2008年の夏にはアメリカでは最近の状況と同様にガソリンの市場販売価格が急上昇しました。その時にアメリカでは「E-85」というエタノール85%とガソリン15%を混合した自動車用の燃料が市場に登場しました。

アメリカ国内で豊富に産出するトウモロコシを主体原料としたバイオ発酵により製造されるエタノールは当時ガソリンの市販価格が1ガロン当たり4.09ドルに達するという高騰でしたので、価格面でも安価で安定な供給が市場へ行えると言う事からガソリンに代わる救世主となるかと思われましたが、それ迄牛などの家畜の飼料として使用されていた分のトウモロコシがその多くを自動車燃料用に振り向けられた事から価格の上昇をまねいて大きな問題となりました。

また、当時このE-85には下記の様な不具合点が指摘されています。

  1. E-85を給油して使用する自動車にはエンジンがいわゆるフレキシブルタイプと言って通常のガソリンとE-85 のどちらも支障無く使える物となっている事が必要である。
  2. E-85を給油出来るガソリンスタンドが少なく、それをみつけるのに大変手間がかかる。
  3. E-85を満タンにして走れる総走行距離がガソリンの時に比べて10%から30%短くなる。
  4. 価格の方は上記の各項目を犠牲にしても購入したくなる程安くなっていない。

と言う事で、コロラド州全体の月間売り上げは936,007ガロンの記録を最高としてその後低下して来ており、人気がありません。この936,007ガロンという数字はコロラド州全体の全自動車への燃料売り上げ金額で0.41%に相当します。

ところが、ここへ来て再びガソリン価格の高騰が問題となってきており、今回はオバマ政権ではこのE-85の普及浸透に力を入れており、下記の様な戦略を実施しています。

  1. フレキシブルエンジンの自動車の普及の為にGM、フォード、クライスラーの3社は来年迄には全体の半分のモデルについてE-85 対応のフレキシブルエンジン搭載とする。
  2. フレキシブルエンジンの車のガソリン注入口のキャップの色は明るい黄色として、ガソリンスタンドのE-85のポンプのガソリン注入ホースの色も明るい黄色とする。
  3. エタノールの製造にはトウモロコシに代えて木の切りくずやおがくず、そして海藻などの食料ではないセルローズ質の材料を使う様にして、その製造者には政府ではその製造設備に必要な投資に対して資金援助融資を行う。
  4. このセルローズ質のエタノールの製造目標としては2011年中に全米で2億5000万ガロンとする計画であり、更に2013年迄には10億ガロンをE-85に使用する事を目指す。そして、2022年迄には360億ガロンのエタノールの製造が行われている様にする、としています。
  5. ここ5年以内に全米で1万カ所以上のE-85のポンプを装備するガソリンスタンドが存在する様にする。そして、新たにE-85のポンプを設備するガソリンスタンドには、その資金援助融資を行う。
     ちなみに、現在全米には800万台のフレキシブルエンジンの自動車が使われており、E-85のポンプを有するガソリンスタンドの数は2300カ所となっています。
  6. アメリカがガソリンを抽出するのに使用する輸入原油の量を2025年迄に現在の1/3に引き下げる事を目標とする。

と言う事で、いよいよアメリカでは本格的なE-85への対応策がとられることとなって来ています。ちなみに、デンバー地区でのごく最近のレギュラーガソリンの平均市販価格は1ガロン当たり3.61ドルとなっており、それに対してE-85の平均市販価格は1ガロン当たり2.99ドルとなっています。

今後、E-85の購入需要が本格的となり、価格がいま一段の魅力的な安価となればアメリカでの自動車燃料としてのE-85が主役となる日が来ると思われます。

オローラ市内のガソリンスタンドの価格表示板

私の住んでいるオローラ市内のE-85を扱っているConoco系列のガソリンスタンドの価格表示版です。レギュラーガソリンが1ガロン3.799ドル、デイーゼル車用燃料が1ガロン3.999ドル、そしてE-85は1ガロン3.099ドルが今日の販売価格となっています。アメリカでは日本と違って業務用の大型トラックでよく使われているデイーゼルエンジン車用の燃料は特別優遇の税金控除がありませんのでレギュラーガソリンより通常高い価格となっています。このガソリンスタンドでの給油をするお客さんの様子をしばらく眺めていましたが、E-85を給油するお客がレギュラーガソリンとほぼ同数の割合で来ています。この近辺ではこのスタンドきりE-85を扱っていないので多いものと思われます。


E-85の給油を行うスタンド

このガソリンスタンドではE-85専用のスタンドが2基裏表に設備されていて通常のガソリンのスタンドと操作については同じです。お客が通常のガソリンと間違わない様に給油ホースの色が黄色になっています。また、フレキシブルエンジンの車のタンクへの給油口のキャップの色も黄色となっていますので間違い難くなっています。また、このガソリンスタンドはConoco系列の店ですが、E-85についてはConocoで製造した燃料ではない旨印されています。

なお、E-85を扱っているガソリンスタンドの場所に付いては下記のアドレスのWebから丁度Mapquestで地図の検索を行うのと類似の要領で全米のどの地域についても探す事が出来ます。
www.afdc.energy.gov/afdc/locator/stations/

また、このロケーターではE-85の他に下記の各自動車用燃料の購入出来るスタンドに付いても検索する事が出来る様になっています。

  • Biodiesel (B20 and above)
  • Compressed Natural Gas (CNG)
  • Electric
  • Ethanol (E85)
  • Hydrogen
  • Liquefied Natural Gas (LNG)
  • Liquefied Petroleum Gas (Propane)

これから電気自動車を購入しようかと思っている人や電気自動車で遠距離ドライブをするときなどこのWebサイトは大変便利に使えると思います。


WRITER PROFILE

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。