PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > コラム > 江夏由洋 > [DSLR Maestro]Shoot.03 EOS 5D MarkIIでの合成撮影。グリーンバックで行こう!

News

[DSLR Maestro]Shoot.03 EOS 5D MarkIIでの合成撮影。グリーンバックで行こう!

2010-10-19 掲載

グリーンバック合成の撮影で実力を発揮

enatsu0301.jpg

Canon EOS 5D Mark IIが現場で多く使われる様になり、多くの人がその実力を認めるようになってきた。このコラムでもいろいろと述べてきたが、EOS 5D MarkⅡが捉えるフィルムライクな映像は今までなかなか手に入れることのできなかった実に質感が豊かなものである。コンパクトなボディに収録される映像はとても力強く、ビデオカメラとはまったく異質なものだ。

私はこのカメラを通常の動画カメラとして使用するだけではなく、グリーンバック撮影でよく使用する。グリーンバック撮影はあまり「お手軽」にはできないという印象をお持ちの方もおられるかとは思うが、EOS 5D MarkⅡが捉える映像の素晴らしさを活かした合成撮影のクオリティは、相当なレベルであると感じている。もともとデジタル一眼レフカメラというスチルカメラから生まれた動画機能は、プログレッシブで撮影できると言う点だけでなく、同価格帯のどのビデオカメラと比較しても群を抜いてグリーンバック撮影で実力を発揮するのだ。

EOS 5D MarkⅡを選ぶ理由

HDVやAVCHDなどでグリーンバック撮影に比べEOS 5D MarkⅡのコーデックであるAVC形式のEOSムービーは数段も合成に向いている。その理由は主に3つ挙げられる。まずはビットレートそのものが高いと言う点だ。HDVやAVCHDといった汎用コーデックは25Mbps付近を最大としているのに対してEOSムービーは40Mbpsという非常に高い情報量を画像に含んでいる。情報量が多ければ多いほど合成の精度は上がるため、単純にビットレートが高いほうが「より綺麗に」背景を抜くことができるのは明解だ。

2つ目の理由は、感度が非常に高いため通常のビデオカメラで使用する照明量よりも少ない明かりで最低照度を設定できることである。背景のグリーンに均一でムラなく明かりを当てるだけでなく、被写体そのものにも十分な明かりを当てる必要のある合成撮影において「照明」は非常に大切なファクターだ。バストショットの撮影で通常であれば背景に2500W相当の明かりと、被写体にも2500W相当の明かりが必要だったのに対して、EOS 5D MarkⅡを使って撮影するときは、全ての照明を合わせても3000W相当の明かりがあれば十分に背景を抜くことが可能だ。これは絞りやシャッタースピード、そしてISOを上手にコントロールすれば、影像の明るさを最大限に引き出すことができるからで、デジタル一眼レフカメラの恩恵が伺える。ちなみにISOは800までであればノイズは問題にならないが、それ以上数値を上げるのはやめておいたほうがよいだろう。 そして最後の理由が、影像のコントラストが高いという点だ。背景と被写体の境界線がより際立って描写されるため、合成ソフトウエアにとって抜きが簡単になる。これもデジタル一眼レフ特有の特徴と言えるだろう。ビデオカメラで撮影した際にも、より合成の精度を上げるために一旦素材のコントラストをノンリニア上で上げてからキーイングを行うこともあるが、影像のディテールを崩すことなく合成作業に入れるEOS 5D MarkⅡの素材はキーイングに最適だ。

全身でも6000W相当の照明でOK

enatsu0302.jpg照明は必須。背景のグリーンに当てるのと、被写体に当てる方法で明るさをキープ。LEDを使うと効率的

それではここで具体的な作業を記しておく。まず使用するグリーンだが、若草色の単一色背景を用意した。今回はビニール生地の物を使用したが、光を反射しないマット感のある素材であれば問題はない。極力シワを作らないようにするのが大切だ。被写体は女性のモデルで、足元からの全身を合成するための収録となった。使った照明だが、背景に左右から均一にムラのないように1600W相当の明かりをそれぞれ当てて、被写体のモデルには左右から1000Wずつと正面から500W相当の明かりを当てた。使った照明はLEDがメインを構成し全部で6000W弱相当ぐらいの明るさを作り、撮影はきわめて問題なく進んだと言える。

縦撮りで解像度を稼ごう

enatsu0303.jpg
カメラを縦にして撮影すると解像度が稼げるのもTipsのひとつ

人間の全身を撮影する際は、スチル用の三脚を使用して「縦撮り」することをお勧めする。16:9のフレームで人間の全身を撮るとなると、カメラを90度回転させて縦の位置で撮影をすれば解像度を大きく稼ぐことができる。どの道合成してしまうため、なるべく大きく撮影しておくことに越したことはない。その際にビデオ用の三脚だと雲台を90度横に傾けることができないため、スチル用の三脚を使用しなければならない。EOS 5D MarkⅡは小型で当然スチル用の三脚にフィットするため、縦撮りの際の使い勝手は非常によい。ビューファインダーが背面にあるのも非常に便利だ。撮影するときの設定として、シャッタースピードはよほどのことがない限り1/30にしておき、ISOは800未満、絞りの値もなるべく10付近を狙えれば後が楽になる。あまりにも被写界深度が浅いと、背景との境界線がボケはじめるので要注意だ。

ジブは最強の特機

enatsu0305.jpg
ジブなどがあると、さらに「面白い」構図に挑戦できる

また撮影の際はジブに載せて撮影を行った。やはり目高で合成をするとつまらない構図になりがちだ。あおりや俯瞰などの位置で撮影するには、こういった特機があると非常に便利だ。折角の合成素材を撮影するのだから、グリーンの生地を思い切って足元を覆うようにして敷き詰めて色々な角度で被写体を捉えたいものだ。またジブにはレールを引くこともできたのでトラックインやジブ特有の浮遊感溢れる素材を収録することもできた。カメラを動かす際には、背景のグリーンバックにトラッキングポイントを作っておけば、後々の作業が楽になる。After Effectsには優秀なトラッカーが搭載されているので、3~5個程度のトラッキングポイントが役立つことになる。

ROBUSKEYで一発合成

enatsu0307.png
日本製のキーヤー、ROBUSKEY。とにかく簡単に背景を抜くことができるスグレもの

今回使用したキーイングソフトは、システム計画研究所の「ROBUSKEY for After Effects」を使用した。After Effectsで使用できるキーイングプラグインは幾つかあるが、直感的、かつ簡単で再現性のあるこのプラグインはとても優秀だ。基本的にはグリーンの背景で一番明るいところにスポイトツールで選ぶと、一気に背景が抜ける。あとはブロックノイズ低減、エッジ収縮、エッジぼかしで調整をすればほぼ作業は終了である。これほどグリーンバックの撮影が簡単に行えて、満足な合成結果を得られるとはいい意味で予想を裏切られた。境界線のエッジ部分をUPして表示しても分かるように、抜けは全く問題ない。またこのROBUSKEYは9月にCUDAに対応し、レンダリング時間を急激に短縮することを実現している。

enatsu0308.PNG
9月にCUDA版が登場し、圧倒的なレンダリングスピードを実現。通常版との比較で、そのスピードは倍以上に!(レンダーキュー2番がCUDA版)

もちろんバジェットのある際は、REDやAVC-Intra100Mbpsなどのカメラを使って合成撮影をするのがベストだ。しかしEOS 5D MarkⅡを使っても必要かつ十分な合成結果を得ることができるだろうし、我々も最近は「5Dで合成」ということに何の懸念も感じてはいない。もしEOS 5D MarkⅡをお持ちで、まだグリーンバック撮影をしたことがない人がいれば、是非とも挑戦して欲しい。今ではボディだけであれば20万円を切る勢いで手に入れられるEOS 5D MarkⅡは、恐ろしいほどコストパフォーマンスの高い1台であることが分かっていただけただろう。


WRITER PROFILE

江夏由洋 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。


[ Writer : 江夏由洋 ]
[ DATE : 2010-10-19 ]
[ TAG : ]

関連のコラム一覧

[DigitalGang!]Shoot.01 GoPro HD HERO2に思いを馳せる!

本連載もあしかけ一年。DSLR Maestroをお届けしてきましたが、デジタル一眼レフカメラでの動画制作も一般化してきた様に思います。ここで取り上げる話題を広げるべく、タイトルも新... 続きを読む

[DSLR Maestro]Shoot.10 遂に登場-EOS 5D MarkIIの後継機

映像制作の常識を覆したEOS 5D MarkII EOS 5D MarkIIが発売になって、遂に3年が経った。これほど愛され続けるカメラは今までにあっただろうか?映像制作の現場に衝... 続きを読む

[DSLR Maestro]Shoot.09 動画撮影における可変式NDフィルターの検証

デジタル一眼レフの動画撮影の大きなメリットの一つが「コンパクトなサイズ」だろう。両手に収まる筐体でシネマライクな映像を捉えることのできる魅力は現場でも評価が高いところだ。私はEOS... 続きを読む

[DSLR Maestro]Shoot.08 Canon EF Lレンズの実力を検証してみた

確実に被写体を捉えるLレンズ スチルレンズとして多くのプロフェッショナルに支持されているCanonの「赤レンズ」ことEFレンズのLシリーズ。レンズの周りに赤い線があることからそう呼... 続きを読む

[DSLR Maestro]Shoot.07 CineStyleを使ったカラコレ~EOS 5D MarkⅡを攻めて使おう

LOGがもたらす新しいチョイス 前回のコラムでは「救世主」ともいわれるEOSのピクチャースタイル、TechnicolorのCineStyleを紹介した。カメラセンサーがとらえるダイ... 続きを読む

WRITER PROFILE

江夏由洋 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。


Writer

編集部
PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。
石川幸宏
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
小寺信良
業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポート。
raitank
アートディレクター。あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。国内と海外の情報流通の温度差にモーレツな疑問を感じ、最新の情報を自ら日本語で発信するblogを運営中。
ふるいちやすし
自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。
岡英史
バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン
江夏由洋
兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。
手塚一佳
CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。
山本久之
映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。
鍋潤太郎
ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。
江口靖二
江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。
安藤幸央
無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。
高野光太郎
Cosaelu株式会社 代表取締役 / 映像ディレクター ミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。
ヒマナイヌ
頓知を駆使した創造企業
オースミ ユーカ
映像ディレクター。企画、脚本から演出までジャンルを問わず活動。
林和哉
映像プロデューサー/ディレクター。入口から出口まで全てのポジションを守備範囲にしている。最新技術が好物で、各種セミナー活動も豊富。
土持幸三
1970年生。鹿児島県出身。俳優を経て渡米。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。
茂出木謙太朗
株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員
ヒラタモトヨシ
ファッションとテクノロジーを繋ぎイノヴェーションを生み出す事をライフワークとし、WEB/ライブメディア/高精細映像表現を追求。
猿田守一
企業用ビデオ、CM、ブライダル、各種ステージ記録など撮影から編集まで地域に根ざした映像制作活動やCATV局などへの技術協力なども行っている。
黒田伴比古
報道・ドキュメンタリーエディターでありながら、放送機器に造詣が深く、放送局のシステム構築などにも携わるマルチプレーヤー。
須藤高宏
東京・国分寺市に於いて録音スタジオ「マイクロサウンド」を運営し各種録音編集に携わる傍ら最近では各種イベント配信音声を担当。
猪蔵
いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。
ベン マツナガ
未来シネマ/ディレクター。ハリウッドでの大型映像制作、映画「血族」のプロデュースを経て、現在は、映像を通じて人と人をつなげるドキュメンタリー作りに没頭している
金田浩樹
映画・テレビの映像制作を中心に、USTやニコ生等、ライブメディア各分野を横断して活動中。ジャンルや固定概念にとらわれない構成力と発想に定評あり。
ViewingLab
未来の映像体験を考える有志の研究会。映画配給会社、映像作家、TV局員と会員は多岐に渡る
稲田出
映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。
山下香欧
米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。
萩原正喜
米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。
坪井昭久
映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。
林永子
2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」
岡田智博
クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。
しらいあきひこ
カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。
秋山謙一
映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。
今間俊博
アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。
伊藤裕美
オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。
UserReport
業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。
System5 Labs
SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。

トップ > コラム > 江夏由洋 > [DSLR Maestro]Shoot.03 EOS 5D MarkIIでの合成撮影。グリーンバックで行こう!