VQ-RT101が導入されている現場から

映画フィルムの現像からDVDのオーサリングサービス、CG・VFXなどのポストプロダクションサービスを総合的に扱っているIMAGICAの業務内容は幅広い。五反田や品川をはじめ、赤坂、銀座、麻布十番などにスタジオやプロダクションセンターをもっており、テレビCM・番組や映画などのポストプロダクションを行う会社として国内でもっとも大規模な企業と言えるだろう。

DVDやBlu-rayといったパッケージもののオーサリングも年間で、DVDタイトルが1000本以上、Blu-rayが100本以上あるというから、毎日3~4本の作業が並行して行われていることになる。

niconimagaica02.jpg

IMAGICA・デジタルメディア&ネットワーク部テクニカルオペレーショングループ環貫剛氏

今回、5月頃からVQ-RT101を使用しているパイロットユーザーのIMAGICA・デジタルメディア&ネットワーク部テクニカルオペレーショングループ環貫剛氏にお話をお伺いした。

-VQ-RT101との出会い

パッケージものの制作の場合オーサリング後のクオリティチェックを人手に頼っていたのですが、この部分の労力を少しでも軽減するとともに、個人差や目視では見つけにくいノイズのチェックができないかと思っていました。ちょうどいいタイミングでニコンシステムさんのほうからお声掛け頂き、VQ-RT101を試すことにしました。

-クオリティチェックとはどのようなことをするのでしょうか。

各工程毎に映像や音声、字幕などの視聴チェックを行ないますが、一番大変かつ重要なのがオーサリング後に行うチェックです。プレス工場に渡す前の最終チェックなので、ここで何かしら問題があっても発見できないとそのまま製品になって市場に出てしまうことになりますので、プログラムの動作を含む詳細なチェックが必要になるのです。

視聴チェックでは字幕や吹き替え別、ドルビーやDTSといった音声方式別にもそれぞれ行ないます。たとえば、字幕は映像と合ったタイミングか、字幕の文章に間違いはないかといったこともチェック対象になりますから、1つのタイトルで最低数回は見ることになります。最終チェックで問題が発見された場合、担当のセクションで修正して再度オーサリングということになるのですが、持ち込まれた素材に問題がある場合もあります。

-持ち込まれる素材にはどのようなものがあるのでしょうか

当社で編集から行うのか、オーサリングだけ行うかによっても異なりますが、映像の素材に限っても持ち込まれる素材のフォーマットは様々で、HDCAM-SRやHDCAMなどのほか、デジベやDVCAMなどもあります。HDCAMは全体のだいたい30~40%くらいになりますね。HDCAM-SRの場合はオリジナルがフィルムであったり、撮影段階からHDCAM-SRということがほとんどなので、クオリティ的に問題があるということはあまりありませんが、それ以外のフォーマットの場合は、ノイズが発生していることもあります。これは、VTRのメンテナンスに起因する問題も多いと思います。国によって映像のクオリティに関する認識が違っていたりするからでしょうね。そうは言っても国内で制作販売するタイトルの場合はそのままというわけにはいきませんので、こちらで修正処理したり、再度きちんとしたものを出してもらうようにお願いします。相手が海外だとこのやり取りだけでかなりの時間が取られてしまいます。

imagicanicon0303.jpg imagicanicon0304.jpg

検証コーナーに設置されたVQ-RT101

VQ-RT101

-持ち込まれる素材としてHDCAMが多く、それだけに問題が発生することも多い。そこでニコンシステムのVQ-RT101が活躍するわけですね。

ただ、クオリティチェックのすべてをVQ-RT101におまかせするというわけではありません。必ず人がチェックして最終的な判断を行ないます。具体的には、VQ-RT101で問題箇所をあぶり出し、人がその部分を見て判断するという使い方です。目視だけに頼ったチェックでは見逃しがちなノイズも検出できますから。HDCAMの場合、同色の輪郭にノイズが乗ることがあるのですが、こうした目視では見つけにくいノイズも検出してくれます。逆に映像的な演出効果をノイズとして判断してしまうことも無いわけではありません。やはり最終的には目視による人の判断が必要になりますね。VQ-RT101は、しきい値を設定できるようになっていますが、当社では全て最も厳しい設定にしています。見逃してしまって、後で問題になるよりもこの時点でチェックに引っかかるほうが品質の向上につながりますから。

-クオリティチェックは最終的には人間が判断するものなのですね。

たとえば、紙吹雪かブロックノイズなのかは機械では判断できませんし、演出効果で静止画を入れ込んであった場合、フリーズ画面なのかどうかの判断もどんなに精巧な機械でも無理です。機械に任せたほうがいい部分は機械に任せ、最終的には人が判断することがクオリティの向上につながると思います。人と機械の協調により、今まで見逃しがちだったノイズを発見することが出来たり、チェックする人の個人差やヒューマンエラーを機械が補ってくれるというわけです。

imagicnicon0302.jpg

オーサリング後にクオリティチェックを行う試聴室


-約半年余りVQ-RT101をお使いになった感想はいかがですか。

パイロットユーザーということで、我々からも色々な要望をお願いしましたが、ほぼクリアされています。今後ワークフローに正式に取り入れることで、また違った要望が出てくるかもしれませんが、現時点では概ね満足していますね。VQ-RT101を導入することで、クオリティチェックの質が向上し、お客様に満足して頂ける品質を保つことが出来るようになると思います。

目視による人手に頼ったクオリティチェックは、バラツキがあったり、見逃すというリスクが有り、映像品質管理という側面で見た場合、避けたいところである。エンドユーザーの視聴環境も地デジへの完全移行が終了するころにはかなり向上しているはずで、それだけ視聴者の目も肥えてくる。VQ -RT101を利用することで、クオリティチェックの精度を向上させることは、こうした視聴への期待に応えるとともにプロダクションとしての差別化にもつながっていき、今後益々、VQ -RT101のような映像品質管理ソリューションのニーズは高まっていくと思う。