■Pico Neo 3 Pro
価格:税込84,700円
問い合わせ先:Pico Technology Japan

エンタープライズ向けの一体型6DoF(6自由度)VRヘッドセット「Pico Neo 3 Pro(以下:Neo 3 Pro)」が、Pico Technology Japanから7月27日に発売された。 エンターテインメントはもとより、製造業、建設業、医療、教育等の多様な分野において、ますますVRのニーズが高まる今日、法人向けのデバイスにも注目が集まっている。筆者はNeo 3 Proの発売に先駆けて実機を体験することができたので、この新製品についてレポートする。

中国で一体型ヘッドセットの有力メーカーとして存在感を放つPico Technology社

Pico Technology社は、中国・北京に本社があるメーカー。2014年にVR/AR製品の開発を開始、 2015年に会社設立、同年最初の製品であるPico 1をリリースしている。 2019年には、世界初の4KのスタンドアロンのVRヘッドセットを、発売した。 中国では、スタンドアローン(一体型)のヘッドセットの市場においてシェアが高いブランドだ。2018年に中国・南昌で開催された世界産業VR大会に参加した際、展示会場に同社の立派なブースが出展されており、ひときわ中国・国内トップメーカーとしての存在感を放っていたのが印象的である。

2019年には、北京の本社を訪問する機会を得て、社内の各部門を視察させていただいた。最近では、日本でもVRイベント等で同社のデバイスが利用されることが多くなっている。

中国・北京にあるPico Technology社の日本人建築家が設計したという洗練されたデザインのオフィス

これまで日本国内においては、4K解像度の3DoFの一体型ヘッドセットPico G2 4Kが量販店等で発売されていた。あらかじめViveportストアが実機にプリインストールされており、VRビギナーにも優しい仕様となっていた。その後、6DoFに対応した一体型のヘッドセットNeo2を発売。

3DoF対応のPico G2 4K(上)と6DoF対応のNeo 2(下)。G2 4Kのみ、現在も販売中

Neo 3は、外部センサーが不要で、ヘッドセットに搭載されたカメラを使ってトラッキングをおこなうインサイドアウト方式の6DoF対応のスタンドアロンのVRヘッドセットだ。Neo 2の後継機種となり、プロセッサがQualcomm Snapdragon 845からXR2に変更。ヘッドセットに配置されたカメラの数が2つから4つに増えた。付属のコントローラーについても、スティック状の形状からトラッキングリングを配した光学式のタイプに改良されている。中国で発売されているコンシューマー向けのNeo 3は、国内での発売予定はなく、今回発売された法人向けのNeo 3 Proと、今後はアイトラッキングを内蔵したNeo 3 Pro eyeが2021年10~11月頃に発売予定となっている。

Pico Technology Japan社の最新機種、法人向け一体型6DoF(6自由度)VRヘッドセット Pico Neo 3 Pro

Pico Neo 3のスペックについて

Neo 3 Proは、ヘッドセット本体前面の4箇所に配置された広角トラッキングカメラにより、環境に依存せずに、ミリレベルの正確なポジショニングトラッキングが可能となっている。

本体前面の対角の4箇所に配置された広角トラッキングカメラ

改良された2本の6DoFコントローラーは、新たにトラッキングリングが備わり、32個の光学センサーが実装されている。競合機のスタンドアローン6DoFヘッドセットであるOculus Quest 2 for BusinessやHTC Vive FOCUS 3のそれにも近いデザインだ。

改良されたNeo 3 Proの6DoFコントローラー
操作スティック、Aボタン、Bボタン、戻るボタン、ホームボタン、トリガーボタン、クリップボタンが配されたコントローラーの操作系

トラッキングの精度は向上し、遅延が2ms以下に低減。リフレッシュレート(垂直走査周波数。ディスプレィが1秒間に何回描画を更新できるかを表す)は、72/90Hzである。CPUプロセッサは、Qualcomm社製の5G対応AR/VR専用のSnapdragon XR2を搭載。ディスプレイは5.5インチ、両眼3664×1920、画素密度773ppiのTFT液晶を採用。視野角は98°。レンズは、フレネルレンズ。立体視のポイントである瞳孔間距離(IPD)は、3段階に調整できる。RAMは6GB、内蔵ストレージは256GBだ。

瞳孔間距離(IPD)は手動で3段階(58/63.5/59mm)に調整可能

本体の操作系としては、側面にホームボタン、決定ボタン、戻るボタンが配され、直接操作することもできる。上面には、右から、電源ボタン、インジケーターランプ、USB Type-Cポート、ディスプレイポート、マイクが。底面には、音量調節ボタン、3.5mmステレオミニジャック、マイクが配置されている。

下から、ホームボタン、決定ボタン、戻る
Neo 3 Proの上面。右から、電源ボタン、インジケーターランプ、USB Type-Cポート、ディスプレイポート、マイク
Neo 3 Proの底面の状態。右から、音量ボタン、3.5mmステレオミニジャック。その下が、マイク

内蔵3Dステレオスピーカーは、左右のストラップの内側に配置。底面の3.5mmステレオミニジャックから、外部のヘッドフォン等も接続できる。

左右のストラップの内面に内蔵3Dステレオスピーカー。実際に装着すると、耳よりも少し前方のこめかみの下くらいの位置に来ることになる。音質は良好だ

接顔クッションは、業務等で大人数の利用を想定しているためであろう、温度や湿度の変化に強いポリウレタン製の衛生的な素材が使用されている。

汗や皮脂等を吸い込みにくいポリウレタン製のフェイスクッション。装着時の感触も良い

ストラップはプラスチックを使用した重量を前後に分散させるハードストラップ。背面部分には調整ダイヤルがあるため、微調整がしやすく、装着時に頭部にフィットさせやすくなっている。このような接顔部分やストラップの仕様は日本未発売のコンシューマー向けにはなく、Proのみのものである。

装着時に微調整が容易な調整ダイヤル

重さはPico2の本体340gから395gと、いささか増量している。ストラップ後部のバッテリーは5,300mAのリチウムバッテリーで、稼働時間はおよそ2.5~3時間程度だ。

後頭部の設置部分にもポリウレタン製のクッションが配され、後部にリチウムバッテリーが内蔵されている

Neo3 Proの映像のエンコードの推奨フォーマットについては、解像度が7680×4320、フレームレートが60fps、ビットレートが50Mbps、動画コーデックはH.264とH.265。または、4096×4096、60fps、50Mbps、H.264とH.265となっている。8K動画をローカル環境のPico Playerで再生してみたところ、カクツキはなく、スムーズに再生された。また、ディスプレイに網膜模様を感じるようないわゆるスクリーンドア現象も感じられなかった。

筆者の所持しているOculus Quest2と比較すると、彩度はいささか控えめに感じられた。Neo 3 Proの対応最大解像度は8192×4320、30fps、ビットレートが100Mbps、動画コーデックはH.264とH.265。または、5060×5060、30fps、100Mbps、H.264とH.265となっている。ビットレートを上げた状態で、視聴したところ、実際、鮮やかさも増すことになった。

8Kの360°VR動画が、高画質かつスムーズに再生された
VR表示のレイアウトの選択肢

インターネットのブラウザとしては、あらかじめインストールされているVRヘッドセット向けに設計されたFirefox Realityのアプリを使用することになる。

ワイヤレスと有線のクロスプラットフォームでPCと接続

Neo 3 Proは、Bluetooth 5.1および2.4GHz/5GHz WiFi6の無線LAN経由、または有線の2通りの方法で、PCと接続可能となっており、VRプラットフォームの「SteamVR」ゲームなどもスムーズにプレイすることができる。 Neo 3 ProとPCを無線で接続する場合、PCにSteamVRとSteamVR対応のVRアプリをインストールして、同社のサイトから「Pico VR Streaming Assistant」の最新バージョンをダウンロード、インストールしておこなう。有線接続にはディスプレイポート出力用の専用ケーブルが発売予定となっている(USD50ドル程度)。あいにく、原稿執筆のタイミングでは、まだ日本に到着しておらず、有線接続は試すことができなかった。

そして、NVIDIAの「ダイレクト・モード」をサポート。グラフィックドライバがヘッドセットを認識することで、「Pico VR Streaming」を利用できる。さらには、XR配信プラットフォームである「NVIDIA CloudXR」にも対応している。

対応ソリューションについて

Pico Technology社では、法人向けソリューションとして、業務用途でのニーズが高い「同時再生システム」を用意している(別途契約が必要)。このサービスは、PCやタブレットからローカルネットワークシステム(WLAN)を使用して、複数のデバイス(Neo 3 Pro等)をコントロールし、同時に動画コンテンツを再生、他人数での同時体験を実現するというものだ。

このサービスには、同時再生システム(HMD端末ソフトとPCコントロール端末ソフト)に加え、現場での立ち上げ及びトレーニング(1回無料)が含まれている。ロケーションベースのアミューズメント施設や映画館などエンターテインメント利用のほか、製品発表等のイベント、教育、トレーニング等での活用実績が既にある。また、スタンドアロンVRデバイスとコンテンツを、Wi-Fi経由でブラウザよりリモート管理することが出来るプラットフォーム「ArborXR」にも対応する。

そして、360°と2D映像を混合、マルチアングル(多視点)映像として、VRライブ配信を可能とする「Blinky」にも対応。VRライブ内で投げ銭機能やライブeコマース機能が利用できる。

その他、VR/AR/MRクリエイティブプラットフォームである「STYLY」を利用すれば、3DCG作品はもとより、写真・映像等を、VRアート作品として、空間表現することもできる。

「STYLY」のスクリーンショット

まとめ

Neo 3 Proには、業務用途で使用する場合でも、SNSアカウントとの紐づけや特別なエンタープライズ契約の必要がないため、アプリをインストールすればすぐに使用できるというメリットがある。価格は税込84,700円で、解像度は競合のVive Focus 3の5Kには及ばないものの、価格差が4万円以上あり、コスパが良いと言えるだろう。

また、重量は同じく競合のOculus Quest 2 for Businessより、トータルで100g程度重くなっているが、その分接顔クッションのフィーリングも良く、ストラップ等の操作性、耐久性は高い。

その他、Neo 3 Proは、オープンアーキテクチャ(openXR)として、主要な開発エンジンをサポートしており、開発者がビジネス用VRアプリケーションを作成することを可能にしている。さらに、この秋発売予定のNeo 3 Pro Eyeでは、Neo 3 Proの基本機能にプラスして、アイトラッキングが内蔵されており、ユーザーデータを収集することで、顧客の行動分析、トレーニング期間の短縮化、安全性や生産性の向上を図ることを可能にするなど、より高度な利用を想定した仕様になっている。

WRITER PROFILE

染瀬直人

映像作家、写真家、VRコンテンツ・クリエイター、YouTube Space Tokyo 360ビデオインストラクター。GoogleのプロジェクトVR Creator Labメンター。VRの勉強会「VR未来塾」主宰。