NDIの活用シーンで特に恩恵にあずかるのはPTZカメラではないだろうか。PoE(パワーオーバーイーサネット)環境なら、電源から映像、音声、タリー、カメラコントロールまでも1本のLANケーブルで可能。LANケーブル1本で済む便利さに触れると、今までの煩雑な環境にはもう戻りたくなくなるはずだ。今回はNDIのPTZカメラの動作を比較テストしてみた。

PTZカメラのラインナップ

BirdDog Eyes P200

  • イメージセンサー:2.8インチCMOS2.13MP
  • レンズ:4.3-129mm
  • 光学ズーム:30倍
  • 問い合わせ先:アスク メディア&エンタープライズ事業部

今回は他の機材とのテスト時期が合わず、紹介のみとなる。BirdDogのPTZカメラを製造するBolin社は中国深圳に工場を持つ老舗のメーカーだ。古くは国産メーカーのPTZカメラを委託製造してきた実績のある同社工場では、日本のQC(品質管理)を熟知している。

RS-422のカメラコントロールはソニー互換なので、ソニープロトコルのコントローラーは皆動作するはずだ。NDIの標準PTZコントロールでの動作は確認できた。マニュアルのパン操作にはゆっくりとした反応で細かな位置決めは楽にできる。プリセット間の移動には迅速に、反応するので使いやすいと思う。

キヤノン CR-N500

  • イメージセンサー:1.0型CMOS(単板)有効画素数:約829万画素(3840×2160)
  • レンズ:8.3~124.5mm(35mmフィルム換算時:約25.5mm-382.5mm)
  • ズーム:光学15倍ズーム/デジタル20倍
  • 発売:2021年5月下旬
  • 希望小売価格:オープン、市場想定価格は約60万円前後
  • 問い合わせ先:キヤノン

キヤノン初の4KPTZリモートカメラ。1インチCMOSセンサー搭載で、光学15倍・4K対応レンズを採用。デュアルピクセルCMOS AF対応で、高速・高精度オートフォーカスを実現。SDI、HDMIに加え、映像制作現場で普及している「NDI|HX」に対応。高精度の駆動機構を搭載。低速から高速までなめらかな高速変化を特徴とする。

キヤノン CR-N300

  • イメージセンサー:1/2.3型CMOS(単板)有効画素数:約829万画素(3840×2160)
  • レンズ:焦点距離:3.67~73.4mm/35mmフィルム換算時:[4K UHD]約29.3mm-601mm[フルHD]約30.5mm-627mm
  • ズーム:光学20倍ズーム/デジタル20倍
  • 発売:2021年6月中旬
  • 希望小売価格:オープン、市場想定価格は約35万円前後
  • 問い合わせ先:キヤノン

小型コンパクトスタイルが特徴のPTZカメラ。4K対応1/2.3型CMOSセンサーを搭載し、35mmフィルム換算29.3mmからの光学20倍ズームレンズを搭載。4軸方向の光学式ブレ補正を搭載し、縦回転補正と水平回転補正(2軸)、上下左右補正(2軸)が可能。

JVCケンウッド KY-PZ400N

  • イメージセンサー:1/2.5 型 851万画素 プログレッシブCMOS
  • レンズ:f = 4.4mm ~ 52.8mm、F1.8 ~ F2.6
  • ズーム:光学12倍、デジタル16倍
  • プロトコル:NDI|HXプロトコル、SRTプロトコル
  • 発売:2021年9月上旬
  • 希望小売価格:オープン
  • 問い合わせ先:JVCケンウッド

4K30P出力に対応する851万画素1/2.5型CMOSセンサーを搭載し、高精細な4K解像度で、さまざまなシーンの映像描写を可能。35mm換算で最大約316.8mmを実現する光学12倍ズームレンズ(デジタルズーム16倍)を搭載し、離れた被写体も鮮明に映すことができる。また、約71°(35mm換算で約26.4mm)の広い視野角により、距離が限られた空間でも広範囲に被写体をとらえることも可能としている。

JVCケンウッド KY-PZ200N

  • イメージセンサー:1/2.8型 207万画素 プログレッシブCMOS
  • レンズ:f = 4.4mm~88.5mm、F1.8~F2.8
  • ズーム:光学20倍、デジタル8倍
  • プロトコル:NDI|HXプロトコル、SRTプロトコル
  • 発売:2021年10月中旬
  • 希望小売価格:オープン
  • 問い合わせ先:JVCケンウッド

HD出力に対応する標準モデル。207万画素1/2.8型CMOSセンサーを搭載し、HD解像度でさまざまなシーンの映像描写を可能。高倍率な光学20倍ズームを搭載し、遠くからでも被写体を大きく映すことが可能。また、別売のUSBケーブルを使用して本機を直接PCに接続でき、ウェブカメラとして使用が可能。ウェブ会議やリモート講義などの撮影・配信用カメラとして高画質、高倍率な映像を活用できる。

NewTek NDI PTZUHD Camera

  • イメージセンサー:ソニー 1/1.8″ CMOS
  • ズーム:光学30倍ズーム
  • 希望小売価格:税込748,000円
  • 問い合わせ先:アスク メディア&エンタープライズ事業部

光学30倍ズームレンズとCMOSセンサーを搭載し、最大2160、60Pまでの解像度にネイティブ対応した高精細映像を実現。PTZカメラからのNDI出力によるネットワークへのビデオ伝送、ネットワーク帯域幅を節約するために、個別のポイントツーポイント接続ではなく、マルチキャストモードによる複数の配信先への伝送が可能。

イーサネットケーブル1本を接続するだけで、ビデオの取得と伝送のみならず、ネットワーク越しのカメラ設定、電源供給、カメラ制御、タリー信号をサポートする。

動作テストの内容

通常PTZは単体で使うことはなく、何らかのコントローラーが必要になる。斜め方向の動きや、ズーム操作とパン操作の組み合わせ方などでスムーズな動きが求められる。最望遠(テレ端)でのカメラワークでは微細な分解能が必要だ。従来は専用のコントローラーが必要で、マニュアル操作による操作感が重視されてきた。

今回の実験ではNDIならではのスイッチャーでプリセット運用する場面を想定してみた。専用コントローラーを利用した現場ではなく、特にNDI専用機であるTriCaster Mini 4Kに繋いでプリセット値の移動特性を試してみたい。

カメラとしてはホワイトバランスはインドア設定のオート設定で、カラープロファイルを見てみた。メーカーの特性が良くわかる違いだ。もちろん微調整は可能だが、マルチカメラで運用する時にはできるだけ同じメーカーのものを使うと、追い込みが楽になるだろう。

また、スピードに関しても、全機種工場出荷時の標準でNDIコントロールで「FAST」設定で比較してみた。この設定も変更できるが、実はプリセット運用では、設定、微調整の時には微細な分解能が欲しくなり、プリセット移動ではできる限り迅速な動きが期待される相反する要求があるのだ。

(01)今回のTriCasterでは、標準で全ての入力でPTZを想定してカメラコントロールが可能だ。マウス操作や上位のサーフェースではジョイスティックでの操作ができるようになっている。この組み合わせだとMEの中で合成素材として適切なカメラアングルを自動で変化させることができる。

(02)特に今回試したTriCaster Mini 4KではSDIやHDMIの外部入力端子は存在しない。NDI入力だけで8系統のスイッチングが可能だ。さらに4系統の入力なら本体にPoE付きのLAN接続が可能で、ダイレクト運用なら別途LANハブを必要としない。

(03)せっかく8入力のできるTriCaster Mini 4Kなので、NETGEAR AV-Line M4250が使いやすい。さすがフルマネージドハブでNDIに正式対応をメーカーが表明しているだけあって全く不安がない。

(04)5台のPTZを使って4カ所のプリセットポイントへ同時に動いてもらうための仕掛けを作ったので紹介しよう。今回は1~4までのポイントに対してプリセットを5台分に設定した。

  1. iPadの時計アプリのクローズアップ(下向き)
  2. カメラのワイド端までズームバック
  3. およそ180°転回したクマのぬいぐるみにクローズアップ(上向き)
  4. 別室のガラスの飾り物へのテレ端へズームイン

(05)PTZカメラは、その名前の通りにP(パン方向)T(チルト方向)Z(ズーム方向)の動きをプリセット移動で制御する「ふるまい」が重要な個性と言えるのだ。

(06)次にTriCasterのマクロで1~4のポイントを同時に呼び出す仕掛けを準備する。

(07)一つのマクロの中身は5台のPTZに対してプリセットの場所(Value)を指示する。表記の「0」がプリセット1という意味となる。

このマクロを10キーボードにトリーガー設定して操作してみた。動きの特性は動画があるので見てほしい。

NDIで活躍するPTZの徹底比較

プリセット1のタイマー

ズームバックが最速のキヤノンCR-N500
ズームはゆっくりのNewTek PTZUHD Camera

プリセット2からスタート

プリセット3へパンは最速だがズームがゆっくりのNewTek PTZUHD Camera
プリセット3へズームが終わりフォーカスまで整うCR-N300とCR-N500
プリセット3へ最も遅いKY-PZ200Nだが、パン、チルト、ズームとフォーカスが同時に揃うのは素晴らしい

プリセット3からスタート

プリセット4へ最速の最速のCR-N300とCR-N500
プリセット4へ最も遅いが、動きの揃ったKY-PZ200N。パンは速いがズームがゆっくりのNewTek PTZUHD Cameraが同着

プリセット4から2へテレ端からワイ端へ転回するズームイン

プリセット4へプリセット2へ転回とズームバックが最速のCR-N300。パンは済んだがズームがゆっくりのNewTek PTZUHD Camera
遅いがバランスの良いKY-PZ200NとKY-PZ400N。マニュアル操作では使いやすい

あなた好みのPTZはどれですか?筆者のテスト結果の感想は、次回以降のメーカー対談でも紹介予定だ。

おのりん(こと 尾上泰夫)|プロフィール
映像に関わり47年。テレビの報道取材がフィルムからビデオに替わった初期のテレビで、報道、スポーツニュースをカメラマンとして過ごす。その後、制作に興味を持ち旅番組の演出を担当。さらにモータースポーツの中継番組からメーカーのプロモーション映像、大型展示映像などを手がける。インターネットでのIP動画配信でカジュアルな映像機器がもたらす動画の可能性を感じて、より小型でシンプルなシステムを啓蒙してコンテンツホルダー向けのコンサルティングや、発信する組織、個人に向けた動画の学校を主宰している。


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