[What's UP HD!]Vol.02 非圧縮時代の君とボク ~DTV遍歴 後半編~
2009-09-01 掲載
前回に引き続き、DTVの遍歴から始めます。この過酷な時代を生きたからこそ、最新技術の利点を素早く見抜き、現場にあったモノを投入する自負はあります。技術の進歩が早すぎるのもうれしい反面、情報をキャッチアップするだけでも一苦労という側面はあります。DV+Final Cut Pro(以下FCP)がノンリニア編集(以下NLE)の普及に繋がり、P2カメラによりDTVがHDサイズを手に入れました。2002年から06年の出来事です。自分にとってはDTV修行の時期でもありました。さてここから始めましょう。
DTVのもう一つの流れ非圧縮リアルタイム編集
DV編集がNLEをスタンダードにしたのは言うまでもありません。DTVの歴史にはもう一つ大事な流れがあります。それは非圧縮リアルタイム編集です。非圧縮のMacシステムで仕事を始めたのが、2002年頃です。初期の頃は、SD-SDI出力端子が付いたSDカメラを使用して、CineWaveという非圧縮キャプチャーシステムを使用していました。カメラはもちろんプログレシッブで撮影可能なカメラを使用し、主に合成時にこのシステムを使用していました。HDもRAIDシステムが必要で、当時はかなり高額なシステムでした。
2003年アップルからXserve RAIDが発表されました。当時は驚愕の容量2TB、RAID5で構築されているので、より安全で、高い信頼性を誇っていました。これを機に非圧縮環境が格段に整い、FCPのバージョンアップと共にCineWaveも進化し、DTV上でHD非圧縮リアルタイム編集が可能になりました。
遂にFCPシステム上で、HD-SDIからの入力が可能になり、ハイエンドなHDカメラ、VaricamやCineAltaで撮影したものを非圧縮取り込みして編集・加工が可能となった訳です。とはいえ、当時はまだまだSD時代、HDサイズを利用してSDの中でトリミングしたり、AfterEffectsでズームや移動のアニメーションを付けたりと、クリエイティブの幅も広げることが出来ました。
HD環境がやってきた!
Mac用キャプチャーボードであるDecklinkシリーズやKONAシリーズが小さなプロダクションや個人で購入できる価格になり、DTVでの非圧縮編集環境が整いました。編集ハードウェア側の進化と同時に、アップルの戦略は続きます。Final Cut Pro HDという名前に変更して注目を集め、さらにmotion、DVD Studio Proなどのツールをまとめ、Final Cut Studioを発表しました。コンポジットアプリケーションShakeの価格を大幅にさげ、FCPとの連携を強化しました。そういった背景があり、アップルはMac上で「何でも出来る」というブランディングに成功したのだと思います。
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| HD-SDI出力端子実装がキーポイントのXL H1 |
一方カメラ機材では、CanonがHD-SDI出力端子を搭載したXL H1を2005年に発表しました。 このカメラの面白さは、基本的には内蔵でHDV記録するタイプですが、この価格帯で同時に映像を出力するHD-SDI出力端子を搭載した事でした。
この時期の僕は、XL H1のHD-SDI信号をMacで直接取り込むといった事をしていました。その理由は、VTRを通さないので、全く劣化していない非圧縮データを手に入れることができたのです。合成のクオリティーは、感動そのものです。この頃の僕ははっきりいって、非圧縮オタクでした。
NAB2007が分岐点!本格的なHD時代へ
DTVを取り巻くハードウェア、ソフトウェアの進化と様々なカメラを組み合わせて、制作してきた僕が気付いた事は、テクノロジーの進化はクリエイティブに新しい風を吹き込むという事でした。では「最新の映像テクノロジーってどないなん?」という好奇心から初のNABを覗いてみることにしました。NAB2007は、会場の規模の大きさにビックリしている暇もなく、いきなりアップルが会場の外のデッカイ壁に広告を貼り、Final Cut Studio 2(以下FCS2)を大々的に発表しました。
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| Appleの発表会でサプライズ発表され会場は騒然! |
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| 突然現れたRED。一目見るのに2時間待ち! |
DTVでHD作業する身としては、新コーデックProRes422には驚かされました。非圧縮のクオリティーを保ったまま容量を約1/5にする事ができるというのです。SDにもHDにも、どんなサイズにも、どんなフレームレートにも対応し、ProRes422コーデックのシーケンスを使えば、オープンフォーマットタイムラインになりHDV、DVCPRO HD、XDCAM EX が同時に編集可能になるというのです。アップルとしては、HDコーデックが乱立する中、これに統一しましょうという一つの答えを提案してきたわけです。本当にアップルは映像制作について考えていると感心しました。
当時HD非圧縮で作業していた僕は、納品がSDなので何とかDTVで凌いでいました。これから先、HDD容量の問題やHD納品になった場合に非圧縮データでやっていけるのか心配していた矢先のProRes422の発表は、多くの映像製作者に安堵をもたらしました。なんてったって軽いんだから...。
次にFCS2から新たに仲間入りしたcolorも驚きでした。これはカラーグレーディングに特化したアプリケーションで、「FCPのカラコレは、あんまりだからAfter Effectsでやってます」と言うほとんどのユーザーを振り向かすことになったアプリでもあります。
ハードウェアで注目を集めたのが、AJA Io HDでした。FCS2から採用されたProRes422をMacに取り込むハードウェアとして登場してきたのです。SD/HD-SDI/HDMI入力が可能で、FCS2とのセットで新たなワークフローを予感させました。NAB2009で発表されたAJA KiProの元となるものです。
現在も話題をさらうRED ONE CAMERA (以下RED)が登場したのもこの年でした。「4K?で、HDも撮れて、テープレスで?ハイスピード撮影可能?RAW現像してカラコレ?」「そんで編集はFCPで?」「さらに価格が安い!」様々な言葉が飛び交いました。ここでもアップルとREDはうまくアライアンスを組んでいます。デジタルシネマカメラだから日本では台数は入ってこないかも?と思っていたら2009年現在、REDは、凄い数が日本に入って来ているという噂です。東京以外の地域に売れているらしく、これもDTV進化の影響があると考えられます。
昨日があるから未来がある。果てしなく続くワークフローの旅へ
NAB2008以降アップルは、NABに参加していません。NAB2007でアップルは、良い意味で映像業界を掌握できたと思ったのでしょう。実際にFCPのユーザー数は、増え続け、アップルブースがない、NABでも各ブースでFCPは使用されているのが何よりの証拠です。前回に引き続き、DTV歴史を紹介となってしまいましたが、新しい技術は、過去のフィードバックを元に進化を遂げているからです。過去を知ると現在の話がしやすくなると思ったからです。現在はSDからHDへの移行期でもあり、映像のデジタル化、さらにテープレス化など様々な要素が絡み合って複雑になっています。現状はクリエイティブが放置されたままでテクノロジーに翻弄されています。テクノロジーとクリエイティブは仲良しだったはずなのに。次回からは僕が経験した中から色々なワークフローを紹介、提案していきたいと思っています。
[ Writer : 高野光太郎 ]
[ DATE : 2009-09-01 ]
[ TAG : Apple RED DIGITAL CINEMA What's UP HD! ]
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WRITER PROFILE
高野光太郎
(たかのこうたろう)
映像クリエイター。フリーランスにてミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。
著書に「After Effects+HDの基礎」がある。
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稲田出(27) 映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。 |
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