txt:土持幸三 構成:編集部

実景を撮りに出かけてみる

コロナ禍の影響で、なかなか状況が好転する気配のないこの頃だが、いくつかの仕事の準備は万端にしつつも、余った時間に実景を撮ろうと思い立ち、自宅近辺や電車で行きやすい場所で撮影を始めた。「実景」というと聞きなれない言葉と思う方もいるかもしれないが、要するに実際の風景、登場人物やキャラクターが出てこない部分を実写で撮影する素材のことである。

実景は映画や映像作品で、主人公などの登場人物がいま存在している建物の外観、緊張感のあるシーンのあとの息抜き、場面転換や時間経過を表現するときなど様々な用途があるので多くの実景を持っていると重宝するが、本来は実際の作品にあわせた実景でないとなかなかマッチするものを撮影できないので徒労に終わるかもしれない。

最近では無料有料を含めストックフォトや著作権フリーの動画などで実景を取得することが可能で、筆者も外国を含む特定の地方の映像が必要で購入したことがあり便利で安上がりな場合が多い。ではなぜ実景を撮るのか?物語を想像しながら「こんな実景があれば使えるのではないか?」などを考えながら撮影するのが楽しいことと、その日の天気や時間で刻一刻と変わっていく風景の変化を撮影したいからだ。

移動も多いので最小の機材で

実景を撮影するときは出来るだけ荷物を少なくすることをおすすめする。やはりいいスポットを求めて歩くことが多いからだ。今回は近所の筆者のマンションの前からバスに乗って、10分ほどのスポットだったので、カメラが安定する大きめの三脚を持って行ったが、電車で移動するときなどはトラベル三脚を利用している。バックパック型のカメラバックの横に付けて移動でき、楽だからだ。

最近はそのスポットに行く前にGoogleマップのストリートビューを利用してある程度建物の位置などを確認してから行くと、狙ったスポットに早くたどり着けるのでよく利用させてもらっている。もちろん、陽の当たり具合などで見た目は全く変わるし、建物自体がなかったり、道路ができていたり、ストリートビューを過信するのは良くないので注意してほしい。

この日はレンズ3本と予備バッテリー、NDフィルター類で

スポットに着いてからはアングルとレンズを決めて撮影するのだが、当然、建物は動かないので、そのまま撮ると極端な言い方ではあるが動画なのか静止画なのかがわかりづらくなってしまう。それを回避するために筆者は何か動くものをフレーム内に入れるようにしている。遠くに電車が走っていたり、車の往来や、人の動き、木々や草が風で揺れていたりなど、何かしらフレーム内で動いているものがあればリアルに感じることができるからだ。

動いているものを入れるように心がける

実景を撮影するにおいて注意しないといけないことがある。著作権や肖像権などの権利問題だ。難しい問題なので法律的なことは専門家に相談してもらいたいが、筆者の認識ではランドマーク的な建物や個性的な建物の場合、その建物のデザイン等に著作権がある場合がある。その建物と同じものを建てる、ミニチュアなどにして商品を開発するということは明らかな違反であるが、風景の一部として撮影するには問題はない。

この風景の一部というのは他のいくつかの建物と一緒に撮影することで、その建物にだけに焦点を当てて撮影することはトラブルになる可能性があるので避ける。人物に関しても同様で、その人物にだけ焦点を当てて多くの人に個人が認識できるよう撮影することはダメだが、街の風景の中の一部として映り込むことに問題はない。

このように難しい問題もあるが、実景を撮影してよいことの一つとして、その場所の知らなかった面を発見することがある。歴史的な建物や井戸のような今はあまり見かけなくなった、かつての人々の生活を垣間見ることも楽しい。皆さんも時間があれば実景を撮りに出かけてみてはいかがだろうか。

WRITER PROFILE

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。