カメラマンやクリエイターが語る、GHを選ぶ理由

動画向けの一眼カメラは8K、フルサイズ、高感度などの技術が話題だが、それでもパナソニックのGH人気は健在だ。他社の追随を許さない時間無制限記録や4K60P内部記録は、今でも映像クリエイターの希望の光のような存在であることは変わらない。

そこで今、改めてカメラマンやクリエイターはどんな思いでGHを選んでいるのかを聞いてみた。1人目は8K解像度による日本の美しい風景撮影で活躍中の映像クリエイター羽仁正樹氏に、GHを選ぶ理由や新たなGH5 IIへの期待を聞いた。

マイクロフォーサーズはピンぼけの心配が少なく、フルサイズと比較しても優劣はない

羽仁正樹氏は、マルチメディアエンターテイメント制作会社サハエンターテイメントの代表として、クリーンイメージの自然、アーバンイメージの都市空撮/都市風景を中心に4K/8Kの高解像動画を制作。撮り溜めた作品をテレビ局などに提供したり、メーカーの展示会などで8Kデモ映像を制作するなど、プロモーション映像制作がメインのため、名前が表に出ることは多くないが、恐らく多くの方が羽仁氏の素晴らしい作品を目にしていることだろう。

サハエンターテイメント代表 羽仁正樹氏

GH5×2台で撮影した東京空撮映像

――羽仁さんはパナソニックのGH以外にRED HELIUM 8KやニコンZ7、キヤノンEOS R5などのカメラも所有していますが、どういったときにGHを選択していますか?

羽仁氏:

撮影条件や用途に合わせ、フルサイズ機をはじめ、さまざまな機材を使い分けていますが、いちばん出番が多いのはGHです。最大の理由はピンぼけの心配がないこと。
私は基本、ワンマンスタイルで、メインカメラの他にアングルを固定したサブカメラを回したままにすることが多いです。例えば、包丁を使う料理人の手元をアップで狙うときなどは、切り進むうちに包丁の位置が移動します。フルサイズは被写界深度が浅いので、ピントを固定したままだとすぐにピントがずれてしまいますが、センサーサイズの小さなマイクロフォーサーズは被写界深度が深いので大丈夫です。
やはり大画面で見ることを前提とした4Kの高精細だとピンボケがすぐにバレてしまうのでフルサイズは厳しいですね。しかし、インタビューなどでボケを活かしたいときは、やはりフルサイズの出番です。

――羽仁さんはフルサイズとマイクロフォーサーズの画質の違いをどのように感じてらっしゃいますか?

羽仁氏:

フルサイズとマイクロフォーサーズの画質差を気にする人も多いですが、イメージセンサーが小さいから画質が悪いということは全然なく、むしろ良いかも?と思うぐらいです。編集で繋いでも違和感はなく、実用上の差はほとんどないと考えています。しかし、センサーサイズの小さいマイクロフォーサーズは高感度を不得意とするのでISO3200以上で暗い夜景などを撮るときは、高感度に強いGH5Sを使っています。

――GHシリーズのどのような点を気に入っていますか?

羽仁氏:

まず、熱に強いことがGHシリーズの魅力ですね。この前長野県松本市の上高地に行った時も他社製カメラは熱でフリーズすることがありました。GHシリーズを使い始めたのはGH4からですが、これまで熱が原因のトラブルに遭ったことはありません。特に私のようにカメラを長回しすることが多いと助かります。
あと、仕事で使う道具としてのGHシリーズ最大のメリットはコストパフォーマンスの高さです。キヤノンEOS R5やソニーα7S IIIで機材を揃えると60~70万円かかるところが、GHなら30万円くらいに抑えられます。この間、宮古島で水中撮影を行いましたが、水没したら撮影ができなくなるので予備機を持って行きました。長期ロケでは機材の故障だけではなく、不用意に落としたりと事故の可能性があります。とにかくGHは交換レンズを含め、機材に掛かる費用が低く抑えらます。これをα7S IIIでやったら凄い金額になりますね。

左から新製品のGH5 II。GH5(中央)とGH5S(右)は羽仁氏所有機

――最近は、どのようなプロジェクトでGHを使用しましたか?

羽仁氏:

GH5にLAOWA 4mm F2.8 Fisheyeという全周魚眼レンズを付けて花火を撮影し、これをドームに投影するというプロジェクトを進めています。見ている人の頭上360°に花火が広がるので、まるで会場にいるような臨場感が得られます。
制作側の立場では一台のカメラで撮影でき、特別なソフトウエアを使用する必要もない。映写の際も既存のプラネタリウムのドームが利用できるなど、コストパフォーマンスも抜群です。花火は意外と明るくてISOも2500くらいでOKです。ドーム映像を撮るならGH5しか考えられません。LAOWA 4mm F2.8 Fisheyeは画面が円形に写るので、画が写ってない部分を編集でカットし、拡大して使います。
同じマイクロフォーサーズでもBlackmagic Pocket Cinema Camera 4Kの場合はイメージセンサーが17:9なので、カットする左右の面積が広くて無駄が多いですし、拡大率が高くなるので画質が落ちます。
これに対してGHシリーズのイメージセンサーは4:3でアナモフィック(4:3)モード動画記録で撮影すればカットする面積も少なく、拡大率も低くて済みます。また、新製品のGH5 IIはC4K、4Kともに30Pと24Pで10bitの記録が可能と、より高い画質が得られるので、このような撮影にぴったりです。

GH5のボディと組み合わせて使っている画角210°の円周魚眼レンズLAOWA 4mm F2.8 Fisheye
円周魚眼レンズを4:3の画角で撮影が可能

――記録方式はどのようなモードを使うことが多いですか?

羽仁氏:

4KやFHDでは60Pをよく使います。たとえばヘリコプターで空撮するときなどは60Pで撮っておけば、後から30Pに変換してスローモーションとして使えます。

GH5 IIでは、60P10bit記録ができるようになりました。これまでの8bit記録だとLog撮影時に画がガタガタになってしまうので10bitは必須です。また、GH5 IIは4.2.2 10bitのCinema 4K/4K60P動画がHDMI出力できるので、外部レコーダーに記録でき、SDカードの残量を気にせず長時間撮影が可能です。

ATOMOSの外部レコーダー+GH5Sの組み合わせ

――どのようなレンズと組み合わせることが多いですか?

羽仁氏:

いちばん出番が多いのはオリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROです。海の中だろうとどこでも使えますし、画角が広いので自分撮りにも便利です。

標準ズームではLEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPHです。これに望遠ズームを加えて、基本的に3本のズームレンズを使い分けてます。いわゆる大三元レンズという揃え方ですね。これ以外に人物をボカして撮影するために明るい単焦点レンズを増やす予定です。ニコンやキヤノンなどのフルサイズでも考え方は基本的に同じです。
今は交換レンズメーカーが頑張っていて、良いレンズをたくさん発売していますが、私はやはり純正レンズが好きです。結局、純正レンズの性能が良すぎるので、レンズ専門メーカーの製品に目が向かないのかもしれません。

左手に持ったレンズはLEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm。奥のレンズはオリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO

マスク装着状態の頭部にもフォーカスは反応

――新しく登場したGH5 IIを使用した感想を教えてください

GH5 IIを動画で紹介

羽仁氏:

従来機種GH5の発売時には6Kフォトモードを選んで動画ボタンを押すと6Kで動画撮影できる裏技がありましたが、GH5 IIでは正規の動画撮影モードに昇格していて驚きました。

また、4:2:0 10bitの映像が、内蔵SDカードに記録できるのはすごいです。使う人は少ないかも知れませんが、高度なノンリニア編集で1フレーム単位でデコード/エンコード可能です。
オートフォーカスの機能も格段に上がりました。試しに美容師さんに髪を切ってもらうとき鏡に向けてカメラを回してみました。カメラに隠れて僕の顔は見えませんでしたが、髪を切るために移動する美容師さんをずっとフォーカスが追い続けていました。最近はコロナの影響でマスクをしている人が多く、もちろんこの美容師さんもマスクで目しか見えませんでしたが、普通にオートフォーカスが反応するので感心しました。これまで他メーカーに比べてパナソニックはオートフォーカスが弱い印象がありましたがGH5 IIが払拭してくれました。
このほかにも、S1Hで採用した最新の補正アルゴリズムを搭載した手ブレ補正は強力でした。最近、東京では三脚禁止の場所が多いですが、東京駅を撮影して手ブレ補正効果を実感しました。これまでの手ぶれロックは、硬すぎるというか不自然な感じで、あまり使いませんでしたが、今度の手ぶれ補正は使えますね。
それから、GH5 IIの外観デザインはこれまでのGH5と同じです。例えば、水中ハウジングなども、GH5S含めて3機種共通で使用できて助かります。

美容室の鏡でGH5 IIをテスト撮影

――GH5 IIに新しく配信機能が搭載されましたが、使いたいシーンとかありますか?

羽仁氏:

花火大会を映像作品として撮影する際には関係者席に入れてもらいますが、そのときにリアルタイムで配信できたらすごいと思いました。
また、去年はコロナで閉園していたあしかがフラワーパークとかひたち海浜公園に特別に入園させていただき撮影しましたが、人っ子一人いない無人の園内の様子をライブ配信すると、編集して完成する作品とは別の意味で面白い映像が提供できるかもしれません。
当然、作品撮影がメインなので特別な機材は用意できないですし、面倒な操作をしてる余裕もありませんが、GH5 IIならカメラにスマホを繋ぐだけで簡単にできそうです。

――フラグシップモデルとして登場予定のGH6には、どのようなことを期待されますか?

羽仁氏:

ソニーα7S IIIは4K4:2:2 10bitで120Pまで撮影可能ですが、この機能があれば落下する物体などが超スローで撮影できます。本当はGH5 IIに入れて欲しかったですが税込19万円前後という実販価格を考えると高望みしすぎかもしれません。でもGH6にはぜひ入れて欲しい。また、α7S IIIよりかなり安くなるはずなので大いに期待しています。

中村文夫|執筆者プロフィール
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。


◀︎Vol.06 [GH world] Vol.08▶︎