機能面、安定性、コスパを決め手にAMD Ryzen Threadripper PROを45台導入

CGアニメーション、ゲーム、映画、テレビドラマ、実写、リアルタイムCGなど、映像に関する様々な業務を手掛ける株式会社デジタル・フロンティア。2020年8月にはAOI TYO Holdingsと日活と共同でグリーンバックステージを備えた日本最大規模の合成専用スタジオ「バーチャル・ライン・スタジオ」をオープンした。

デジタル・フロンティアが、フルCGアニメーション作品やバーチャルプロダクション制作用途にAMD Ryzen Threadripper PRO(以下:Ryzen Threadripper PRO)搭載マシンを45台導入(リプレイス)した。今回、同社CG制作部の舟橋俊氏に導入経緯や使用ソフトとの相性などについてお話を伺った。

株式会社デジタル・フロンティア CG制作部 プロダクションマネジメント室 室長 舟橋俊氏

――デジタル・フロンティアの基本的な業務内容を教えてください

舟橋氏:

CG制作業務をメインに、ゲームや映像、映像はテレビや映画だったりと、幅広く様々なジャンルを取り扱う映像制作会社です。長編のフルCG映画をコンスタントに制作しているのが特色です。
フルCGアニメーション映画やゲームだけでなく、実写映像の制作も行っています。実写映像では、Netflixと業務委託契約を締結しているので、Netflixオリジナル作品の実写ドラマなどでVFXやバーチャル・プロダクションにおける映像制作リソースを提供しています。

    
これまでにデジタル・フロンティアが関わった作品の一部(デジタル・フロンティアWebページより)
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――今回、Ryzen Threadripper PROを導入した経緯や決め手について教えてください

舟橋氏:

私が所属しているCG部は会社全体で一番大きい部署となり、CG部で使用するワークステーションは3~5年程度でリプレイスしています。ワークステーションは全部で500台ぐらいあり、年間で平均70~80台ぐらいをリプレイスしています。
毎年リプレイスしているので、ワークステーションのCPU関連の情報については常に注目しています。近年だとAMD製品の勢いがすごく、個人ユーザー、フリーランスでRyzenシリーズに乗り換えている人は多いと思いますが、CGプロダクションとしてはXeon以外を採用することに抵抗がありました。ですが、昨年Ryzen Threadripper PROでECCメモリーに対応したという点で興味を持ちました。
弊社のような大規模な制作を行う会社のプロダクションワークでは、やはり安定性やレンダリングができればOKではなく、毎回きちんと同じ結果が出ることや、他のマシンと差が出ないことが重視されます。2020年10月にRyzen Threadripper PROが搭載されたワークステーションが登場し、ECCメモリーに対応しながら、高クロックでコア数も多い製品だったので導入を決めました。どちらかというとCPUありきで選びました。
実は、導入検討時期に長編アニメーション映画の制作を行っており、現行のPCではスペックが足らないので変えてほしいという要望が社内からあり、翌年予定のリプレイスを待たずに急いで導入したというのも理由のひとつです。

AMD Ryzen Threadripper PRO

――今回のワークステーション以外で以前からRyzen Threadripper PROやAMD製品搭載PCを使用されていたのでしょうか?

舟橋氏:

ほとんどないです。直近10年ぐらい、おそらくCGソフトウェア自体がほとんどインテル社製ワークステーションを軸に開発・反映されていることもあり、AMD製品がCGソフトウェアできちんと動作するかという意味で少し敬遠していた部分はありました。AMD製品のコストパフォーマンスが良いことは知っていたので、フリーランスの方などは積極的にRyzen Threadripper PROないしRyzenシリーズを導入していると思います。

――長編フルCG映画制作のために同ワークステーションを導入されたと思います。もし導入していなかったら映画制作の完成にも影響が出ていたと思いますか?

舟橋氏:

納品期日が決まっていたので、必ず間に合わせるように作業を行ったかと思いますが、今回のワークステーションを導入したことで作業時間短縮や人件費削減などに役立ったかと思います。
逆に作業時間に余裕がある場合はさらに高クオリティーを求めます。作業ギリギリまで粘ってここを直そう、などの取捨選択を行うので、マンパワーの部分でもコストを削減できましたし、クオリティーを上げることにも繋がりました。今後レンダーマシンとしてもRyzen Threadripper PROを40~45台ほど導入を検討しています。

――先程、導入の決め手となるポイントに"ECCメモリー"というキーワードもありましたが、ECCメモリーにこだわる理由を教えてください

舟橋氏:

1フレームに対してレンダリングが数時間かかるため素材もあり、そこでクラッシュしないことが大事です。実際どのくらいクラッシュやエラーフレームの率が増減しているかなど、他社のCore iシリーズや、他のRyzenシリーズと比較検証はできていませんが、やはり安定性やサーバー的にレンダリングを行う面ではECCメモリーがよいということで、選定ポイントのひとつとしています。
弊社では、デザイナーのワークステーションでも待機時間や、デザイナーの退勤した夜間にはレンダリングのジョブが動作する仕組みとなっています。

――Ryzen Threadripper PROのシステム環境やワークフローの概要を教えてください

舟橋氏:

現在、Ryzen Threadripper PROを合計45台導入しています。2021年1月にRyzen Threadripper PRO 3955WXのメモリー64GBモデルを30台、2021年8月にRyzen Threadripper PRO 3975WXのメモリー128GBモデルの構成で15台導入しました。

――Ryzen Threadripper PRO 3955WXの16コアモデルを選んだ理由を教えてください

舟橋氏:

Ryzen Threadripper PRO 3955WXだと予算内に収まったのがひとつの理由です。また、アニメーションをつける上ではシングルコア性能を重視します。レンダリングにおいてはシングルコアだけでなくマルチコアの性能に注目して選定します。急遽導入を求められたのがアニメーション部署で、元々シングルコアが高い製品を導入予定だったため、予算面も含めて条件を満たしているRyzen Threadripper PRO 3955WXを選びました。
16コアのRyzen Threadripper PRO 3955WXでもマルチコア性能も充分に高く、アニメーション用途以外や夜間のレンダリングなど活躍が見込めたのもポイントです。

――Ryzen Threadripper PROはコア数だけではなく、メモリーなどのPCI Express数などの脚周りなども特徴ですよね

舟橋氏:

導入検討当時の製品でいうと、Intel製品はPCI Express 3.0に、Ryzen Threadripper PROはPCI Express 4.0に対応していました。後々Intel製品もグラフィックボード自体がPCI Express 4.0に対応するので、PCI Express 3.0対応製品でもそこまで大差はなかったのですが、今後グラフィックボードから変えることを考えると、最初から両方に対応しているRyzen Threadripper PROを選びました。

MotionBuilder、Maya、Unreal EngineなどでRyzen Threadripper PROが活躍

――先程紹介いただいたマシン構成で使用する主なソフトウェアを教えてください

舟橋氏:

導入した30台はアニメーションで使用しており、MotionBuilderやMayaといった、いわゆるCGアニメーションソフトを使用しています。Maya 2019バージョンからリアルタイムでキャッシュを溜めて再生する機能が搭載されました。その作業の際にもCPUの性能が高い方がキャッシュを溜めるスピードが速いです。
アニメーションをつけるにあたってMotionBuilderはかなりリアルタイム性の高いソフトです。弊社ではMotionBuilderを重用しており、長編のフルCG映画制作時にMayaでアニメーションをつける作業で少しスペックが足りなかったため、ベースのクロック数が高い方Ryzen Threadripper PROを活用しました。

――アニメーション以外のソフトウェアではUnreal Engineを使用しているとお伺いしました

舟橋氏:

Ryzen Threadripper PROはUnreal Engineでも積極的に使用しています。業界内ではLEDパネルやグリーンバックにリアルタイムでUnreal Engineの背景を合成しながら実写撮影を行うバーチャルプロダクションに注目が集まっています。バーチャルプロダクションではリアルタイムに背景を映し出す必要もあり、高クロックなCPUやグラフィックボードが必要です。
Unreal Engineでもレンダリングと同じように、ベイク(光の影の焼付け)処理をするときはコア数が多いと速かったりするため、レンダリングと同じような感覚でCPUのメニーコアの恩恵が得られつつ、Unreal EngineはゲームエンジンのためFPSあげるためには、やはりシングルコアの性能が必要です。そういったところで、メニーコアでシングルコアの数値も高いことでRyzen Threadripper PROの恩恵を感じています。

――バーチャルプロダクションの撮影現場では、カメラマンから背景の動きなどについてその場で色々と要望が出ると思いますが、いかがでしょうか?

舟橋氏:

現場でのリアルタイム性でいうと、Ryzen Threadripper PRO導入前から強いCPUのマシンを採用しているので、リアルタイム性という面では特に作業効率が上がったということはないですが、撮影前にデータを社内でUnreal Engineで制作する際に、広大な背景シーンなどが扱いやすくなるため、CPUの恩恵を感じられると思います。デザイナーからライトのビルドをするときの処理速度も全然違うと聞いています。
ゲーム業界だとUnreal Engineのリアルタイム性はとても重要になります。バーチャルプロダクションもリアルタイム性が求められますが、弊社ではヴァーチャルプロダクションの現場以外だと映像用途がメインになります。Unreal Engine上のフレームレートよりもビルドだったり、CPUだけでなくグラフィックボードの寄与が大きいところでありますが、より大きなシーンで大きなテクスチャを扱えることにメリットを感じています。

導入後に感じた効果とは

――Ryzen Threadripper PROの導入後に感じた効果や感想を教えてください

舟橋氏:

実は、アニメーション部門では先程も言った通り納期に間に合うように急いで導入した経緯もあります。導入前のPCだとフレームレートが出にくく、作業効率が落ちていたところで、Ryzen Threadripper PROを導入してフレームレートが改善されました。
また、Ryzen Threadripper PROはコストパフォーマンスに優れています。シングルスレッド性能も高いですが、さらにマルチコア化されており、かつ現状最大スレッド数は128レーンというスペックを実現しています。弊社では基本的にXeonを使用してきましたが、Ryzen Threadripper PROは同じ値段帯で比較して、現状Xeonを超えるCPUの強さが提供されており、今後も当然期待しています。

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