IP伝送のシステムは、HUBを中心としたスター型接続であり、インもアウトも一緒だ。だからこそ仕事で使うなら、マルチキャストであるNDIならではの特徴を考慮した流量の設計が必要になる。従来のビデオ信号はバス型接続(1つの信号線・通信線に複数のデバイスがぶら下がる接続方式)で、回路的に単独の信号を単独の伝送路で順に数珠繋ぎに構成していくのとは大きく違う。

無造作にHUBの空いたポートへケーブルを挿したり、いくつものHUBを連結するような使い方は論外としても、負荷が大きくなったネットワーク流量を考慮した接続が求められる時代になってきた。そこで、今回はHUBの種類、設定方法などを紹介していく。

アンマネージスイッチとフルマネージスイッチの違い

HUBには、「アンマネージスイッチ」や「フルマネージスイッチ」の種類がある。簡単に表現すると、HUB内部でたこ足配線のようなケーブル心線レベルの分岐をしているのがアンマネージであり、各ポートに流量を管理した専用CPUを備えているのがフルマネージとイメージしてほしい。

実は、「1G HUB」と表記してあっても、その差し込み口の数だけ1Gが使えるのではなく、HUB全体で1Gしか処理できないような能力の製品もある。事務用のHUBと映像、音響用のHUBとは、求められる要件要素が違うのだ。

安価なHUBでは、折角のNDIのパフォーマンスが発揮されず、コマ落ちやデバイスが認識されないなどの現象が発生して、「NDIは使えない」と評価されているのを見ると残念な気持ちになる。

ここからはNETGEARの「M4250-26G4XF-PoE+」を例に、HUBの機能を紹介しよう。下記の画面は、NETGEARのフルマネージスイッチの管理画面例だ。この製品はWebベースでわかりやすく管理、設定が行えるように工夫されている。

例えば、VLAN(バーチャルラン:仮想的なLANセグメントを作る技術)の設定もご覧の画面で、プロファイルを組むだけで簡単にできる。VLANごとに必要ならDHCPサーバーを個別に設定することも可能だ。

NETGEARは2021年9月17日、M4250シリーズの最新アップデート「バージョン13.0.2.24」を公開して「NDI 5」に対応した。

従来のHUBでは、DANTEなどの音声伝送とNDIを一緒に使うと、不具合が起こることがあった。新バージョンでは、HUBの接続ポート単位でVLANを組んで、NDIだけを1台の中で実現できる。これはありがたい機能だ。

    
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デバイスがすぐに見つかるHUBと見つからないHUBがある

ネットワーク機器は接続して存在を認識させるために各社独自の仕掛けを用意している。新しいNDIデバイスを追加したときに、すぐに発見できるか?といったポイントだ。

NDIは、信号の入出力先の設定が完了するまで流量が0という仕様になっている。それ故に、勝手にパケットを吐かないので見つけにくいという性格がある。ここにNDI専用のディスカバリー(発見)のチューニングの価値があるのだろう。

こんな経験をしたことはあるだろうか?

  • 新しいデバイスをネットに追加したのにTricasterから、なかなか見つけられない
  • デバイス設定を変更したときに、反映されるまで時間がかかる

現状では再起動などの操作が必要なことが多い。NDIが不便と思われる現象だが、これもほとんどHUBが原因だ。

マルチキャストに対応したHUBでも、NDIのディスカバリーに対応していない場合が多くある。NDIも最短時間のディスカバリーがタイムアウトすると、いくつかの手段で発見させようとする。最終的にはIPアドレスでの認識となるが、それが時間的に遅いと感じさせる原因となっている。

現在のところNDIへ完全対応と発表しているHUBは、NETGEARのAV Line製品しか筆者は知らない。実際に今回のテストでも、デバイスが起動したと同時に認識するような素早い反応には非常に感激した。

フルマネージHUBでは指定した複数のポートをトランク設定が可能

ちなみに、HUBの多重つなぎはできるだけ避けたいが、接続する機器が増える場合は致し方ない。そこで中心となるHUBには10Gなどの流量に耐える製品を用意するほか、複数のLANポート、ケーブルをつかって帯域を広げる方法がある。

これはアンマネージでこれを行うとループ回路が発生してトラブルの原因となる。フルマネージHUBでは指定した複数のポートをトランク(束ねる)することができる。同等の1G HUB同士でも2〜3本のLANケーブルでトランク設定したポート同士を接続すると流量を拡張することが可能だ。

M4250 AV Lineシリーズのポイント

NDIだけでなく、ネットワークを使用するシステムの肝はHUBにある。今回のテストにはNETGEARのAV Lineと呼ばれる映像、音声のIP伝送に特化したチューニングを施したフルマネージドスイッチ「M4250 AV Lineシリーズ」を試した。

■NETGEAR Pro AVスイッチ M4250シリーズ
発売日:2020年11月18日
価格:
・GSM4212UX-100AJS(1G PoE++ポート:8、1G:2ポート、10G SFP+スロット:2):税込280,000円
・GSM4212PX-100AJS(1G PoE+:8ポート、1G:2ポート、10G SFP+スロット:2):税込220,000円
・GSM4212P-100AJS(1G PoE+ポート:8、1Gポート:2、SFPスロット:2):税込140,000円
・MSM4214X-100AJS(1G/2.5G ポート:12、10G SFP+スロット:2):税込220,000円
・XSM4216F-100AJ(10G SFP+スロット:16):税込280,000円
・GSM4230P-100AJS:税込308,000円
・GSM4230UP-100AJS:税込137,500円
・GSM4230PX-100AJS:税込96,250円
・GSM4248P-100AJS:税込116,875円
・GSM4248PX-100AJS:税込151,250円
・GSM4248UX-100AJS:税込192,500円
問い合わせ先:ネットギアジャパン

このM4250は26ポートで26G対応。10Gアップリンクモジュールも4ポート使用可能。さらにPoEも+対応で30Wの余裕の電源を利用できる。

テストを行った「M4250-26G4XF」
26ポートに対応

従来のHUBとは一味違った安定感、パフォーマンスを味わうことが出来た。SFPスロットが4個あるので、TriCaster 2 Eliteなどの10Gポート2個との接続や上位へアップリンクに適切な対応ができる。

SFP+のポートをRJ45に変換する、10Gのモジュール(型番AXM765)

従来では企業の情報システムとして高度なセキュリティーが求められるタイプのフルマネージ関連製品だが、スタジオ内で手軽にハイパフォーマンスを実現する方向にチューニングしたAV-Lineは同等の流量比較で他社製品とはコストパフォーマンスに優れている点も見逃せない。

米国の放送現場やスタジオシステムとの協業で実現した、まさしくNDIのためのHUBといえる製品なので、本気でNDIを利用するなら一度比較検討されることをお勧めする。

NETGEARに映像業界向けプロAV対応スイッチの魅力を聞く

今回のNDIの特集でHUBを検証するうえで、条件は下記の通りとした。

この条件を満たすのが、NETGEAR製品であった。ネットギアジャパンでカスタマーサポートマネージャーを務める鹿志村秀昭氏に、同社製品の映像業界やNDIへの対応について聞くことができたので紹介しよう。

ネットギアジャパンでカスタマーサポートマネージャーを務める鹿志村秀昭氏

尾上氏:M4250とM4300をお貸し出し頂きまして使わせていただきましたが、とてもNDIに適してると思いました。まずはNDIを使う上で、御社からイチ押しのコメントを伺いたいと思います。

鹿志村氏:

AV over IP向けに設計されたプロAVソリューションに関して紹介します。M4300は、弊社最上位クラスの機種で、特にSDVoEと呼ばれるほぼ4K非圧縮を送る規格に標準的に搭載しています。他社製品はシステムを構築する際にコマンドを打たないとスイッチングしない機種もあったりしますが、当社製品は購入後ファームウェアを最新にしていただければそのまま使えるプラグ&プレイのSDVoE ProAVネットワークを実現しています。複雑な時には設定が必要ですが、基本的に簡単に使えることを第一に念頭にしてきました。
しかし、ここ1年で4K非圧縮だけではない圧縮1Gレベルで音声や映像をマルチキャストを主体に送る需要の高さに気づきました。M4300シリーズもフル10Gモデルのほかにアップリンク1Gモデルをラインナップしていますが、価格帯的にお客様の需要の層には対応しません。ひとつ下のスマートスイッチと呼ばれるシリーズがあるのですけれども細かな設定には適していません。
そこでM4250という1GbpsメインのAV over IPに適したスイッチを2020年に製品化しました。カメラやスピーカーの給電に必要な、PoE+やPoE++を採用しています。また、実際にハードウェアを見ていただくとわかりますが、AV向けのオーディオ機器やAV用ハードと共通のデザインを採用し、前面にパネル、背面にポートを備えています。
同時に設定画面も見ていただくとわかりますが、通常のスイッチの設定画面のほかにプロAV用のシンプルな管理画面を作っています。
例えば、「VLANを分ける」といったことはネットワークの精通者は簡単にできますが、AV系のエンジニアの方にとってはVLANが何のことだか分からない人も多いと思います。そんな方でも簡単に伝送システムを構築できるように新しいWeb管理画面を用意しました。こちらのWeb管理画面は近い将来、M4300や1つ上の100GのモデルM4500でも搭載予定です。上位機種から下位機種までAV業界出身者を全面的にサポートしようというのが、弊社のプロAV対応のスイッチとシリーズの展開になっています。

M4300シリーズの「M4300-28G-PoE+ 550W PSU」モデル
IT用語を使用してこなかったAV業界の方でも直感的に操作可能な、AV用のwebGUI

尾上氏:プロAVのシリーズの管理画面の中を見させていただきました。ビデオという項目の中に小さくNDIと書いてありまして、NDI対応を実現していますね。

鹿志村氏:

NDIは2021年9月のファームウェアのアップデートで実現しました。Danteと同じレベルに並んで来ると思っていただければいいと思います。

尾上氏:なるほど。それでNDIに関しては、TriCasterとの組み合わせのがあったり、NDIだけで完結するアプリケーションの世界というのが2つあると思います。その中でTriCasterが入っている環境では、プレビュー時の場合に勝手に品質を落として帯域を食わないようにする挙動が見られまして、素材転送としてRECしている場合は常に最高品質で来てほしいと思う場合があります。そこで、御社のHUBで品質を勝手に変えないようなコントロールができるようになってほしいと少し期待しています。

鹿志村氏:

ビデオ処理はフロントウィングで端折って速度を上げてたりするので、処理系の負荷を下げるという意味があるかもしれません。
弊社のスイッチは、M4300とM4250シリーズはポート速度をマルチキャストかつラインレートまですべて通せるようになっています。そこまで受けることができるので、逆にTriCasterや外部的にそこをキャンセルする仕組みがあれば対応できるかもしれません。そこがこちらのモデルのいいところです。
ちなみに弊社の100Gのスイッチ「M4500」は、ほぼすべて非圧縮を流してもまったく揺らぎはありません。

ProAV M4250シリーズの「GSM4248PX」モデル

尾上氏:すごいですね。編集スタジオや収録のビデオのスタジオのセンターコントロールに、プロバイダーレベルのものが導入される日が近いのではと私は思っています。約100のビデオをマトリックスで切り替えるビデオルーターが設備的に存在しますが、それが恐らくネットワークの中ですべて実は済んでしまう話で、それに取って代わる時代が来るんだろうという気はしています。
それで要望なのですが、それぞれのポートのリアルタイムのパフォーマンスを確認することは可能ですか?実際に現場に行ったときに、グラフとして各ポートを確認できるととても心強いです。

鹿志村氏:

ダイナミックなグラフを出すことはまだできません。ただ、ワールドワイドの私が属しているチームでは「これが必要」というディスカッションを最近されていましたので、必要性はみんなわかっています。
来年にはまた全然違う世界が見えていると思いますが、そのための起爆剤になれればと願っています。

尾上氏:M4300はレイヤー3スイッチで小技がいろいろできます。NDI 5は、これからBridgeが実装されるとインターネット越しでやり取りが可能になるので、恐らくダイレクトにつながってるNDIのモデルとはまた違った設定で受け取ってあげないと、ルーターとのやり取りで何か必要だろうと思っています。そういう意味でも便利に使えるのではないかという気がしています。
とても興味深いお話を聞かせていただきました。ありがとうございます。

おのりん(こと 尾上泰夫)|プロフィール
映像に関わり47年。テレビの報道取材がフィルムからビデオに替わった初期のテレビで、報道、スポーツニュースをカメラマンとして過ごす。その後、制作に興味を持ち旅番組の演出を担当。さらにモータースポーツの中継番組からメーカーのプロモーション映像、大型展示映像などを手がける。インターネットでのIP動画配信でカジュアルな映像機器がもたらす動画の可能性を感じて、より小型でシンプルなシステムを啓蒙してコンテンツホルダー向けのコンサルティングや、発信する組織、個人に向けた動画の学校を主宰している。

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