映像の20世紀からメディアアートの21世紀へ

20世紀のライフスタイルどころか文明そのものを変えてしまった映像メディアのインパクトと同じような、ダイナミックな変化が今、メディアアートから起こり始めている。アナログで手がけて来た映像の世界がデジタルへと進化しビジネスをしているように、その延長線上にメディアアートによるワンダーなことが存在している。まさに今の映像ビジネスの発展系となる身近な可能性がメディアアートによるクリエイティブといえるだろう。このようにポスト「コンテンツ」の主流となりそうなメディアアートという存在の今を伝えていく次第だ。今回は、この季節にまさに目にしているイルミネーションの発展とメディアアートとの関係について紹介したいと思う。

イルミネーションがメディアアートで進化する

日本の年末年始の風物詩として急速に定着を遂げたイルミネーション。 その普及に伴って、照明としての屋外装飾から、都市の中におけるとても効果的なOOH(Out Of Home Media)広告の手段として用いられるようになってきた。スペクタクルとしてのイルミネーションは、抜群の集客力とそこに対する高いアテンションと好感、そして屋外という公共性からメディアがニュースや話題として取り上げてくれるという高いパブリシティを備えた、最強の広告アイテムのひとつになったといってもいいだろう。

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スターライトガーデン
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丸の内イルミネーションキャンペーンのイメージグラフィック「MARUNOUCHI NIGHT」サイトより
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2006年の「アートリンク in 横浜赤レンガ倉庫」。kirari byアトリエオモヤ
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2008年の「アートリンク in 横浜赤レンガ倉庫」。HIBRIENATION by SHIMURABROS.
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HIBRIENATIONの映像中で羽化する虫たち

発光ダイオードにおける発色性のイノベーションと安価な普及や、映像機器の進歩や大規模な投影手段の安価な普及は、イルミネーションに新たなイノベーションを巻き起こし、その表現力を限りないものに高まろうとしている。このイルミネーションの表現力に創造力を加えているのがメディアアートの存在なのである。 例えば今年の東京ミッドタウンのイルミネーションにおけるメインのイルミネーション展示のひとつである「スターライトガーデン」。そこにはブルーとホワイトの約12 万5000 球のLEDを用いて、星座と銀河、それに天の川をイメージした、動画的なスペクタクルが展開、シーケンスの最後にはスポンサー企業のロゴまで出現できるほどの表現力で見るものを魅了している。

丸の内のイルミネーションキャンペーンのイメージグラフィックを彩るのは、光の残像を用いて描かれた航跡が文字になったかのようなタイポグラフィー。光の航跡を用いてまるで筆で描くように光の絵を描き、アニメーションをつくる「PIKAPIKA」という表現を編みだした、大阪の若手メディアアーティストグループである「トーチカ」が、みせてくれたハッピーな光のアニメーションとそれに続く数多のプロジェクトからインスパイヤされた表現ととることが出来るだろう。

イルミネーションとメディアアートの関係は今、急激に広がっている最中なのであるが、みなさんの記憶に強く残った大晦日の風物詩のイルミネーションも、メディアアーティストのサポートがないと実現しないものであった。NHK紅白歌合戦の見所として長きにわたり盛り上げてきた電飾衣装合戦。その中心である小林幸子の巨大電飾衣装の電飾を実現したのはメディアアーティストの森脇裕之である。芸術家だからこそ、最新の電飾技術を用いて一から手作りであり得ない衣装を実現させる、美的創造力とものづくりの創造力を持っていたからこそ実現したスペクタクルである。 メディアアートをイルミネーションの中心として作家を前面に置いてフィチャーし続けているのが横浜の赤レンガ倉庫である。横浜観光のランドマークである赤レンガ倉庫。その冬の企画は広場にスケートリンクを開設し、そこにアートを盛り込んで楽しめるのが「アートリンク」だ。

一昨年の2006年には、メディアアート制作集団のアトリエオモヤが、スケート靴にセンサーと発光ダイオードを実装し、スケートをしている人々の動きとコミュニケーションによって光の色や模様が変わる、見るほうにとってもインタラクティブな光の航跡が美しい、コミュニケーションのある楽しいイルミネーションの世界「kirari」を展開させた。

今年は姉弟で特別な撮影機材や投影手段によって、映像の美を追求しているSHIMURABROS.が、9メートルにわたるシャッターガラスを使った映像の塔を建立。レントゲンスキャンした虫たちのスキャニング画像を数メートルにわたる連続投影で見せるという夜の港の中で幻想的な映像体験をする独自のディスプレイをイルミネーションにしたのだ。

このようにメディアアーティストの姿が前面に出なくとも、メディアアートの表現力を借りることによって映像以上のスペクタクルを都市の中で実現させようという広告クリエイティブが今、活発なものになろうとしている。アートだからビジネスとは関係ないと無視することが出来なくなっているのだ。

岡田 智博 (クリエイティブクラスター )

WRITER PROFILE

岡田智博

クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。