[東京Petit-Cine協会]Vol.01 さあ、映像制作の冒険に出かけよう!
2009-06-16 掲載
もっと映像作品を作り上げる為には?
「見方を変えてみよう。そうする事で映像制作者はもっともっと自由になれるはずだ」
それがこの連載のテーマだ。ここ10年のパソコン+ノンリニア環境の進化、ここ数年のHDに関わる映像機器の進化、そして低価格化。それらが恩恵を与えてくれるのは、ハリウッドに追い付け追い越せの大規模な映画製作システムや旧態然としたテレビ局周りのシステムだけではないはずだ。新しいテクノロジーを今あるシステムのどこかにあてはめるのではなく、そのテクノロジーをフルに利用して新しい映像製作システムを創造するべきなのだ。
もちろんそれは冒険に違いない。ただその冒険を冒してでもなんとかしなければならないのは、日本の映像文化の根っこにあたるインディーズやVシネマの世界だと私は切実に考えている。
はっきり言う。今の映像作家や他のクリエーター達はもっと直感的にもっと多くの、そして高品位な映像作品を作り出せる時代が来ている。それをやらずして日本の映像文化の将来はない。地デジやインターネット等のインフラばかりが充実したところでコンテンツメーカーが育たなければどうしようもないということだ。
専門学校や芸術大学へ行って大きな映像製作会社で高級な機材に囲まれる事を夢見るのも結構だが、その前にまず作れ!それを可能にするヒントはこれからここで示していく。一緒に冒険に出かけようではないか!
「Petit-Cine(プチ・シネ)」宣言!
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| 現在放映中のインターネット連続ドラマ「下北ダブル生シュー」はとてもプチな作品。出演者を除けばスタッフはいつも5人以下。シーンによっては二人でやる事もある。そして編集、テーマ曲、グラフィック、MA等全てを僕のスタジオで完成させている。残念ながらまだ収益には繋がっていないが、インターネットコンテンツの一つのモデルケースの完全自主制作作品。 |
冒険とは言っても、実はハッキリとした前例がある。30年ほど前に音楽業界で起こったDTM(デスクトップミュージック)という革命がそれだ。マルチトラックのテープレコーダーやコンピューターがミュージシャンの部屋に置かれ、レコード会社に認められて大きなスタジオに招待されなくても自分達で音楽作品を作り上げる事が出来るようになった。結果ドラムやベースのいないバンド(ユニットという言葉が使われだしたのはこの頃)が現れ、揚句の果てに楽器の弾けないミュージシャンまで現れ、その後そこから多くの名作やスターが生まれ、業界の常識や構造までも変えてしまったのは紛れも無い事実だ。
今の映像の世界はその頃の音楽の世界と同じだ。単純に音楽よりも格段に多いデータ処理が必要な分、技術進歩の時を待たなければならなかったのだろう。今の映像機器をうまく使えばプロジェクト、チーム、そしてコストを大幅にダウンサイジングできる。DVDやインターネットストリーミング程度の映像を作るのに今までと変わらない大げさなシステムでやろうとする方が馬鹿げている。もっと自由に直感的に、デスクトップとユニットで映像作品を発信していくべきだ。
そこで「Petit-Cine(プチ・シネ)」宣言だ。映像制作においてショートムービーという呼び方は好きになれない。今、5分前後のポップスをショートシンフォニーとか呼ぶ人がいないように、短い作品は短いなりに確固とした存在感を持つべきだと思うし、そもそも時間の問題ではないのだ。映像製作環境が劇的に身近になった現在、もっと直感的に映像作品は発信されるべき物だと思う。プチな予算、プチなチームによるプチな映像プロジェクトを時間に関係なく、筆者は「プチ・シネ」と名付けた。
冒険の前に...
DTM創成期にはその新しい音楽を否定する人達がいた。そしてまた新しい機材に弄ばれた形のゴミのような音楽作品も世に溢れた。手軽に出来る分「これでいいや。」と手を抜いた作品が次々と生まれ、否定派の恰好の餌食となる。『温故知新』という言葉が完全に忘れ去られた時代だった。
今の映像の世界もこれに似ている。例えば今のビデオカメラは同時に高性能な録音機でもある。だがマイクの特性や音声の捉え方を知らなければ宝の持ち腐れとなる。ダウンサイジングするという事はその分学ばなくてはいけないという事だ。現に仮編集もできないディレクターはどんどん仕事を失っている。職人レベルというのは無理だが最低限の知識や技術は身につけなきゃいけない。逆に最低限の事が出来れば何も高いプロ用機材でなくても「これで充分なんじゃない?」的な機材をホームセンターで調達できたりする。
誤解しないで欲しいのだが、このコラムは決して若者やアマチュアだけの為ではなく、例えばプロのカメラマンが編集や音声の事も理解して小さなチームで映像作品を作り上げる。そういう為にも役立てて欲しい。
初回は理屈っぽくなってしまったが、次回からそういった基礎知識と現実的な品質向上方法も紹介していくつもりなので楽しみにしていてほしい。
さて最後にプチシネ精神で作り上げた私のスタジオを紹介しよう。
一般的なパソコンベースながらHDネイティブ編集、アフレコ、ナレーション録り、音源制作、MA、DVDオーサリング。つまり最初から最後までここ一カ所で完結する。重要な部分は業務用器材を使っているが、民生用や自作の機材がローコスト化に貢献している。とは言え、ここで番組、VP、CM等の業務用作品を完成させ、空いた時間で自主制作映画を生み出している。一カ所でじっくり時間をかけて丁寧に仕上げる作業が好評で、クオリティが問題になった事は一度もない。詳しくは追々解説していくので皆さんのホームスタジオ構築の参考になれば幸いだ。
[ Writer : ふるいちやすし ]
[ DATE : 2009-06-16 ]
[ TAG : 東京Petit-Cine協会 ]
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WRITER PROFILE
ふるいちやすし
映像作家・音楽家・作曲家として数々のサウンドトラックやアーティストへの楽曲提供等も行い、自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。企業VPやCM等の制作と平行して、年に何本もの自主制作作品を制作している。
Studio :Loo-Ral Art
Mail : fuluichi-yas@loo-ral.com
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稲田出(27) 映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチールカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。 |
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