txt:オースミユーカ 構成:編集部

Eテレ「で~きた」ができた!

春からの新番組Eテレ「で~きた」の収録第一回目が終わった。二日間、NHK局内のスタジオでの撮影だ。昨年パイロット番組を作らせてもらったので、セットも役者も顔なじみだし、制作スタッフも同じ方でお願いできて、新番組とは思えないほど快適な船出だった。編集がはじまる前の今だけは束の間の満ち足りた気分でぼ~っと温泉につかったような脱力感を楽しんでいる。

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© NHK Eテレ「で~きた」

「で~きた」は小学一年生や特別支援学校の子どもたちを対象に、学校生活で必要な集団行動・マナー・社会的スキルを、わかりやすく、自発的に学ぶ形にした新しい生活指導番組。赤信号を渡ってはいけないことを学ぶことで青信号が渡れるようになるのと同様に、何ができていないのかを子ども自身が気づき、理解することで、できるようになることを促していく番組だ。

kokoro_14_ma-ou_2S © NHK Eテレ「で~きた」
レギュラー放送 4月5日(火)午前9:00~9:10 以降毎週火曜9時

おかげさまで放送されたパイロット版の評価は上々。こどもが自発的に気づくように、常に問題を投げかけながら番組が進行していく形式は子供たち、現場の先生、父母、局側ともに評判がよかった。ほぼ大きな変更なく春からのレギュラー化が決定した。

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NHKのスタジオに作られた教室セット。小学生が主人公のドラマ形式で、今回はペデスタルカメラ3台、クレーン、ハンディと合計5台用意してもらった

「絵コンテ」それはディレクターのだいじなお仕事

撮影前のディレクターのだいじな仕事のひとつに「絵コンテ」描きがあるが、番組の場合は絵コンテの変わりに「(カット)割台本」というものを作る。この台本作り、結構時間がかかる。

セットの中での役者の動き、複数のカメラの位置、どのカメラで台本上どの台詞をおさえるのかのカット割りを細かく書き込んで、撮りたいイメージをスタッフにシェアするための指南書だ。基本的にスタジオ収録は一方向から撮影されるため、役者の顔がきちんとカメラ側を向いた演技になっているか、横顔が撮りたいのか、正面から撮りたいのか、人物サイズはアップかミドルかルーズか、映る人数は何人か、カメラワークは必要か、などなど、絵コンテを描く変わりにすべては台本に文字と図で書いていく。

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今回の割台本。上の図が登場人物の動きやカメラ位置。その下にカメラ番号、カメラワーク、被写体のサイズ、台詞とト書きが書いてある

この台本を元に、当日撮影部や照明部などの技術スタッフにシーンごとに大事なポイントを説明し、実際役者にセットで演技をしてもらって微修正を加えつつ、撮影していく。

収録の流れはこんな感じ。まず「ドライ」といってスタジオで役者と台詞や動きのお芝居をテストでやってもらう。役者の動きをみてカメラ割を最終確認し、カメラリハーサル「カメリ」をやる。通常、私の現場はカメラ一台でカットごとの撮影が多いので、編集を頭のなかで考えながら映像を撮っていくが、番組収録の良い点はスイッチャーがリアルタイムで編集をしてくれるのである程度のつながりが実際にみえること。

ただ3、4台のカメラを同時に動かし収録をするので、演技、カメラワーク、編集を、撮影しながら判断しなくてはならないのはなかなか大変だ。いつものように後からゆっくり編集で考えればいいやというわけには行かず、瞬発力方面の脳の発達が致命的な私にとってこのスタイルに慣れるのは至難の業だった。

CM、Web、映画、テレビと好奇心の赴くままに媒体を選ばずに仕事をしていると、同じ映像業界でも作法がいろいろと違うことに気づく。演出の仕事は基本的にスタッフとコミュニケーションをとってイメージを伝えることが大事なので、私はなるべくそのジャンルごとの作法や言語を覚えることを心がけている。スタッフに伝わらない言語で話しても意味がないし、業界ごとのやり方を一度きちんと覚えることで次にいかせるからだ。

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ショートムービー撮影前に書いたカメラ位置。シーンごとに動きやカメラ位置を書き込み、絵コンテのカットナンバーを入れている。番組の作法を広告仕事にとりいれている

テレビの仕事を繰り返しやるようになって、この割台本の良さがだんだんとわかってきた。15秒のCMならともかくショートムービーなど5分以上の長物は絵コンテを描くのもしんどいし、絵にしてしまうことでイメージを限定してしまうのももったいない。なので最近はテレビ以外の仕事でも、ざっくりした絵コンテと、カメラ位置の指定でイメージを共有し、撮影がスムーズに運ぶように各映像業界のいいとこ取りをしている。

スタッフとのコミュニケーションがうまくいくと撮影はスムーズに楽しくいく。みんな笑顔の現場だと結果的にいいものが出来上がって、テレビの前のこどもたちにも笑顔が伝染する。映像は大勢のスタッフが関わって作り上げるチームワーク作業だからこそ、演出の頭の中のイメージをきちんとスタッフに伝えることはとっても大事で、とっても楽しい作業だなあと思う。

WRITER PROFILE

オースミ ユーカ

CMやEテレ「お伝と伝じろう」「で~きた」の演出など。母業と演出業のバランスなどをPRONEWSコラムに書いています。