川口雄介氏、間地浩晃氏、佐藤一樹氏

東京・渋谷に拠点を置く、映像制作会社THINGMEDIA。大手映像制作会社で経験を積んだメンバーが、2018年に立ち上げた新進気鋭の映像プロダクションだ。新時代の映像制作に取り組む中で、2020年に襲ってきた新型コロナウイルスのパンデミック。それまでの事業の在り方が問われる状況下で、次のステージとして選んだ新たな事業は「ライブ配信」という道だった。

時代は急速にオンラインメディア全盛となり、最近では、ライブ配信を行うこと自体のハードルが下がってきた。その中で生き残るためには、相応のアドバンテージが必要になる。そこで白羽の矢が立ったのがソニーのCinema Line「FX6」「FX3」だ。これらカメラの多彩な機能が、ライブ配信の世界に新たな光を注いでいる。FX6/FX3を導入し、新時代に切り込むTHINGMEDIAの方々に話を訊いた。

川口雄介氏、間地浩晃氏、佐藤一樹氏

・取締役 COO/プロデューサー:佐藤一樹氏(THINGMEDIA)
・プロデューサー/テクニカルディレクター:間地浩晃氏(THINGMEDIA)
・カメラマン:川口雄介氏(ホワイトフィルム代表取締役CEO)

THINGMEDIAとCinema Line :インタビュー動画

――まずはTHINGMEDIAのことについてご紹介ください

佐藤氏:

私たちTHINGMEDIAは、2018年に創業した、映像制作およびライブ配信プロデュース、Webメディアを運営する会社です。創業当時から渋谷を拠点に活動しています。
私自身は起業する前に、大手の映像制作会社に約12年間在籍していました。TVCM、MV(ミュージックビデオ)、Web向けムービー、映画など様々なジャンルの映像制作を経験しました。それが私の映像制作の原点になっています。

THINGMEDIA株式会社の取締役 COO/プロデューサー 佐藤一樹氏

佐藤氏:

その経験を通して、TV・Web・SNS・YouTubeなどプラットフォームが多様化する中で、どのプラットフォームにおいても、人の心に残り、心を熱くする「映像」を手掛けたい思いが強くなりました。創業のタイミングで、他社と差異化する意味でも、「我々は"動画"ではなく"映像"を作りたい!」というメッセージを掲げました。
現在、弊社の仕事は圧倒的にライブ配信の本数が多いです。ただ、まだまだ配信業務の単価それほど高くなく、現状の売上の構成比で見ると、映像制作7割、ライブ配信3割という感じですね。

ホワイトフィルム株式会社 川口雄介氏。主に撮影を生業としている

川口氏:

僕は撮影仕事がメインです。THINGMEDIAさんとはフリーランス時代からお付き合いがあり、自分の会社(ホワイトフィルム)の起業時にTHINGMEDIAの田中社長に取締役に入って頂くなどの関係性もあり、多くの現場でお仕事を一緒にさせて頂いています。ライブ配信事業も一緒に立ち上げから関わってきました。

――2021年ライブ配信が隆盛している中で、ソニーのFX6/FX3を選択し導入した理由を教えてください

佐藤氏:

映像制作においては、「表」と「裏」があると考えています。「表=出来上がりの映像」だけではなく、「裏=作り手側」の存在にスポットを当てることも大切にしています。つまり本編と同様にメイキング映像のクオリティも重視し毎回撮影を行なっています。ある案件でα7 IIIを導入したところ、映像の画質や品質においてクライアントから高い評価をいただきました。
そういった経緯もあり、昨年ライブ配信事業を始める際のカメラには、いわゆるビデオカメラではなくα7 IIIを選択しました。ただ様々な仕事をこなす過程で、さらに画質のクオリティを上げたいと思い、川口さんに「予算は抑えて欲しいが、クオリティを上げて欲しい」とやや無茶な相談をしたところ、FX6やFX3を提案いただきました(笑)。

川口氏:

もともと僕はFS5 IIユーザーでした。色のトーンも気に入っていましたし、電子式可変NDフィルターもとても便利で、小規模で撮影隊を組む時にすごく重宝します。使用していくうちにFS5 IIにもいくつか改善してほしい部分がありましたが、2020年に発表されたFX6で、その課題点がほとんど改善されていましたので、すぐ導入しました。
特に気に入った点は、AF(オートフォーカス)精度がかなり上がったことですね。小規模撮影でフォーカスマンがいない現場でも、カメラの機能で十分カバーできます。またフルサイズセンサーになったことや、ISO感度がベース感度と高感度で設定が選べるところなどもポイントです。

年間400件以上の配信現場でFX6/FX3が活躍

表参道の体験特化型施設『SKINCARE LOUNGE BY ORIBS』から配信が行われた

――ライブ配信事業についてお聞かせください。この事業はいつから始めたのですか?

佐藤氏:

2020年初頭からコロナ禍となり、それまでの映像制作の仕事が全てなくなりました。これも新しいことにチャレンジするきっかけだと思い、2020年4月からライブ配信事業を立ち上げました。

THINGMEDIA株式会社 プロデューサー/テクニカルディレクター 間地浩晃氏

間地氏:

ライブ配信を始めるきっかけは、佐藤さんから「これからはライブ配信やるぞ!」と振られたことです。映像プロデュースという仕事に関して、僕自身が行き詰まりを感じ、自問自答していた時期でした。またコロナ禍により全てが無くなったことも、やり直す意味や、新しいことに挑むという意味で、いいきっかけになりました。そこから毎日のようにテストを繰り返して、今ようやくお仕事として受注できる状況になったという感じです。

佐藤氏:

2020年だけで、180現場以上のライブ配信をこなしました。2021年になり、すでにもう400件ほどの案件を頂き、いま現在はほぼ週1以上のペースでお仕事を頂いています。

――ライブ配信時にFX6/FX3は、単体やシステムとしてどのような役割を担っていますか?

川口氏:

カメラ機材は、FS5 IIとα7 III、そしてFX6とFX3を稼働させています。映像制作の現場では、通常何本もレンズを持参し、画作りにこだわります。一方、ライブ配信の現場は生モノなので、何が起こるのか分からない部分もあるため、スピーディー且つ臨機応変に対応することが求められます。
ライブ配信現場では、できれば広角から望遠まで1本でカバーできるレンズを使いたいのです。例えばFE 24-240mm F3.5-6.3 OSSとFS55 IIの組み合わせで使用する場合、望遠にすると少し明るさが足りないという課題を感じていました。
しかし、高感度性能が高いFX6を導入したことで、F6.3通しでも明るく撮影可能になりました。これは大変大きなメリットで、おかげでF値の高さをあまり気にせずにレンズ選択できるようになりました。ライブ配信でも有効なカメラだなと思いましたね。
またライブ配信の現場では、シチュエーションによって三脚に載せたり、ジンバルにつけたり、手持ち撮影など現場によって様々な撮影スタイルを求められます。またカメラ1台のみの運用では、撮影スタイルの変更があるたびにセッティングに時間を費やすことになります。今年からFX3を導入した結果、この問題は解決しました。
FX6はメインカメラとして三脚に載せて運用する一方で、動きのあるシーンにおいてはジンバルに載せたFX3で撮影することで、遊撃的なカットチェンジにも即時対応可能になり、機動性も上がりました。また撮影時間も短縮され、撮れる素材もたくさん増えました。この辺りの要素はかなりクリエイティブに直結してくるな、と思います。

佐藤氏:

昨年、化粧品メーカーORBISのインスタグラムで、タテ型動画のライブ配信と撮影を依頼されました。当時はまだFS5 IIとα7 IIIのみで運用していました。この仕事は、間地と川口さんがとても頑張ってくれて非常にクオリティの高い作品が完成しました。今春に再依頼時に合わせて、クオリティアップ狙いもあり、FX6とFX3を導入しカメラの構成を一新しました。

FX3をタテ型動画用に本体を横に置き撮影

川口氏:

その仕事では昨年撮影時には、自分でもかなりのクオリティの仕上がりだと思ったのですが、佐藤さんから「次はさらにもっとクオリティを上げて行こう」と言われて、あのクオリティを超えるのはなかなか難しいぞ?と思い前述のFX6/FX3を導入しました。

FX6もタテ型動画のために横置き

川口氏:

基本ライブ配信の場合、映像は、撮って出しの状態になります。FX6/FX3に搭載されているS-Cinetoneをライブ配信にも使用することで、人肌や色あいをよりソフトにでき、質感をより良くすることが出来ました。FX6でもFX3でもタテ型動画を撮影していますが、特にFX3は筐体もコンパクトですので、タテ型動画用に本体を横置きにするためのブラケットなども最小限且つ装着しやすく嵩張ることもありません。

    
タテ型動画でのライブ配信機材運用図※画像をクリックして拡大

ハードストレスな現場でこそ活きる多彩な機能

配信現場の様子

――FX6/FX3導入後、どのようなメリットがありましたか?

間地氏:

FX6/FX3導入で、タテ型動画配信でのさまざまな苦労が解消されたことでしょうか。タテ型動画配信は、カメラ3〜5台で運用をしていますが、カメラの光軸がずれたり、配信するアプリ側の設定や、コメントの出す位置のUIレイアウトなどなど問題はあります。
例えば、コンパクトなFX3の導入で、機材設置も容易になり、時間軽減されたことは良かったことですね。
さらにケーブルトラブルが無くなったことはメリットですね。α7 IIIは、HDMIマイクロ端子接続でしたが、FX6/FX3は標準のHDMI端子が付いていることで安心してライブ配信できるようになりました。

佐藤氏:

ライブ配信の現場では、クライアントに対してタテ型動画でのクオリティの高いライブ配信を提案できることと、カメラの台数を増やして照明を入れ本格的な現場を作ること、配信技術で失敗しないことなどが、全て加点になって評価されます。その中でFX6/FX3を現場へ追加投入したことで、高感度性能やS-Cinetoneで画質のクオリティが上がり、クライアントの高評価につながるようになりました。プロデュース側としては、その意味ではコスパが良すぎるぐらい大きな武器になったと思っています。

川口氏:

少人数で、狭くて、時間もないというハードストレスな現場では、FX6、FX3は本当に重宝します。特にS-Cinetoneや4:2:2 10bitや高感度性能は、狭くて照明が足りない厳しい条件下でも、明暗部の広い領域でダイナミックレンジが活かせる画作りができるので、とても大きなメリットです。あと、FS5 IIから愛用していたSEL24240というレンズですが、特にライブ配信時のコンパクトなFX3との組み合わせが最高なんです。
ズーム幅の大きさや引きじりも寄りもかなりの幅で選べるし、FX3の感度を最初から高感度側の設定値に設定しておけば、途中で明るさが変わることもありません。
以上の理由で、一気にこのレンズの稼働率が上がりました。こうした手持ちレンズの選択肢が広がったことも大きなメリットでしたね。

――今後、FX6/FX3でどのような作品を制作したいですか?

佐藤氏:

コロナ禍になってこのご時世、ライブ配信を行う人は大幅に増えたと思います。さらにスマートフォンやPCで気軽にライブ配信を行うライトレンジ層、そして予算を掛け高いクオリティの配信を行うトップレンジ層がいます。
その中で我々は、予算がそれほどかけられないが、クオリティの高いライブ配信を実現したいクライアント向けに、ミドルレンジの層を狙っていきたいですね。このミドルレンジの現場に応えるには、現状での選択肢は、FX6/FX3しかないと思いますね。

川口氏:

配信市場におけるミドルレンジを狙う際には、映像のクオリティアップでカメラの台数を増やすという条件が必ず出てきます。そうなるとどうしてもオペレーターの人も増えてしまいます。しかしFX6/FX3であれば、まずコンパクトでどんな現場でもこなせます。
さらにリアルタイム瞳AFなど、とにかくAFがすごく優秀です。AFに任せて、人を配置しなくても無人化できることで、カメラ台数が増えても、人件費は抑えられます。それでいて映像のクオリティアップもできると考えると、もうFX6/FX3など「Cinema Line」一択になると思いますね。

常に夢中を創造する、挑戦者でいるためには?

――Cinema Lineついて、リクエストはありますか?機能でもデザインについてでも

佐藤氏:

より配信の安定感を求めるために、やはりFX3にもSDI端子は欲しいですね。ライブ配信用として使用するにはネットワーク上での信頼感が一番欲しい部分です。SDI端子はぜひ実装して欲しいです(笑)。

川口氏:

これはとても難しいと思いますが、FX3のような一眼スタイルのカメラにも、内蔵の可変NDフィルターが搭載されると、もっと使用範囲が広がるのではないかなと思ってます。

間地氏:

ライブ配信では使用されるカメラとして、最近ではスマートフォンのインカメラを使用するケースもあります。スマートフォン以上の映像が撮影でき、さらにネット配信でのクオリティアップを狙う目的で、我々は、FX3やFX6を選択しています。その上でスマートフォンカメラとの差異化という意味でもやはりSDI端子は欲しいところですね。

――昨今の機材の進化と変化は、目まぐるしい限りです。この状況について所感をお知らせください

佐藤氏:

これからの映像産業は、「機材などの技術的な進歩」、と「映像制作とライブ配信のハイブリッド化」が進んでいくと思います。トライアンドエラーを繰り返し、時代に適応し考えながら、ベストだと思う機材を使い、「クオリティがあがってきたスマートフォン・コンテンツとの差異化」に努めていきたいと思います。
また、我々のスローガンとして「常に夢中を創造する、挑戦者でいよう!」を掲げています。映像制作やライブ配信など、我々が得意とする仕事をしていく上で、クライアントやスタッフ全員が立場に関わらず、一緒になって夢中を作ることにを続けていきたいと思っています。


Vol.01 [Cinema Line~今、広がる大判の世界] Vol.03(近日公開)▶