時代性が問われる国際放送機器展の行方

[InterBEE 2013]会場出口インタビュー

2013年11月15日。ちょっと雲行きも怪しくなり時折小雨がぱらつくこともあったが、最終日ということもあり人波はとどまるところを知らないようだ。3Dやシネスタイル、4K8Kと毎年のように変わるテーマの元、各社とも申し合わせたかのように同じトレンドに矛先を向けていく。集客のため話題性を求めるのはこうしたイベントでは定石であり、こぞって同じ方向を向いてしまうのもわからなくはない。ただ、こうした手法も一般的な内容で一般の人向けには有効な手段だろうが、専門的な業種に向けたイベントの場合どうかと思ってしまう。

InterBEEは国際放送機器展だが、すでに価格的、性能的にも民生機とボーダーレス化が進み、放送業務用機器と民生機の境界が曖昧になっている。出展メーカーのなかには民生機を出品しているところもあるほどだ。仕事を請け負うプロダクションも高価な機材が必要なため以前はそれなりの規模が必要だったが、現在では個人経営でも成立するようになってきた。

interBEE2013_day3_1661.jpg 以前は高根の花だったAvid Media Composer。今回バージョン7になり価格も約10万円に interBEE2013_day3_1633.jpg

8年ほど前からビデオ関係の機材を手掛けるようになった銀一。現在は1冊のカタログができるほど扱い商品が増えた。写真はGoPro専用のカメラサポートSTEDICAM CURVE

大手プロダクションの中には、使う機材を個人が選定できるようにしているところもある。カメラマンであれば、4K8Kであっても予算が許せば購入可能ということになるわけだ。これは将来的なことを考えてということもあるだろうが、アウトプットのところがHDでも撮影は4Kのほうが画質が良いということもある。

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天体望遠鏡や双眼鏡などの光学機器のメーカーであるコーワはMFTマウントの撮影用レンズを発売するという。広角8.5と16mmの2本だが、ズームを含めラインナップを増やしていく予定だ

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トキナー16-28mmのEFマウントレンズ。古くから一眼レフ用の交換レンズを作ってきた同社だが、最近シネスタイルのレンズも扱い始めている。ほかにも50-135mmなどレンズのラインナップがある

カメラの選択の自由度が増すと、一昔前のようにレンズはキヤノンかフジノンという二者択一ではなくなってくる。今年はシネスタイルとともにこうした背景もあってか、レンズの新製品が増えている。

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レトロエンタープライズではすでに市場から消え去った古いVTRのテープの映像をDVDやデータに変換するサービスを行っている。1インチやUマチックなど業務で使われていたものだけでなく統一1型など民生機のものまで過去市場に出回ったものならすべて可能という

一方すでにメーカーが生産を中止し、再生機材も世の中からなくなり、再生できないVTRテープを復刻するサービスも盛んになってきている。当時の再生機材を保有し常に動作状態にメンテナンスなどをしなくてはならないので、新規参入は難しいだろうが、1インチやベータカム、Uマチックあたりに限定したサービスなら成立するかもしれない。特に1インチとベータカムは業務用として大量に使われていたので、テープだけどこかで発掘されることも多いはずだ。お宝映像発見のような番組には欠かせないサービスといえる。

見えてくる2014年の片鱗

さて、今年最後の大きな機材展ということで、締めくくってみると、“多様化と個人の時代”といえよう。来年もこうした機運は加速していき、カメラや周辺機器メーカーなど様々な分野で新規参入を含めた多様化が進み、価格も下がってくるのではないだろうか。これにより新たな表現方法や発表の仕方がますます増えていき、新たなクリエーター達も増えてくるに違いないだろう。

今回のInterBEEの登録来場者数は31,979人(昨年31,857人)ということで、昨年を僅かとはいえ上回る集客があった。出展も過去最多と増加しており、冒頭専門的な業種に向けたイベントの場合どうかと思うと言ってしまったが、年々増えている来場者数や出展数の増加は多様化と個人の時代を象徴しているといえ、InterBEEの方向性は間違っていないともいえる。来年以降もこうした現象は加速していくものと思われる。

interBEE2013_day3_0032.jpg Phantom4KハイスピードカメラFlex4(ノビテック)。4Kで1000fps、HDなら2000fpsの撮影が可能 interBEE2013_day3_1584.jpg

タムラ製作所WFF-0711A。中継などでスタジオなどと掛け合いを行う場合返しの音声が必要になるがそのためのワイヤレスシステム