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[ライブ配信手帖]Vol.10 ライブ配信からはじめる地域コンテンツ(香川県編)

2014-05-09 掲載

地域コンテンツの可能性を探ぐる中野氏に訊く!

香川といえばうどん県のプロモーションで全国的にもユニークな印象がある地域。ここで「まちテレ」という一般社団法人を立ち上げ、インターネットライブ配信に特化した「ライブメディアコーディネーター養成講座」を立ち上げ、地方自治体と一体になって地域コンテンツの可能性を探っている中野裕介氏のインタビューをお届けします。

アグレッシブに地域イベントのライブ配信を行い徐々に行政の信頼を勝ち得て業務を受託、放送局との協業までに至る2年間についてのインタビューは地方でライブ配信をしている人やこれから取り組もうとする人にはいいヒントになるかもしれません。

――高松でインターネットのライブ配信に携わるようになったきっかけはなんでしたか?

kawai10_10_3.jpgGoogleハングアウトでインタビューに答える中野裕介氏

中野氏:大学時代は情報通信関係をやっていましたので地域での情報発信に興味がありました。地元の商店街とかいろんなフィールドで情報発信のお手伝いをしてきました。そこで発信する手段はあるのだけど発信するコンテンツが揃っていないと思ったのです。ちょうどその頃(2010年)にUstreamがリリースされたのに合わせて、地域イベントをライブ配信してみようと思いました。

最初は、高松で開催されたトライアスロン大会を配信しました。香川大学の学生に協力してもらってサンポート(港周辺にある広域なエリアのこと)の周辺に1キロくらい届く無線LAN装置を置いて一帯を無線LAN化させ、カメラを6、7台使用して配信しました。映像ではなく通信がベースですから、それが我々の強みかもしれません。帯域とかテクニカル部分など無線ネットワークを構築する部分から参加したんです。

そのうちに今度高松市行政がどうやって地域の情報を発信していくのか?を相談してくるようになったんです。さらに市長の目にもとまって、2年前(2012年)の4月ぐらいに高松観光コンベンション・ビューロー(高松プロモーション事業)という認定をいただいて一般社団法人を作ったのがいきさつになります。これが一般社団法人「まちテレ」という名前なんですけども、理事・理事長とかは大学の先生とか、地元の企業の若手が集まってスタートしました。

kawai10_05.jpg 屋外中継も多く行っているサンポート高松

――ボランティアではじめたライブ配信が行政の目にとまり業務委託のための一般社団法人を作ることになったという流れは面白いですね。人材についてですが、どのようにライブ配信するスタッフを集めたのですか?

中野氏:もともと大学の学生活動を僕がバックで支援していたのがスタートです。そんなつながりからライブ配信する時に学生にスタッフをやってもらえないか声をかけていました。ただ学生たちがやると言ってもアルバイトはあるし、スキルが上がった頃には卒業する。その時に中継をこなした学生はドコモやヤフーなど名だたる企業に就職しました。

一方地域からは中継をやって欲しいというニーズが増え、学生たちの力だけでは限界を感じました。社会人の組織を作り安定してライブ配信できるチームを作りたい。それをなるべくボランティアで補完しながら運営できるように一般社団法人を作ったんです。高松には“e-とぴあ・かがわ”という高松市の情報発信拠点があります。そこでライブメディアコーディネーター養成講座というのをはじめました。4年前のトライアスロンの時からe-とぴあ・かがわとは連携をしていたので講座を開きましょうと提案したら300万くらいの予算で配信機材などを揃えてくれました。

kawai10_02.jpg “e-とぴあ・かがわ”で行われた「ライブメディアコーディネーター養成講座」の様子

――一般社団法人を作ってスタッフを固定してライブ配信のスキルを蓄積しつつ同時に「ライブメディアコーディネーター養成講座」を開き新しい人材育成にも着手したわけですね。その後どのような流れで行政からの仕事を受注したのですか?

中野氏:講座を受けてもらってライブ配信が出来るようになった方に入っていただいて、その中でいろいろなイベントの中継を1年くらい行ってきましたが、ボランティアベースではなかなか運営が大変だろうということで、高松市が市の広報事業として動画配信を業務委託していただくようになりました。ボランティアの時とは違って責任が発生するので、配信を落としてもいけないし、映像もさらに高画質でなければいけない。きちんとスタッフがいてそのスタッフの中で配信を行わなければならないのです。

機材は県の施設として導入してもらいました。e-とぴあ・かがわの機材はあくまで非商用利用という条件がありましたので機材も市からの事業費で購入しました。カメラ7台、スイッチャー3台を導入しました。その由来からライブ配信の内容は地域貢献が前提でした。2012年に観光プロモーション事業という補助金を100万円いただいて、その次の2013年に高松市の広聴広報課というところから公式な配信を受注したという流れです。

――高松市からのライブ配信の委託業務化というのはボランティアベースのライブ配信がビジネスに進む重要なステップだったわけですね。これまでに配信した番組は何本くらいですか?その中でも印象深いライブ配信はどのようなものでしたか?

中野氏:去年(2013年)配信した番組は、高松市広聴広報課で配信した番組が20本、スポーツ番組が14本、地域コミュニティに関する番組が10本です。高松市の場合は高松ムービーチャンネルという市のトップページに専用のエリアがあり、ここの制作と運営も担当しています。YouTubeにアップしてある高松市の他の広報管理も全部一括してやっています。つまり今はライブ配信だけじゃなく市の動画プロモーションを一括して任されています。

Ustreamの配信だけでは事業収益は少ないというのが実情です。まだ地方では動画配信の市場は出来たばかりです。市から頼まれていない動画制作や動画配信というのもどんどんこなしたいと思っています。とにかくたくさん作って一般の人にも浸透させない限り、市場は生まれないと思っています。

中継で力を入れているのは屋外中継です。ライブ配信は、ほとんどが市のイベントのため屋外配信を行っています。全国的に見ても屋外中継の本数は一番多いと思います。市がいちばん喜んでくれたのが古代山城サミットでした。これは山と山との間に狼煙をあげてそれをつないでいくというイベントなんですが、山頂は回線確保が難しいんですよ。市が他の業者に頼んだら2000万から3000万かかると言われたのを我々は1/7くらいで行いました。

結果、あのチームは通信関係ならなんでもするぞみたいなイメージになったようです。あらゆるキャリアの回線で電波状況が良いところを探してそこから有線LANに変えて山道を100mケーブルをはわせました。あとアンテナが立ちやすいようにモバイルルーターに電波の反射板をつけるなどの工夫を積み重ねたんです。それで山の中でのライブ配信を成功させました。

kawai10_06_2.jpg屋外でのキャンプ用品を利用した配信ブース

――通信の専門家からライブ配信をはじめて映像の世界が面白いと感じたのはどんなところですか?

中野氏:いろいろな中継をやって画作りの部分はとても興味を持ちましたね。ビデオカメラや一眼レフもどんどん良くなってきているので画作りの部分でも凝ったり、スイッチング担当のスタッフもスイッチングの楽しさに目覚めていきました。

最近はうれしいことにTV放送局からの仕事が入るようになりました。放送局の放送用コンテンツではなく放送局のネット配信コンテンツなんです。例えば県立の高校入試の速報番組で試験終了後にその試験の問題を全部資料に取り込み、その資料から番組を配信しました。

映像作りでは空撮のマルチコプターを早めに入れてきたので荒俣宏さんとか筧利夫さんとかが出る番組の空撮を担当したこともあります。よく地方でUstreamをやっているとUstream配信している個人同士が視聴者の競いあいみたいな感じで誤解されるんですけど、僕らのテーマはテレビ局が作っているプラットフォームみたいなものにどうやってUstreamを取り入れるか?なんです。

kawai10_07.jpg 導入したクアッドコプターでの空撮の様子

――ライブ配信だけではなくアーカイブ動画もUstreamを中心に進めている理由はなんですか?

中野氏:YouTubeでもいいのではないか?という意見もありますが、Ustreamはチャンネルを複数持てるというところに一番魅力を感じています。YouTubeでいくらライブを行ってもアーカイブのカテゴリー分類が煩雑なんです。僕らが作っているコンテンツはひとつのチャンネルで流すのではなく、チャンネルをいろいろ分けて配信しています。「まちテレ」というアカウントの中にいろんなジャンルのコンテンツをチャンネル別で配信していますが、それがちゃんとカテゴリーに分かれているので見やすいポータルになっています。

例えば音楽のUstream番組を視聴した人が、農村歌舞伎を視聴することもあります。それはGoogleアナリティクスで見ていると番組を見た人がどの番組に寄り道してくれているか全部わかるんです。高松市の広報で流したい番組なんかも横展開で視聴されるのは、意味があるかなと思っています。

もともとこの事業をはじめようと思ったきっかけは、香川県とか高松市とかいろんな放送局がバラバラに情報発信しても探せないし見られる事はないと思っていたからなんです。

放送局がこれからネット配信をはじめていく中で自分たちのチャンネルの中で市や県の動画を配信しはじめるとそこに権利が生まれてきます。先に競合するものを広域的な一般社団法人を持って市と共有しましょうと。だからその一般社団法人には市や大学に入ってもらったんです。「まちテレ」というインターネット放送局の制作会社というカタチで自分個人の電マークという会社でいろいろ制作をやっています。これまで放送局の下請けはなかなか入りづらかったのですけど、自分たちで放送局を立ち上げてその放送局のいち制作会社になることで、空撮を入れたりとかCGを入れたりとこの実績が、他の放送局でも同じような仕事をさせてもらえるようになってきたんです。

kawai10_01.jpg ホールでの記念式典のネット配信番組を制作する様子

ライブ配信に欠かせない使用機材とは?

――ライブ配信の機材はどのようなものを使っているんですか?現場での基本的なスタッフ構成も含めて教えて下さい。

中野氏:機材構成ですがローランドのVR-50HDは屋外中継には適任ですね。コンパクトで機動性があります。イベント時にVR-50HDとカメラ3台とMac1台を持っていけば、車もスタッフ数人乗れますし機動力が高いですね。カメラはキヤノンXA25です。HD-SDI端子がありますからVR-50HDとHD-SDI直結で非常に便利です。VR-50HDは音のミキサーとビデオスイッチャーやモニターがオールインワンで操作がスムーズですね。

ライブ配信は1チーム5人ぐらいでやっています。いちばん大変な仕事は、事前準備や市役所との打合せをやってくれる調整役、コーディネーターですね。当日の役割としてはディレクター役が文字のテロップをMacで入れたりUstreamにリコメンドの申請を行い、当日はカメラのアングルを見てもらったあとにスイッチャーの横で全体指示を行います。カメラは順番に交代して回しています。あとスイッチャーにひとりついて、音はPAさんからもらいます。あとはMacの方に映像を入れて配信の管理をするという感じでの役割分担です。カメラはこれからパナソニックのGH4を追加しようと思っています。

kawai10_04.jpg 寒さに耐えながらの屋外でのライブ配信。ローランドVR-50HDを中心としたライブ配信セッティング

――地方で地域コンテンツの配信をしていく場合どんな人が向いていると思いますか?

中野氏:地域の情報を外に出したい!と思っている人がどんな場面でもいろいろ気が利くと思います。やはり地域のことに関心がないとダメです。技術的なところで言うとなんでも器用にこなせないといけない。覚えていかなければいけないことも多いので、カメラや機材好きだというのはある程度の条件になるでしょうね。カメラは実際にやりはじめたら好きになって一生懸命になるというところもあります。

――これまでで大変だったこと、やっていて楽しかったこと、またこれからやっていきたいことを教えて下さい。

中野氏:いちばん大変だったのはとくにかく家に帰れないということ。夏は合宿みたいに事務所に泊まっていました。だから結構体力ないと続かないです。楽しかったのはやっぱり人が育っているところですね。あと技術の進歩を体感しやすいことです。

4Kが出てきたら4Kというのがすごく近くに感じられるとか、いろんな新しい通信関係の技術が出てきた時に、マルチコプターなんかもそうですけども、今流行っているものを使いこなしていく感じとか楽しいです。

僕らが次に目指しているのはメディアアートです。今度チームラボが高松で大きなイベントを開催します。高松でサンポートの先にウォータースクリーンというプロジェクトがあるんです。大きな噴水に映像を投映して観光客が1日6万人とか7万人見るみたいなことを目指しているんですけど、その水で作ったスクリーンにチームラボの作品を映し出します。

高松の美術館やe-とぴあ・かがわなどでチームラボの大型の映像作品を展示したりするんですが、今はコーディネート役をやらせていただいています。僕らも次はプロジェクションマッピングとかそういったものを自分たちでどんどん作れるようになっていかないといけないと思っています。ライブ配信から撮影、CG、eラーニング、空撮と入っていって次はメディアアートという感じです。

kawai10_09_2.jpg いくつもの修羅場をくぐったスタッフと共に

――最後に地域コンテンツに関わっている人に向けて一言エールをお願いします。

中野氏:僕がやっていることは東京では絶対出来なかったですね。高松市は人口42万人という都市なのでほどよく行政との連携が容易だった。ある程度の規模があり四国の中心都市でがんばっているという立場だけに予算がある程度ついて動きやすかったんです。これの規模がもっと小さい市町村だと予算もつかないからライブ配信もやりにくいかもしれません。

でもチャンスはあると思います。行政がやりたいんだけどやれないところをいかにサポート出来るか?僕らは行政に対して文句は言いません。一緒にやっていって協力しましょう!っというところに力を置いてここまで来ました。

今なにか地方でやりたいなと思っている人はとにかく自治体とか市町村がやりたいことのお手伝いをするところからスタートするのが良いと思います。批判してもしょうがないんですよね。こんな方法があるんでお手伝いしますとか、僕らも市から業務をもらうまではいろんなところに行ってイベントを手伝ってライブ配信をボランティアでやっていました。それを市がよく見ててくれたので、市の政策の中に動画配信とかを入れてくれたんですね。

政治的に進む市町村と進まない市町村とあると思うんですけども、高松市は特に市長が総務省の出身で関西の震災の時も関わったり地域コミュニティを大事にされている方で、今「創造都市」というのを掲げているんです。こうしたバックグランドを考えた時に金沢市とか札幌市なんかは動きやすいのかな?と個人的には思います。

総括

このインタビューを通じて感じたのは、通信という自分たちの得意な分野で市町村のイベントをライブ配信する中で技術的なスキルを上げ地方自治体との関係を作り、業務委託を受注するに至るというプロセスでした。そこで満足せずライブ配信番組のオープニング映像を作るためにCGのスタッフを入れたり、クアッドコプターによる空撮を取り入れたり、映像技術のスキルアップをはかり放送局からの映像制作を請け負うまでになったという道のり。地域貢献をベースにしたライブ配信と映像制作の成功例としてヒントがたくさんあったように思います。また5月31日、6月1日の2日間「第5回ライブメディアコーディネータ養成講座」が開催されるそうです。


WRITER PROFILE

ヒマナイヌ 頓知を駆使した創造企業


[ Writer : ヒマナイヌ ]
[ DATE : 2014-05-09 ]
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