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[360°Encyclopedia]Vol.20 キルギスの高原とドローン/「ラーメン食いてぇ!」

2018-03-02 掲載

© 林明輝/講談社・2018「ラーメン食いてぇ!」製作委員会
txt:茂出木謙太郎 構成:編集部

あなたも絶対ラーメンが食いたくなる!

「ラーメン食いてぇ!」とは、人生に落ち込んだ女子高生が、「生きる価値」に気がついて、ラーメン屋を継いで日本一を目指すマンガだ。

パミール高原で遭難した美食家の「赤星」は、死の淵でこれまで食べた美食の数々を思う。そして、それら美食を押しのけて、死ぬ前にどうしても食べたいものがあった。それが清蘭のラーメンだ。「あの塩ラーメンをもう一度食べたい!」その一心がかれの心の支えだった。

一方その清蘭の店主「紅」は妻が先立って思うようにラーメンが作れなくなったことから、生きる気力を失い、まさに自らの命を断とうかとしていた。彼の自殺を止めたのは、孫娘の茉莉絵が自殺未遂をして緊急病院に運び込まれたという知らせだ。友達の裏切りにあって、生きる気力を失ってしまった茉莉絵。死のすぐ横にいる3人が、生きていこうと心の糧にしたもの。それが「清蘭のラーメン」だった。そのラーメンの秘密とは?

Webで150万アクセスを突破した人気コンテンツなので、ひょっとしたら読んだことがある人も多いかもしれない。実はこの漫画が映画になったのだ。ロードショー扱いとはいえ、制作予算も限りある中で、果たしてどのような映画になるか楽しみと不安が入り乱れる中、六本木にある試写室に向かった。

© yusuke

語るべき点は多くあるが、PRONEWSの読者に向けてお知らせするべきは、パミール高原(原作では新疆ウイグル自治区だが、ロケ地はキルギス側)の映像の美しさである。キルギスユニットのカメラマンは小島悠介氏。映画が始まった冒頭から映し出される圧倒されるほど美しい大自然は、モノクロの原作を軽く凌駕したと言っても過言ではないだろう。その大自然の中で一人ボロボロの格好をして「ラーメン食いてぇ!」と叫ぶ赤星役が“ラーメンズ”の片桐仁氏というのが面白い。

© yusuke © yusuke

さらにパミール高原の広さと美しさをさらに際立たせるのが、ドローンを活用した空撮。かなりの頻度で使用されているが、どの映像も美しい。撮影に使用している機種をこっそり教えていただいたのだけど、どうやらDJIのMAVIC PRO。この映画を観た後だと、思わずAmazonでポチりそうになってしまう。驚くべきことにこの部分のドローン操縦はラインプロデューサーが行ったということ!MAVIC PROだからできるお手軽さと、映像のクオリティのコストパフォーマンスの良さは、ちょっと恐ろしいくらい。

© yusuke

映画「ラーメン食いてぇ!」はキルギスの美しい風景と、中村ゆりかさんと葵わかなさんという美少女二人を可愛く、そして重要な「ラーメン」をいかに美味しそうに撮影するか、この3つのバランスがとても重要で、どれか一つがかけていてもいけない。まるで作中の麺とスープと具材の関係性が語られているのと同じなのだ。

© 林明輝/講談社・2018「ラーメン食いてぇ!」製作委員会 © 林明輝/講談社・2018「ラーメン食いてぇ!」製作委員会

たとえば、主演の二人がラーメンを食べる場面。湯気が立ちのぼるラーメンから麺を箸で持ち上げて食べる様子は、多すぎても少なすぎてもいけない量を、一気にずずっと啜り上げる必要がある。それも可愛く。レンゲで受けて音を立てずに食べてはいけないし、音が大きすぎたり途中で麺を食べきれなくなって戻すような仕草で所作を汚くしてもいけない。美少女が嘘偽りなく、可愛く美味しそうにラーメンを食べるというのは、意外に高度な演出なはず。

肝心のラーメンも、幾度もカメラに映し出される。特に最後に提供される塩ラーメンのアップは、試写会のDMにも使用されている「美味そう」なワンカットだ。すんだ透明のスープに泳ぐ平打ち麺。その上にそっと乗っている色白のチャーシュー、メンマとナルト、ネギ。白いどんぶりにはただ清蘭の赤い文字。

© 林明輝/講談社・2018「ラーメン食いてぇ!」製作委員会

時蕎麦を聞いた後は蕎麦屋に行列ができる。と言うように、この映画を見た後はラーメン(それも平打ち麺の塩味)を無性に食べたくなるのだ。

© 林明輝/講談社・2018「ラーメン食いてぇ!」製作委員会

撮影された作品を見ると、この映画に関わったスタッフの映像を信じる力に感動すること請け合いである。ロードショーではあるけど、映画館も少なくなかなか足を運びにくいかもしれない。しかしそれでも、昨今の漫画原作からの映画のながれのあれやこれやにちょっとテンションが下がっているみなさんには、ぜひ、正しく実写に昇華されたこの「ラーメン食いてぇ!」を見ていただきたい。もちろん、ラーメンファン、主演のお二人のファン、映画ファンと、誰にでもお勧めできる映画。3月3日から。

余談(でありながらこのコラムの本筋):実は昨年キルギスロケが始まると聞いて、撮影スタッフにTHETAを持っていってもらえないか相談した、しかし「スケジュールギリギリなので余裕なし」ということで断念wあの景色を360度のパノラマで体験したかった…。

映画「ラーメン食いてぇ!」

中村ゆりか 葵わかな
宅間孝行 森尾由美 水橋研二 片岡礼子 永岡佑 黒羽麻璃央 ふくまつみ
片桐 仁/石橋蓮司
原作:林明輝「ラーメン食いてぇ!」(講談社『イブニングKC』所載)
監督・脚本:熊谷祐紀
制作プロダクション:レスパスフィルム 製作:レスパスビジョン/東映ビデオ
宣伝:ウフル 配給:ブロードメディア・スタジオ
© 林明輝/講談社・2018「ラーメン食いてぇ!」製作委員会


WRITER PROFILE

茂出木謙太郎 株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員


[ Writer : 茂出木謙太郎 ]
[ DATE : 2018-03-02 ]
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