大雪に見舞われた今年のCP+2014

CP+2014は、パシフィコ横浜で行われた。まさかこの後あんな大雪になろうとは

2014年2月13日から16日まで、パシフィコ横浜において、日本最大のスチルカメラの祭典CP+2014が開催された。今回は大雪の中、開催中止の日も出るという大波乱のイベントとなってしまったが、その内容は熱い。特に、4Kオーバーの高解像度映像に関しては、スチルカメラのおまけ機能という枠を越えて大きく取り扱われていた。今回は、映像制作零細企業の社長的に見た、このCP+2014の話題をお送りしたい。

盛り上がるスチルカメラ動画の世界

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CP+2014。今年もプロ向け動画エリアが設置!

2008年9月に初めてHD動画機能を搭載した「Nikon D90」に始まり、その後、かの名機「Canon EOS 5D mark II」が押し広げた一眼動画の世界は、今や、映像業務を語るのに欠かせない一翼を担っている。かつてのような「スチルカメラのおまけ機能」「安価な高画素カメラ」という枠を飛び越えて、今や、テレビCMやハイエンド映画でもそうした一眼動画で撮影したカットを見ることが出来る。

そもそも、RED創始者ジム・ジャナードがデジタル機におけるスチルカメラとムービーカメラの融和「Digital Still and Motion Camera(DSMC)」思想で指摘したように、映画とはスチル写真の連続であって、スチルカメラが毎秒24枚の絵を撮れば、それは当然に映画との親和性が極めて高いものであるのだ。よくよく考えれば、元々、フィルムの映画カメラは、スチルカメラの高速連写機であって、これがデジタル時代においても同じなのは当たり前の事とも言える。

スチルカメラのこの古くて新しい機能は、携帯電話のオマケカメラ機能の発達によって斜陽と言われて居たスチルカメラの世界を一変させた。元々写真と映像制作では、基本人数も関わる予算も桁違いに異なっているため、そうしたカメラはスチルカメラとしては高額な製品であったとしても、我々映像関係者にとっては極めてリーズナブルに見える製品であったのだ。今までは各店舗で年に数台しか売れなかったような高級カメラが我々映像関係者には使い捨てカメラ感覚で使われることとなり、結果として、スチルカメラ業界においても、映像制作というのは外せない領域となってきた。

スチルカメラの祭典であるCP+においてもこの傾向は変わらず、去年から「プロ向け動画エリア」を設立し、スチルカメラによる業務向け動画撮影を前向きに取り扱うようになっている。

今年は、そうしたスチルカメラによる一眼動画の世界にも4Kを始めとする、本格的な高解像度機材が押し寄せ、一気に高機能化が進んだ。カメラ本体だけでなく、多くの動画向け補助機材が用意されることになった。

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Libecのスチル動画向け三脚「TH-650HD」は、なんと、驚きの26,000円!展示機では、前後に動くクイックシューで、Canon CINEMA EOS C100が見事にバランス

「プロ向け動画エリア」では、こうした補助機材を中心に取り扱っており、中でも、高解像度撮影には必須の三脚などは、スチルカメラ向けの安価で信頼性の高い製品が登場していた。中でもLibecの三脚「TH-650HD」は注目の新製品で、クイックシューの工夫で前後のバランスが取りやすくなったにもかかわらず、スチル動画を意識して、26,000円と驚きの低価格であった。

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Technical Farmで展示されていたクイックリリース

4K以上の解像度では、ほんのわずかなブレが致命的に目立つ結果を生むことが多い。また、ピントも極めてシビアであり、そうしたピント調整のためにも、しっかりとした三脚は必須だ。安価な4K機材が増える中でこうした安価で本格的な三脚が登場したことは、必然とも言えるだろう。 teduka_n42_05.jpg

がっちり固定したモニターなどをワンタッチで外せる機構!接続部の脆い事が多いスチルカメラ動画には最適な仕組みだ

また、RIGの充実も今年の特徴で、Technical Farmブースでは「クイックリリース」という、RIGアーム用のワンタッチコネクタを展示。業務用映像機とは異なり、民生機特有のコストダウンのために接続部の脆い事が多いスチルカメラ動画においては、機器を外してから移動した方がいいという事も多い。そもそも元からRIG用のねじ穴などが少ないために機材の付け替えも多い。それを考えると、スチルカメラ系の動画撮影には、この「クイックリリース」は最適な仕組みだといえるだろう。

話題の中心は、やっぱりGH4!

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PanasonicブースはGH4一色!VIERAモニターが4台外向きに設置され、そこではGH4の撮影映像や写真が常時流されていた

今回のCP+の主役といえば、誰もがこの一台と認めざるを得ないだろう。4K撮影可能な一眼スチルカメラ「Panasonic Lumix GH4」が大きな話題をさらっていた。同カメラはCP+直前に製品開発が発表されたものだが、なんと、Panasonicブースでは同カメラに実際に触ることが出来た。てっきり今回はモックの発表だと噂されていただけに、プレス開場と同時に口コミで話題が広まり、気がつけばプレス時間にも関わらずGH4コーナーは黒山の人だかりとなっていた。

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話題のGH4を実際に触ることが出来るとあって、ものすごい熱気!!

これまでスチルカメラタイプの4Kカメラと言えば、筆者も愛用する「Canon CINEMA EOS-1DC」のみが知られていた。1DCは極めて優れたカメラで、1年半前のPhotokinaで実機展示があって以来唯一、スチルタイプの4Kシネマカメラとして、その不動の地位を確保してきた。しかし、それから遅れること1年半。ようやくここに、2機種目のスチルタイプ4Kシネマカメラが登場してきたのだ。

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説明担当者のこの満面の笑みが全てを物語る。歴史を変える傑作カメラの誕生だ

GH4は、一眼スチルカメラタイプとしてはEOS-1DCに続く2機種目、ミラーレス一眼タイプとしては世界初の4K撮影可能なカメラだ。GH4の最大の凄みとしては、単にQFHDと呼ばれるテレビ向け4K(3840×2160)の映像が撮れると言うだけでなく、映画で必要なDCIのフル4Kサイズ(4096×2160)での撮影が可能だ、という点が挙げられるだろう。24pというその撮影コマ数も、映画向け用途を明らかに意識していることを示している。

GH4は、新しいオートフォーカス(AF)機能として、空間認識技術(DFDテクノロジー)を使った新開発の空間認識AFを搭載している。このDFD-AFはピント位置の異なる前後の時間帯から空間を認識し、それを同社製のレンズ光学データを比較して、そのボケ具合から物体までの距離を算出する新しい方式で、何と、0.07秒での高速AFを実現している。この方式が優れているのは、最初に距離を算出するために合焦箇所付近でのピントの前後の動きがないことで、これにより、まるで慣れた人間が操作したかのように、ぴたりと迷いの無い一発でのAFが実現された。

しかもこのDFD-AFは、4K撮影中にも使用可能だ。筆者も実際に試してみたが、ピントが合いにくい4K撮影が(というか最低限でもRetina機能を持つEVFを組み込んだRIGを組まないと従来の4K撮影では実際にはピントが合いようがない)、 カメラ本体のタッチパネルのタッチ一つでぴたりと決まるのには心底驚いた。

もちろん、1DCや他のシネマカメラに比べてセンサーサイズが小さい(=光学解像度が低くボケにくい)という有利な点はあるのだろうが、1DCでは4K動画撮影時には全く機能しないAFがワンタッチで動くのには、本当に驚かされた。なによりも、従来型のAFでは合焦点付近で必然的に起こる「迷い」が一切無い。DFDの空間認識で初めから計算済みのところにぽんとフォーカスを放り込み、正確に止めてくれる。まるで慣れたフォーカスプラーがカメラの横についていてくれているかのような錯覚すら覚えた。

レンズ光学データとの比較検討が必要なため、このDFD-AF機能が使えるのはPanasonic製レンズに限られるが、このAFを駆使すれば、従来4K撮影時に必須であったフォローフォーカスもその担当者も、ほとんどの撮影シーンで必要ないだろう。特に4Kピクセルに対応したEVFのない今は、遥かに画素数の少ないモニタを除いて無理矢理にピントを合わせてなければならない人間の目より、このDFD-AFの方が余程確かなのだから。「ワンマンオペレーションが可能な4Kシネマカメラ」とは、ここ数年良く聞く夢の単語だが、ようやくこのGH4でそれが実現したのでは無いかと思える。

4K撮影では事実上本体だけでは不可能だったピント合わせが、なんと、タッチパネルのタッチで出来る。しかも、新技術DFD-AFで、極めて速く正確だ。従来のAFにあった「迷い」も一切無い

それだけでは無い、GH4にはある、特殊な仕掛が施してある。それは、なんと合体分離型のインタフェイスユニット(AG-YGHG)が合体可能である、ということ。このインタフェイスユニットを合体させることで、キヤノン端子での音声バランス入力が可能になる他、12Vキヤノン端子からの電源供給、そしてなによりも4本のSDIケーブルから外部レコーダーや外部モニタに対し、10bit 4:2:2のフル4K映像を流すことが出来る。書き間違いでは無い、10bit 4:2:2 のフル4Kだ。つまり、24p上限とはいえ、いきなり10bit 4:2:2という業務最高画質レベルのフル4K映像を得ることが出来るわけで、ここからシネマカメラとしての運用が可能である事がわかる。

さらにGH4本体だけでも、内部SDカードに8bit 4:2:0のMOV、もしくはMP4映像が収録できる他、HDMI1.4を通して、外部レコーダーに10bit 4:2:2のフルHD映像を取り出すことも出来る様子で、様々な発展性が期待される(インタフェイスユニットの使用時で10bit 4K 4:2:2出力の際は本体内部収録不可。本体内4K収録時には4K HDMI出力不可となりHDMIからはHD出力のみ可能)。このインターフェイスユニットについて、ネットの開発発表画像だけを見た人から「大きすぎる」「不格好だ」という文句をよく目にした。しかし、実機に触れてみて、その問題意識は雲散霧消した。

筆者が手に持ってみたところ。インターフェイスユニットをつけても非常にホールドしやすいサイズだ(Panasonic担当の方が撮影)

その大きさ自体はインターフェイスユニットをくっつけてもほぼ1DCと同じ大きさであり、RIGにも適合する。手に持った場合でも、違和感なくホールドでき、全く撮影に支障は無い。元々GH4が恐ろしく小さいため、インターフェイスユニットを接続しても最上位一眼カメラ程度の大きさなのだ。インターフェイスユニットはGH4本体にネジドメでがっちりと留まっており、ちょっと大きいバッテリーグリップ程度の感覚だ。写真で見た印象とは異なり、実機では全く問題は感じなかった。

teduka_n42_11-2.jpg 筆者愛用の「Canon Cinema EOS-1DC」と並べてみたところ。大きさはほぼ同じである事がわか る(Photo by Takahiro KAMIYA)

ただ、現在わかっている数少ないGH4の欠点を言えば、このインターフェイスユニットを使った場合にもLogガンマ収録などは想定されていないということで、RAWやLog撮影真っ盛りの今時の最新鋭のシネマ機としては、若干、画竜点睛に欠く気はする。ハードウェアの仕組み的にはLogガンマ搭載可能なはずなので、発売までの間にせめてインターフェイスユニットを使った場合のみでいいのでこの点を考慮して貰えれば、業界が震撼することになると思うのだが、いかがなものだろうか?

GH4は、内部収録にはSDカードを用いるが、そのカードは、カメラ内SDカードへの4K収録というかつて無いハードルのため、かなり特殊なものとなる(キヤノンの4K機1DCは、SDカードよりも最高速度に優るCFカードであったが、それでも一枚10万円近い超高級カードを要求している)。

SDXC UHS-I U3という聞き慣れないスペックのSDカードがそれだ。既にあるUHS-Iの中でもU3という30MB/s(240Mbps)の速度を実現するという野心的な規格のSDカードで、実はこのSDXC UHS-I U3カードは市場には無く、2014年4月にPanasonicから発売予定となっている。同じU3速度のSDカードでも、他社から発表されたUHS-IIのものはGH4では動作しないので、十分に注意が必要だ。ただし、これは私は非常に好ましいことだと思っている。

なぜなら、新しいUHS-II対応のリーダーを買わなくとも、GH4のデータはUHS-I対応のカードリーダーさえあれば十分に読み出しが出来るということであって、それは上手く動いている現状の環境 を変えることを嫌がる映像の世界においては歓迎されることだと 考えるからだ。UHS-I対応のカメラは多いとことからも、Panasonicのこの決断は歓迎されることだろう。

なお、4K撮影時には、ドットバイドットに画質の近い、整数倍のセンサーサイズを使用するという事で、ネットで噂されているほどには撮影面積の低下は起こらない、ということだ。実際、スチルでのマイクロフォーザーズ時の画角に比べ、4K動画撮影時にも、さほど大きな画角の変化は感じなかった(気持ちだけアップして、主に上下が切り取られる印象だ)。これも大きな安心材料と言えるだろう。

元々、GH2の業務機であるAG-AF105が発売されたときに、2つの大きなユーザー意見があった。一つが、値段が海外発売のAG-AF100の倍以上の高額であったことに対するクレーム。二つ目が「どうせだったらGH2を組み込める業務用のドッキングユニットを出してくれれば2つも買わなくて済むのに」というユーザーの声であった。

このGH4は、値段こそまだ公式発表されては居ないが、恐らく、従来のGH3よりも若干高い程度の本体価格であろうと予測され、そしてなによりもユーザーの声をくみ取り、本当に「GHシリーズを組み込める業務ユニット」を出してきた。会社組織上、どうしても大量生産と大量販売を義務づけられるためになかなかに小回りがきかないであろう大企業が、こうしたユーザーの声にきめ細やかに対応をしてきたのは賞賛に値するだろう。

それだけでは無く、Panasonicでは、NABに合わせて4Kバリカムなどの業務系上位機種発表も企画しているとCP+ブースで話を伺った。さらに最近では、AG-AF105の後継機種の噂も出ている。すっかり4Kの波から取り残されてしまっていた感の有る同社だったが、なかなかどうして。ここから数ヶ月の間、Panasonicからは目が離せない。

WRITER PROFILE

手塚一佳

デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。