[After Beat NAB SHOW 2016]Vol.00 NAB総括「4K/8K」「HDR」「VR」が今年のキーワード
2016-05-25 掲載

txt:稲田出 構成:編集部
今年のNABの総括

直近で国内では大きな地震があったが、世界的にも異常気象やテロなど一般人にとって様々な脅威があったといえよう。NABでも今年は入り口と出口がわけられたほか、K9(警察犬)の姿がそこここに見られ、テロに対して警戒している様子が垣間見られた。世界各国から放送関係者が訪れるイベントということで、気を使っているようだ。
さて、今年のNABはすでに放送が始まった4Kとまだ少し先だが8K、更にはそれに伴うHDRがトレンドといえ、IP対応やVRに関連した出展も目立っていた。実用期に入った4Kはすでにデジタルシネマや小型ビデオカメラが発売されているが、スポーツイベントなどの中継に対応した2/3レンズマウントを採用したカメラが各社から発表されている。

これらB4マウントのカメラはソニーのほか、池上通信機や日立国際、パナソニック、グラスバレーなどから出展されているが、今年はソニーが4K対応のスーパースローモーションカメラHDC-4800を発表しており、8倍のスローモーション撮影を可能としている。放送用のスローモーション対応4Kカメラとしては他にも朋栄が発売しているが、センサーサイズが異なるため、100倍前後のズーム比をもつレンズを使うことはできない。
8Kのカメラはまだ本格的な放送まで多少時間的余裕もあり、試作品的なカメラが池上通信機や日立国際、アストロデザインなどがNHKとともに開発していたが、今年はアストロデザインが新製品を発表していた。同社は4Kや8Kをいままで他社に先駆けて開発しており、デザイン的にも実際の運用を行う上でも現行のカメラとは異なり(業界でいうと多目的カメラ)、試作品といったイメージだったが、今回発表になったカメラはだいぶこなれてきたようだ。
SDからHDへの移行時は両立性を担保するということもあり、色域は同じだったが4K/8Kでは広くなっているほか、広いダイナミックレンジへの対応も図れ、よりリアルな描写が可能になっている。色域はAdobe BGBやDCI P3などがあるが放送業界ではRec.2020となっており、業界によって若干ことなっている。ダイナミックレンジはHDR(High Dynamic Range)ということで、民生機を含めCESやNABなどで最近試作品が盛んに発表されるようになってきた。ダイナミックレンジはHDRにより従来の放送100nitに比べて格段に広くなっているが、放送業界では現状Hybrid Log Gamma(ARIB STD-B67)とPQガンマ(SMPTE ST 2084)の2つが主流となっており、今後どのような方向に向かっていくのか注目したい。

最近のテレビは地上波の放送を見るだけでなくネットへの対応やホームビデオの再生、デジタルカメラの画像再生などもあり、多様化しているのが現状だが、HDRを実現するためにはバックライトの高輝度化が必要となり、このあたりをどのようにクリアするかが課題となりそうだ。もちろん業務用のモニターも同様で、EIZOなどがHDR対応のモニターを参考出展していた。
過去歴史的には放送業界がイニシアチブをもち、こうした規格の方向性を決めてきた経緯があるが、テレビが放送の受信以外にも利用されるようになった現在では状況が変わってきたといえよう。4K/8Kへの対応もそうだがHDR対応に関してもAmazonプライムビデオやNetflix、YouTubeが対応する方向であり、放送業界以外も大きなウェイトを占めるようになってきた。今やネット業界を抜きに放送を語れないといってよいだろう。
NABでもネット関連メーカーの参加は多数あるが、その流れの中で配信を含め様々な部分でIP化が進んできている。特に今年はスタジオ系のIPの規格が決まったことで、AIMS Allianceおよびソニーが中心に提唱しているネットワークメディアインターフェイスなどの採用表明が各社から行われた。配信部分でのIP化はすでにかなり普及しているが、4K/8KやHDRだけでなく、スマホへの配信でも新たな方向に向かっている。スマホを対象としたVR画像の配信だけでなく、スマホに装備されているGPSやジャイロセンサーを使うことで、ゲームを始めとして様々な応用が期待できるといえよう。それに伴い3Dによる撮影システムや390°パノラマ撮影システム。こうして撮影した画像を処理するソフトウェアなどこの分野は多岐にわたり、以前流行った3Dのブームとは一線を画している。
さて、今回はこうしたトレンドを中心として各メーカーの出展製品を元に更に具体的に見ていこう。
グラスバレー

LDX-86シリーズはHDや4K、スローモーションなどをソフトウェアアップデートで対応可能。2/3インチB4マウントを採用している
Harmonic

Thomson Video Networks社とともに超高精細ハイダイナミックレンジ(UHD HDR)のほか、VRへの対応ソリューションを表明
Carl Zeiss

ZEISS VR ONE。スマホを装着して使用する3Dビュアーで、会場ではドローンに搭載されたカメラからの映像を上映していた
TVU Networks

360°パノラマVR映像伝送システム。既存のVR撮影システムを利用したバーチャルリアリティ映像伝送システム
日立国際電気

4KカメラSK-UHD4000。2/3型B4レンズマウント採用しているほか、CCUなどと組み合わせて運用することが可能
txt:稲田出 構成:編集部
[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2016-05-25 ]
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