[Vegasで始める次世代音楽映像のイロハ]Vol.01 新しい音楽映像制作をはじめよう!
2010-08-31 掲載
進む低音質化?
「音楽家と音楽業界はなんでCDにこだわるのか?意味が分からない。」そんな事を言うと「もうとっくにネット配信に移行してるよ」と突っ込まれそうだが、手軽に音楽を楽しむ"そちら"の流れはそれでいいし逆らうつもりもない。私が言いたいのはその逆、高音質の方だ。音楽家が残す作品というのはその時代時代での最良の音質であるべきだし、少なくとも許されたコストの範囲内ではそれを目指すべきだと単純に思う。CDの44.1kHzというサンプリング周波数、ネット配信用にさらに圧縮をかけるという低音質化が進む中、音楽の製作現場のモチベーションは確実に低下している。今ではメジャーなアーティストやレコード会社の作品ですら耳を疑うような低音質で発売されている物も多々ある。まぁネット配信と携帯端末での利用が主流となった今では「それでいい」と言われても仕方ないんだが、本当にそれでいいんだろうか?少なくとも最近立て続けに店じまいする超高音質の録音スタジオが意味を持たなくなった事だけは現実だ。
音楽業界もオーディオ業界も何もして来なかった訳ではない。DATという48KHzのテープメディア、スーパーCDという96KHzの高音質CD等があったが一般に普及するまでには至らなかった。理由は簡単。その為に専用プレーヤーを買う必要があったからだ。そのあたりで高音質化を諦めたのか、それ以上に音質よりも手軽さを重視する消費者指向が勝ったのかは知らないが、音楽作品の音質はCDの44.1KHzでストップしてしまったままだ。その後、現在に至るまでテクノロジーもユーザーの環境も良くも悪くも劇的に変化しているのだが、音楽業界はまったくついていけていない。そしてついにCDすら売れなくなってしまった。(哀悼、渋谷HMV。)当たり前だ!でも本当にそれでいいのか?ミュージシャン達よ!
今一度徹底的なマーケティングを!
昨年、某大手レコード会社の音楽制作事業からの撤退という噂が流れた。後にこの噂は消えたがその時に出たその理由というのが非常に現実的な物で、現実になってもまったくおかしくない物だった。それは元々その会社が音楽制作を始めたきっかけが主力であるオーディオ機器を普及させる為であって、そのオーディオ機器が売れなくなった今、音楽制作事業を続ける意義がなくなったという物だ。これは例えば来年、または他社が言い出してもおかしくない正当な理由だ。
ここでユーザーの環境を冷静に見てみよう。よっぽどのマニアの家かお父さんが捨てられないなんて理由でもない限りコンポーネントステレオが場所を占めている家はなくなっている。若い読者にとっては当たり前の事だろうが、例えば一人暮らしを始める若者や新婚さんの買いそろえるリストの中にはミニコンポやCDラジカセすらない。(おじさん達の時代には必須アイテムだったんだよ。)音楽はすでにいいスピーカーで空気を震わせて身体全体で浴びるように聴く物ではなくなったのだ。
何も音楽を愛する気持ちがなくなったという訳ではない。中には今でもCDを買い、iPodへ高音質で取り込み、ヘッドフォンを良いものに買い替えて音質向上を図る強者もいるが、反面、携帯電話にヘッドフォンも付けずに聴いて楽しんでる人が主流になりつつある。以前知り合いの若者がステレオスピーカー付きの高音質携帯電話なるもので自慢げに音楽を聴かせてくれたが...愕然とした。スタイルはもうどうしようもなく変わってしまったのだ。それが当然の時代の流れなのか、iPodの大流行のせいなのか、またはその両方なのかはさておき、音楽業界が自宅の部屋の空気に上質の音楽を流す楽しさと、それに見合う音楽作品の提供を怠ってきた事は事実だと思う。悔やまれてならない。
次世代音楽作品が生まれるチャンス到来!
しかし悪い事ばかりではない。ここへ来てもう一度家庭内に上質の音楽を流すチャンスが訪れている。このチャンスを音楽業界やオーディオ機器メーカーには絶対見逃してほしくない。それはテレビとパソコン周りの環境の変化だ。DVDプレーヤー、あるいはDVD対応のパソコンの普及はすでにかなりの数字になってきている筈だ。そして来年7月までにはほとんど家庭で上質なテレビが用意され、ついでにBlu-Rayプレーヤーを買う人も多いだろう。そしてこれらが再生できる音楽のクオリティはDVDで上限96KHz、Blu-Rayに至っては192KHzだ。このクオリティを音楽作品の為に使わないでどうする!しかもプレーヤーはいい音のするテレビと共に各家庭に配備済みだ。
ちなみに我が家の地デジ化はプラズマテレビとPlay Station3で完成。だがそこからONKYOのオーディオアンプ、そして家宝とも言うべき英国セレッション社のDITTON25という1970年代のスピーカーへ繋がる。この落ち着いた音は、スタジオでエッジの効いた音ばかり聴いている耳をとことん癒してくれる。
考えてみればおかしな話だ。音楽作品として44.1KHzのCDを発売し、それを売る為のプロモーションビデオは48KHzのクオリティで垂れ流してきた。もうCDはやめよう。ミュージシャンはメインの音楽作品として真剣にDVD、Blu-Rayを作ろう。そしてそれをテレビで楽しんでもらおう。
その為には今までのように音楽だけが入っている作品や今まで無料で提供していたPVがオマケで入ってるだけの物ではだめだ。なにか新しい作品形態を産み出さなければいけない。そしてもしそれが音楽作品として受け入れられれば、きっとテレビの脇に置かれる為のスピーカーやBlu-Rayプレーヤーのデジタルアウトから繋げる上質なDAコンバーター搭載のオーディオアンプが発売されるだろう。そう願っている。そんな思いを込めて、これから年末までの数回にわたって、お馴染みのVegasProを使用して、次世代音楽作品としてのDVD、Blu-Rayを制作しながら模索してみたい。『テレビで楽しむ音楽作品』というテーマで皆さんからのご意見もお寄せいただきたい。recieve@loo-ral.com
[ Writer : ふるいちやすし ]
[ DATE : 2010-08-31 ]
[ TAG : Vegas Pro Vegasで始める次世代音楽映像のイロハ ]
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WRITER PROFILE
ふるいちやすし
映像作家・音楽家・作曲家として数々のサウンドトラックやアーティストへの楽曲提供等も行い、自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。企業VPやCM等の制作と平行して、年に何本もの自主制作作品を制作している。
Studio :Loo-Ral Art
Mail : fuluichi-yas@loo-ral.com
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