txt:西村真里子 構成:編集部

さあ、いよいよ始まったSXSW Online 2021。さすがはテクノロジーとカルチャーのトレンド発信基地、オンラインイベントでもインターフェイスやカウントダウンでのワクワク感の演出が他のオンラインイベントよりも一歩飛び抜けている。

まず注目したいのはSXSWのテックトレンドセッションだ。Future Today InstituteのファウンダーAmy Webbが毎年SXSWで発表しているセッションだが、参加者や皆さん自身も体験したとおり、2020年は様々な変化が感じられた年だったといえる。

その結果、Amy Webbが作成したテックトレンドは過去比22%増量、スライドにして504ページのボリュームになっている。全編が気になる方はこちらからダウンロード可能だ。この記事ではその中でも特に注目したトピックをピックアップしていこう。

Topics 1:You of Things~あなた自身の体がネットワークであり、コネクティッドな存在である

私たちはいまスマートフォンを通じてネットワークにアクセスするのが当たり前と思っているが、実はスマートフォンの売上げ台数は米国、世界で2018年以降下がっている。その代わりに登場したのがウェアラブルデバイスだ。特にARグラスやリングはAmazon、Apple、Facebookなども参戦しながらこの1、2年で普及し裾野を広げている。

ARグラスに関して驚いたのは付加情報をメガネが提供するだけではなく、不要な情報を削除してくれるという機能も今後実装されるだろうということだ。Amyはその現象を「Diminished Reality(減損現実)」として紹介していた。

この減損現実とはどういうことか?例えて言うならば、自分が見たくない情報を意図的に削除することができるということだ。例えば、レストランの隣の席で自分にとって不快なマナー違反な食べ方をしている人物の視覚情報を意図的に消すことができればどうだろうか?そんな技術がすでに存在するのである。

確かに公共のスペースで、言動が気になる方を見つけてしまうと集中したい会話や映画などの集中力が削がれてしまう。その際には、自分のストレスを感じるものを消すことが可能になる。まさしく驚きだがこれは現実なのか?

また、You of Things、自分自身をコネクテッドにする世界はウェアラブルだけではなく環境からも変化させることが可能だ。例えば、Amazonが現在特許申請中の超音波ウルトラソニック技術やメッシュネットワークを活用した「Amazon Sidewalk」は、音や近距離ネットワークで我々の動きと物の動きを把握可能になり、何も身につけてなくても工場や店舗にいる人の動きが取得可能になるという。

顧客データを把握するためのツールとして、社員の健康管理のためのツールとしても活用できそうだ。もちろん人間情報のネットワーク経由での管理だけではなく、紛失した鍵などモノの情報も把握でき、応用範囲は広がる。

また、家庭内ではスリープテック分野や、TOTOを代表とするようなトイレで健康管理をするソリューションも出てきてYou of Thingはウェアラブル、ベッド、トイレ、環境そのものから構築されそうだ。医者いらずの未来、過労死が防げる未来が描けそうであり、少し恐ろしくもあるYou of Thingな未来がすぐそこまでやってきているのだ。

Topics 2:Hactivism~インターネット上のアクティビズムが世界を動かす

#metooではインターネット上で声を上げることにより過去の不正を告発し、記憶に新しい米国ロビンフッド(電子株式取引上)を活用したインターネット市民によるウォールストリートのGame Stop株空売りへの対抗など、インターネットでの活動が現実世界を動かすことが増えている。

Amyはそれを「Hactivismハクティビズム」と呼び、いままで社会や産業で不正や一部の人の利益になりながらも闇に隠れていたものが顕在化し、新たな秩序構築を起こすものとして紹介している。確かに日本でも政治家の言動で、時代にそぐわないものを声を上げ、第一線から退いてもらう動きも出てきている。インターネット市民の活動が世界の新たなルールを作り始めているとも言える。

また、この動きはインターネットの一個人だけではなく、企業の活動にも現れそうだ。Amyはこの企業の新たな動きをC-DOS(シードス)と呼んでいた。Corporate Denial of Service、直訳すると企業のサービス拒否(!!)。

具体的にはTwitterやFacebookなどの一企業が特定アカウントを強制停止することを指す。トランプ前大統領のソーシャルメディア・アカウントが凍結されたことは様々な議論を呼んでいるが、このような企業によるサービス停止(C-DOS)も、テックトレンドとして見逃すことはできない。

Topics3:Synthetic Biology(合成生物学)~DNAデータを編集、バックアップ、コピペできる時代へ

最後に、これもSXSWならではのトピックだと思えるのはAmyがDNA編集について述べたことだ。いままでもSXSWではジェニファー・ダウナー博士のCRISPRについてなどを基調講演で紹介しているが、直近の話題でいうとコロナウイルスワクチンもこの合成生物を応用して作られている。Amyの例でいうと、アメリカの美味しいリンゴの木のDNAをコピペして、日本や火星にもっていくと美味しいリンゴがあらゆる場所で食べられるような世界も実現しそうだ。

どうだろうか?Amy Webbのテックトレンドの一部をご紹介したが、未来を感じるワクワクするものもあれば恐ろしくなるディストピアを予見するものもあったかもしれない。

しかし技術としては上記述べたものはすでに存在している。ここで大事なのは答えを待つだけではなく「問い」を出し続けることとAmy Webbは言及している。「この技術が普及するとどう言う世界が来るのか?それは自分にとって、組織にとってどのような効果を及ぼすのか?」を考え続けることが良い未来を作ることだ。しかも恐れず好奇心を持って問いを立たせ続けることが大事とも。

つまり未来は予測するものではなく、準備していくものなのだ。SXSW Online 2021のテックトレンドを参考に、ぜひ、一緒に未来を準備していこうではないか!

txt:西村真里子 構成:編集部


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