「映像関連ソリューション」と一言で言っても、最近は放送・プロダクション業界関連のソリューションとは限らない。企業・団体、教育機関、官公庁などあらゆる分野で映像活用が進み、その映像もビデオ会議から、展示会映像、DVDやWebのプロモーション映像、ストリーミング配信まで多岐にわたる。必要なソリューションは何かと検討を始めた時、何カ月にもわたって複数の展示会を視察しなければ理解できないということも多い。専門展示会は、専門分野でじっくり製品を比べるのには好都合なのだが、分野や業界をまたいだ関連製品を比較するのには向いていないからだ。複数の展示会を視察している間に新製品が出て、振り出しに戻った経験を持つ人もいるだろう。

同じ業界の複数のメーカー製品を比べるのではなく、業界をまたいで、自分に最適なソリューションをじっくり比較・検討できたら──。そんな人にとっては朗報となる展示会が開催された。

ソニーが毎年5~6月ごろに開催してきた展示会は、各業界の動向を横断的に見ることができるソリューション展示会だ。ソニーは2010年4月、法人向けのシステムソリューション事業/サービス事業を行うソニービジネスソリューション株式会社(東京都港区)を立ち上げた。今年は、このソニービジネスソリューションが主催して、「ソニービジネスソリューション総合展2010」が、5月31日・6月1日の2日間、東京・品川のTHE GRAND HALLで開催された。ソニーの映像技術・製品を中心としたソリューションを一堂に集めた。総合展をうたっていることからも分かるように、放送・シネマから医療までさまざまな分野に対するソニーの取り組みを、横断的に見られる展示会となっており、多数の来場者で会場内は熱気に包まれていた。

2010 NAB Show出展製品が国内初お披露目

ソニービジネスソリューション総合展では、会場内をエンタープライズ・ソリューション、メディア・ソリューション、公共ソリューションの3つに分けて展示が行われた。エンタープライズ・ソリューションのエリアでは、ビデオ会議やネットワークカメラ、デジタルサイネージなどの映像コミュニケーションや映像セキュリティ、手術映像収録などの医療向けシステムの展示が行われた。公共ソリューションのエリアでは、遠隔講義のライブストリーミングなど教育機関向けシステムや、災害現場映像の伝達など官公庁・自治体向けのシステムを紹介した。

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エンタープライズ・ソリューションのエリア中央に置かれたダイナミック・マルチディスプレイシステム「Ziris Canvas」。これまでのデジタルサイネージでは、マルチディスプレイで表示する場合であっても、縦横に揃えて配置することがほとんどだった。Ziris Canvasでは、斜めに入り組ませたマルチ環境で展示。自由なレイアウトが可能なことを示した。

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ソニーがビジネス向けに7月に発売するデータプロジェクターVPL-FX500L/VPL-FX30は、RGB各色に液晶パネルを使用する3LCD方式。DLP方式プロジェクターと比較するコーナーを設けた。写真では、DLP方式の方が落ち着いた発色に見えるが、実際には3LCD方式がPCと同じ発色で表示され、DLPが暗く沈んだ感じに見えた。

今回のソニービジネスソリューション総合展2010で、もっともスペースを使用してソリョーションをアピールしていたのが、メディアソリューションのエリアだ。メディア・ソリューションとして紹介したのは、4月にラスベガスで開催された2010 NAB Showにソニーが出展した製品群。これが、国内初お披露目となった。3Dカメラシステム、スイッチャー、3Dモニタなど3Dライブ制作関連や、HDCAM SRによるハイエンド制作、有機ELディスプレイ、小型AVCHDカムコーダ新製品HXR-MC50Jなど各製品の回りで熱心に質問する姿が見られた。

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HDCAM SRのコーナーに参考出展されたSStP PCIeボード。HD-SDIの2同時入力・2同時出力が可能な入出力ボード。ファイルフォーマットには、ラッピングにMXFを用い、圧縮コーデックに、HDCAM SRのネイティブ・コーデックであるMPEG-4 SStP(Simple Studio Profile)を採用している。HD-SDI入出力だけでなく、SStPコーデックとのトランスコードにも利用可能だという。


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ポータブルなHDマルチフォーマットスイッチャーDFS-900Mを参考出展。標準8入力・4出力、4キーヤー、2DSK、4chフレームメモリー出力・2ch DMEの構成だが、最大24入力・12出力・6ch DMEまで拡張できる。本体は1M/Eまたは1.5M/E。オプションで、1台のモニターで複数の映像を分割表示できるマルチビュー出力にも対応できる。


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NAB Showで注目を浴びた3Dライブ制作関連ソリューションを出展。3Dリグに搭載された光ファイバーアダプターHDFA-200(左上)、複数の3Dカメラのセットアップに活用するマスターセットアップユニットMSU-1000と視差調整を行うリモートコントロールパネルRCP-1001(右上)、収録前・収録時の視差解析と補正などが可能なマルチイメージプロセッサーMPE-200(左下)、3Gbps運用も可能な3D対応スイッチャーMVX-800X。まだまだハイエンドな3Dライブ制作ではあるが、ようやくソリューションとして製品ラインアップが出揃った。


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ソニーの業務用4K SXRDプロジェクター用に、3Dプロジェクションレンズユニットが展示されていた。このレンズユニットは、Real Dを通じてデジタルシネマ用に展開しているものと同製品。業務用プロジェクターに転用することで、4Kパネル上に上下に配置された2Kサイズの映像から3D表示をすることが可能になる。3D表示に必要なフィルターについては、デジタルシネマではRealD限定だったが、業務用では各社のものを使用できる。


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業務用モニタ環境も、CRT、液晶、有機ELの3製品で比較して見せた。有機ELは、液晶の様に黒色が灰色に変化することがなく、CRTと同様の黒再現を得られることに加え、前面のフィルタによりCRTに比べて外光反射が少ないことをアピールした。実際に覗いてみても、会場内のライトを反射して見辛いということはなかった。また、液晶モニタと同程度の厚みでCRTのような奥行きも必要なく、消費電力も少ないことがメリットだという。


1日2テーマで取り組みを紹介するセミナーも実施

製品ソリューションの展示だけでなく、1日2テーマ各3回のセミナーも開催された。1回30分のセミナーは、初日に3Dの可能性と次世代メディアワークフローマネジメントについて、2日目にコンテンツ配信とクラウド化について、それぞれ解説が行われた。展示スペースのバックヤードに設けられたセミナールームは60席ほどのスペースだったが、各回満席になる盛況振りだった。

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筆者が参加したセミナー「ソニーの3Dが拓く新たな可能性」では、3D制作で奥行き感を生み出すために必要となる視差についての基本事項や、3D表示を視聴するための環境の違いなど、ステレオスコピック環境の基礎部分に半分以上の時間を費やすなど、フルデジタル制作時代で初めての表現手法の啓蒙に力点を置いていた。その後、NAB Showで発表された新製品と、ソニーの3Dに関する取り組みを紹介した。

WRITER PROFILE

秋山謙一

映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。