txt:岡英史 構成:編集部

大阪での放送機器展

今年で4回目の開催となる関西放送機器展

関西放送機器展(以下:KBEE)が開催されるまでは、関西地区で目立った放送機器展は開催されていなかった。しかし、関西放送機器展も今年で4回目の開催を迎えて、定番化されたと言ってもいいだろう。

とはいえ、関西放送機器展の開催後には実績のある九州放送機器展も開催される。ではなぜ大阪に向かったのかといえばやはりPanasonicへの期待からだ。

Panasonicのお膝元である大阪での開催である。過去にも第1回はカメラコーダーの「AG-DVX200」、第2回はコンパクトシネマカメラの「EVA1」と日本初展示が続いたこともある。

Canon

NABで発表したシネマカメラ用単焦点レンズシリーズ「Sumire Prime」はメインブースでの展示。今までのCanonのレンズにはない質感は大阪でも人気だった。せっかくならもう少しバリエーション多く展示してればその良さをもっとアピールできたのでは?と個人的な感想。

Inter BEEでは巨大なブースを持つCanonも今回は小さめ。ブース自体が会場の一番端にあるのでなかなか人通りも少なかったが、展示物として4Kハンドヘルドのデジタルビデオカメラ「XF705」が見学に来ていた学生に受けが良かったようだ。

Sony

実は今回一番驚いたのがSonyブース。まさかの関西放送機器展に出展してるとは思わず、懇意にして頂いているIさんに声掛けてもえなければ見逃していた。

流石に展示物はミドルレンジパッケージの王道とも言える業務用ハンディカムのみ。もう一つは遂に市販化されたスマホをインカム代わりに使うシステム「Callsign/コールサイン」 これも今度レポートしたい機種の一つだ。

Panasonic

残念ながら一番の期待していたフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S1H」の展示はなかった。民生機ラインということもあるだろう。流石に地元開催なので、どのメーカーよりも大きいブースで出展していた。

展示の一つは音声認識文字起こしサービス「P-VOT」。リアルタイムに音声からテキストに変換し、変換最中でもキーボードから打ち換える事も可能。そのテキストへの変換正確さは筆者が知る限り、ほとんど類を見ない正確さだった。もう一つは、NABで公開されていた8K映像からの自動認識切り出し機能。

IPでコントロールされるためにそのシステムの柔軟さ・構築の手軽さは容易に想像がつくだろう(NABレポートを参照)。またカメラはやはりAG-CX350が人気だ。展示場所にほとんど現物が置かれていないのが、その人気の具合が分かる。IPカメラとして今までのシステムのどのカメラよりも安いので、今後のIP環境には大きく変わることになるだろう。

Adobe

Premiere Proの進化は、留まることをしらない。新機能新発表はなく、やはりNABで発表した機能のデモ展示となった。今や日本のAdobeの顔となった業界では有名なR女史のデモも手慣れたもの。今回は動画トラッキング機能を使った特定の対象物だけを消す「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能。今までだと、After Effectsを使ってフレームごとに処理するしかなかったことを自動で消してくれる。

ざっくり説明すると、前後のフレームを瞬時に処理して書き出して埋めるという単純なことだが、それを自動化できたのが正直凄い。筆者はEDIUSユーザーだが、こういうEDIUSにはない機能のデモを見るともう少しPremiere Proをちゃんと覚えた方が良いと確信できた。

アストロデザイン

シャープと共同開発の小型ENG系の8Kカメラを代表ブースに設置し、その8K映像から4K・HDをリニアに切り出す展示がメイン。簡単な操作で画質を落とすことなくできるのは、さすがにアストロデザイン製品ということを感じさせた。もしかしてNABでシャープブースに展示してた小型8Kカメラもあるのかと思ったが、民生機扱いの機種で、シャープブースではないので今回は見送りとの事。NABで簡易的に8K映像をEDIUSで出力出来たので、もう少し見たかったのも事実、残念!

ブラックマジックデザイン

関西でも黒魔術の破壊力は満点だ。特にBMPCC 4Kはその価格と共にインデペンデント系の映像作家には人気が高い。

ポケットというには少々大きい気もするが、前機種のBMPCC(HD)とは違い写真も撮れるのは魅力がある。またいち早く4Kスイッチャーを出した同社だが、それに見合う様に4Kブロードキャスト仕様のカメラも安価で登場。

放送芸術学院専門学校の講師の話では、4Kでのスタジオ授業としてシステムでの導入を検討中との事。いち早くこういった機材で勉強できる学生は本当に良い事だと思う。

アスク/ディ・ストーム

早い時期からIPの導入を行っていたTriCasterも、既に熟成の時期になっている。4K対応のTricaster TC1があれば、小規模から大規模の配信業務ができるのは既にデフォルトとも言える。

今回はNABで発表された新機能の日本初上陸。いつもながらいろいろなブース間の映像をIP伝送し、それを自ブースにて映像素材としての展示も見慣れた物。最初は興味本位でのこの機材も今や業界で当たり前の様に使われているのが凄い。

朋栄

ブロードバンド機材の標準の様な朋栄。今回新製品の発表は特になく、やはりNABでの新機種・新技術の国内初展示となる。注目すべきは映像の遅延を補正する新タイムラグチェッカー「EDD-5400」。映像から音声等の遅延を測定し、その結果を元に遅延をゼロにできるシステムを構築したデモを展示。簡単な操作でそれが視覚的にも良くわかる。とはいえ、筆者の仕事のレンジでは残念ながら使う事がなさそうだ

富士フイルム

今回は単独での展示ではなく富士フイルム株式会社/緑屋電気株式会社/武蔵オプティカルシステム株式会社の合同での展示となっていた。商品展示というより技術展示に近く、数多くの製品を展示せずに少数精鋭と言った感じだ。

中でもFUJINONレンズをメインとした大型中継車の展示は、流石に出来ないためカタログでの配布・説明になっているがオリンピックを前にこの手の大型4K制作を考えている方は是非参考になるはずだ(NISHIOレントオール)。

銀一

定番のSteadicam Voltはやはりその威圧感あるスタイルは遠目からでもわかるが、今回の目玉展示は音声関係。AATON社製のミキサーレコーダーは右側のダイヤルでほとんどの事を操作でき、瞬時に各部のデフォルトに戻ることも可能なので流れの早い現場でももたつくことはない。フェーダー自体は磁石で行うので、表面上にゴミ等があってもその操作には全く影響がなく構造的にガリも出にくい。

もう一つRODE製の小型ワイヤレスも非常にコンパクトでよさそうな感じだが、残念ながらまだ技適が取れておらずその性能は確かめられなかった。QBEE辺りではもしかしたら、取得できた個体の展示があるかもしれないので楽しみだ。

IDX

IDXといえば信頼性の高いバッテリーが有名だが、ミドルレンジ向けの伝送装置を販売している企業でもある。

今回は新製品であるCW-D10の実演展示。CW-F25は既に紹介しているが送受信機のセットで約100万円弱のプライスなので中々手が出にくいが、CW-D10はその半分、50万円を切っての販売。しかも送信機が2台セットになっている。つまり1台の受信機で2台分の映像を受ける事が出来る。これをRoland等の小型2chスイッチャーに組み合わせれば、非常にコンパクトな中継セットが出来る。今回のKBEEでは、筆者的に推しの一品。

ZOOM

新製品であるマルチトラックフィールドレコーダーF6の展示を最前面に出してきた。上位機種のF8nの半分の大きさに「これでもか」と思うぐらいに性能を詰め込んだ一品。

ZOOMと言えば音質に定評が良いわりに価格も優しく、これからこの手のレコーダーを買う方には一番お勧めしやすい。F6の性能は書くと非常に長くなるのでメーカーHPで是非確認頂ければと思う。これもQBEEでもう少しアップデートした物を展示予定との事だ。

NEP

世界中、何処の展示会に行っても確実に居るのがNEPの代表である政岡氏。業界では割と有名で、何か小物で困った事が在ればここに連絡すれば取りあえずどんなものでも作ってくれる。小回りの良さが良い意味での便利屋さんに近い。

バッテリーや電圧コンバーター、Vマウントコンバーターが有名だが、今回注目したのは自在アームのセット。簡単な作りだが、その耐荷重は大きく組み合わせによってDVX200レベルの大型ハンドヘルドカメラの保持も可能なほど。ばら売りもあるが、ケースでのセット物の方がコスパは良く使いやすい。RIGや切削好きの方は必見のパーツだ。

総評

今回はPanasonicのLUMIX S1Hを楽しみにしていたが、残念ながらそれは叶わずCine Gearに行けなかったことが本当に悔やまれた。それとは別に、KBEEでの新発表やお披露目の機種も数点あり、そのどれもが魅力的な物だった。丸1日あれば周れる規模なので東京からの日帰りも可能だ。

またこの展示会は他の展示会に比べて若い方(学生等)が非常に多く来場している。Inter BEEではネクタイを締めたスーツ姿の方が最近は多く、現場の方が来ていないという悲しい現実があるが、KBEEは逆に放送系の専門学生が多く見学に来て興味あるものを積極的に見て聞いて触っているのが非常に印象深い。

その若者のほとんどは、放送芸術学院専門学校の生徒と言うのが非常に興味深い。ここの学校も色々と噂に聞いているが面白い学校なのでこの辺もぜひレポートしたいと思っている。

なお、今月は月末の九州放送機器展にも参戦予定だ。相棒は心優しい巨人こと猿田氏と2名体制。なのでこのレポートは、即日アップを理想に頑張りたいと思う。

WRITER PROFILE

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。