大手出版社の1つである講談社では、インハウスで動画制作やライブ配信を数多く手掛けているという。その動画撮影編集などを担う部署は写真部である。その名前の通り雑誌やウェブで使用されるカット写真撮影を手がける部署ではあるが、ここ数年動画についての比重が増えているという。

そんな写真部が、今回新たに撮影やライブ配信用にXF605を選択導入したというので、講談社写真部の制作現場にお邪魔して機材についてお伺いし、お話を聞いてみた。

講談社写真部 部次長 齋藤浩氏
副部長 椎野充氏
なかよし・ボンボン事業部動画事業チーム副編集長 髙橋秀二氏

「出版を再発明する」で動画制作に注力

髙橋氏:

なかよし・ボンボン事業部の動画事業チームで副編集長として、雑誌ではなく、YouTube公式チャンネル「ボンボンアカデミー」、「いちなるTV」の運営を担当し、日々映像について取り組んでいます。 「ボンボンアカデミー」は「YouTube版の『みんなのうた』」を意識してチャンネル運営をしています。

なかよし・ボンボン事業部動画事業チーム副編集長 髙橋秀二氏

幅広い世代に視聴者層が広がったYouTubeには、昨今多くの制作会社も参入しており、動画のクオリティも上がっています。ただ制作側での話をすると、密を避けるというご時世的な部分もありますが、基本的にコンパクトな制作体制で運営しています。

髙橋氏が担当するボンボンアカデミーから。取材当日収録されていた

髙橋氏:

ボンボンアカデミーは視聴者の大半が未就学児ということもあり、視聴時間の半分以上がテレビでの視聴となっており、大画面に耐えられるクオリティは必須となります。グリーンバックベースでの撮影やスタジオ撮影は、しっかりとした機材での撮影が必要となります。
撮影は自社の写真部へお願いしていますが、機材などについては彼等が信頼のおけるものを使用してくれています。インハウスで行うことの意味は大きいですね。

――写真部が動画を扱う、一見、不思議な感じがします。何がきっかけだったのでしょうか?

講談社写真部 部次長 齋藤浩氏

齋藤氏:

2015年の新年所信の会で社長が全社員に向けて「出版を再発明しろ」と大号令をかけました。その真意は、「コンテンツを読者に届ける方法は何も紙だけではない」、この時代に合った方法をそれぞれの立場で探ってみようということになりました。その中で、写真部は動画に注目しました。
スチルカメラマンが撮る動画は、ムービーカメラマンの撮影する動画とはアプローチが違うので、それが武器になるのでは?と思っています。これが写真部の中で動画に本格的に取り組むことになった理由です。

椎野氏:

このような経緯があり、我々は写真と動画の撮影、両方行います。普段使用する機材はキヤノンをはじめ、他社製品もあります。写真撮影は用途で使い分けがありますが、動画撮影はXF605導入もあり、統一されると思います。
写真部でそれ以前に動画を意識したのはHDVやDVが現役だった2008年頃です。現在は、退職された先輩が個人的に機材を持ち込み、編集を始めます。その後、フリーの動画スタッフをスカウトして教わる形で勉強しました。動画への下地はありましたが、新年の大号令以降、写真部も動画に大きく舵を取ることになります。

講談社写真部副部長 椎野充氏

椎野氏:

現在、写真部は社員が11名、契約社員が20名弱、アシスタントやアルバイトなどを含めると合計50名近くが在籍しています。一部報道やスポーツ専門で撮影している者や、私は日本雑誌協会の宮内庁幹事を務めていますので皇室取材の写真を撮っています。ですので今も動画とスチール両方のお仕事をこなしています。
スチルカメラマンが撮る動画撮影の特徴としては、映像の1フレームを抜くと一枚の写真として成立することが多いです。逆に文字とか挿入する部分を考慮しない部分もありますね。それは、撮影対象に寄ってしまい、そこから一枚の画を作るからなのです。
明らかに二者では画が異なり、構図の切り取り方が大きく違います。これは写真と映像の文法が違うことにも由来すると思います。写真と映像両方に携わると改めて感じます。

――XF605を導入した理由を教えてください

新導入した4台のXF605

齋藤氏:

前機種であるXF705の画の美しさが原点です。やはり実際に使用して、その性能に驚いたことが一番大きいです。実は、少し前に宝塚歌劇団のVRコンテンツを講談社で制作する時にXF705で撮影を行いました。コンテンツは、VR映像だったのですが、その中に埋め込む映像を撮影する必要がありました。それが、あまりにも美しく驚きました。
舞台という現場は、基本暗転している中で、照明があたります。当然暗部から急に人が現れるとピント合わせの難しさなど、撮影側にとっては厳しい撮影環境といえます。その中でXF705の能力を目の当たりにして、もうここまで進化しているのか?と驚いて導入検討を始めました。
そんな中、遺伝子を受け継いだXF605が発表されるという情報が入り、導入をしばし待つことにしました。クオリティは保証されていることもあり、今回は一気にXF605を4台導入しました。
XF605が小型軽量で操作系が一箇所に集まっていることに驚きを隠せません。あと我々は、どうしても人物を撮影することが多いので、人物に対するピントの向上、つまりAFには驚かされてばかりです。
人物が後ろ向きになるとAFが追ってくれない場合もありますが、XF605ではこのあたりもバッチリカバーされています。暗部での使用での進化も良いですね。

講談社写真部のスタンダード機へ

――今後はXF605をどのように活用される予定ですか?

齋藤氏:

写真部の50名近くいるカメラマンが全て同じ環境下で動画に取り組んでいるわけではありません。デジタル1眼で動画撮影するカメラマンもいれば、スマートフォンでインスタライブ配信を担当しているカメラマンもいます。今回は4台を導入し、部署内のベースとなる機材として据えようと思っています。
誰からも文句のでない良い映像が撮れるカメラを全員が使える環境があれば幸せではないか?ということになりました。講談社の写真部としてはこのXF605を4台置いて、勉強会やマニュアルなどを準備して皆で共有し、みんなが自由に使え、さらなる動画の技術向上の高みを目指そうと思います。
弊社では今や児童書から写真集まで幅広いジャンルを取り扱います。そのジャンルにおいて動画のニーズは日々高まっていますので、様々なシーンで活躍すると思います。求められるニーズも様々ですので、どんなニーズにも応えられるカメラが必要とされるのです。そういった意味ではXF605は小型軽量かつ高性能と、非の打ち所がありません。
またライブ配信が非常に増えていますのでその分野でも重宝します。カメラと有線を繋いでの映像伝送はやはり安心感でしかないです。
髙橋さんの部署がそれを一番痛感していると思いますが、我々の主戦場は、Web動画の世界です。映画館で上映する映画を作っている訳ではないのです。Web、つまりYouTubeの世界は、移り変わりのスピードが速く、半年後には今のトレンドが逆の方向になる場合もあります。
時勢を読みつつ、1つに決めつけずに柔軟に対応しようと思っています。いろんな人のアドバイスに従いながら、形を決めずにいろんな可能性を探りつつチャレンジしたいですね。

――XF605に最初に触れた時のインプレッションを教えてください

齋藤氏:

やはり小型軽量コンパクトな部分です。テレビ局のような、チームでの収録もありますが、カメラマン一人での撮影も多いので、そういった場合にはやはりこの小型軽量かつ、バッテリーの持ちがいいというのはすごく武器になります。
発売前に4台注文したことからも我々の期待の大きさがわかってもらえます。会社的にも異例のことでした。これが他社メーカーの新製品であれば、評判を聞き、ある程度バージョンも落ち着いてきたところで購入していたはずです。キヤノンさんは、サポートの対応も非常に良く信頼感は大きいです。XF605を撮影で一回使用してからは、他機種は使いたくなくなりました(笑)。
後は、三連リングでオペレートするのは非常にスムーズです。ユーザー目線で設計されているのは非常にありがたいですね。

――XF605に寄せる期待とか愛情を感じますね。

椎野氏:

XF605エンジンもほぼ同じで、ボディが小さく短くなりましたね。また操作関連が1箇所に集約されたことで、さらに初見でもすごくわかりやすかったです。
撮影スタイルは、右手は必ずパーン棒を持ち、左手でカメラをコントロールすることになります。想定外のことが起こる取材時にはやはりこの三連リングがないと咄嗟の対応ができないです。
詳細設定もXF605のタッチパネルでほぼ完結するので便利です。手で操作するには細かすぎる箇所はありますが、実は併用できる部分はありがたいです。アサインによって、Irisやオートフォーカスを変えるのもアリかなと思います。実際に物理的サイズも気持ち大きめなのは使いやすいです。
余談ですが、ある程度カメラは大きくないと商売にならないこともあります。式典でカメラ据えてENGサイズのカメラでの撮影は、撮られる方もちゃんと意識しますのでカメラの存在感は必要ですね。その点XF605は程よい大きさです。

キヤノンへのリクエスト

――メーカーへの要望はなにかありますか?

齋藤氏:

僕たちは静止画から動画の世界へ入りました。機材の進歩のおかげもあり動画もそこそこ撮れます(笑)。カメラを回す人にとって難しい分野であり課題となるのが、"音"についてです。それこそ写真は音はないですからね。わからない部分が多くありますので、ボタン一つですごくきれいな音声も収録できるカメラを希望します。
やはりキヤノンが凄いと思うのは、写真そして映像とは何か、美しさとは何か、その部分が考えられた上で、ビデオカメラを世に出しているところが素晴らしいですね。キヤノンは映像と静止画に対する愛があります。ちゃんと我々の話を聞いて対応もしてくれますし、心信頼感があるところは素晴らしいですよね。
キヤノン愛といいますか、逆に言うとキヤノンの方が我々作り手側に、映像に対する愛を示してくれているというのが僕たちの信頼感です。


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