[DSMC/DSLR 2010 #2]Vol.05 レンズの向こう側への挑戦
2010-08-29 掲載
レンズの向こう側への挑戦
DSLRムービーの登場はいま、あらゆるジャンルのクリエイター/アーティストに様々な想いを沸き立たせている。「自分たちでも何か作品ができるのではないか?」こうした気運を起させているのもDSLRムービー登場の恩恵だ。先述の石田晃久氏も語っていたように、もう"出来ない"という言い訳は通用しない。逆にその優位性と創造性を使いこなせば、誰もが質の高い映像を手に入れることができそうだ。そんな感性で、自らの手で映像世界を紡ぎ出そうとするパワーを持った、新たなクリエイター達がどんどんと湧き出てきている。
Cresson77(クレッソン77)は、監督と美術という組み合わせの男女が2008年に結成した映画製作ユニットだ。監督を務める田中柾幸が原案/脚本を描き、そのイメージを美術のMIKAが具現化し、田中氏が撮影から編集までを手がけている。また作品のプロデュースや宣伝/配給はMIKAが担当するという、作品の出演者以外は2人のユニットでほとんどの作業をこなしてしまうという、まさにバンド感覚で映画製作に挑む、こんなユニットが誕生する時代だ。
彼らがこの夏に生み出した最新作『Silent Song』は、90分という長編大作ながら、全編をDSLR(5D markⅡ)で撮影している。
全編においてスチルカメラのレンズ群を多用しながら、独特の映像世界が演出されている。その映像世界は、制作費が僅か60万円とは思えない、どこの国かも想像しがたいSFファンタジーの世界が展開されており、MIKAのデザイン制作による衣装もどれも手作りで個性的だ。さらに5D markⅡのパラメータとシネマガンマを調整して得られた画作りは、ロケ地がすべて首都圏近郊であるにも関わらず、見るものをその世界に引き込むような異次元空間が見事に演出されている。
これまではdofアダプターを介して、ボケ味の演出などを数多く試みてきました。前作はHDVで撮影したのですが、5D markⅡが出てきたことで、自分の考えている世界を生み出せるのはこれだ!と思いましたね。
と語る田中氏。元々はミュージシャンという経歴を持ち、ビデオ作品のディレクターなども勤めて来た経験を持つ。
私たちはプロの映画制作の世界は何も知りません。すべてが判らないという全くの手探り状態から、ただただ田中監督の創造する映像世界を具現化して作品にしたいという想いだけでこの2年間を突き進んできました。
MIKAはIT企業のOL時代からこうした作品を作りたいという願いをこのユニットで成就した。
プロ映像業界や放送業界、またCM広告や映画業界といった"映像のプロ"の世界でなくとも、こういう作品を生み出せることはDSLRムービーの可能性、その機動力、そして画質の素晴らしさを物語っていると同時に、彼らの中に潜在していた映像側のクリエイティビティを引き出したとも言えるのではないだろうか?
また安価でも心地よい映像空間を切り取れることで、レンズの先にある演出に大いに時間を割くことが出来るようになった。彼らの制作マインドから汲み取れるのは、レンズの先に映し出されるものこそが、クリエイターが作り出さなければならない世界観であり、そのアナログワークに集中する事ができるというクリエイターの基本だ。これもまたDSLRムービーがもたらした恩恵と言えるだろう。
監督, 脚本, 原作 (撮影, 編集, 音楽, 演出, 配役)
大阪府茨木市生まれ。92 年から東京に居住。92 年〜 95 年までヴィジュアル系テクノユニット『VIDEOrODEO』で活動。解散後は音楽界を去りファッション業界に転向。15 年の沈黙をやぶり、映像作品の処女作『薔薇の東』を完成。『Cresson77』のユニット名で活動開始。
制作, 美術 (衣装, ヘアメイク, ロケーション演出, マネジメント, プロモーション)
兵庫県たつの市生まれ。『Cresson77』のヴィジュアル担当。外資系企業を転々とする中、08 年より田中監督と共同で企画に奔走。製作ではマネジメント・プロモーション等の経営的な役わりから、作品の特徴でもある美術を全面的に担当。CD、衣装・メイク、グラフィックスなど、作品内のカタチあるものは全て彼女の手で生み出されている。
[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2010-08-29 ]
[ TAG : DSLR DSMC/DSLR 2010 #2 ]
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