NAB殊勲章の授章式も引き続き行われ、今年は創立134年のThe E.W. Scripps Company社が受賞、最高経営管理者であるリッチ・ボーン氏が代表として授与

“We Can’t Let Down Our Guard(油断はできない) “

司会のテリー・ハッチャー

16日の9時よりNABのオープニング基調講演が開催された。当日の2日前に特別報道されていたとおり、『デスパレートな妻たち』のスーザン役でゴールデングローブ賞を受賞した、テリー・ハッチャー女史が司会者として登場した。初めにNABの理事長ポール・カーポウィックズ氏が、会場規模についてや1600社が出展していること、150か国以上から参加者が来場していることといった、今年のNABショーの状況について語った。

その後にゴードン・スミス会長が登壇。「Good morning and welcome.」と、ワーミングな挨拶とウェストン・チャーチル氏の余談話をして話を和ませたが、

「Ladies and Gentleman, NAB is back. And we are keeping our eyes on the future.」 (会場にお集まりのみなさん、NABショーはまた今年も開催することができました。そして我々の視野は未来に向かい続けています)とはじまり、「われわれ連盟は放送事業者の権利にために闘い続けている。ローカル局やラジオ局も双方のコミュニティで同じように立ち向かってほしい」と、ラジオとテレビは必要不可欠なメディアとして強調した。

FCCとの間での議論となっていたテレコム間とのスペクトラムの返還問題については、放送事業者に対して不利益が生じないことを保証し、近いうちに解決することを成果の一つとして報告した。これは議会でも高い評価を受け、NAB連盟が今までの「House of No(常に否定すること)」から「House of Engagement」へと、権利擁護する存在へと移行していることを示唆した。しかしながらも議会でスペクトラム法が可決されたことは、「テレコム業界が放送事業へ参入する」ことのほんの始まりに過ぎないとしている。

「我々は油断できない」とし、アメリカの人々が放送を必要としているが、それは我々がコミュニティのために何をすべきかに依存している、と語った。そして次の段階に目を向けると、「私たちの使命は無料のローカル放送番組が損なわれていないか、その視聴者のアクセスを確保するために連邦通信委員会と協力することである」とした。つまり緊急情報、ニュース、エンターテイメントまで地域密着の放送をライフラインとする視聴者の権利をFCCとタイアップして守っていくべき、というもの。

また、コンテンツが再送信される自由市場を維持することで、視聴者が引き続きコンテンツの選択肢を持ち続けられるという保証のために戦うとしている。放送局はバリューある番組の補償交渉をする権利がある。残念なことにケーブルテレビや衛星放送事業者の中には、ローカル局配信のための信号に公正な額を支払わない傾向にある。しかしローカルニュースや地上波局が提供するコンテンツこそ、視聴者が求めているものであり、決して地上波から視聴者離れが起きているのではない。事実、ゴールデンタイム番組におけるトップ100位のうち、95本が地上波テレビの番組で、ケーブル局が配給しているものではない。スミス会長は、「NABの会長として、リスナーや視聴者に代わって放送事業者の利益を守るためならば、どんな手段も惜しまない」という、強い意志を語った。それら手段には、今までのトラディショナルな方法以外にもソーシャルといった新しい技術も使っていくという。

未来のためにできる事とは?

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会長は「我々は未来のために戦いつづけなければならない」と語り「あなた方は5年後、10年後のビジョンをどのようにもっているか?我々は新しいプラットフォームへと進化している。放送事業者は、広告を含めて、マルチスクリーンTVそしてオーバー・ザ・エアーへの明るい市場を見ていくべきだ」という。

技術革新のための新しい技術をテストするためのプラットフォームを提供していく。我々の課題は、FCCでも無線通信事業者でもなく、自分自身に挑戦する勇気を持つことである、と語った。

最後に詩人ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉を取り上げ、「人々は、準備ができている者のみ見ることができる」と語り、「我々は準備ができるか?私は可能だと思っている。連盟ではそのビジョンをみて全力で支援していく」と演説を締めくくった。

オープニングのPVは、「The Great Content Shift is Happening Now」と掲げ、モバイルプラットフォームによる、いつでもどこでも放送コンテンツを知り合いと一緒に楽しめるという、ソーシャルメディアとの融合を謳うものとなっており、NABテーマやスミス会長の強いアソーションとは温度が違っていたのが多少気になった。

(山下香欧)