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Special

Vol.01 ワンマンオペ、スモールプロダクションサウンド収録の留意点

2013-09-19 掲載

いつの頃からだったろう、NLEソフトの進化と低価格化のせいで、ディレクターが自分で編集することが当たり前になってきた。最初は粗辺粗編などと呼ばれ、ザクッと全体像が分かる程度の物だったが、次第にそれがそのまま本編集として使われるになり、今では高級映画やポスプロスタジオをしっかり借り切れる贅沢なプロジェクトでもない限り、編集ができないディレクターが仕事を得ることは難しい時代になった。そうなってくると「もう音も含めて全部やっちゃって!」って事になるのは時間の問題だったし、クライアント側の考え方としては自然な事だとも思える。お陰でディレクターは今まで以上の出資と学習を余儀なくされるようになるが、確かにコミュニケーショントラブルは減少し、また、私のような音楽家出身の者でさえ映像作家を名乗ることもでき、更にワンマンオペレーション(以降OMO)を前提とした仕事やサービスが増えてきたのは歓迎すべき事象だと個人的には思っている。

だが待て。確かにテクノロジーやクライアント目線で考えれば自然な流れかもしれないが、実際にやる人間にとっては決してスムーズな流れではない。なぜならディレクターという立場を考えると、撮影から編集に至るまで最も重要な「目」は鍛えられ、またそれに伴う学習や研究も積んできているはずだ。反面、音に関しての善し悪しは判断できるであろうが、その作り方やコントロールとなると全く経験がないといった人がほとんどだ。事実、OMOのプロジェクト等では音声面に問題を残したまま発表、納品されているケースが目立つ。ここでは音楽畑出身の私が、OMO映像作品の音声面の向上をさせるべく注意点やTipsを紹介していこうと思うが、まずは大前提として「耳」を活かすこと、そして鍛えることが重要だ。

クオリティは収録時にほとんど決まる

sound_01_01.jpg

今回は音響的知識があまりない方向けに書かせていただこうと思っているので「そんな事知ってるわい!」という内容もご容赦願いたい。さて、OMOに限って言うとマイクはどこかに置きっぱなしと考えた方が現実的だろう。つまりどこにどんなマイクを置くかで録り音のほとんどが決まってしまうと言っても過言ではない。最近では特別な音響ソフトを使わなくても、NLEソフトの音声トラック上でいろんなコントロールができるし、エフェクトも掛けられるが、録り音を失敗してしまうと後ではどうにもならないことも多いのでしっかり神経を使って録っておくことが重要だ。

一言で良い音と言ってもそれは目的によって様々なので、最終的にどういう音が作品や場面にとってベストかをしっかりイメージした上で、まずは現場の音のアナライズ(分析)をする。この時、注意するポイントは主音(例えばインタビュー等ではその人の声)と環境音(周りのガヤ音や主音以外の人の声、風や川、その場に流れている音楽等)の音量と方向。そして最後にそれらが混ざり合った残響音、つまりエコーやリバーブと呼ばれている物だ。これはどんな空間でもある物で、正体は壁や床、その他の物に跳ね返って、また跳ね返って飛び回っている音。後からエフェクター等で付け加えることは出来ても、差し引くことは困難なので注意が必要だ。この主音、環境音、残響音の三種類の音のバランスをできるだけ理解し、理想的な形で録音しておくことが大事だ。また、そのバランスを理想に近づける為に、可能であれば収録場所や立ち位置等もよく考えて選びたい。

収録時、できるだけ完成イメージに近づけるヒント

ここで一例をあげておこう。室内でのインタビュー収録を例にとると、まずできるだけ環境音を抑え、主体となる人の声を浮き立たせる方向で考える。窓の外からの音や他の人がいるようなら、マイクがそちらに向かないようにすれば環境音は抑えられる。つまりインタビュー対象の後ろに環境音の音源を置かないようにする。それが不可能な場合には、マイクを正面ではなく上か下から口に向ける。どちらがいいかと言えば、マイクの向いた方向の先による。これは残響音のバランスに関係するのだが、前述のように残響音は跳ね返りによるものなので、一般的には天井とその周りの空間の方が床よりも多くの残響音が飛び回っている事が多い。こういった時はマイクを床方向に向けると残響音の量は抑えられる、つまり上から狙うのだ。こう考えると床の材質も大理石や板の間よりも、フカフカの絨毯の方が残響音は少なくなるし、その為にマイクの向く所にだけでも吸音材や絨毯を敷くと効果がある。同じ理由で壁とカーテンでも音が変わる。もし屋外であれば下から空に向ける方が残響音を抑える事ができる。空には跳ね返る物が何もないからだ。

現場の臨場感を捉えるには、その逆方向へ向きを変えれば環境音と残響音のバランスが変わっていくはずだ。もちろんマイクと喋る人の口との距離は近ければ近いほど明瞭なインタビューが収録できるが、マイクを向ける角度や方向も同じくらい重要だという事を覚えておいてほしい。だからカメラに付いているマイクだけでは、音はコントロールしきれない。外部マイクとマイクスタンドは是非用意しておきたい。この微妙なバランスを現場で聞き分けるのは難しいことだが、その為には密閉型で高能率なヘッドフォンを用意しておくべきだ。

マイクの種類と特性を理解せよ

sound_01_02.jpg

さて、もう一つ大切な事はマイクの種類と特性をしっかり理解しておく事だ。「プロが使っているから」とか「映像用と書いてあるから」とか、「普通ガンマイクでしょ」等の理由で選ぶと後でエラい目に合う。そして高けりゃイイというものでもない。勿論、高額のマイクにはそれなりの理由があって、高音質の物が多いが、それも使うシチュエーションを間違えると録りたくない音まで高音質でしっかりと録音されてしまう。特に重要なのは指向性と呼ばれるマイクが捉える角度だ。360度全方位から音を拾う無指向性、流行りのサラウンドマイクも指向性はないとは言えないのだが、360度と考えた方がいい。2本のマイクで約180度をカバーするワンポイントステレオマイク。ピンマイクもその名前から誤解をしている人も多いが指向性は広めの物が多い。そして指向性角度が非常に狭いガンマイク。これも誤解している人が多いが、何も超高感度で遠くの音を拾うものではなく、指向性角度が極端に狭いため、マイクを向けた方向以外の音を拾う事を抑え、結果向けた音が強調されるという物だ。逆に狙いを外すと途端に音は小さくなり、その差は大きい。故に「普通はガンマイク」というのはそのマイクを向ける専門のスタッフがいるか、対象物が絶対動かないといった場合にしか使えない常識なのだ。

時々カメラにガンマイクを付けている人を見かけるが、音の事を考えるとこういった使用で有効なのは、ど真ん中に被写体を置くショットしか考えられない。まぁ、角度が狭いといっても少し距離を離せば集音エリアは広がり、ある程度の余裕はできるが、何にしても注意が必要なマイクだ。もう一つよく使われているのがピンマイクだが、勿論、至近距離に置ける上、複数の人数でも同じように録れるという点では非常に使いやすい。しかしマイクの音質が良いということでは決してなく、更にワイヤレスで飛ばすとなると特にアナログの場合、音声は強く圧縮されラジオのようなフラットな音質になってしまう。それはそれで聞き慣れた安心感のある音ではあるが、臨場感は全くなく、平面的な音になることは避けられない。

しゃべっている言葉が分からなくなることは論外だが、映像で求めるように、もう少し音も立体的に作ることを心がけてほしいと思う。

txt:ふるいちやすし 構成:編集部


Vol.00 [SoundScape2013] Vol.02

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[ DATE : 2013-09-19 ]
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