デジタルサイネージの新たなトレンドとなるキューブ型大型LEDディスプレイ

先日東京の兜町に新たにオープンした大規模複合用途ビル「KABUTO ONE」。このエントランスのアトリウムに設置された大型LEDディスプレイ「The HEART」がデジタルサイネージの新たなトレンドを示しているので紹介したい。

KABUTO ONEは永代通りと平成通りの交差点に面している。アトリウムは、高さ約14m、3層吹き抜けガラス張りの開放的空間を最大限活かし、地域のゲートとして金融拠点を象徴し、かつ日本の金融資本市場の"顔"として、視覚的かつ空間的にマーケットの活気や動向を感じられるキューブ型大型LEDディスプレイ「The HEART」が設置された。

KABUTO ONEのエントランス。ガラス越しにThe HEARTを見ることもできる

The HEARTは水平方向に4分割されて回転する可動構造になっており、表示される映像が変化しながらディスプレイも回転する様子は非常にインパクトがある。その名が示すとおり、兜町の心臓部にできた新しいシンボルになることを狙ったものだ。

表示される情報は、株式市場が開いているときには、刻々と変化する市況情報がリアルタイムで表示される。いわゆる株価ボードの進化版である。日本ではこうしたディスプレイ自体が回転可動式のディスプレイを用いたデジタルサイネージは非常に数が少ない。ほぼ初めてといってもいいように思う。

実際にこの空間に行ってみると、高さ14mのアトリウム空間に設置された巨大な立体的なディスプレイはまさに圧巻である。筆者が訪れた時も、4、5人が入れ替わり見に来ており、写真や動画に収めていた。なお今回は特に設定することもなくiPhoneで撮影したが、モアレや画像が乱れることなく録画することができた。

表示されるコンテンツはリアルタイムの市況情報で、いわゆるダイナミック(動的)サイネージであるが、常に株価や外為が表示されているのではなく、エンタメ的なコンテンツとして心臓をモチーフにしたと思われるCGが市況情報と交互に表示されている。つまり、かつて証券会社の前で投資家が株価ボードをじっと見つめていたような、直接的な株取引のための情報提供ではなく、エンターテインメントやアンビエント目的での利用となっている。

4分割されたディスプレイが回転するのだが、コンテンツの表示と動きが何らかの関連性や連動をしているというわけではない。なお音も使用しており、BGM的なものとデータが変化したタイミングでの効果音も利用されている。

ディスプレイを動かすことを考えた場合に、回転させることは、回転半径さえ確保できれば最も構造が簡単にできるだろう。回転させることによってどちらの方向からでも視認できるようになる効果も大きい。The Heartのようなディスプレイの物理的な動きと、ユニクロのキューブ型のディスプレイでロゴがサイコロのように転がる演出を組み合わせれば、さらに目を引くものになると思う。その意味では底面というか頭の上に来る面にもディスプレイがあっても面白いだろう。

大型ビジョンを中心に、デジタルサイネージは単純に映像を表示するだけではなく、前回紹介した裸眼3Dや、今回のような可動式といった工夫や差別化が増えてくるのだろう。DXの一環としてのデジタルサイネージ利用ももちろんあるが、こうしたインパクトメディアとしての特性を活かすことは、デジタルサイネージの王道であることは間違いない。

WRITER PROFILE

江口靖二

放送からネットまでを領域とするデジタルメディアコンサルタント。デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。