txt・構成:編集部

コマーシャルや河瀨直美監督の映画作品を手掛ける照明技師

今回は照明技師の太田康裕氏にインタビュー。太田氏は、TV-CMの照明を中心に、数々の映画作品の照明技師としても活躍中で、第44回日本アカデミー賞では映画「朝が来る」で優秀照明賞を受賞するなど、活躍の場を広げている。そんな太田氏に、照明技師になるまでの道のりや、照明機材の選び方、ARRIの照明機材について今感じていることなどを聞いた。

太田康裕:照明技師
1969年生まれ、京都市出身。1990年 大阪写真専門学校(現:ビジュアルアーツ専門学校 大阪)卒業。1994年に照明技師の小林稔尚氏に師事、1997年に照明技師の岸本秀一氏に師事。2001年に照明技師として独立し、TV-CMを中心に数多くの作品に参加。2013年以降は河瀨直美監督作品にも参加しており、「2つ目の窓」「あん」「光」「Vision」の照明を担当。2020年公開の「朝が来る」では第44回 日本アカデミー賞 優秀照明賞を受賞。

最初に、照明技師になられた経緯を教えてください

幼い頃から映画館が大好きでした。父に連れられて外国映画をよく見ていました。英語はもちろん分からず字幕も読めませんでしたが、父が耳元で字幕を読み聞かせてくれた記憶があります。

中学の卒業文集には将来の夢の欄に「映画の仕事に携わりたい」と書いてありました。ただその頃は照明という仕事があることは知りませんでした。

高校卒業後 大阪写真専門学校(現:ビジュアルアーツ専門学校 大阪)で2年間映像について学んだ後、東京の有栖川スタジオに就職しました。スタジオで毎日CMやスチルの撮影に立ち合い、日々華やかな現場を経験する中で照明への意識が高まりました。

照明技師の小林稔尚さんの元で助手を3年 岸本秀一さんの元でチーフを4年やらせていただいた後、2001年に独立しました。師匠はお二人とも大変お忙しく、仕事に関しては厳しく教わりましたね。感謝しかありません。

照明機材、そしてARRIとの関わり

今までの現場で使用していた照明機材について、そして今太田さん自身がよく使用する照明機材を教えてください

僕がスタジオに就職した1990年代のあたりからCMの現場の照明機材はHMI(メタルハライド)を使う機会が増えてきました。有栖川スタジオが最初に導入したHMIもARRI 4kでした。助手時代そしてチーフ時代、すでに僕のまわりの環境はHMIに関してはほとんどARRIで占められていました。ですので正直に言うとARRI以外のHMIについては勉強不足です。ただ現場で困る事はないです。

僕は現場で使用するライトの種類は少ない方だと思います。スタジオ撮影ならばARRI4k、1.2k、125wPARは必ず使います。SkyPanelは大変優秀なLEDライトだと思います。僕の場合、まだ上手に使えないのでロケセットでの撮影以外では敬遠します。

ARRI POCKET PARシリーズ

ARRIは撮影機材と照明機材を扱う稀有なメーカーでもありますね。昨今の撮影現場の変化に伴い高感度のデジタル映画カメラと低照度のLEDライトの開発が進むのは喜ばしい事です。僕個人の希望としてはHMIの更なる開発も期待していますね。HMIの光が好きなので。

インタビュー終了後、ARRIのLEDライトの新製品「Orbiter」を操作する太田氏

映画「朝が来る」の現場とは

第44回日本アカデミー賞 優秀照明賞を受賞した映画「朝が来る」の現場ではどのようなことを意識して照明プランを作られたのでしょうか?

実は映画の現場は河瀨組以外は経験したことがありません。ですので他と比較する事は出来ないのですが…ひとことで言い表すならば「クォリティーファースト」でしょうか。

「朝が来る」撮影現場より(Photo by 中島未来)

作品を良いものにするために出来る、全ての事を大切にする…可能な限り順撮りを守り、可能な限り役者さんと現場の空気感を大切にする。ですので現場でのライティングプランには神経を使いますね。緊張感はありますが勉強になります。映画「朝が来る」ではドキュメンタリーの様な表現のシーンも多数ありました。屋内の場面は実はほとんどのシーンでライティングしています。ぜひご覧いただければと思います。

「朝が来る」撮影現場より(Photo by 中島未来)

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