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[DSLR Maestro]Shoot.06 Technicolor CineStyleの実力~EOSムービーの新たなる可能性~

2011-06-28 掲載

デジタル一眼レフ動画の隆盛覚めやらず…

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EOS 5D MarkⅡが発売になって2年半。「デジタル一眼レフ動画」は爆発的な人気を博し、誰もが予想すらしなかったカメラ革命が起きた。CM撮影やドラマ・テレビ番組といった現場から、アマチュアカメラマンにいたるまで、その普及の広さは驚きに値する。おそらくコストパフォーマンスの高さもさることながら、今までのビデオカメラでは表現不可能なクオリティを手にできるというのが一番の理由だろう。瞬く間にDSLRは新しいカメラの分野を切り開き、大型センサーというトレンドを生み出した。更には手にしやすい値段や親近感のある操作、わかりやすい編集といったことが人気を後押ししている。いやはやここまで簡単にデジタルでシネマライクな映像が手にできるなんて夢のようでもある。

では実際にDSLRがなぜかっこよく、映画のように撮れるのか?その要素はズバリ2つあると思う。まず、DSLR独特のコントラストと彩度の強い色味。もう一つが、被写界深度の浅いボケ足だ。ビデオカメラより色が濃くコントラストのあるDSLRの映像は、すでにカラコレを施したような雰囲気を持っている。個人的に好きな色味だ。そして大判CMOSが実現するボケ足も美しい。特に明るいレンズが醸し出す浅い被写界深度の映像は、正にフィルムそのものといっても過言ではない。だからこそこの画を「あまり手を加える必要のないもの」だと私自身もずっと信じてきた。

そんな中、私が最近感じているのは「簡単DSLR」への疑問である。ある意味猫も杓子も5Dとなっている中、DSLR一辺倒な映像制作というのはいかがなものか?という疑問だ。もちろんEOS 5D MarkⅡは素晴らしいカメラだ。ただ、5Dを「楽にいい映像が撮影できるカメラ」として扱うのはどうかと感じている。自分の撮りたい画をカメラのデフォルト性能に任せるのではなく、上手に5Dを使って自分の画を求める「攻め」の撮影をするべきだと思うのだ。DSLRを否定するのではない。ちゃんと自分の撮りたい映像をとるための手段を考えたほうがいいだろうと考える。今回は、「自分らしい5D」の使い方を考えてみたい。連載がしばらく途絶えていたが、実は最近そんなことをずっと感じていた。まずは要の”色”について考えてみることにする。

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各ピクチャースタイルで撮影した映像の比較。「忠実設定」「ニュートラル」「ポートレート」の順

EOS 5D MarkⅡの色の出具合を決めるのはピクチャースタイルだ。おそらくほとんどの人があまり気にしたことのないパラメータだろう。しかし、私が思うに、ピクチャースタイルは撮影をするにあたりもっとも大切で基本的な部分だ。「忠実設定」「ニュートラル」「ポートレート」…とその意味すらも分からず正直なところ私も何となく設定していたし、常に適切なスタイルを選んでいた自信もない。ピクチャースタイルを正確に調整できる人はかなりのベテランである。

救世主CineStyleの登場

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TechnicolorのHPから無償でダウンロードできるCineStyleはDSLRの新しい世界を切り開いた

それだけあやふやだった筆者に救世主が今年現れた。今年のNABのタイミングでTechnicolorが発表したEOSムービー用の新ピクチャースタイルである「CineStyle」だ。最初に使った私の第一印象は「これだ」という新しい発見のようでもあった。カラコレを前提とした撮影であれば、いままでのEOSムービーとは違う、新しい世界を色づけることが可能なのだ。

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CineStyleを5D MarkⅡに入れたところ。EOS Utilityを使ってPCで設定ができる

CineStyleはTechnicolorのHPからダウンロードが無料でできる。ボディにこのCineStyleを入れるには付属のDVDからインストールできるEOS Utility(Ver2.6以降)を使う。5D MarkⅡのユーザー設定に入る仕組みだ。一応、Technicolor推奨の撮影時における数字設定はシャープネス: 0、コントラスト: -4、色の濃さ: -2、色あい: 0となっている。またISOは160の倍数に合わせるとよいようなので注意したい。

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撮影の際のISOは160の倍数にする。つまり、160、320、640、800…といった具合

CineStyleのすごさとは何か?このプロファイルを使うとなんと「LOG」収録が可能になるのだ。LOG収録とは、センサーのダイナミックレンジをフルに使った撮影のこと。つまり色のカーブが極めてフラットの状態で、ハイライト、ミッド、シャドウといった明るさにおいて、色などの映像情報を均一に収録することができる。LOGで撮影するスタイルはカラコレなどのポストプロダクションが充実している映画の世界で受け継がれているもので(CineStyleと名付けられる所以)、ビデオの世界ではあまりなじみのないものであろう。通常ビデオはすでに色のカーブがかけられた「REC.709」というカラースペースを基準としており、撮影時において既に「見かけがきれいな」映像を収録できるようになっている。5D MarkⅡもREC.709のカラースペースを準拠しているといっていいだろう。

そのためLOGで撮影すると「見かけ」色のない寂しい映像が収録される。初めて撮影する人にとっては「これで大丈夫か?」と感じるような色味だ。しかしそこには多くの情報が残されており、ここからカラコレを行うことで自分の色を作り出すことができる。実際にCineStyleを使うとコントラストの浅い、色味の薄い画が撮影される。撮影した素材だけをみるととても味気のない感じだ。ところがその分色つぶれや色とびがなく、映像のディテールが広い範囲で表現されているのがわかるだろう。髪の毛の質感を見ると一目瞭然だ。「忠実設定」で撮影した髪の毛の質感はコントラストが強すぎて一部はすでに沈んで見えるのがわかる一方で、「CineStyle」で撮影した髪の毛のディテールがきちんと表現されているのが分かる。これがLOGで撮影する長所だ。もちろんここから色をいじっていき、自分の求める画を作っていかなければならないのだが、ダイナミックレンジが広くとらえられているという意味は分かってもらえるだろう。

LOGで撮影する意味とは?

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CineStyleで撮影。細部のディティールをとらえていることがわかる。前記した各ピクチャースタイルで撮影した映像と比較してほしい

ポストプロダクションにおける色調整を前提とした制作を行えば、このCineStyleで撮影する意味が十分にあることが分かる。既に色カーブがかけられてしまう従来のピクチャースタイルを使うと、色補正の幅が狭くなるという結果を招いてしまうのだ。LOGで撮影することで、色補正の自由度を大きく上げることが可能になる。今回のCineStyleの登場は、5D MarkⅡの可能性をさらに上げることとなった。あまり話題になっていないのだが、実はCineStyleはDSLRの映像に革命的な進化をもたらしたといってよい。

もちろん5D MarkⅡ以外のEOSムービーにも適応が可能なので、是非ともユーザーの方々には使っていただきたいと思う。本来ならば4:2:2のカラーサンプリングであれば、さらに色補正を細かく綺麗に行えるのだが、現状としてEOSムービーは4:2:0なので限界はある。しかしここまで色補正にこだわったTechnicolorの功績は非常に大きい。というわけで、次回はCineStyleで撮影した素材をAfter Effectsを使って具体的な色補正を行ってみたい。こうご期待。

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江夏由洋 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。


[ Writer : 江夏由洋 ]
[ DATE : 2011-06-28 ]
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