V-02HDがパワーアップ!"MK II"で、なにが変わったのか?

2018年12月に発売されたRolandの2チャンネル・マルチフォーマット・ビデオ・ミキサー「V-02HD」は"V-1HD(2015年12月発売)の弟分"的な製品として、V-1HDを上から縦に真っ二つに切ったような「ビデオ・ミキサーとは思えない超コンパクトサイズ」(外形寸法:幅160mm×奥行108mm×高さ51mm)で、その当時の"世界最小"2チャンネル・マルチフォーマット・ビデオ・ミキサーとして大きな関心を呼びました。

また、業務としてライブ配信に関わるエキスパートたちがこれまで想像するビデオ・ミキサーそのもののサイズ感だけでなく、10万円を下回る手軽な価格で発売されたことも大きなインパクトも与えました。

当時、信頼できるビデオ・ミキサーは"どんなに安価でも10万円"を超える価格帯。ライブ配信に興味があるビギナーにとって、さらなる配信のクオリティーの向上を目指したとき、"どんなに安価でも10万円"を超える価格帯のビデオ・スイッチャーへ手を伸ばすことはとても難しかったのです。

V-02HDが発売されて以降、V-02HDと同じような10万円を下回る低価格帯のビデオ・ミキサーが2019年から2020年にかけて様々な国内外メーカーから登場することになります。いま振り返れば、この流れは"V-02HDが起点となった"と言えるでしょう。

そして、2020年からYouTube Liveなどのライブ配信やZoomなどのビデオ会議システムを利用したウェビナーのニーズが一般の人たちにも大きく広まったこともあり、いまや、ビデオ・スイッチャーは(機能の差はあれど)エキスパートたちが持つ"特別なもの"から、ビギナーでも持つ、一般的で"当たり前なもの"へなりつつあると感じます。

そんな"特別なもの"から"当たり前なもの"となる流れをつくったV-02HDがこの度「V-02HD MK II」にパワーアップ!2021年9月24日にローランド株式会社から発売されます(希望小売価格はオープン、市場想定価格は税込50,000円前後)。

USB STREAM出力対応とAUDIO IN端子を増設

V-02HD MK IIはV-02HDと変わらず外形寸法が幅160mm×奥行108mm×高さ51mmのコンパクトサイズ。フロントパネルに配置される丸形のボタンやつまみの見た目も違いはありません。

一方、リアパネルとサイドパネルへ目を向けると、ふたつの違いがあります。それらは今回V-02HD MK IIでパワーアップされた大きな注目ポイントと言えるでしょう。

(1)最大非圧縮1080/60pのUSB STREAM出力

1つ目はリアパネルにあるUSB端子です。V-02HD MK IIではUSB2.0 Type-BからUSB3.0 Type-Cへ変わり、USB STREAM出力の機能が備えられました。最大で非圧縮1080/60pの転送が可能です(圧縮にも対応)。

ビデオ・スイッチャーから出力されるPROGRAM OUT映像とミックスされた音声を(ライブ配信やウェビナー配信の役割を担う)パソコンへ出力するには一般的にビデオキャプチャーデバイスが必要となりますが、V-02HD MK IIではこれらをダイレクトにパソコンへ出力することが可能となります。

V-02HD MK IIとパソコンを一本のUSB 3.0ケーブルでつないでしまえば、V-02HD MK IIはパソコンからUSBビデオ・デバイス/USBオーディオ・デバイスとして認識されるので、専用のドライバーをインストールする必要はありません(自動的にOS標準ドライバーがインストールされます)。

そして、USBビデオ・クラス/オーディオ・クラスに対応したアプリを起動すれば、USBのWEBカメラやオーディオインターフェースを接続したときと同じような感覚で、カメラデバイスとして、また、マイクデバイスとしてもV-02HD MK IIを選択することが可能です。

例えば、YouTube Liveをはじめとしたライブ配信で利用されるWirecast、vMix、OBS Studio やXSplit Broadcaster などの外部配信ソフトウェアだけでなく、パソコンのブラウザからライブ配信が可能なStreamYard、そして、ビデオ会議システムとして多くの人が利用するZoomといったサービスでもV-02HD MK IIを気軽に活用することができます。

(2)AUDIO IN端子は2系統に

2つ目は、サイドパネルにあるAUDIO IN端子です。V-02HDでは1系統だったステレオ・ミニ・タイプのAUDIO IN端子は、V-02HD MK IIで2系統となり、また、オーディオ・ミキサーやCDプレーヤーなどのオーディオ機器だけでなく、ダイナミック・マイクやプラグイン・パワー方式のマイクも接続できるようになりました。

なお、フロントパネルに配置されている[VFX]ボタンを長押ししながら[CONTROL 1]、[CONTROL 2]つまみを回すと、メニューに入らずともAUDIO IN 1やAUDIO IN 2の音量をそれぞれ調整することができます。また、このボタンとつまみの操作で調整できる項目はメニュー(=AUDIO FX ASSIGN)で変更することも可能です。

AUDIO IN端子が1系統のみであったV-02HDでは、話し手の声を確実に捉えるためにダイナミック・マイクなどを用いる際、結果、小さめなオーディオ・ミキサーと組み合わせて利用していた人もいらしたかもしれません。

V-02HD MK IIではAUDIO IN端子が2系統へ、そしてダイナミック・マイクやプラグイン・パワー方式のマイクも接続できるようになったことで、オーディオ・ミキサーを別途用意する必要がなくなります。

(+α)V-02HD MK II Remoteに加えてV-02HD MK II RCSが公開予定

    
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なお、V-02HD MK IIに備わっている機能の設定は、フロントパネルにあるボタンとつまみのみで行え、完結できます。さらに、iPad OS専用リモート・コントロール・アプリケーション「V-02HD MK II Remote」でもグラフィカルな画面で直感的にタッチ操作が可能です。

そして、V-02HD MK IIではmacOS/Windows OSに対応したリモート・コントロール・ソフトウェア「V-02HD MK II RCS」も公開予定となっています。

内部機能もパワーアップしたV-02HD MK II

V-02HD MK IIは入出力端子が追加、変更されただけでなく、内部の機能も追加が施されています。実際にV-02HD MK IIに触れてみて気になったポイントを4つ紹介します。ここではiPad OS専用リモート・コントロール・アプリケーション「V-02HD MK II Remote」を基にみていきましょう。

(1)AUX音声バスが利用可能に

    
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V-02HD MK IIにはすべての入力音声をミックスして出力される「MASTER OUTPUT」と、指定した入力音声だけをミックスして出力される「AUX」の2種類の音声バスが備わりました。

「AUX」は「MASTER OUTPUT」と異なる(組み合わせの)音声を出力することができ、これらを4つ出力端子(PHONES OUT、USB OUT、HDMI OUT PROGRAM、HDMI OUT PREVIEW)ごとに任意の音声バスを割り当てることが可能となりました(=AUDIO OUTPUT ASSIGNメニュー)。

例えば、ライブ配信にはすべての入力がミックスされた音声(MASTER OUTPUT)を「USB OUT」からパソコンへ出力し、一方、録画にはある特定の入力だけを選んだ音声(AUX)を「HDMI OUT PROGRAM」から出力する使い方ができます。

(2)ディレイが音声出力系統にも追加

    
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日頃、ライブ配信やウェビナー現場で起こるトラブルのひとつに「リップシンクがあわない(=映像信号に対して音声信号のズレが起こる)」があります。ほとんどは「音声が先に聞こえてきて、映像が後追いする」ケース。

このとき、V-02HD MK IIではAUDIO IN 1と2、USB IN、HDMI1と2から入力されるそれぞれの音声に対してディレイ(遅延)をかけることができますが、さらに「MASTER OUTPUT、AUX、USB OUTへ出力される音声に対してもディレイを設定することが可能」となりました(いずれも最大500.0msec)。これによって、音声入力に対して個別にディレイをかけることも、音声出力で(入力されるそれぞれの音声を)まとめて遅延調整することもできます。

また、「USB STREAMから(ライブ配信やウェビナー配信の役割を担う)パソコンへ出力する音声(=USB OUT)にはディレイを設定したい」けど「PROGRAM OUTから録画機器へ出力する音声(=MASTER OUTPUT)はディレイを設定したくない」など、MASTER OUTPUT、AUX、USB OUTそれぞれで設定したいディレイの値が異なるケースにも対応可能です。

(3)「リバーブ」「ディエッサー」「ボイス・チェンジャー」が追加

    
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V-02HDに備わっていた入力音声エフェクト「ディレイ」「ハイ・パス・フィルター」「ノイズ・ゲート」「コンプレッサー」「イコライザー」に加え、V-02HD MK IIでは音声に残響を加える「リバーブ」、声の音程や音質を変える「ボイス・チェンジャー」、歯擦音(サ行などの発声時に生じる耳障りな音)を軽減する「ディエッサー」が追加されました。

特に「ディエッサー」は声に対し効果的なエフェクト。プレゼンテーションやパネルディスカッションを主とするライブ配信やウェビナーのシーンにおいて、話し手の歯擦音を減らし、視聴する参加者が画面の向こうにいる話し手の声をより聴きやすいものとしてくれます。

V-02HD MK IIはシーンに応じてさまざまなエフェクトを設定することができますが、もしこうしたエフェクト設定に不慣れであれば、3種類のエフェクト(「ハイ・パス・フィルター」「コンプレッサー」「イコライザー」)を組み合わせて作られているエフェクト・プリセット機能の活用もオススメです。

プリセットは初期値の設定である「DEFAULT(ライン入力向け)」のほか、「MEETING(会議向け)」「INTERVIEW(インタビュー向け)」「AMBIENT MIC(環境音の集音向け)」「WINDY FIELD(風が強いエリアでの環境音の集音向け)」が用意されており、目的に応じたエフェクトの組み合わせを簡単に適用することが可能です。

(4)プリセット・メモリーに LOAD PARAMETERが追加

    
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V-8HDやV-1HD+といったRolandのVシリーズのHDMIビデオ・スイッチャーで"無くてはならない当たり前の機能"となった(シームレスに切り替えが可能な)プリセット・メモリー。V-02HD MK IIもプリセット・メモリーの呼び出しはシームレスになりました。

プリセット・メモリーは映像や音声の設定や操作パネルの状態など現在の設定を保存し、必要なときに呼び出して使うことができる機能で、V-02HD MK IIでは8個のプリセットメモリーが用意されています。

そして、V-02HD MK IIではプリセット・メモリーを呼び出すときに、プリセット・メモリーに含める内容をメニュー単位で設定をすることができるようになりました(=PRESET MEMORYメニューのLOAD PARAMETER)。

私自身のV-8HDやV-1HD+における利用ケースでいえば、例えば(複数パターンの)PinPの大きさと位置"だけ"をプリセット・メモリーで呼び出したいとき、事前にLOAD PARAMETERで「PinPのみONにして他はOFFに設定」した上で、プリセット・メモリーを呼び出すことがあります。

V-02HD MK IIでも(V-8HDやV-1HD+と似たように)LOAD PARAMETERが利用できるようになることで、プリセット・メモリー呼び出し時に起こり得る(自身の設定ミスによる別の設定項目の呼び出しによる意図しない形での)トラブルも回避できそうです。

なお、iPad OS専用リモート・コントロール・アプリケーション「V-02HD MK II Remote」では、登録されたプリセット・メモリーがサムネール表示されるようになりました。それぞれのプリセット・メモリーに登録された画面レイアウト構成が視覚的に確認できるようになったことで、時折起こる「オペレート中に誤ったプリセット・メモリーを呼び出してしまわないか」の不安を軽減する一助となるでしょう。

    
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V-02HDの良さはそのまま"MK II"へ

V-02HD MK IIは2つのHDMI映像入力端子と、2つのHDMI映像出力端子を備え、入力と出力の両方にスケーラーを搭載し、マルチフォーマットに対応しています。

INPUT 1、2端子にはHDMI出力端子のあるビデオ・カメラ、パソコンやスマートフォン、タブレットを接続することができます。iPhoneなどのスマートフォンから出力された映像を入力しても、16:9ではない一昔前の4:3の画面出力しかできないパソコンから出力された映像など、2つのHDMI映像入力端子に接続された機器がお互い異なる映像解像度でも、これらを正しく認識し、スケーラーが適切な形で受け入れます。

逆に、16:9ではなく、4:3などの映像を入力しなければならないプロジェクタが出力先となったとしても、そのフォーマットにあわせて映像を出力することができるのはV-02HD MK IIでも同じです。

こうしたV-02HDの良さはそのままに、V-02HD MK IIでは2系統となったステレオ・ミニ・タイプのAUDIO IN 1、2端子はオーディオ・ミキサーやCDプレーヤーなどのオーディオ機器だけでなく、ダイナミック・マイクやプラグイン・パワー方式のマイクも接続可能になったこと、さらには、「ディエッサー」をはじめとするオーディオメーカー"Roland"ならではの充実した音声を司る機能も詰め込まれたことによって、音声面におけるパワーアップも図られました。もちろん、V-02HD MK IIにはPHONES端子が備わっていますから、イヤホンやヘッドフォンを挿せばこれらの音声モニタリングもできます。

先にも触れたように、YouTube Liveなどのライブ配信やZoomなどのビデオ会議システムを利用したウェビナーのニーズが一般の人たちにも大きく広まったことで、いまや、ビデオ・スイッチャーはエキスパートたちが持つ"特別なもの"から、ビギナーたちも持つ"当たり前なもの"へなりつつあると感じます。

価格面でももちろんですが、コンパクトボディーでバッグの片隅に忍ばせておけるぐらい可搬性が高いことに加え、洗練されたボタンとつまみが配置され、ビギナーの人でもパッと見て直感で操作ができる機能性ももつV-02HD MK IIはよりビギナーの人たちにも手に取りやすくなりました。

小規模ZoomウェビナーでもV-02HD MK IIがパートナーに

前モデルのV-02HDでは予算や現場での運用に限りがある小規模な現場においてフット・スイッチやエクスプレッション・ペダルを活用し、2台のカメラを使った人手のかかる撮影でも、1人で運営できるスタイルを提唱しました。

また、カメラバッグに入るコンパクト・スイッチャーであることから、他のRolandのビデオ・スイッチャーと一緒に持ち歩く、サブスイッチャーとしてV-02HDを活用している人も多かったかもしれません(私自身もそうでした)。

V-02HD MK IIはこれまでのV-02HDの運用スタイルと同じように使うことももちろんできますが、それに加え、V-02HD MK IIにUSB STREAM出力の機能が備わったことによって、Zoomなどのビデオ会議システムを利用したウェビナーの現場でもV-02HD MK IIの活用する機会が多く生まれるように感じています。

Zoomウェビナーの現場ではビデオ・スイッチャーに求められる映像入力の端子が少なく済むことがあり、「4入力が可能なビデオ・スイッチャーを現場へ持っていったが、結局、カメラ1台とパソコン1台しか繋げなかった…」というケースもあります。

そんな、カメラ1台、講演用のスライドパソコン1台、マイク1~2本といった小規模のZoomウェビナー現場であればV-02HD MK IIだけで事が足りると感じています。

現場の規模に応じてエキスパートたちが使うことができる信頼性を備え、そしてこれからライブ配信やウェビナーをはじめようと考えているビギナーたちにも、まず初めの一歩として選べる操作性のあるビデオ・スイッチャーでもあるのです。

コンパクトだけど"小回りが効く"Roland V-02HD MK IIは、そんなシチュエーションの現場での新たなパートナーとなってくれるはずです。

WRITER PROFILE

ノダタケオ

ライブメディアクリエイター。スマホから業務機器(Tricasterなど)までライブ配信とウェビナーの現場を10年以上こなす。