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未来のヒントとなるようなテクノロジーやサービス

3月に開催されたSXSW Online 2021では、スタートアップによるピッチ大会"SXSW Pitch"がオンラインで行われました。今年は8つのジャンルに分かれて、合計40社のファイナリストが登場し、各分野の専門家や投資家に向けてピッチを行いました。ファイナリストの一覧はこちらからご覧いただけます。

毎年SXSWには非常にイノベーティブなアイデアを持つスタートアップ企業が登場するので、私達はいつもここから未来のヒントとなるようなテクノロジーやサービスを見出しています。そこで今回は、"Entertainment, Gaming & Content"や、"Innovative World Technologies"といったテーマでファイナリストに選出されたスタートアップの事例から、未来のエンターテインメントの変化を予報します。

予報01:AIに言葉で指示するだけの3Dゲームクリエイターが登場

Anything World/London, England

言葉で指示するだけで、誰でも簡単に3Dアニメーションをリアルタイムに生成できる動画制作アプリのAnything World。AIによる音声認識で、50万点以上の3D素材のストック中から最適な組み合わせを見つけ出し、3Dアニメーションを自動的に生成してくれます。

元々はGenZ世代向けに、SnapchatやTiktok等への投稿動画に使用する目的で開発されましたが、3Dゲームのキャラクターモーション等も声だけで非常に簡単に作り出せるので、映像制作のプロセスを大きく変えてしまいそうなテクノロジーです。

この技術がどんどん進化すれば、映像制作の経験の無い素人でも驚きの3Dゲームを生み出す事ができるようになるかもしれません。自然とゲームクリエイターに求められるスキルも変化していき、技術的な経験値よりも、豊かな想像力とそれを言語化する能力が重要視されるようになるのではないでしょうか。

予報02:後部座席で楽しむアトラクション型4DXドライブシアター

Holoride/Munich, Germany

車の後部座席で移動中に楽しめるVRゲームを開発するHolorideは、中止となった去年のSXSWに引き続きファイナリストに選ばれました。車のナビゲーションと連動し、移動速度や位置情報をゲームの演出と組み合わせる事で、後部座席にいながらまるでテーマパークのライド型アトラクションのような体験ができると言います。

実際に米国では、ハリウッドの映像スタジオUniversal PicturesがHoloride専用の映像コンテンツを作成し、自動車メーカーのFordと共にドライブしながらの視聴体験キャンペーンを行っています。もしかすると日本でも体験できる日が近いかもしれません。

今年のSXSWでは、特に自動車での移動時間をエンターテインメント空間として活用する動きが活発にありました。昨年から新型コロナウイルスの影響で映画館が利用できない状況とも相まって、映像を視聴する場所が徐々に変化していく予兆があるのかもしれません。もしかすると近い将来、自動運転付きのアトラクション型VRドライブシアターが登場し、新作映画の楽しみ方として人気になるかもしれません。

予報03:ガラス張りの巨大ビル全体がスクリーンになる未来都市

VideowindoW/Amsterdam, The Netherlands

空港の巨大なガラス窓を、映像が投影できる透明なスクリーンに変える技術を開発しているオランダのスタートアップVideowindoW。ガラスの上に外光の眩しさを調整できる特殊なシートを貼る事で、明るさをコントロールして映像を映す仕組みの様です。全ての窓をスクリーンに変えられるので、広告を表示できる場所が飛躍的に増加し、特に空港のような巨大施設は既存の建物を新たな収益源として活用できるようになります。

東京では近年、全面ガラス張りの巨大ビルが数多く建設されていますが、それがすべてスクリーンとして使用できるのであれば、巨大な広告塔になります。多くの人が行き交う渋谷スクランブル交差点には多くの街頭ビジョンが設置されていますが、それらに代わる新しいシンボルが建設されそうです。そうなると、従来のスクリーンサイズに囚われない、新たな画面アスペクト比や映像表現の手法が登場してくるかもしれません。

予報04:バーチャル空間で行う新世界"メタバース"の天地創造

SXSW Online 2021:Pitch "Entertainment, Gaming & Content"より
Teleportal/Los Angeles, CA

モバイル端末を使って、バーチャル空間上で3Dアニメーションの編集作業ができるアプリVortexを開発するスタートアップのTeleportal。VR空間上で直感的な映像制作ができ、さらに複数のクリエイターが同時にアクセスすると、リアルタイムにコラボレーションしながら作業が可能です。キャラクター目線でバーチャル世界を歩き回りながら、創造物の大きさや動きを体験しながらゲーム感覚で世界を作り上げていく事ができます。

今年のSXSWでは、"メタバース"に関するセッションが数多く開催されていました。非現実のバーチャル世界を作り上げる技術は、これからますます盛り上がってくるでしょう。物理的な制限の無いバーチャル世界であれば、神話にある天地創造のように指先ひとつで世界を作り上げる事も可能になります。人々の想像力によってこれまでに無い映像表現が生まれる事に期待したいです。

まとめ

今年のSXSW全体を総括すると、オンライン開催という事もあり、バーチャルな世界に対する熱量や期待感が例年以上に高かったように思います。かつてはSF的な視点で語られていた"メタバース"も、XRテクノロジーが身近になってきた事により、もうすぐにでも訪れる未来として非常に現実味を持って語られていたのが印象的でした。

映画上映やコンサートの開催が制限される中で、エンターテインメントの新たな場所を模索していく動きが活発となり、様々な可能性が示されたSXSW Online 2021。これらの可能性の中から、実際に未来の人気コンテンツが生み出される日はそう遠くないと感じています。

VISIONGRAPHでは、SXSWに登場する様々な先進事例から未来を予報する手法を、オンラインで学べる学習コース「未来予報アカデミー」を開講しました。詳しくはこちらをご覧ください。

WRITER PROFILE

VISIONGRAPH Inc. / 未来予報株式会社

イノベーションリサーチとコンセプトデザインが強みの未来像をつくる専門会社。SXSW Japan Officeとしても活動中。