Credit: 3Particle Malaysia

世界中のライブコンサートやツアーで選ばれるクリエイティブプラットフォームのメジャーブランド

disguise(ディスガイズ)は、ライブビジュアルのステージデザイン、作成、3Dシミュレーション、本番出力まで実現できるクリエイティブプラットフォームだ。U2やビヨンセなどのアーティストのコンサートツアー、大規模野外音楽フェスティバルなどのライブイベント、劇場プロダクションなど大規模プロダクションを影で支える存在として有名だ。そんなdisguiseは、xRワークフローによるUnreal Engine+LEDベースのバーチャルプロダクションでも注目を浴びつつある。disguise Japanの三寺氏と飯田氏に話を聞いてみた。

disguise showreel 2020

――2021年4月にdisguise Japanがスタートしましたが、国内オフィス開設のきっかけを教えてください。

三寺氏:

今回の日本法人設立は、東京オリンピック、日本国内の統合型リゾート設置、大阪で行われる2025年日本国際博覧会など、国内でもdisguiseを使う現場が増えることを見込んでのものです。
日本法人設立によりトレーニングやサポート体制が強化されるほか、英語の情報を日本語にローカライズしてメッセージを発信していきます。また、国内には映像メーカーがたくさんいらっしゃる中で、フロントラインに立ってメーカー間営業ができるのもメリットではないかと思っています。

disguise Japan社長 三寺剛史氏(左)、副社長/マーケティングマネージャー 飯田厚二氏(右)

――disguiseの本社はどちらですか?

三寺氏:

本社はイギリス・ロンドンです。会社設立は2000年で、U2のコンサートで目を見張るようなステージを実現するために開発がスタートしました。そこからずっとU2は使い続け、その後、マッシヴ・アタックなどのメジャーなバンドで多く採用されるようになり、ライブの世界に広がっていきました。
開発は本社ですが、ロサンゼルスにもエンジニアがいます。ロサンゼルスにはこだわりを持ったお客様が多く、現地でサポートできる開発スタッフが一部常駐しています。

――disguiseの取り扱い製品カテゴリーはメディアサーバーと呼んで間違いないですか?

三寺氏:

実はメディアサーバーに収まらない形に変化しています。イメージとしては、メディアサーバーよりはxRソリューションカンパニーです。
確かにもともとは、ライブから始まったメディアサーバーハードウェアのメーカーでしたが、ハードウェアとしてのメディアサーバーのほかに、designerと呼ばれる単体起動可能なソフトウェアを提供しており、ライブビジュアルを制作することが可能です。
これまでのライブステージデザインは、3Dソフトを使ってクライアントとイメージの共有が行われていました。しかし、OKをもらってもデータをそのまま使えるわけではなく、そのイメージを結局現場で落とし込む作業が必要でした。designerを使えば、基本的にコンセプト、ステージデザイン、シーケンス、搬入、リハーサル、本番まで3Dで可能になります。

2012年6月4日にロンドンのバッキンガム宮殿で行われたコンサート「Queen’s Diamond Jubilee London 2012」をdesignerでシミュレーションした様子

――disguiseのハードウェアとソフトウェアの特徴を教えてください。

三寺氏:

メディアサーバーは、照明卓、スイッチャー、カメラ、モーショントラッキングなどと接続をしたり、各種ソフトウェアとのインテグレーションが可能です。
ソフトウェアは、3Dスペースを利用した空間で制御するインターフェイスとして設計されています。OBJデータをdisguise上に取り込み、それをタイムライン上に映像を流しながら制御可能です。
特に、元から3Dを前提に開発されているのはdisguiseの大きな特徴です。他社メディアサーバーのメーカーはメディアプレーヤーから発展してきていますが、disguiseははじめから3Dありきで開発がスタートしています。それが、disguiseにとって大きな強みになっています。
また、24時間サポートや有償、無償のトレーニングも特長です。

――どのような企業が導入されていますか?

三寺氏:

国内では、主に映像機器レンタル会社です。ヒビノ、タケナカ、光和、映像センター、レイ、教映社などにご導入いただいています。最近では、朋栄とアークベンチャーズがLEDビジョンディスプレイとdisguiseメディアサーバーを用いたバーチャルプロダクション提供を発表しました。今後は、放送や映画の方面での導入に期待を寄せています(disguiseの使用例はこちらで確認可能)。

実写とCG、カメラアングルを融合したxRワークフローを実現

――disguiseのxRワークフローはいつから立ち上げたのですか?

三寺氏:

いきなりxRに対応したわけではなく、実は2019年頃から発表はしていました。NAB Show 2019のブースでは、xRツールキットの原型の展示を公開しました。その後はコロナ禍でもできるライブエンターテインメント需要の高まりで積極的にxRの開発に取り組んでいます。

NAB Show 2019 disguiseブースの様子。xRのプレビューを紹介

――xRを活用した話題の作品を挙げるとしたらどのような作品になりますか?

三寺氏:

話題になったのは、2020年5月17日放送のテレビ番組「American Idol」でケイティ・ペリーが披露したシングル「Daisies」のライブパフォーマンスです。ARとMRを組み合わせたミュージックビデオです。
私も映像業界長いですが、久々に「何だこれ!」と衝撃を受けました。カメラの映像に対して、ARのグラフィックを前に合成していて、壁2面と床のLEDには背景のグラフィックがあります。LEDの外にもバーチャルセットがあり、実際のLED映像と境目がわからないように合わせ込んで実現しています。これを見て、多くの人が「ライブでこれをやりたい!」と思ったのではないでしょうか。

ケイティ・ペリーのtwitterで撮影の様子が公開されている

Unreal、Unity、Notchの3つの主要なレンダリングエンジンすべての使用可能

――disguiseはNotchと相性がいいメディアサーバーというイメージが強いですが、そのほかのレンダリングエンジンとの相性やインカメラVFXを実現するための基本構成を教えてください。

三寺氏:

システム的には、カメラ入力やトラッキング情報をすべて入れて統合するサーバ「vx」のほかに、NotchやUnreal Engineを立てた「rx」と呼ばれるプラットフォームをラインナップしています。rxを用意することで、Unreal Engine、Unity、Notchなどのレンダリングエンジンと連動した演出が可能になります。rxはクラスターレンダリングが特徴で、ハブがあれば無限に段数を積み重ねることができます。4K以上、8K以上、グラフィックボードの限界を超える16K以上といった解像度も原理的には可能です。
rxハードウェアとvxハードウェアの間はRenderStreamと呼ばれるブリッジで接続し、レンダーと送出機の間でコンテンツを同期して送出が可能です。技術的にはレンダリングエンジン側からのフレーム出力に対してタイムスタンプをすべて押し、それをdisguiseのメディアサーバー側で時間合わせることを行っています。レンダリングシステムを複数に分割したとしても面倒な遅延の問題に悩まされることなく、LEDスクリーンに本番の出力が可能です。
タイムスタンプを押して映像を送出するRenderStreamはライセンス化していて、年間、月間、週間のサブスクリプションライセンスとして提供しています。

――インカメラVFXシステムを実現した場合の導入コストの目安を教えてください。

三寺氏:

当社のメディアサーバーのラインナップにはvx1やvx2やvx4があり、各数字は4K出力数を表しています。vx2は4Kが2出力。vx4は4Kが4出力に対応します。インカメラVFXであれば、4Kを扱いたい場合、vx2かvx4になるでしょう。vx1だと少し非力かもしれません。
最小構成の場合の価格は、vx2とrxの組み合わせで約1,000万円。vx4自体は約1,200円〜1,300万円で、vx4とrxの組み合わせで約1,500万円を下回る程度です。それなりのお値段はしますが、色のキャリブレーション、方位空間のキャリブレーション、フレーム同期の関係やノード同士の違うエンジンで組み合わせることが可能です。ワークフローや拡張性を考えたら、ユニークです。

――最後に、改めてdisguiseと競合製品を比べた場合の強みを教えて下さい。

三寺氏:

繰り返しになりますが、disguiseの特徴は、空間キャリブレーションです。もともと3Dでやっていたのでそこは強みです。あとは色のキャリブレーションですね。また、どの3Dグラフィックスエンジンを使うのも自由というのは結構大きなポイントです。ARをNotch、背景の部分はUnreal Engineを同時に組み合わせて使用するワークフローも実現可能です。
他社のバーチャルスタジオのソリューションには、Zero Density、SMODE、Brainstormなどがありますが、disguiseの競合かといわれると、少し違うと思います。実際、両方持っているお客様もいて、アークベルさんはdisguiseとZero Densityの両方を活用しています。結局、お客様にとってメリットで各社製品が選ばれるわけであり、LEDはそれなりの初期投資もかかり、グリーンバックははるかにコストを抑えることができます。
そういった意味では、私の中では各社製品はxRコミュニティーのパートナーとまでは言いませんが、どのメーカーもxRを構成する重要なひとつなのではないかと思います。これからいろいろな人がxRで制作を行っていく中で、各社製品はどれも必要とされていると思います。xRを積極的に使う人が増えてマーケットが広がり、高度な制作を求める場合は、disguiseを選んでいただければと思います。

「disguiseでできること」を紹介するウェビナーを2021年9月15日(水)16時~17時に開催する。詳細はdisguise JapanオフィシャルのFacebookグループやTwitterで確認してほしい。

◀︎Vol.13 [Virtual Production Field Guide] Vol.15(近日公開)▶︎