みなさん、こんにちは。株式会社エンタミナの田口真行です。

今回は、ライブ配信コンテンツの「画づくり」における「人物(演者)とスライド(PowerPoint)の映像合成」について解説します。

ピクチャー・イン・ピクチャー方式

オンラインセミナーやイベント配信で多くみられる「ピクチャー・イン・ピクチャー」。 多くのビデオミキサーに実装されている便利な機能ですが、画面全体に表示したスライドの上にカメラで捉えた人物を小窓で配置すると「スライドが大きく、人物が小さい」構図になってしまいます。主役は人物、スライドはあくまで補助資料という関係において、その立場が逆転してしまうのは大きなデメリットです。

スプリット方式

次に、画面を分割する「スプリット」。スライドを4:3の画角で配置し、空いたスペースに人物を配置するこの方式は人物のサイズは大きくなるものの、逆にスライドの領域が狭くなることで「画面全体が窮屈な印象」に見えてしまうこともあります。

また、ライブ配信の本番中、人物のポジションが中心から外れてしまったり、左右に広げた手のジェスチャーが画面内に収まりにくかったりと、構図が不安定になるリスクもはらんでいます。

人物&スライドの相乗効果を叶える「田口ブラック」

人物とスライド、互いの相乗効果を目指して、私が実践しているのが「ルーマキー(ルマキー)合成」です。「黒い背景+人物」のカメラ映像の上に「黒い背景のスライド」を透過合成するこの方式は、ライブ配信業界の一部で「田口ブラック」と呼ばれています。

スライドの黒い(暗い)部分を透過することでスライドの明るい部分だけが残り、カメラ映像の上に浮かび上がるように表示されます。グリーンバックなど特定の色を指定して透過する「クロマキー合成」と比べジャギーが出にくい点も大きな特徴です。

また、画面全体で人物の動き(ジェスチャーやハンドアクション)を表現できるので、スライドのアニメーションと連動したダイナミックな印象を与えることができます。

個人的に「人物とスライドの映像合成」の最適解は、この「田口ブラック」がベストだと思っていますが、唯一のデメリットとして挙げられるのが「黒のインパクトが強すぎる(偏った印象の画になってしまう)」点です。

コンテンツ表現の幅を広げる「バーチャルセット合成」

企業が発信するライブ配信コンテンツでは、「自社のブランドイメージに沿った画づくりをしたい」というニーズが多くあります。そこに対応すべく、私たちが最近取り組んでいるのが「バーチャルセット合成」です。

先日、弊社が実施したライブ配信では、「vMix」というWindows用のビデオミキシングアプリケーションを用いて、CG(静止画)で用意した仮想空間(バーチャルセット)に人物を配置し、ソフトウェア上でカメラワークをコントロールしました。

バーチャルセット内のディスプレイ枠にスライドや動画を表示したり、事前にセットしたカメラアングルにワンボタンで切り替えることもできるため、躍動感のあるダイナミックな画づくりをライブ配信の画づくりに取り入れることができます。

    
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また、複数のバーチャルセットを仕込んでおくことで、ライブ配信コンテンツのストーリーに合わせてセットを大胆に変化させるといったアプローチも可能です。

ライブ配信コンテンツの「画づくり」は、ユーザーに与える印象を変える

ライブ配信コンテンツの「画づくり」は、画面上に配置する要素それぞれのバランスやデザインによって「ユーザーに与える印象」が大きく変わります。コンテンツのテーマ、ユーザーに届けるメッセージとストーリーを軸に、それぞれプロジェクト単位でディレクションしていくことが重要です。

次回もどうぞお楽しみに!

田口真行(株式会社エンタミナ代表取締役/ウェブディレクター)
1999年、フリーのウェブディレクターとして独立後、株式会社デスクトップワークス(現・株式会社エンタミナ)を設立。企業サイトのディレクションを手がける傍ら、攻殻機動隊トリビュートアルバムのアートディレクションやSKYPerfecTV!「DesktopTV」のプロデュース、セミナーイベント主催など幅広く活動。ウェブディレクター育成機関「ウェブディレクタースクール」、ウェブディレクション支援ツール「Webディレクター手帳」、書籍「ディレクション思考」、ウェブディレクターの能力を可視化する業界初の試み「ディレクション検定」などの独自サービスを展開。動画制作や動画配信にも意欲的に取り組んでおり、2014年~2020年の6年間で1,300本以上のライブ配信を実施。

WRITER PROFILE

田口真行

株式会社エンタミナ代表取締役。企業サイトのディレクションだけでなく、アートディレクション、プロデュース、セミナーイベント主催など幅広く活動