txt:宏哉 構成:編集部

自分にとっての海外とは

この十数年間、さんざん海外へ行っている筆者だが、実はプライベートでは数えるほどしか海外経験がない。大学時代にアメリカ一人旅行+数日ホームステイ。社会人になってからは新婚旅行ぐらいだ。あとは、毎年のラスベガス・NAB視察を含めて全て仕事での海外となる。

テレビの仕事をしていると、まとまった休暇などはほとんど取れない。会社員時代はゴールデンウィークはロケ三昧だったし、夏・お盆の時期は高校野球やら夏フェスやらで書き入れ時だ。年末年始は特番が目白押し。年が明けて1月の2週目ぐらいになると、やや時間に余裕ができるので旅行するならその時期ぐらいだろうか?2月はプロ野球のキャンプが始まるし、春になればセンバツ高校野球や新番組のロケが先行する。

独立してからは少し仕事内容が変わったが、似たようなラインを通っているし、また長期の休みを取るのが怖くもなる。フリーランスに最低月収はないので働かなければ収入はゼロだからだ。そして、そもそも海外ロケで年間最大60日も日本を離れていれば、個人的に海外に行きたいとは思わなくなる。

海外ロケ中はホテル暮らしが続く(2016年撮影)

そんなこともあって、本当にこの十年余りは仕事でしか海外に行ったことがないのだ。だが、数少ないプライベートな海外旅行で行った場所に、仕事で改めて行くと不思議な気持ちになる。プライベートで行ったときのことも鮮明に思い出すし、また仕事だからこそ楽しめる経験も生まれる。

今回は、プライベートで行って「また行きたいな」と思っていた街に、仕事で再び行った時の話である。なお、今回のお話は何の紆余曲折もトラブルもカタストロフもない事を最初に断っておく(笑)。

思い出の地

プライベートで訪れて、個人的にまた行ってみたいと思っていた街がドイツのローテンブルク(Rothenburg ob der Tauber)だ。ローテンブルクはドイツ南部のバイエルン州に位置し、ドイツ観光旅行の代表「ロマンチック街道」を構成する中世都市のひとつだ。

城壁に囲まれた都市ローテンブルク(2005年撮影)

ローテンブルクには新婚旅行で行っており、妻も大変に気に入っている街の1つ。街全体が城壁に囲まれ、中世の街並みがそのまま残る。「中世の宝石箱」とまで呼ばれている小さくて可愛い街なのだ。妻と行った時は街を囲む城壁の中を歩いて、少し高い場所から街を見渡したり、ローテンブルク名物のお菓子シュネーバルを買って帰ってホテルで食べたりした。街の“the写真スポット”も何カ所かあり、そこで二人並んだ記念写真を撮ったりと思い出深い街だ。

妻との記念撮影(ローテンブルク・2005年撮影)

ローテンブルクを囲む城壁内(2005年撮影)

そんな街に再び訪れることになったのは、11年6ヶ月後。旅番組のロケで街に1泊2日で滞在した。番組の構成的にはロマンチック街道を南下していくという作りで、フランクフルト空港から電車に乗り、ロマンチック街道の起点であるヴュルツブルグへ移動。そこでマリエンベルク城塞から街の俯瞰を撮影したり、ホテル紹介をするなどして一泊し、翌日はアウトバーンをロケ車で疾走してローテンブルクへ向かった。

ヴュルツブルク・領主司教の宮殿レジデンツ(2016年撮影)

ローテンブルク

ローテンブルクの城壁をくぐって街中に入ると、たちまちに11年前の記憶を思い出す。見覚えのある街並みに、石畳の小径。マルクト広場を囲むローテンブルク市庁舎と仕掛け時計のある市参事宴会場。そして、そのままシュピタール通りに歩みを進めると、最も有名な観光スポットであるプレーンラインが現れる。この場所は、いつも観光客が記念写真を撮るのに大賑わいだ。当然、11年前にも妻と並んで記念撮影を撮っている。

有名な観光スポット・プレーンライン(2016年撮影)

ロケで行った時期は、17世紀の30年戦争にまつわる街の逸話をお祭で再現した「マイスタートゥルンク」という催しが行われており、街の各所で中世の格好をした人たちが行進したり、当時の生活風景を再現していた。

17世紀の故事を再現したマイスタートゥルンク(2016年撮影)

ちなみに、新婚旅行で行ったときは、仕事が比較的ヒマな2月末から3月上旬で、寒いヨーロッパの冬を体験した。街には雪が積もり、観光客もまばらで、比較的静かな時期のローテンブルクを訪れていた。なお、その新婚旅行に持っていたカメラは、当時発売されてまだ2ヶ月のSony HVR-Z1J。言わずと知れた、Sony業務用HDVカメラ第一号機だ。

当時はまだまだ珍しい“ハイビジョンカメラ”。少なくともHVR-Z1Jでローテンブルクを撮影したのは私が初めてだろうと思っている。やっていることは、今も昔も変わらず…。新婚ほやほやの新妻に三脚を持たせて、私はHVR-Z1J片手に大喜びであちらこちらを撮影していた。

発売されたばかりのSony HVR-Z1Jで撮影する筆者。若い!(ハイデルベルク・2005年撮影)

HVR-Z1Jにてショーウィンドウの撮影。やってることは今と一緒(ローテンブルク・2005年撮影)

さて、ロケではマイスタートゥルンクの様子を撮影したり、郷土料理のシュバイネハクセ(Schweinshaxe)を食べ…撮影したり。ローテンブルクの街は、お店の看板がとても可愛く特徴的でユニークだ。ロケのネタには入っていなかったが、前回の旅行で訪れた際にその情報は知っていたので、今回も街インサートとして何カットか特徴的な看板を収録しておいた。もしかすると11年前に撮った看板と同じ看板を撮っているかも知れない…(笑)。

郷土料理のシュバイネハクセは迫力満点(2016年撮影)

ローテンブルクのお店の看板(2005年撮影)

また夜まで待って、街に打ち上がる花火の撮影をするなど、ローテンブルクを満喫。翌日は朝から市庁舎にある塔から街の俯瞰を撮影し、その後ローテンブルクを離れた。

夜のマルクト広場と市庁舎(2016年撮影)

市庁舎の展望塔から街の俯瞰撮影(2016年撮影)

海外ロケ中は、なかなかプライベートな時間が持てないのだが、空いている時間を見つけて少し街を散策するなど、個人的にもローテンブルクを楽しんだ。

再びロマンチック街道へ

ローテンブルクを離れて、その後さらにロマンチック街道を南下しながらロケを進める。隕石でできたクレーター跡に築かれた円形都市ネルトリンゲン。周囲を360°ぐるりと市壁に囲まれたかつての帝国自由都市は、漫画「進撃の巨人」の舞台モデルになったとされる。そのネルトリンゲンでは、市壁の外からドローンを飛ばして円形に囲われている特徴的な街並を空撮した。

ネルトリンゲンでドローン空撮(2016年撮影)

ネルトリンゲン空撮(2016年撮影)

その後、シュヴァンガウにある世界的にも有名なお城“ノイシュバンシュタイン城”を訪れ、最終的には街道の終着点フュッセンへと辿り着き、今回のロケは無事に終了した。

ノイシュバンシュタイン城を撮影。なお11年前に妻とも来ている(2016年撮影)

フュッセンからロマンチック街道を振り返る(2016年撮影)

仕事での海外

フュッセンのレストラン厨房にて(2016年撮影)

プライベートの旅行は純粋に楽しむ時間であるし、カメラを通してよりも自分の目で見る景色がたくさん心に残る。一方で仕事は完遂すべき業務があり、多くの撮れ高を日本へ持って帰るべくカメラを通して大方の景色を見ている。常に緊張感を持って現場に臨んでいるのだ。

しかし、仕事ならではの楽しみもある。観光で来たら入れないような場所へ入ったり、言葉が通じないことで難しかった現地の人々との交流も通訳者がいることで比較的容易になる。プライベートだと予算の都合で選べないようなランクのホテルにタイアップで宿泊できたり、予約の難しい人気の高級レストランへも入れる。そしてそんなレストランの裏舞台を見ることできるのはこの仕事ならではだろう。

観光で行く以上の経験をして帰ることができるのが、仕事で行く海外の魅力であり、やめられない要素なのだ。

WRITER PROFILE

宏哉

のべ100ヶ国の海外ロケを担当。テレビのスポーツ中継から、イベントのネット配信、ドローン空撮など幅広い分野で映像と戯れる。