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音楽や映像などインターネット上のデジタルコンテンツの多くは、いつでもどこでも閲覧・投稿が可能という便利さと引き換えに、容易に複製が可能という特性から、クリエイターの権利が守られないというデメリットも含んでいました。

そんな中、最近登場した新たなテクノロジー"NFT"に注目が集まっています。NFT(Non-Fungible Token)とはブロックチェーン技術のひとつで、他のデータでは置き換える事のできない"非代替制"を特長としています。全ての売買取引が記録されるというブロックチェーンの特性を活かし、デジタルアート作品にも代替不可のデータを付与する事で、まさに一点物としての価値を持たせる事ができるのです。現実の絵画でもオリジナルと贋作とでは価値が全く異なるように、デジタルアートに於いてもNFTがあればオリジナル作品の価値を高める事ができます。

今インターネット上では、このNFTによって新たなデジタルコンテンツ市場が次々と生み出されています。映像業界でも、新作映画の公開方法にNFTが導入されたり旧作の未公開映像をNFTで販売したりと、従来のクリエイターの収益モデルが変化し始めています。

今回はそんなNFTと様々なエンタメ分野を掛け合わせて、デジタルコンテンツの未来に関する事例をご紹介します。

NFTxアート|インスタグラムの様にクラウド上にアート作品をコレクションする
SuperRare

様々なデジタルアート作品を購入できるプラットホーム。CryptoArtと呼ばれるデジタル作品は、その所有権を購入する事ができ、自分のコレクションに加える事ができます。NFTは数量や期間を限定する事でその希少価値をコントロールできるため、例えばコピーを多くして安価で売る事もできますし、反対にオリジナル1点だけを高価に売り出す事もできます。デジタルアートは実際に現物を手にすることはできませんが、NFTの固有データはブロックチェーンによって保護されており、購入の証明書となります。これまでギャラリーで展示されていたようなアート作品の売買がより身近なものになり、誰もがスマホの中に自分だけのコレクションを持つ時代が来るかもしれません。

また、これまで売買する事が難しかった映像やVRアート作品がNFTとして売り出される事で、高額で取引可能な作品として認識される様になり始めました。アート作品の表現の可能性が、これから更に大きく広がっていく未来を感じさせます。

NFTxスポーツ|動画をコレクションできるデジタルトレーディングカード
NBA Top Shot

画像:https://nbatopshot.com/

NBA選手のトレーディングカードがデジタル化し、試合での名場面を映像として楽しめるコンテンツに進化しました。従来のトレーディングカードは選手の写真をコレクションするだけのモノでしたが、デジタルになった事で、今では選手のプレー映像がカードに付属しています。プレー映像自体はネット上で検索すれば誰でも見られるものですが、NFTによってデジタルカードを所有可能なコンテンツにする事で、新たな価値を生み出す事に成功していると言えるでしょう。

各選手はLEGENDARY/RARE/COMMON等にランク分けされ、それぞれの人気度・レア度によって価格が異なり、公式のマーケットプレイスで売買が行えます。スター選手の非常にレアなカードは、実際に驚くほどの高額で取引されており、これまでの最高額のカードは約4000万円で落札されています

NFTxファッション|デジタルの洋服だけを作り続けるファッションブランド
The Fabricant

画像:https://www.thefabricant.com/

生地を一切使わずにデータだけのデジタルの洋服を作るファッションブランドのThe Fabricantでは、ゲームキャラクター用の衣装や、スポーツブランドとコラボした未来のコンセプトモデルとなる洋服を発表しています。実際に洋服のデータを販売する際にはNFTを使用し、アート作品のように所有する価値を生み出しています。

InstagramやTikTok等のメディアでのコミュニケーションが活発になればなるほど、実際に着る洋服よりも、動画や写真に自由に合成できるデジタルの洋服の需要が高まっていくという未来は、十分にあり得るのではないかと思います。

例えば、今のオンラインゲームが進化してメタバース(デジタル上のもう一つの世界)が実現する時には、自分のアバターに着せるファッションにお金をかける人は確実に多くなるでしょう。着替えの手間も必要なく、より自由にアレンジができるデジタルファッションで大胆にオシャレを楽しみ、実際の洋服は質素なファストファッションで揃えるというスタイルが人気になりそうです。

NFTx音楽|CDを買わない世代へ向けたプレミアムアルバム
Kings of Leon/When You See Yourself

画像:https://opensea.io/assets/0x557430421f8f3ed0a92aca211f1c05ad7b606288/0/

アメリカの人気ロックバンド"Kings of Leon"が今年発表したニューアルバム"When You See Yourself"は、各種サブスクサービスでも試聴できますが、NFTのデジタルアルバムとしても販売されました。収録されている音楽以外にも、限定のデジタルアートワークや特典映像を購入する事ができ、発売から2週間の間に購入したファンだけの限定盤となります。

かつての音楽好きは、沢山のレコードやCDを買い集めて、自宅の棚に収集する事を楽しみの一つにしていました。しかし、サブスクサービスによって音楽の聴き方が変わり、CDのセールスが激減した今、そもそもCDを買わない世代をターゲットにした新たな収益化の仕組みが必要とされています。CDが売れない時代に、ファンの所有欲を満たす新たなコンテンツとして、NFTアルバムがこれから主流になるのかもしれません。

まとめ

NFTは今年になってから次々と実用化され始めている新しい技術で、いま非常にホットなトピックと言えるでしょう。Twitterの創業者Jack Dorseyが2006年の初めてのツイートをNFTとして売り出したりEron MuskがNFTをネタにした曲を作って売り出したりと、様々な業界でその活用方法を模索しているような状態が続いています。

既に投票期間は終了していますが、来年のSXSW2022へ向けたセッション公募システム"PanelPicker"では、実に50以上のNFTをトピックにしたセッションアイデアが提出されました。これからどのような新しい活用方法が生まれてくるのか、注目していきたいと思います。

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WRITER PROFILE

VISIONGRAPH Inc. / 未来予報株式会社

イノベーションリサーチとコンセプトデザインが強みの未来像をつくる専門会社。SXSW Japan Officeとしても活動中。