爺の嫌がらせメイン画像

はじめに

前回、「引伸し用レンズ」をテストしました。その結果、マクロレンズ並みの性能を持っていることが判りましたが、世の中にはもっと特殊なレンズが存在します。今回採り上げるのは「拡大専用レンズ」です。

一般のマクロレンズは、被写体の2分の1倍ほどが最短撮影距離です。等倍まで撮影できる接写リングが付属したマクロレンズもありました。等倍とは、センサー上に1cmの被写体の大きさが1cmそのままに撮影できることです。

マイクロニッコール55mmに付属した等倍接写リング

等倍以上の拡大撮影に使うレンズは、マクロレンズではクローズアップしきれず、顕微鏡ほどの拡大率を必要としない、立体物の撮影に使う目的で開発されたレンズ群です。

例えば、腕時計のブツ撮り。一般には、マクロレンズの最短距離付近で時計全面のクローズアップを撮影すれば用は足りるはず。

写真A ニコンZ6+マイクロニッコール55mmの最短距離画面サイズ

ところが、CM撮影の現場でディレクターの無茶振り。

「…ちゃん、これじゃ普通の画だよね。ちょっとサビしいねぇ。もっと寄れないの」

(コンテに書いてないじゃないか、そんなこと聞いてねえよ)と、アナタが思っても口には出せませんね。

ニコニコしながら「早く言ってよぉ」と、どっかのCMで聞いたフレーズで受け流す、なんてことがあるかも知れません。そんな時に持ち出すのが、拡大専用レンズ。

ニコンZ6+オリンパス38mmの最短距離撮影の画面

(ここまで寄れば文句ないだろ)と、ドヤ顔のアナタが目に浮かびます。

どんなレンズがあるの

爺が持っているのは、1970年代のツアイス、ルミナ―40mm。F値は表示されていませんが、レンズ直径から1がF2、2がF2.8、3がF4と推測されます。

レンズ自体は小口径のネジマウントで、顕微鏡の対物レンズを取り付ける規格のようです。アリフレックススタンダードマウント用の延長チューブに取り付けて使っていました。

ソニーα6300+ルミナ―40mm

オリンパス38mmF2.8。自由に伸縮できる金属製のベローズのような延長チューブに取り付けて使います。

ニコンZ6+延長チューブを最長にしたオリンパス38mm
写真Aを撮影したカメラと被写体の距離
ソニーα6300+E~ニコンアダプター+オリンパス38mm延長チューブ最短

チューブとレンズの取り付けはオリンパスOMマウントですが、チューブのカメラ側マウントはニコンに改造してあります。

ニコンマウントに改造

ビスタビジョンカメラ(フルサイズセンサーと同じサイズのフィルム映画カメラ)に取り付けて、トンボの複眼をクローズアップ撮影するために、1996年に購入しました。

ビスタフレックスIIIに取り付けたオリンパス38mm

延長チューブに取り付けて使えるレンズは38mmの他に、20、80、135mmがありましたが、爺は持っていません。拡大撮影の性能を無視すればオリンパスOMマウントのレンズは装着できます。

TVトプコール62mmF5.6。16mmフィルムをテレビ放映用に変換するテレシネマシン用のレンズで、長野県のテレシネマシン製造会社から頂戴しました。L39mmのネジマウント。製造本数はテレシネマシンの製造台数と同程度の数百本で、極めてレアです。

TVトプコール62mm

参考に「引伸しレンズ考」でテストできなかった、フジノンEP38mmF4.5とフォコター2 50mmF4.5を拡大専用としてテストしてみました。

フジノンEP38mm
フォコター2 50mmの撮影状態

どうやって撮影するの

まずカメラとレンズを取り付けて、微動台に乗せ、そのシステムを三脚に載せます。

アルカスイスのモノレールを改造した微動台
ベルボンのモノレールを改造した微動台に乗ったソニーα6300+オリンパス38mm。延長チューブ最長

拡大撮影になると揺れも拡大されるので、手持ちでは全く対応できませんから、システム全体をガッチリした三脚に載せて、三脚ごと大まかな撮影距離に合わせてセッティングします。

微動台でカメラを前後して目的の大きさに画面を調整すると、徐々にピントが合って来ます。アダプターのヘリコイドで精密にピント合わせをします。

この状態まで追い込んで固定し、静止画、動画を撮影しますが、ちょっと力を入れて触るとピントがズレますから、最初からやり直し。書けば簡単そうですが、実際にやってみると意外に時間を食いますから、事前の訓練が必要です。

テスト撮影

撮影日2021年9月28日
カメラソニーα6300
画質エキストラファイン
ホワイトバランス晴天
絞りF11絞り表示のないルミナ―はその付近
露出カメラの適正表示より3分の1絞りアンダー

被写体はブーゲンビリアの花弁に包まれた白い花の本体。ピントは白い花の手前のエッジに合わせてあります。ここまで寄ると、花に産毛が生えているのがファインダーでも判ります。F11に絞っても狭い範囲にしかピントは合いません。

オリンパス38mmの最短撮影距離では、メシベに付着した花粉が見えるほど拡大撮影できます。通常、ここまでの拡大は必要無いかも知れません。

ソニーα6300+ルミナ―40mm延長チューブ無しの撮影状態
    
ルミナ―40mm
※画像をクリックして拡大
    
TVトプコール62mm
※画像をクリックして拡大
    
フジノンEP38mm
※画像をクリックして拡大
    
フォコター250mm
※画像をクリックして拡大
    
オリンパス38mm
※画像をクリックして拡大

まとめ

オリンパス38mm以外のどのレンズも、最短撮影距離付近では拡大率に大きな差はありません。ただし、レンズの焦点距離によって被写体との距離が違い、ライティングの自由度に差があります。

拡大専用レンズの3本と引伸し用レンズ2本の画質の差も、ほとんどありません。ここまで拡大すると、これら5本はフルサイズセンサーを完全にカバーしますので、カメラを選びません。

最後に、パナソニックGH4にキヤノンFD50mmF3.5マクロの最短撮影距離で撮影しました。ソニーα6300のAPS-Cセンサ-に対して、小型なマイクロ4/3センサーでは、見かけの拡大率が上がります。

    
パナソニックGH4+キヤノンFDマクロ50mmの最短撮影距離
※画像をクリックして拡大

オリンパス38mmの拡大率は別格として、「撮影データを表示しなければ、どのレンズで撮ったか判断できない結果になった」と、爺は思います。拡大撮影や接写の対象は無限です。見慣れた被写体でも細部を拡大することによって、違った視点の静止画や動画が撮影できるでしょう。

爺がロケに持って行くとすれば、自然の中で手軽に使える小型のフルサイズセンサーカメラとルミナー40mmを選びます。どのセンサーサイズのカメラと、どのレンズを組み合わせるかは、アナタの自由です。

どうです、何か撮りたくなったでしょう。

WRITER PROFILE

荒木泰晴

荒木泰晴

東京綜合写真専門学校報道写真科卒業後、日本シネセル株式会社撮影部に入社。1983年につくば国際科学技術博覧会のためにプロデューサー就任。以来、大型特殊映像の制作に従事。現在、バンリ映像代表、16mmフィルムトライアルルーム代表。フィルム映画撮影機材を動態保存し、アマチュアに16mmフィルム撮影を無償で教えている。