txt:奥本 宏幸 構成:編集部

クリエーターたちによる人材育成・交流も目的にしたイベントが開催

会場となった大阪堀江の萬福寺。イベントスペースとしてもレンタルされている

2018年11月25日、大阪・南堀江にあるお寺で動画セミナー&ワークショップが開催された。主催は関西で活躍する現役クリエーターたちによる映像研究・人材育成・交流を目的にした勉強ユニット「OMUSUBI」。定員60名を超える78名の関西在住の動画クリエーターが学生の来場があった。

境内の3箇所を使ってセミナーやワークショップが開かれた

OMUSUBIメンバー株式会社DADAN代表の日座裕介氏は次のようにコメントしている。

目的は関西の動画クリエーティブの活性化です。主な内容は「クリエーター同志のつながり強化」「新しい映像技術の研究」「若手クリエーターの発掘・育成」。大阪にはたくさん面白いクリエーターがいるのですが東京ほどメディアに取り上げられることが少なく、そして横のつながりも希薄なのでクリエーターが少ないイメージがあるみたいで…。

同時に大阪に住みながらクリエーター活動したい若い人がたくさんいることも知り、双方が繋がったら面白いこと起きるんじゃないかなということで活動を始めました。今年の3月からクローズドな環境で勉強会を数回行っていて、反響がよかったのでより多くの人と繋がりたいと思い、今回オープンなイベントとして初開催しました。

■1限目 InterBEE2018~最新映像機器を学ぶ~

OMUSUBIメンバー6名によるinterBEE2018レポートの様子

11月に幕張メッセで開催されたInterBEE2018をOMUSUBIメンバーが視察に行き、それぞれの目線で気になった機材・ソフトウェアを紹介していた。機材に関する情報はネットで得ることが今や一般的となっているが、一個人で得られるの情報にも限界もあり、こういったイベントでアンテナの届かない情報や、知的財産の共有は有意義だと改めて感じた。大阪という土地柄なのか面白い機材に興味が集まり、中でも熊本の有限会社ヨシモト機工が出展していた「自動8の字巻き機」が一番ウケていた。

そしてAdobe MAX Japan 2018の紹介もあり、Premiere Rush・Character Animatorのデモを行なっていた。特にCharacter Animatorのデモでは簡単にアニメーションが作れることもあり、どよめきが起こっていた。

■2限目 谷田光晴氏の舞台映像演出最前線

1人目のゲスト登壇者は日本で早くからプロジェクションマッピングを手がけ、数々の舞台映像の演出を手がける株式会社SPOONの谷田光晴氏。舞台映像演出についてのセミナーを行なった。過去に手がけた作品を企画の成り立ちと技術的な側面の2方向から解説。

そして話は舞台映像演出のトレンドと予測に。トレンドは海外アーティストのコンサートを参考に「LEDの正方形化」を解説。そして未来予測としてVR・MRの次のフェーズ「OR (オーバーリアリティー・超越現実)」を提唱。「人間は質量のあるものに感動する」という考えから体感と体験の線引きをし、画面の中のものを見て体感するのではなく現実空間で体感できる映像演出がこの先必要になってくると予測。それを現実のものにする「舞台装置のIoT化」について語った。

株式会社SPOON 谷田光晴氏

そして最後の質問「好きなことで仕事をしていくこととは?」という質問に対して「人の好きを否定しない」「自分で仕事を作る。与えられるのではなく、自分のやりたいことを企画提案できる力を身につけていく」という素晴らしい言葉を残してくれた。

■3限目 藤井亮大解剖

左:藤井亮氏、右:モデレーター 株式会社DADAN 日座裕介氏

2人目のゲスト登壇者は「石田三成CM」「サウンドロゴしりとり」「Eテレミッツ・カールくん」を手がけた藤井亮氏。作品の制作過程の話やバズる動画を作る秘訣、面白いアイデアの源など藤井氏の頭の中をのぞいてみよう!という企画だ。

SNSで話題になった滋賀県の石田三成のCMを解説

作品の上映中、会場では終始笑いが起こっていた。どれも尖って一見ふざけたような企画なのだが「面白い顔をしない」「現場でウケたカットは使わない」「人を傷つけないように気を付ける」など、作品のテンションの高さとは裏腹に、制作段階での藤井氏の繊細さを垣間見ることができた。自身の作品はパロディではなく「シュミラークル(オリジナル無きコピー)」であり、ありそうでないものを作るため「本物を見ない。記憶だけでコピーする」といった制作中のポリシーや人と違う企画を考えるためあえて人が入っていない美術館巡りをするなどストイックなモノづくりの姿勢がとても興味深かった。

即興でiPad proでロゴを描くデモンストレーションも

■CM編集マンによるAffterEffects特訓~AEの精神と時の部屋~

左から橋本真吾氏 神田晃弘氏 三原成介氏

セミナーと同時並行で3人の現役CM編集マンによる、編集に関するお悩みを相談ができるワークショップが開催されていた。場所はなんとお堂の中!まさに「精神と時の部屋」というサブタイトルにふさわしいロケーションであった。

1組15分の当日予約制だったが全ての枠が埋まるほどの盛況ぶり。初心者の学生から現役のプロ編集マンまで様々な受講者がいたようだ。マニュアルでは学べないプロのテクニックや編集のワークフローの情報交換が活発に行われていた。

■CMカメラマンによる撮影ティーチング~デジ1からプロユースまでお悩み相談~

カフェスペースではCMカメラマンに撮影に関するお悩みを相談できるコーナーが設置された。

CMカメラマンのフジモトマサヤ氏所有のREDやCanon C200、DJI RONIN 2などの撮影機材が所狭しと並び、実際に機材を触りながら操作方法や撮影のコツなどを個人レッスンで学ぶことができた。こちらもプロアマ問わずたくさんの受講生が参加しており、より高い撮影技術を学びたいというニーズが垣間見えた。

■オフラインの大切さ

スカイプでの打ち合わせやSNSでの交流などオンラインでコミュニケーションが済んでしまう昨今に、あえて一箇所に集まり、実際に会って話を聞き、交流することが大事だと改めて気付かされた。現実で人と会うオフラインの「体験」によって生まれるインスピレーションはオンラインでは得られない。

また、動画クリエーター業界でも東京一極集中と言われる中、日本の各都市でこのようなクリエーター主導のイベントが多く行われて、新しい才能がピックアップされ、業界全体が盛り上がってほしいと切に思う。

次回は春ごろに開催を予定しています。今後も最前線を走るクリエーターに登壇いただきその知を共有し、さらにはメーカーさんや技術会社さんとも協力して技術を高められるようなワークショップの開催ができればいいなと。一人では小さな力だけどみんなで力を合わせて大きなムーブメントにし、今後も関西の動画業界の盛り上がりの一役を担えれたらいいなと思います。
(OMUSUBIメンバー のびしろラボ 奥本宏幸)

WRITER PROFILE

奥本宏幸

TV制作会社・フリーランスを経て映像制作会社のびしろラボを設立。 演出・撮影・編集・モーショングラフィックなどバランスよくこなす。