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Vol.02 ARRIのカメラシステムの魅力をスパイス三浦徹氏に聞く

2021-03-31 掲載

ARRI my love Vol.02

txt・構成:編集部

ARRIRAW収録できるレコーダーをいち早くから導入して活用中

港区南麻布の株式会社スパイスは、コマーシャルフィルム、CM、ミュージッククリップ、PVを対象とした映像機材と撮影技術を提供する撮影技術会社だ。総合映像制作プロダクションは世の中数あれど、スパイスの経験値は群を抜いている。設立は1998年でBETACAMから入って16mmフィルムカメラを導入し、ARRIやソニーなどのデジタルシネマカメラと共に最前線で活躍し続けてきた。そんな、フィルムからデジタルへ劇的な変化する撮影現場の技術を仕切ってきたDIT兼カラリストの三浦徹氏にARRIのカメラシステムの魅力を聞いた。

三浦さんが最近関わったプロジェクトを教えてください。

最近はコマーシャルが多いです。「ジャンボ宝くじ」のCMシリーズにはDITで参加させていただいています。妻夫木聡さんや吉岡里帆さんの出演篇は、ALEXA miniで撮影しています。カメラマンの方がフィルムライクな方なので、デジタルで撮影をして編集で上がったものを35mmネガフィルムに焼き、ARRISACNでスキャンをかけて、再びグレーディングをして仕上げました。

株式会社スパイス DIT兼カラリストの三浦徹氏

映画みたいですね。ルックは変わるものですか?

フィルム粒子がビデオに付くので、変わりますね。ISO800で撮ったままですと、ツルッとした生っぽさを感じることがあります。それがそのままフィルムに焼かれて、ビデオにないルックを実現します。

また、岡山県にある玉野競輪場のプロモーションビデオに参加させていただきました。それは青木さんという撮影部の方の個人所有のARRIFLEX 16SR3で全編撮影し、IMAGICAのスキャナー「Cine Vivo」でスキャンしました。その素材を今年2月上旬に当社でグレーディングをして完パケしました。

御社はARRIFLEX 16SR3を導入されたことがあるとのことですが、選ばれた理由はなんでしょうか?

スパイスの設立は1998年で、その当時、ミュージックビデオはBETACAMで撮影していました。当時の業界はBETACAMが主流で、池上通信機のHL-57やソニーのBVW-D600が使われた時代に16mmカメラでミュージックビデオを撮る方が増えてきました。その映像を見たときに、24コマの世界とシネトーンのフィルムルックに衝撃を受けました。ラチチュードはすごい残っていますし、決して豪華なセットでなくても、ライティングとフィルムで深みのあるスタイリッシュな映像を撮影できることに驚きました。

特にその当時、PVではナンバーワンと言われていた競合会社があり、そこがいち早くARRIFLEX 16SR3を導入しました。「何で質感があんなにきれいなんだ?フィルムのほうがいいのでは?」とうらやましい思いでした。フィルムは機動力もありますし、カメラも小型、後ろにバッテリーをぶら下げてハンドヘルドも可能、電源が入っていないときは、普通に光学ファインダーから覗くことが可能であることから、当社でもARRIFLEX 16SR3を導入しました。

実は最近、フィルムがまた流行ってきています。三和映材社のARRI 416 PLUSはいつも貸出し中で、借りられない状態が続いています。

ARRIFLEX 16SR3もナックさんはレンタルを終了しており、レンタルしているところはほぼありません。三和映材社さん以外ですと、個人所有のものしかないでしょう。その中でもフリーランスで活躍している撮影助手の青木さんという方のSR3がレンタル可能で話題になっています。このSR3は、HDのビデオアシストをつけて映像をHDでモニタリングできるという画期的な機能がついています。

ARRI特集VOL02説明カット
青木氏所有のHDビデオアシスト付きSR3。現在ARRI純正の24Vバッテリーは入手できない状態のため、デジタルカメラ用リチウムバッテリーが使用可能となっている。SR3のファインダーはかなり暗く見にくいが、フォーカスチェックはかなり良くなっているという

三浦さんが気になるARRIのカメラを教えていただけますか?

35mmフィルムカメラのArriflex 435は本当に名機だと思いますね。特に衝撃を受けたのが、スピルバーグ監督の映画「プライベート・ライアン」です。海の中に弾丸が打ち込まれるシーンがあるのですが、Arriflex 435をハンドヘルドで撮っています。それがすごい臨場感なのと、ビーチの戦闘シーンを150コマのHS撮影のシャッタを切った画の臨場感は素晴らしかったです。435の名機の技だったなと思いますね。

Arriflex 435

Arriflex 435以外では、フィルムのノウハウを活かして実現したArriflex D-20です。ソニーは2008年、スーパー35mmを搭載したF35を発売しており、弊社も導入しました。同じ頃、ARRIはデジタルシネマ用カメラのArriflex D-20をリリースしました。D-20は従来のフィルムスタイルをそのまま再現したデジタルシネマカメラで、ミラーが回って、ミラーシャッターでファインダーから覗くことが可能でした。

その当時、ソニーはLog収録でSRテープにLogで収録しましたが、ARRIは独自のアルゴリズムのARRIRAWで記録可能でした。弊社は、そこにも興味をもっており、ARRIRAWのレコーダーを日本でいち早く導入しました。D-20の後ろにレコーダーをつけて、ARRIRAWで収録できる仕事を以前からさせていただきました。

こちらはD-20の後継機種のD-21

ALEXA SXTやHS撮影200コマが魅力のAMIRAを2台導入

御社はどんなARRIのカメラシステムを導入していますか?

ARRIのALEXA SXTを1台。ARRIのCLASSICを1台。AMIRAを2台導入しています。

SXTは昔、XTだったのをバージョンアップしたモデルです。これはワイヤレスが内蔵されていますので、電波でフォーカスユニットまでケーブルレスでいけます。これまでのカメラですと、ワイヤレスユニットを別途用意して使用する必要がありましたが、SXTは必要ありません。本当に一個で完結するのはARRIの素晴らしいところですね。

SXTの後には、最終モデルとしてSXTWが登場しました。アンテナを搭載しており、BNCに繋がずに離れたところでモニタリングが可能で、ケーブルを挿すというわずらわしさがありません。フィルムカメラみたいに電源を立ち上げれば、ディレクターが確認できる設計になっていますね。

AMIRAは、ARRIでいう16mmに変わるカメラです。ワンマンカメラオペレータが一人ですべてできる、大変コンパクトな設計になっています。使い方もすごくシンプルで、SXTやLFみたいに2~3人の撮影部が扱うのではなく、真のワンマンで扱えるカメラです。SXTのHS撮影は最大120コマですが、AMIRAは200コマまで対応します。ミュージックビデオでは200コマまで上げたい作品が多く、うちでは2台導入しました。

レンズマウントは、PLマウントとEFマウントに対応します。予算がないプロジェクトではPLレンズが使えません。そんな時に、キヤノンのEFレンズが使える魅力もあり、導入させていただきました。

ALEXAのスクリーンはコマ数、シャッタースピード、ホワイトバランス、感度、タイムコードとシンプルな構成になっている。カメラマンが「HS変更してほしい」「アナモにしてほしい」という要望に、ほかのカメラだと奥の階層まで入っていかなければいけないことがあるが、ARRIのインターフェイスはすぐにたどり着けるように工夫されているという
こちらはAMIRA。ちなみに搭載しているレンズは、スタンリー・キューブリック監督も好んで使ったというCooke Panchro。近年のデジタルシネマカメラにつけると、柔らかいフレアが入っていい味わいを出すという

三浦さんが感じているARRIのカメラシステムの良さを教えてください。

ARRIFLEX 16SR3を導入したころから感じているのですが、トラブルがまったくありません。寒いから、暑い、ホコリが多い、砂地でもバックアップは持っていかなくては駄目だろう場合でも心配ないぐらい安心のカメラですね。過酷なテストをしているのでしょう。助手がゴロっと落としただけでは壊れないような頑丈な設計になっています。

クーリングもALEXAは画期的です。ファンの音が本当に静かです。例えばREDはファンの存在や音が気になりますが、ARRIはファンを気にせずに過酷な暑い状態でも撮影できる素晴らしいカメラだと思います。

あとARRIには結露用にセンサーを温める機構も搭載しています。オンにすると、モニターに椰子の実のアイコンが表示され、センサーが温められます。暑い場所から急激なクーラーが効いている場所に入っても安心してすぐに使えます。普通のカメラだとCMOSセンサーが曇ってしまうため、助手がドライヤーを当てて対応しますが、ARRIはそのあたりの配慮が繊細で素晴らしいです。

ARRIのカメラシステムには、スーパー35mmのALEXAシリーズとラージフォーマット対応のALEXA LFシリーズがラインナップされています。予算以外での使い分けがあれば教えてください

ALEXA LFが出てきてから、他社から続々と大判センサー搭載シネマカメラが登場し、大判センサーブームみたいな状態になっています。しかし、実際にフタを開けると、レンズのラインナップに欠点を感じることがあります。それは何かといいますと、50mmから150mmぐらいにかけての焦点距離の少なさです。

ラージフォーマットのレンズを発注すると、中望遠の焦点距離のラインナップに不足を感じます。狭い部屋みたいなシーンで、ワイドでボケるみたいな演出だったらいいのですが、人物の顔のアップをしっとり見せたい場合に本数が少ないので、最適な長玉のレンズを用意できないことがあります。

その点、スーパー35mmのPLレンズは、映画で培ってきたアングル感を取り揃えており、今でも素晴らしいなと思います。スーパー35mmのレンズのラインナップには、深みがあると思います。

ARRI特集vol02説明カット

ALEVセンサーはフィルムの感覚に近いイメージセンサー

最後に、映像業界は解像度がどんどん上がっています。そんな映像業界の中で、三浦さんなりのARRIのカメラシステムを選ぶ理由を教えてください。

2014年にNAB Showに参加し、そのときに映画「ゼロ・グラビティ」に携わったテクニカルの方に話を聞きました。「ゼロ・グラビティ」は4K仕上げがマスターでしたが、Open Gateの3.4Kで撮ったものを4Kにアップコンしてあの画質を実現しており、ARRIはセンサーの解像度が4Kではなくても、3.4Kで十分とのことでした。

私が感じているのが、ARRIのALEVセンサーの粒子感は、フィルム粒子に似ていると感じています。他社ですと暗部にノイズが乗りますが、ARRIは黒い粒の粒子がフィルム粒子と同じに感じています。センサー自体もALEV IIIセンサーは、何十年も一緒です。そのセンサーの粒子感も素晴らしいなと思いますね。

実際、ARRIRAWがではじめたときに、ARRIRAW素材と実際35mmをARRISACNした素材を比べたことがありました。ARRIRAWは、35mmフィルムスキャンよりも、ほんの少しやわらかい感じでした。35mmフィルムスキャンのほうは、少しコントラストがあってグリーンかぶりが感じられましたが、両者はわりと近いですね。デジタルでもそこからグレーディングがスタートできるのは大変ありがたいと思います。

実は最近、ISO3200を設定して撮影をしています。ISO3200という高感度は一般的には使いません。しかしアメリカのDPが、ISO3200で使ったらフィルムっぽい粒子も出て利用的という話を聞いたことがきっかけで使い始めました。

なので最近、自分の現場はISO3200が標準になっています。その代わりにライティングは大変です。明るいので、充てるよりも締めていくライティングになります。でも本当にフィルムなのか?と間違えるぐらいのルックが実現可能です。

DaVinci Resolveでグレインは消せるので、その差し加減が選べます。そこでISO3200でグレインをわざと出して、差し加減で調節します。こんな使い方もARRIのシネマカメラならはなのではないかと思います。

txt・構成:編集部


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[ DATE : 2021-03-31 ]
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