txt:茂出木謙太郎 構成:編集部

生配信番組「にじさんじのくじじゅうじ」怒涛の舞台裏

「にじさんじのくじじゅうじ」第4回の放送が終了した。おかげさまで4回目の配信もとても評判がよく、にじさんじのファンからも、バラエティ番組のファンからも、毎週1時間じゃ物足りないという、運営からしたらゾッとするような嬉しい反応があって、毎回毎回一体このあとどうやって面白いことを仕込んでいこうかと使命感に燃える日々なのだ。というか、初回のエンディングに「次回もさらに進化した番組をお届け!」と銘打っていて、自らを追い込んでいくスタイルに驚愕したものだ。

今日は第5回のロケが都内某所で行われ、茨城の有名なゆるキャラとバーチャルライバーの共演がかなった。番組のハッシュタグ(#にじくじ24910)を追いかけると、毎回ちょっとずつ進化している技術的な部分に言及している人がいてとても嬉しい。

ベールとなるシステムはHTC VIVE CEとバーチャルキャストなのだが、7人のバーチャルライバーと2人のMC、1人のADと4人のカメラマン。合計14人の演者を意図度に管理しなくてはならない。しかも、毎回生放送というちょっとドMじゃないと受けられないシステムを一体どのように回しているのか、あまり詳細は語れないが、ちょっとだけご紹介したいと思う。

仕込みは朝9時半から始まる。都内某所スタジオにVR班は集合し、PCのセッティングから始まる。14台のPCとVIVEのセッティングだからそんなに時間はかからないだろうと踏んでいたが、思ったよりトラブルが多いことがわかった。

まずはありがちなアップデート。VIVEファームウェアのアップデートから始まって、OS、Java、さらにグラフィックボードのアップデートも油断できない。これだけで下手すると30分はロスする。

さらに、映像チーム・音声チームとのすり合わせを行いながらスタジオ内に機材を配置する。VR機器の事をおわかりならピンとくるかもしれないけど、VIVE CEを同じスペースに10何台も置くのはかなり大きな問題が生じる。ベースステーションという、トラッカーをセンシングするシステムの干渉問題を解決しないといけない。しかも、スタジオ内には返しモニターが山程置かれていて、これらの赤外線反射問題も解決すべき問題だ。

これまで深く考えたことがなかったが、VIVE CEのパッケージにめちゃくちゃ長いオーディオケーブルがある。これってベースステーション同士をつないでお互いのトラッキングを安定させることができるって知ってた?これらを考慮しながらセッティングが一通り完了するのがだいたい13時過ぎ。

ところでもう一つの問題は、この「にじくじ」が「ウルトラゲームズ」という枠で放送されているということ。このために番組内ではゲームをプレイするのが原則的に番組の中心に据えられる運命にある。そして、バーチャルキャストは原則的にHMDをかぶった状態で使用する設計になっている。ゲームをプレイするにはHMDを外す必要があり、HMDを外すとVR機器内のキャラクターが明後日の方向を向くことになる。

さらにMCの二人は番組中にADのカンペを見ながら進行する必要があり、こちらもHMDをかぶったままではカンペを見ることができない。ということで、いくつか裏技を使うことになる。そのうちの一つは、物理的にかぶりものを変えるということだが、これはバーチャルキャストが頭と手の位置だけでモデルの動きを制御する仕組みだからできる荒業だ。正確なトラッキング機能がついてたらできなかった。

写真は試行錯誤中の筆者。こんなので行けるのかな…とバケツをかぶってみる。ダイソーのバケツは素材もソフトで大きさも思ったよりちょうどよかった。ただしこれは自分の場合だけで、MCのやライバーの皆さんの頭のサイズは本当にそれぞれで全然ちょうどよくなかった(笑)。

ということで、こういったゲーム対応のことを考慮に入れつつセットアップし、テクニカルリハーサルが始まるのが15時。場合によってはこのあと別撮りのコンテンツを撮影することもあるので、そのためにトラッカーを増やして足元もきちんと動くようにする必要がある(スタジオ内は物や人がたくさんあってこれがかなり難しいということが後で判明するのだけど)。

テクリハの様子。カメラマンさんと弊社スタッフ。スタジオ内は人と物が多い

そして、セットアップとテクリハが終わるころには演者のみなさんがスタンドインしてリハーサルが始まる。ここまでで優に8時間はかかっているため、問題が生じる。コントローラーの充電問題だ。ということで、HMDの空いているUSBポートにハブを取り付けて、コントローラーに給電し続ける手法をとってみた。

※弊社スタッフです

これで何時間スタンバイがあってもバッテリーの問題はクリア。ちなみにHTC VIVEとトラッカー/コントローラーを一定時間放置すると、トラッカー/コントローラーの電源が自動的にオフになる問題は…\SteamVR\resources\settings内の「default.vrsettings」にあるturnOffControllersTimeoutの値を0にすれば、オフにならなくなるのでぜひ。

ということで、ここまで完了すると時間はすでに20時半。番組開始まであと30分!怒涛のように本番が始まってしまうのでここから一時間半は更に気が抜けないのです。ということで今週もぜひご覧ください。

「にじさんじのくじじゅうじ」オフィシャルサイト

WRITER PROFILE

茂出木謙太郎

株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員