キヤノンのPTZリモートカメラの導入事例の2つ目は、「CR-N300」2台とリモートカメラコントローラー「RC-IP100」を導入した音楽制作会社への取材を行った。音楽制作会社がなぜ映像制作をすることになったのかをユナイテッドスタジオ株式会社 代表取締役の藤木テツ氏と有限会社イエロージャム代表取締役の藤野秀樹氏から話を聞いた。

ユナイテッドスタジオ社内の様子

楽曲制作から映像制作まで業務領域を拡張

――まずは御社の業務内容をお聞かせ下さい。

藤木氏:

私はもともと音楽畑出身で、自分でアルバムを発表するほか、アーティストに楽曲を提供したりゲーム音楽やイベントなど、さまざまな分野の楽曲を制作してきました。最近は音楽だけではなくて映像を組み合わせた仕事も増えてきています。
2020年に今の場所(東京・板橋区)に会社を移転。コロナ禍もあって音楽の制作自体もそうですが、イベントごと全てなくなってしまって、ちょうどいい機会なのでスタジオを移転して広げました。そうしたところ、コロナ禍の影響なのか、ミュージシャンの案件で音楽とは別に映像の需要も意外とあることがわかり、本格的なものではないんですが、4Kのミラーレス一眼カメラを使ってミュージシャンが一人で歌っているシーンをそのまま映像化したり、ちょっとしたミュージックビデオ風な映像制作も始めました。
そんなとき藤野さんに誘われて、藤野さんがブランディングマネージャーをされている大手製薬会社のカンファレンスの様子をライブ配信する案件をご一緒することになりました。

イエロージャムの藤野秀樹氏(左)とユナイテッドスタジオの藤木テツ氏(右)

藤野氏:

私も音楽畑出身で、アーティストに楽曲を提供したり、アーティストのマネージメントなど、音楽制作が中心でした。今は主に音楽ビジネスに加えて、一般企業のブランディングマネージャーを務め、企業向けの映像制作を手掛けています。コンテンツ制作の部分で映像と音楽は非常に親和性も高いのでそういうところで、藤木さんとチームとしてやっています。

藤木氏:

製薬会社のライブ配信の案件も最初はミラーレス一眼とPCを持ち込んで行おうとしたのですが、クライアントの要望や会場の状況にさらに柔軟に対応できる方法はないだろうかと考えていたところ、キヤノンさんからPTZカメラが発売されることをニュースを知りました。正直、PTZカメラを知らなかったのですが、これを導入することでカメラを遠隔でコントロール出来るんだということがわかり、これだという感覚からのスタートでした。
早速、藤野さんと一緒に品川のキヤノンに行き、実機を操作しながら、色々と細かく説明頂いて、これは使えそうだと思いました。

導入した2台のCR-N300。ブラックとホワイトのモデルを1式ずつ導入
リモートカメラコントローラー「RC-IP100」

コンパクトでコストパフォーマンスに優れたCR-N300を2台導入

――現在、多くのメーカーがPTZカメラを発売していますが、なぜキヤノンを選ばれたのでしょうか?

藤木氏:

ひと目でハンドリングしやすそうなデザインが気に入りました。持ち運びしやすさにいちばん惹かれました。キヤノンさんは一眼レフカメラも含め、昔から魅力的な製品を多く出されてきているので、そういう意味でもキヤノンさんを選べば間違いないだろうという安心感が背中を押しました。

――キヤノンのPTZカメラは2機種をラインナップしていますが、CR-N300を選んだ理由を教えてください

藤木氏:

迷いましたね。もし予算が潤沢にあれば、CR-N500を2台導入したかったです。ただ、CR-N300に決定した理由はコンパクトなところでした。とにかく機材を出来る限り、手で持ち込めるようにしたかったのです。また、コンパクトであれば設置可能な場所も広がりますからね。 あと、画質の良さですね。CR-N500とCR-N300の画質を比べて、確かにCR-N500の方が画質は良かったのですが、CR-N300もまったく画質が劣るわけではありませんでした。それに藤野さんと二人で行うプロジェクトに使うなら、機能も含めてCR-N300で十分という結論に達しました。ただ、PV、MVといったもう一つ上の映像制作であれば、CR-N500がベターだと思います。
CR-N300は2台導入しました。PTZカメラがいくら動くとはいえ、視点はやっぱり多い方が良いですよね。それだけ表現の幅が広がります。あとはスイッチャーやカメラコントローラーなど全体的な予算感もあります。

藤野氏:

ズーム比が20倍あるので引きからアップまで撮れますが、2台あればカメラの高さを変えて画角変化だけではできない表現ができる。それに1台を手に持って会場を自由に動き回るという使い方をすることもあります。

専用コントローラでの操作やプリセット機能で「色っぽい」動作を実現

――カメラのほかにリモートカメラコントローラーも導入されたそうですね。

藤木氏:

パソコンでも操作できますが、やはりカメラワークにはこだわりたかったからです。まだまだ上手く使いこなせていませんので、日々練習して色々な機能を試してみたいです。

藤野氏:

私達の撮影業務の登壇者は、プロの芸人やタレントではありませんので、本番とリハーサルが全く違う動きをされることがよくあります。それに登壇者の方もお忙しいので、リハーサルの時間もあまり取れません。そんなときはインカムで指示するより、その時のステージを状況を見ながら、リモートカメラコントローラーを操作して自分で対応した方が早いですし、楽ですね。コントローラーで対応できるのはやはり大きな意味を持ちます。 それから、CR-N300をコントローラーでパンやチルトの動きを操作してみると、なんて言うか「色っぽい」動作を実現できるのです。変な言い方ですが、やさしい動きという感じです。たとえば、テレビ局のカメラマンが撮る自然なパンニングだったり、ズーミングだったり、いい寄りができるということです。そういうプロに近い動きが出来るのは良いですね。

――キヤノンのPTZカメラはパン、チルト、ズームが同時スタートして同時ストップできるという独自の技術を搭載していますが、この効果でしょうか?キヤノンさんは放送局用のお天気カメラなどPTZコントロールの技術は長年の蓄積がありますからね。

藤野氏:

そうだったんですね。言われてみて納得しました。放送局の報道カメラマンみたいなカメラワーク、いわば職人技を知らないうちに使ってたとは!! ほかのメーカーのカメラだと、やっぱりパン、チルト、ズームの動きが、「うっ」て思う時があって。カメラの癖だと諦めていましたが、実はそういうことを感じさせない技術が裏にあったのですね。

配信現場でカメラと映像の切り替えを行う藤野氏

カメラの動きを再現するトレース機能に期待

藤木氏:

藤野さんが言った通り、パン、チルト、ズームの動きがすごくスムーズ。それにレバー操作が直感的に使えるのでストレスがありません。これまでのリモコンじゃ、もちろん無理だし、パソコンで操作しようとは思わないですね。
それから、まだ現場での使用はありませんが、あらかじめ記憶させたカメラの動きを再現するトレース機能は大きな魅力です。他の作業、例えば音の作業に集中したいときにこの機能を使えば、両方、ベストに持っていけます。一人で二役の仕事が出来ますね。是非、実践で試してみたいです。

――CR-N300を使ってみて、どのあたりが良いと思いましたか?

藤野氏:

顔検出AFがとても便利です。講演中に人が動いていても、画面から外れなければ、ずっと顔にピントを合わせ続ける。一応、いつでもマニュアルに切り替えられる態勢は取っていますが、ずっとAF任せでMFは使ったことがありません。その分、ズーミングに専念できます。
また、コロナ禍でクライアントによってはできる限り準備や打ち合わせを最小限にしたいと思っていらっしゃる会社もあります。会場の下見ができないこともありますが、CR-N300は20倍ズームを搭載しているので、どんな会場でも対応できる安心感があります。
また、引きの画から寄りまで、見ている人たちに飽きない画作りが可能で、クオリティの高い映像配信が可能だと感じています。クライアントさんの中には、ライブ配信の内製化を考えている企業さんもいらっしゃいますが、私達のクオリティは内製化では実現できないと高い評価をいただきました。

――CR-N300やメーカーに対して何か要望はありますか?

藤木氏:

タリーランプが付いてますが、私が使ってるローランドのスイッチャー「V-8HD」には対応していません。V-160HDはXCプロトコルに対応しているので、使えるみたいですね。
また、私の場合、会議の配信でも発言者の声質に合わせて音声を調整して、滑舌の良くない方の発言もかなり分かりやすくなるようにしています。あまり気付いてもらえませんけど、依頼者から「藤木さんの配信は発言が聞き取りやすい」なんて言われると嬉しくなります。
それから肉声には帯域があるので、新製品発表会などイベントのときなんか、その帯域とぶつかるようなBGMは避けるようにしています。 
音楽畑出身の音のプロとしては、現場の環境音や使っている機器の動作音にとても気を使っています。特に音楽のライブ配信で静かな曲のときなどは余計な音は極力排除しています。キヤノンさんのPTZカメラは、動作音はかなり小さいので気に入っています。さらに静音性を極めていただきたいですね。

藤野氏:

特にカットの切り替わりの時、人の声は聞き取りづらいものなのです。でも藤木さんの場合、背景の音楽のレベルがちょっと下がっていたり、カットに動きがないときはBGMのリズムを上げて音で煽ってみたりと、音に対するこだわりが強く感じられます。ここがやっぱり他の編集者やビデオグラファーと圧倒的に違うところですね。

配信向けにセッティングしたマイク

藤木氏:

そう言われて気づきましたけど、映像だけで勝負しようとしても映像に長年携わってきた人には敵わない。私の場合、音で何とかしてやろうっていうスタイルが強みになっているのだと思います。
音に関してはキヤノンさんの専門範囲外かも知れませんが、やはり映像と音は切り離せません。今後、画像とリンクして自動的に音声を補正してくれる機能みたいなものがあったら、PTZカメラの使い勝手がさらに向上し、仕事の幅がさらに広がると思います。

 

――音楽制作のノウハウを取り入れた映像制作が大きな武器になっているのですね。映像と音の両方のクオリティをあげることでコンテンツの魅力が更に高まります。PTZカメラがその一助になって益々、表現の幅を広げられるのではないでしょうか。本日はありがとうございました。


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