされていくべきか触れている。

最も影響を及ぼしたのは、新型コロナウイルス流行により、2020年に様々な場面で起きた「デジタルシフト」の加速だ。ニーズが顕在化し受容性が上がった領域として「遠隔医療」と「モビリティ」、「教育」領域を挙げ、5Gを活用した貢献についても言及し、取り組み事例を紹介した。

「遠隔医療」に貢献する「モビリティ」の例として、スカイワード社によるドローンをUPSと提携し、処方医薬品の配送を提供する取り組みも紹介した。

非接触のライフスタイルに重要な役割を果たすドローンやロボットにおいて、Verizonの5Gの遅延時間の少なさと処理速度の速さを役立てる方向を示している。

「教育」領域での5G活用は、学校によるデジタルデバイドをなくす取り組みと並行し、スミソニアン博物館にあるアポロ11号の3Dモデルの再現や、美術館・博物館の収蔵品の3Dコンテンツ化など「体験して学ぶ楽しさ」の機会提供にも意欲的だ。

同時に、エンターテインメントやクリエイティブ領域も、昨年直面した「人が集えない状況でどう魅力的に作り広く魅せ、参加を促していくか」という視点も加わった発表となった。

複数のカメラアングルによる豪華な映像やリアルタイム分析を反映し、NFLの試合をスーパーボウルを含め「自宅で楽しむ」NFLアプリのコンテンツとして完成度を上げている。

従来よりCESで描かれてきた「少し先を想像した楽しい未来」だけではなく、2020年を通じて生まれた「現実の課題対応で役立つこと」へのフォーカスが、奇しくも「楽しむこと」の総仕上げにも貢献し、「役立つ(実用)」と「楽しむ(娯楽)」の垣根を低くする流れとなった点は、CES2021の特徴かもしれない。

各社の「新たなエンターテインメント体験」にリアリティ

各社がリリースした「新たなエンターテインメント体験」も、最新の技術を使ったリッチな映像×体験を追究しているが、5Gの前提が見えたことで、よりリアリティのある内容となった。

Panasonicはテクノロジーパートナーとして、2021年アトランタにオープン予定のバーチャルサファリ「Illuminarium Experience」に4Kとプロ仕様のカメラ、プロジェクターを提供し、映像への360°没入体験創出を発表。

特筆すべきは、5Gの強力な後押しを、「最高のエンターテインメントを生み出す環境」に昇華したSonyの取り組み。CES2021ではリアリティ(Reality)、リアルタイム(Real-time)、リモート(Remote)を追求した「3Rテクノロジー」を軸に、クリエイティブなソリューションやエンターテインメント体験への解を、かなり具体的な形で発表させている。

昨年登場した、映画やテレビ制作用のセットやロケーションを3Dの点群データで立体的に取り込み、バーチャルな背景映像にするSony Innovation Studiosの「Atom View」とCrystal LEDディスプレイの組合せ(参考記事:[CES2020]Vol.11 Crystal LEDとAtom Viewで実現するヴァーチャルセット最前線~まさにリアルを超える?!)。今年は、実際のセットや屋外との見分けがつかない精巧な映像背景のソリューションとして、利用シーン含め、より全貌が明らかになっている。

コロナ禍で多くの撮影現場が変化を余儀なくされ、バーチャルな映像制作が本格化する昨今の流れの中で、欠かすことのできないソリューションの一つになると考えられる。

最も衝撃を与えたのは、Verizonとのタッグで生まれた最新のリアルタイム3D制作技術とライブエンターテインメント体験を融合する「イマーシブリアリティ・コンサート」だろう。

Epic Records所属のアーティスト マディソン・ビアー自らがアバターとなったバーチャルライブを上映した。

紹介は、完全にスタジオでのアバター撮影と合成を行っている光景から始まる。

アーティストに複数プラットフォームでパフォーマンスを観客に届けることができるチャンスが生まれ、観客は本格的なライブエンターテインメントに場所を選ばず没入できる、かなり秀逸なソリューションだ。

ステージ上の花火や照明、衣装以外にも、なんとパフォーマンス中の汗まで再現されている

昨年のデジタルシフトへのニーズ顕在化から、CES2021ではテクノロジーに「役立つこと」へのアンサーが求められた。他方、私たちは「楽しむこと」そのものは忘れられない。

5Gが普及し介在することにより、同じニーズと技術から「役立つこと」も「楽しむこと」も同時に生まれる姿を、今回のCES2021ではより具体的に知ることができたと感じている。

txt:平野陽子(大広) 構成:編集部


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