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[鍋潤太郎のハリウッドVFX最前線]Vol.81 LA SIGGRAPH月例会「フォトグラメトリーとは」

2017-06-07 掲載

取材&文:鍋 潤太郎
協力:Leonard Daly / LA Siggraph

はじめに

さて、今月もLA SIGGRAPH月例会の話題をお届けしよう。LA SIGGRAPH自体の説明については先月の本欄をご参照頂ければと思うが、今月もなかなか興味深い内容であった。

5月の月例会のテーマは、最近注目度が高まっている「フォトグラメトリー(Photogrammetry)」であった。これは写真測量法と呼ばれるもので、元々の理論自体は19世紀から存在するものだそう。それを最新のデジタル・テクノロジーと組み合わせて正確な3Dデータを取り出す事で、VR/ARや映画、ゲーム等への応用が進んでいる。この日は、その分野で活躍中の2つのスタジオによるプレゼンテーションが行われた。その模様を要約してご紹介しよう。

LA SIGGRAPH 5月例会のカードより

「Photogrammetry」

Friday, 26 May 2017
Art Institute, Santa Monica
6:30 – Members
7:00 – General admission
Presentations start at 7:30

会場:Art Institute, Santa Monica

冒頭では、LA SIGGRAPHチェアー レオナルド・ダリー氏が挨拶

冒頭で、LA SIGGRAPHのレオナルド・ダリー氏が挨拶。LA SIGGRAPHの概要や、今後数か月の月例会の内容紹介、そして運営に協力してくれるボランティアの募集などがアナウンスされた後、本日のパネラーが紹介された。

プレゼンターの顔ぶれ:

エリック・ハンソン/xRez
マイク・アムロン/Human Engine

xRezスタジオ

xRezスタジオ エリック・ハンソン氏によるプレンテーション

まずは、xRezスタジオのエリック・ハンソン氏によるプレゼンテーションが行われた。

xRez Studioは、エリック・ハンセンとグレッグ・ドウンイングの2人によって設立され、エンターテインメント、自然史博物館やフルドーム劇場の博展映像等のプロジェクトを数多く手掛けている。コンピュータ・グラフィックスやコンピュータ写真分野における最新テクノロジーを駆使し、クリエイティブ・イメージング及びビジュアル・エフェクツを手掛けている。2006年からギガピクセル画像の技術を駆使しているパイオニア的存在であり、3Dフォトグラメトリー、レーザースキャニング、地形モデリング、マルチスペクトルイメージングなどの新技術の革新を続けている、ユニークなスタジオである。

※筆者注:xRezが手掛けてきた数々のプロジェクトの中には、エリック・ハンソン氏が教鞭を取っている南カリフォルニア大学とTBSによる日米共同プロジェクト「原爆ドーム再現プロジェクト」も含まれている プレゼン中の光景。今月もなかなか盛況である

ハンソン氏:私は建築のバックグランドを持ち、デジタル・ドメインでキャリアをスタートしました。映画「フィフス・エレメント」に参加しセット・デザインを担当しました。また映画「デイ・アフター・トゥモロー」「キャスト・アウェイ」等、数々の作品に参加しています。その後、長年VFXの仕事をして、映画の中でニューヨークの街を4回も壊しました(笑)。そろそろ、破壊じゃなくて何か違う事にチャレンジしたい。そこでCG技術を使って新しい仕事を始めようと、この会社を立ち上げたのです。

xRezは、VR/AR、VFX、教育、エンターテインメント分野において、フォトグラメトリーやLIDERによるキャプチャー・テクノロジーを駆使したユニークなプロダクション・サービスを提供しています。設立して10年が経過しました。電話が沢山掛かってきますし、忙しい日々を過ごせている事は大変光栄に思っております。今日は、先日LAで開催されたVR LAで披露したデモもご用意しております。VR/AR分野ではTangoやMagic Leap等のテクノロジーが進化し続けています。このデモは終演後に皆様に体感して頂く予定です。

xRezでは、私が元々Maya使いである経験を生かし、撮影したギガピクセル画像をMaya上で球形にインテグレートしたり、GISデータを元に地形を3Dモデリングする事が出来ます。また、高解像度のHDRIの撮影や、写真撮影やドローン撮影によるフォトグラメトリー、地形や建築物のレーザースキャンニングを行います。これらの撮影した写真から立体画像を起こしたり、合成する事も可能です。

フォトグラメトリーを使用する利点は、実在するものを正確にキャプチャ出来る事です。高価なレーザースキャナーを使用しなくても、カメラさえあれば良いのです。ソフトウェアによる支援もあり、その可能性は多彩です。対象物(地形、建築物など)を複数のアングルから沢山撮影し、専用ソフトによって3次元データを起こします。撮影方法には一定の決まりがあり、それに沿って膨大な数の写真を撮影していきます。

設立当初には、ギガピクセル画像のテクノロジーを駆使して、「北米30都市の、360度画像を撮影して欲しい」と言った大規模なプロジェクトも含まれています。ギガピクセル画像は、被写体を数百枚に分割して撮影し、Reality Captureを用いてスティッチしたもので、最終的な解像度は膨大なものになります。これを高DPIでプリントアウトすると、かなりのディテールが得られます。この展示をSIGGRAPHのロビーで行った実績もあります。

博展映像分野のドーム映像も沢山手掛けました。地形データとギガピクセル画像があれば、そこから精細な2.5Dの映像が作れます。3DデータはMaya上で構築し、MentalRayでレンダリングしました。3D上にデータを取り込む事により、さまざまな応用が効きます。例えば、古代遺跡の壁画を、マウスを動かすと照明を変える事が出来ます。また、色あせた壁画を甦らせる試み等も、画像処理によって可能となります。

これまでに数々のプロジェクトを手掛けてきましたが、その中でもヨセミテ国立公園のプロジェクト、こちらはxRez Studioのホームページから詳細を見る事ができますが、マイクロソフトやキヤノンなど、様々な企業の賛同を得て膨大なカメラと人員を集めての、非常に大規模なものでした。このプロジェクトのお陰で、xRezの社名は、ヨセミテの地元では知らない人がいないくらい、有名になりました(笑)。

ギガピクセル画像の威力は、上記リンクに含まれている「45 Gigapixel Silverlight Page」で体験して頂けますが、ヨセミテの遠景の状態から、登山している人がハッキリ認識出来る距離まで、ズームしていく事が出来ます。ヨセミテのプロジェクトでは、LIDERも使用しています。このレーザースキャナーで得られたポイント・クラウドからMaya上で地形データを起こし、撮影した画像をプロジェクション・マップする方法で、プロダクションの中で使用しました。

※著者注:レーザースキャナーはハリウッドのVFX現場でも活用されている。撮影セットやロケ地でFARO等のレーザースキャナーでスキャンを行い、得られたポイントクラウドをMaya上でモデリングのリファレンス(あたり)として使用する事で、撮影現場のセットや建物を極めて正確に「再現」する事が出来る

LIDERを使用する利点は、写真撮影で派生する様々な問題点全般がカバー出来る事、高精度のポイント・グラウトが得られる事です。難点は価格が高い(購入すると$30,000-$120,000、レンタルでも1日$500)、ポイントクラウドなのでテクスチャが取れない+ポイント・クラウドを元にモデリングする必要がある、等があります。

xRezでは、Autodesk Remake、Agisoft、そして前述のReality Captureをメインに作業を行っています。撮影された膨大な写真のクリーンナップや調整は最も時間を要するプロセスで、この部分の効率化が望まれます。最近のプロジェクトでは、VRへの応用が増えています。この後、マイク・アムロンがキャラクターへの応用事例を解説してくれます。

※著者注:xRezが過去に手掛けた数々のプロジェクトの詳細は、同社のホームページで紹介されている。ご興味をお持ちの方は、是非ともチェックして頂ければと思う

マイク・アムロン/Human Engine

プレゼンテーションを行う、マイク・アムロン氏/Human Engine

アムロン氏:私は、フォトグラメトリーのデジタル・キャラクターへの応用例について、ご紹介したいと思います。時間が少々押しておりますので、手短かに進めてまいります。

Human Engineは、VR/ARとモバイル向けの3Dアセット作成を専門とするスタジオです。3Dスキャンからリギング&VRアプリケーションへの統合まで、顧客のキャラクター作成ニーズをカバーしています。私たちはカリフォルニア州ロサンゼルスに本社を置き、フィリピンのマニラにもチームを持っています。詳細は、ホームページからご覧頂けます。

フォトグラメトリーの技術を駆使し、あらゆる角度から150台のDSLRカメラで被写体を撮影する事により、実在する人や物体をゲーム、VR/ARなどのインタラクティブメディアでの3D仮想空間内に再現出来ます。カメラ150台は8台のコンピュータでコントロールします。撮影の際には、カメラのセットアップに多少の時間を要しますが、撮影自体は一瞬で完了します。

撮影された膨大な数の画像のスティッチは自社開発ツールによって行っています。ホームページ内のデモでもご覧頂けますが、得られるテクスチャーの解像度は非常に高く、16K以上の解像度に対応しているので、クローズアップにも十分耐えうる「アンリミテッド」なクオリティを持っています。

また、リアルなアニメーションを作成するために、モデルの顔の表情やポーズをスキャンし、これらのスキャンのデータを使用して、モーション・キャプチャやキーフレーム・アニメーションで使用する為の、顔と体のアニメーション・リグを提供します。

3Dスキャンされたポリゴンデータは、UnityやUnreal等のゲームエンジンで使用可能です。目と歯だけは、スキンとは独立したモデルになっていますので、個別の細かいコントロールが可能です。さて、デモをご覧になるとおわかりかと思いますが、髪の毛の部分については、まだ開発が必要です。この部分は、今後改善されていく予定です。

これ以外にも、スマートフォンのアプリや、3Dモデルがホームページから購入出来ます。また、スタジオ見学も可能ですので、お近くにお越しの際は是非ご連絡ください!

※著者注:Human Engineのサービス詳細やデモは、ホームページから詳細を見る事が出来る。

終演後はVR/ARのデモ

VRデモを体感中の参加者。手にしているのが、コントローラー

終演後は、会場内でVR/ARのデモが行われた。まずはVRヘッドセットを装着し、手渡されたリモコンのコントローラーを握る。ヘッドセットの中には、美術館内部の光景が広がっている。コントローラーはVRヘッドセットの映像の中にも存在しており、そこからはレーザー光線が出ている。そのレーザーで、遠くに見える絵画の下の床をポイントし、コントローラのボタンをクリックすると、カメラが絵画の直前にジャンプする。そして、また別の絵の近くの床をクリックすると、再びその場所にカメラがジャンプする、というユニークな内容であった。デモを体感した人は、クリックする度に視点がジャンプするので、そのつど悲鳴や歓声を上げる(笑)。傍から見ていると面白く&微笑ましい光景であった。

おわりに

ハリウッドのお膝元、ロサンゼルスのVFXスタジオで仕事をしているとは言え、締切に追われてスタジオに籠って作業をしていると、ともすればこう言った最新テクノロジーと疎遠になりがちである。やはり、こういう機会や場があれば積極的に足を運び、学ぶ姿勢も大切なのだな~と実感した、今月のLA SIGGRAPH月例会であった。


WRITER PROFILE

鍋潤太郎 ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。


[ Writer : 鍋潤太郎 ]
[ DATE : 2017-06-07 ]
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