[Stereoscopic 3D]01: 撮影段階から生み出される効率的なフロー

HOME  >  SPECIAL  > [Stereoscopic 3D]01: 撮影段階から生み出される効率的なフロー

Special

[Stereoscopic 3D]01: 撮影段階から生み出される効率的なフロー

2009-07-08 掲載

[Stereoscopic 3D]01: 撮影段階から生み出される効率的なフロー

ハリウッドにおいては、デジタルインタミディエイト・ワークフローの定番となったQuantelの編集・フィニッシングシステム。RED ONEを用いた4K制作ワークフローはもちろん、ステレオスコピック制作においても活用されている。

Quantel_InterBEE2008.JPG
Inter BEE 2008のクォンテルブースで日本初公開された3ality DigitalのSIP2100

Quantelは、ステレオスコピックに関連した技術/製品開発を行っている3ality Digital(米カリフォルニア州バーバンク)と戦略的協業を行い、ステレオスコピック制作ワークフローを構築してきた。昨年9月にアムステルダムで開催されたIBC 2008(欧州放送機器展)では、sQサーバプラットフォームベースのステレオ3Dサーバーや、3ality Digitalのステレオ・イメージ・プロセッサーSIP2100を発表している。これらについては、Inter BEE 2008のクォンテルブースでも紹介されている。ここでは、Quantelのシステムを使用したステレオスコピック制作ワークフローを整理しておこう。

Quantelのシステムを使用してステレオスコピック制作をするには、HD解像度であればiQ 2K、2K解像度であればiQ 4Kで可能になる。Webサイト上で「ステレオ3Dのための」とうたっているのはPubloだが、グレーディングや複雑なカラーコレクションを行わないのであれば、Publo 2K/Publo 4Kは必要がない。クォンテルのシステムズ・アーキテクトをしている松井幸一氏は、ステレオスコピック制作に必要な製品について次のように話した。

Quantel_pablo.jpg
カラーグレーディングや複雑なカラーコレクションを行うにはPabloが必要になる。

「現在、劇場公開しているステレオスコピック作品はHD収録していることが多いので、事実上iQ 2K/Publo 2Kで制作することが可能です。クォンテルはこのほか、入出力と編集に特化したSIDという製品を提供しています。ステレオスコピック制作で肝になるのは、左右の映像のズレを正しく補正する視差調整の部分です。ステレオスコピック制作においては、正しいステレオ感を生み出す部分だけを仕事として受けるケースもあります。この視差調整をすることを目的に作られた製品がSIDです。SIDは、ステレオ編集と視差調整、そして作品プレビューをするために使用します」

収録後に、オフライン編集をして、本編集からフィニッシングにつなげるというワークフローの流れは、通常のノンリニア編集と変わらないが、ステレオスコピック制作ならではのハードルもある。実写収録は、左目用と右目用の映像を収録するカメラの出力を、ソニー製HDCAM SRポータブルレコーダーなどを使ってHD422で同時収録することが増えているが、多くのケースで、本編集に入るまでステレオスコピック環境で左右の映像を見て確認することはない。左右いずれかの映像で、オフライン編集を行い、それを元にもう片方の映像の編集しているため、フィニッシングする段階で視差調整は欠かせないのだ。Quantelは、ステレオ編集タイムライン機能により視差調整をしやすくするとともに、左右の映像を解析して調整できるデバイスを提供している、これが、3ality Digitalのステレオ・イメージ・プロセッサーSIP2100だ。

3alityのSIP2100で制作を効率化

3ality Digitalは、ステレオスコピック関連の技術/製品開発を行ってきたが販売網を持っていなかったことから、Quantelを通じて製品の販売を行う協業態勢を採った。Quantelにとっては、3ality Digital製品もワークフローの一部に使用することでワークフローを強化できるメリットもある。Quantelが取り扱う最初の製品として発表したのがSIP2100だ。ステレオスコピック映像を分析し、問題点を修正することを可能にする1Uサイズのデバイス製品だ。収録から編集、フィニッシングまでの各工程で視差調整を可能にするもので、ワークフローをよりスムースに運用できるようになる。

3ality_SIP2100.jpg
3ality Digital製ステレオ・イメージ・プロセッサーSIP2100

「ステレオスコピックでは、2台のカメラを使用する以上、2つの映像の条件を100%同じものに揃えるということはできません。左右で微妙に色味が異なるということもあります。つまり、片側の映像のカラーコレクションをして、その設定をもう片方に反映させる機能を持たせていても、カメラ本体で生じた色未の違いは補正できないということになります。そのため、2つの映像を比べながら同じ色味になるように補正することが必要です」(松井氏)

撮影段階でSIP2100をカメラとレコーダーの間に配置して分析機能を使用すると、左右のカメラの色味や、高さや傾きの違いを数値で表示してくれる。カメラを2台並べて撮影するのではなく、ハーフミラーを使用して撮影した場合は、1台が上下反転した映像を記録することになる。これを正しい映像にリアルタイムで反転するような補正機能も持っている。さらにアドバイス機能を使用すれば、最終的に上映するスクリーンサイズに合わせて、バーグラフでステレオ感が得られる距離範囲を示してくれる。2台のカメラの特性を揃えるだけでなく、極端なステレオ感を再現したり、ステレオ感が得られないということがないようにもしてくれるというわけだ。

編集段階では分析機能とアドバイス機能を、視差調整段階ではアドバイス機能と補正機能を、それぞれ活用して制作をスムースに、短時間で済ませることが可能になる。

「補正機能は、上下/左右のいずれも反転できます。また、分析機能で得られた違いを補正することも可能です。ただ、等倍で反転する場合を除けば、補正することは画像処理をすることを意味しますから、できるだけ生に近い映像を扱うためには何度も補正を加えないワークフローにした方がいいと考えています。つまり、収録段階ではカメラの位置調整と反転だけに利用するにとどめ、フィニッシングの最終段階で補正を加える方法が良いのではないでしょうか」(松井氏)

SIP2100はサイドバイサイド出力も可能なほか、万が一、ステレオ感が破綻した映像が入力された場合に、片方の映像だけを使用して左右同一映像を出力する機能も持っているなど、放送用途も考慮した製品となっている。収録、編集、放送と、さまざまな制作現場で活用できるようにすることで、今後欠かすことのできないデバイスとなりそうだ。

「海外の制作動向ですが、劇場用映画での取り組みよりも、パブリックビューイングに近い取り組みで、コンサートやスポーツの中継を劇場やスポーツカフェなどでステレオスコピック公開するというものが増えてきているようです。マルチアングルで複数のカメラをセッティングしなければならないようなケースでは、SIP2100のように撮影段階でリアルタイムで分析や補正ができることは強みになりますね」(松井氏)




[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2009-07-08 ]
[ TAG : 3ality Digital Quantel Stereoscopic 3D(3D映像) ]

この記事に関連する記事一覧

[NAB2011:3ality Digital]3D業界を牽引する3ALITY Digitalは、野外で大規模な展示

[NAB2011:3ality Digital]3D業界を牽引する3ALITY Digitalは、野外で大規模な展示

3Dでは老舗といえる3ALITY Digitalは、センターホールとサウスホールの屋外に3D撮影の実演を行うバスケットボールコートや3D中継車、撮影した3D映像を処理するシステムを .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.03 3D作品の納品・上映について(フィニッシュ編)

[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.03 3D作品の納品・上映について(フィニッシュ編)

株式会社マリモレコーズ 江夏由洋(FILTER KYODAI) 3D最大の壁「上映」とそれ超えるための3つのハードル 3DA1で撮影した左右の映像を編集している様子。左右映像と音声 .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.02 今3D撮影素材を編集するには?CineForm Neo3D(編集編)

[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.02 今3D撮影素材を編集するには?CineForm Neo3D(編集編)

株式会社マリモレコーズ 江夏由洋(FILTER KYODAI) 編集時にはCineForm Neo3Dを利用 Ki ProストレージモジュールSSD 250GB。Firewire8 .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.01 3DカメラAG-3DA1とKiProで実現する3D撮影の押さえどころ(撮影編)

[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.01 3DカメラAG-3DA1とKiProで実現する3D撮影の押さえどころ(撮影編)

株式会社マリモレコーズ 江夏由洋(FILTER KYODAI) 史上初、業務用二眼カメラの登場 3D撮影の大きな話題のPanasonic AG-3DA1。誰でも「簡単に」3D映像 .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.00 今ここにある3D制作のすべて

[Stereoscopic 3D 第3章]Vol.00 今ここにある3D制作のすべて

作る楽しみを知る時が来た! 2010年は言うまでもなく3D元年である。劇場映画に始まりお茶の間までに3Dがやってきた。これまでの3D映像が「見て楽しむもの」から「作って楽しむもの」 .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第2章]06: 画像処理の延長線で生まれた朋栄のS3D関連製品

[Stereoscopic 3D 第2章]06: 画像処理の延長線で生まれた朋栄のS3D関連製品

「当社では画像処理関連の技術を持っているのですが、ステレオスコピック3D(S3D)関連の取り組みは、もともとは画像処理の延長線上の機能として生まれてきたんです」 こう話すのは、朋栄 .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第2章]05: 良質のコンテンツを増やせ!ソニーが取り組むS3D

[Stereoscopic 3D 第2章]05: 良質のコンテンツを増やせ!ソニーが取り組むS3D

ソニーはこれまで、4Kデジタルシネマプロジェクターと、RealDとの協業で3Dプロジェクションレンズユニットなど、映画市場における上映環境の充実を図ってきた。昨年末のInter B .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第2章]04: 悩む前にやってみるS3Dストップモーション

[Stereoscopic 3D 第2章]04: 悩む前にやってみるS3Dストップモーション

「ステレオスコピック3D(S3D)活用事例取材の記事もいいけど、初めてS3Dをやってみようという人が実際にどんなことに直面するのか、とにかく何かを作ってみるという実験企画記事も欲し .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第2章]03: フジテレビがアリス東京ドーム公演を3D放送

[Stereoscopic 3D 第2章]03: フジテレビがアリス東京ドーム公演を3D放送

フジテレビNEXTが、アリスの東京ドーム公演をステレオスコピック3D(S3D)収録し、4月23日19時から「3D アリス~東京ドーム『明日への讃歌』」として3D放送した。この番組が .... 続きを読む

[Stereoscopic 3D 第2章]02: S3Dの基礎知識2~3Dリグの使い分け

[Stereoscopic 3D 第2章]02: S3Dの基礎知識2~3Dリグの使い分け

ステレオスコピック3D(S3D)撮影をするためには、2台のカメラをセットする必要があるが、その方法や機材にはいくつかの種類がある。こうした撮影システムは、現場でどのように運用され、 .... 続きを読む

USTREAM生放送番組

PRONEWS Lounge
テーマに沿ったゲストを招き、対談・ディスカッションなどを特設会場より生放送。過去放送分も視聴できます。

特集記事

CES 2012レポート
世界最大級の家電見本市CES2012の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。
PRONEWS AWARD 2011
2011年を振り返りつつ、2012年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2011 スペシャルレポート Inter BEE 2011スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されるInterBEE2011。PRONEWSでは今年もInterBEEのオフィシャルメディアパートナーとして、様々なコンテンツをお届け!
Inter BEE 2011の歩き方 Inter BEE 2011の歩き方
最小限の力で最大の効果が得られるInterBEE2011のおすすめの歩き方を、目的に合わせたコースごとに紹介する。
CEATEC JAPAN 2011 CEATEC JAPAN 2011
10月4日(火)から10月8日(土)まで幕張メッセにて開催される最先端IT・エレクトロニクス総合展 "CEATEC JAPAN 2011"をプロの視点からレポートする。
Movie Maker's GIG in Europe Movie Maker's GIG in Europe
オランダ・アムステルダムで開催されたIBC2011レポートを中心に、新たに湧き起こって来た映像技術における次世代の新テーマなど、現場から伝わって来たその温度感をレポートする。
PRONEWS課題図書 PRONEWS課題図書
2011年の夏の終わりに、あらためて「映像」に関わるものとして「映像」について考え、新解釈を探る事にした。
SIGGRAPH2011 SIGGRAPH2011
CGの祭典「SIGGRAPH」が8月7日から11日の5日間、カナダ・バンクーバーで開催された。受賞作品を映像と共に紹介する。
Stereoscopic 3D 第4章 Stereoscopic 3D 第4章
1年ぶりの3D特集。この間に3Dを取り巻く状況はどのように変化しただろうか?押さえておくべき3Dの基礎を考えつつ、2011年の3Dを再考してみる。
Movie Maker's GIG in Hollywood Movie Maker's GIG in Hollywood
セッション(GIG)感覚で映画が創れる時代の潮流をハリウッドではどう捉えているのか?CineGearExpoの情報もお伝えしつつ、次世代のプロ映像制作者像を追い求める。
Master Mind Camera 2011 Master Mind Camera 2011
今必要な理想のカメラを追求しつつ、カメラを使う人と機能から紐解いていく。
NAB2011 NAB2011 スペシャルレポート
4月11日から米ラスベガスにて開催された世界最大の放送機器展「2011 NAB Show(NAB2011)」。毎年恒例のレポート特集を現地よりお届け。
USTREAM最終案内+ USTREAM最終案内+
奇しくも、今回の震災でのライブメディアが活躍する事になった。3.11以後USTREAMをはじめとするライブメディア/ソーシャルメディアのあり方を今一度取り上げてみたい。
ファイルベース新時代 ファイルベース新時代
ファイルベースの進化は、VTRの進歩とともに現在に繋がってくる。1950年代に開発されたVTRを起点にその流れを簡単にさかのぼってみよう。
Into the Lens
『CP+』における取材を通じて、2011年のプロ映像界におけるレンズの世界最新事情や表現者たちの最新機材での挑戦を追う。
CES 2011レポート
世界最大級の家電見本市CES2011の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。
PRONEWS AWARD 2010
2010年を振り返りつつ、2011年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2010スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2010のレポート記事や動画を掲載。
Inter BEE 2010の歩き方
目的に合わせたInterBEE2010の歩き方を紹介する。
映像品質検証 -VQC-
デジタル映像全盛の今、問われる映像品質検証の現状とは?
DSMC/DSLR 2010 #2
現場感覚におけるDSLRの現状の捉えられ方を取材してみた。
Stereoscopic 3D 第3章
ステレオスコピック3Dの具体的な制作方法を考えていく。
Ustream最終案内
Ustreamの世界の可能性を実際に現場で活躍する人々から探ってみた。
Digital Cinematography 2010
Cine Gear EXPOの様子などから、これからのハリウッド映像制作の方向性を紹介する。
Stereoscopic 3D 第2章
関心が高まっているステレオスコピック3Dコンテンツの制作について整理していく。
DSMC・DSLR 2010
CP+のレポートを中心に、2010年のDSMC/DSLRの動向について考察していく。
ファイルベース収録カメラ最新案内
ファイルベース収録カメラを選択するための基準や基礎知識等を、レビューを交えて考察する。
Transcode
ファイルベース・ワークフローの普及と共によく目にするようになったトランスコードについて整理する。
映像新時代2010
2010年の映像制作の潮流を様々な方面から予想していく。
稲田出のトレンド100選
InterBEE2009で見た2010年注目100アイテムを紹介。
PRONEWS AWARD 2009
2009年を振り返りつつ、2010年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2009スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2009のレポート記事やブース動画を掲載。
Inter BEE 2009の歩き方
目的に合わせたInterBEE2009の歩き方を紹介する。
最新映像制作ワークフロー VFX 2009
最新映像制作ワークフローの中から、制作効率を改善していくヒントを探す。
オンボードライト特集 Light House
新時代を予感させるLEDを中心にオンボードライトを解剖する。
立体視映像特集 Stereoscopic 3D
再び脚光を浴び始めているステレオスコピック3D制作に焦点を当てる。
REDワークフロー特集 RED flow Now
RED ONEの最新ワークフローを考える。
4Kデジタルシネマ特集 4K Ready!
RED ONEの登場で一気に注目されつつある4K映像とは?
デジタルサイネージ特集デジタルサイネージ2009
急速な広がりを見せるサイネージメディアを紹介する。
ワークフローの鍵を握るMXF
MXFファイルを活用する現場を取材し、制作ワークフロー全体に広がるMXFを紹介する。
フルデジタル制作移行、その課題と展望
フルデジタル制作環境に向けて乗り越えなければならない課題と、その先の可能性を紹介する。
2008年総括:これからの映像業界
2008年の売れ筋を見ながら、人気機材の動向を振り返ってみる。
次世代収録環境へのアプローチ
2008年のカメラ環境を踏まえ、次世代環境に必要なものを考える。

HOME  >  SPECIAL  >  [Stereoscopic 3D]01: 撮影段階から生み出される効率的なフロー