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[オタク社長の世界映像紀行]Vol.55 豊作となったNAB2019。シネマ系、番組制作系の主力製品をピックアップ

2019-04-11 掲載

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txt:手塚一佳 構成:編集部

今年もNABが開催!

「The National Association of Broadcasters」の主催する放送機器の世界的イベント「NAB Show 2019」が今年も米国ラスベガスにて開催された。本誌においてもENG系放送機器系の5人の精鋭がレポートを日々掲載されているので、詳細を既にご存じの方も多いことだろう。同イベントのメインである放送関連機器、ENG系の情報は是非そちらをご覧頂ければ幸いだ(なお、筆者も末席外ながらなぜかNABぶらりレポートを撮って頂いたので、是非ご覧頂きたい)。

さてそれはそれとして、放送機器にもENG撮影にもとんと縁の無い、シネマエフェクト系の、CG・デジタル編集・効果やミニシネマ、PVが専門である筆者もなぜか参加して収穫を得られているのがNAB Showの面白いところだ。シネマ系制作系の機材やソフトウェアも多数展示されているため、筆者のような立ち位置の者でも充分に収穫があるのがNAB Showの懐深いところなのである。筆者は例年6月頭にあるCine Gearの予習としてNAB Showに参加するのがここしばらくの通例となっている。

理由は後述するが、イベント名からは意外なことに、今年のNAB2019においてはシネマ系の機材が大変な豊作であった。本稿では、放送機器という枠組みからちょっと外れた、シネマ系、番組制作系の機材について、各ブースでの発表内容からご報告してみたい。

NAB2019は広大なラスベガスコンベンションセンターや周辺ホテルで開催された。本当に広くて28mmの広角でも主会場全体の1/3も撮れていない

Sonyブース:VENICE Ver4発表!

Sonyブースは会場最大規模を誇る巨大ブースだ。中央のテストシューティングエリアが印象的だ

まずは、今回のイベントを一目で特徴付けていたSonyブースからご報告したい。Sonyブースでは、広大なブースの正面中央にあるテストシューティングエリアを2つに分け、今回オフィシャルなENG系RIG「ENG Style Buildup KIT」を出してローバジェットシネマ、ENGの両対応となったミドルレンジカメラ「FS7/7II」を中心に、左側を無投影照明の放送・ENG系、右側を影を作る事を意識したシネマ・番組制作系として、それぞれに機材を配置していた。これこそがまさに今年のNEB2019を象徴していた。

従来の放送、シネマという最終スクリーンだけでなく、両者のコンテンツ特徴を持つネット放送が大きなエンドユーザーバジェットを占めるようになってきた昨今、単に放送機器というだけでなく、ENGスタイルにシネマスタイルを導入し、あるいは逆にシネマ撮影にENG系機器を導入して、両者のいいとこ取りをしていこう、というイベントになってきているのがNAB2019であったのだ。

テストシューティングエリアが鮮明に左右で照明を変えてあるのがSonyブース最大の特徴であり、NAB2019を象徴するブース配置であると言える 「FS7/7II」向けオフィシャルENG系RIG「ENG Style Buildup KIT」。これがENGエリアとシネマエリアの境界線となる

左側の放送機器側の説明は是非とも他の方々の説明を読んで頂くとして、筆者としては右のエリアに注目した。そこで大きく特徴付けられていたのが、シネマカメラ「VENICE」だ。「VENICE」は新機材では無く既存機材じゃ無いの?と思われた読者諸賢も多いと思われるが、その認識は甘い!と言わざるを得ない。なんと「VENICE」の最新ファームウェアであるVer4では、既存ユーザーには基板交換を行って、ハイフレームレートや新しいオーバーフルフレームレンズへの対応を行っているのだ。基板交換ということは、通常の商品であれば明らかに同シリーズの新製品であり、本来なら「VENICE 2」と名乗るべきカメラである。それを、あくまでも「VENICE」のままで無償ファームアップ「Ver4」という形で行うのは、ユーザーとその使い慣れたカメラを大事にする、非常にSonyらしいやり方と言えるだろう。この「VENICE Ver4ファーム」では、4K 2.39:1での120P撮影、6K 3:2での60P撮影、4K 17:9での110P撮影、4K 4:3でのアナモルフィック75P撮影を行うことが出来る。

またこのVer4から対応の「VENICEエクステンションシステムCBK-3610XS」を使った実演では、小柄な女性が背中に「VENICE」本体を背負い、手元にエクステンション部分を持つ事で、軽量に力を必要とせずに撮影可能なことを実演していたのが印象的であった。

シネマカメラ「VENICE」Ver4を説明する同社星野氏。同氏と大石氏の豊富な知識を直接聞くことが出来たのもNABの収穫であった

先端部分だけなら小型軽量であり、また5m程度の延長が可能であるところからエクステンション部だけをクラッシュカメラ・アクションカメラ的に用いる用途も想定しているということで、フルサイズシネマカメラをクラッシュカメラとして使うという贅沢な映像もコストエフェクティブに実現可能となっている。

Ver4で対応した「VENICEエクステンションシステムCBK-3610XS」。フルサイズシネマカメラを5m延長できるというのは本当に魅力的だ

更に、技術展示として、Sony製スマートフォン「XPERIA1」を個別ビューモニタとして台数無制限にWi-Fi配信するシステムも展示発表されていた。もしこれが実現すれば、全スタッフがそれぞれに独自に拡大縮小できるモニターを持って撮影に挑むことが出来るわけであり、1台の20インチ程度のポータブルモニタをスタッフみんなで頭を寄せ合ってのぞき込んでいる現状から撮影ワークフローが大きく改善されることになる。

また、最近は、エンドユーザーが実際に視聴するスクリーンの大きなバジェットがスマホ画面に占められている事は周知の事実であり、そうしたエンドユーザースクリーンでの映像確認が撮影時に行えるメリットももちろん大きい。

技術展示の「XPERIA1」によるマルチモニター。なんと、個別に拡大縮小を行うことが出来るため、撮影時に担当スタッフが自分の担当箇所をそれぞれに詳細を確認することが出来る

「VENICE」はシネマ業界、特に欧米のシネマの世界において、日本国産のデジタルシネマカメラではかつてなかったほどに受け入れられ、メインのカメラの選択肢として安定した人気を誇っている。今まではデジタルシネマカメラと言えばARRIの分厚い壁があり、他社のシネマカメラはあくまでも補助カメラ的な扱いである事が多く、決してメインシェアを奪う事が出来なかった。

しかし「VENICE」はついにそうしたメインシェアを取りつつある。今回のVer4も、そうした人気を更に後押しするものであり、今後の更なる展開も大いに期待していいだろう。

こうして作られたコンテンツの配信・マネタイズのサポートもSonyの真骨頂である。その一例としては、例えば、クラウドシステム「Memnon」によってクラウドアーカイブされた映像は、最終的に「Ven.ue」という課金配信システムによってエンドユーザーに配信される仕組みの提案もあった。これはまだ米国のみの展開ではあるが、クリエイター・コンテンツホルダーが作った作品がクラウドに保存された状況からシームレスに配信されるというのは大変魅力的な提案であり、近未来のクリエイターの在り方を提案する野心的な提案であると思う。

クラウドシステム「Memnon」と課金配信システム「Ven.ue」の提案は、近未来のコンテンツの在り方のリアルな提案だ

そもそもの撮影自体も「XDCAM air」などでクラウドを介してコントロールされ、あるいはカメラ内データ収集される事も提案されており、いわば、撮影から編集保存、そして最終的な配信・売り上げまでを将来的には全てネットを介してコンテンツホルダー側が主体的に行うことが可能となる。これこそまさにSonyらしい展示であるだろう。

「XDCAM air」によるカメラコンテンツコントロールは、カメラ本体を局に戻すこと無く2つ束ねた携帯回線でカメラ内の映像を切り出して収集することを可能にしている

同ブースに置いては「DWP-D26」など、業界標準の無線音声マイクも小型リニューアルされて居ることが発表されており、また、AIによるブルーバック・グリーンバックを使わない、差分によるリアルタイム合成も展示されており、大いに未来を感じることが出来た。まさにNAB2019を代表するブースであると言えるだろう。

ARRI ALEXA Mini LF

ARRIブースは今回もっとも混んでいたブースの一つである

続いて、台風の目のもう一つが、このARRIのブースだ。それほど大きくない中型ブースでありながら、初日来場者人数ではトップクラスであったのは間違いないだろう。その理由は、新型小型オーバーフルフレームセンサーシネマカメラ「ALEXA Mini LF」の展示発表だ。

NABにあわせて発表された同カメラは既存のARRI「AREXA LF」と同じセンサー、同じルック、同じカラーサイエンスを持ちながら、同社製の既存小型シネマカメラ「ALEXA mini」と同サイズにまで小型軽量化され、EVF付き、SSD込みの重量で、約3.5kgの超軽量を実現している。

今回のNABの主役の一つ、ARRI ALEXA Mini LF

さらに、従来のCFastから変更して独自のSSDを搭載することでハイフレームレートにも対応しており、定番のARRIRAW Open Gate 4.5Kで40P、ProRes 2Kであれば90Pの撮影が可能だ。レンズマウントは「ALEXA LF」と同じLPLマウントを採用し、センサーサイズは36.70×25.54mm、最大4.5Kの解像度までの撮影が可能となっている。

欧州価格ではあるが、本体のみで48,000ユーロ、最低限のパッケージで約63,000ユーロと、明らかにSony「VENICE」をライバル視した価格設定であり、デジタルシネマカメラの歴史上、初めてARRIが挑戦者側に回ったことが印象的であった。

この「ARRI ALEXA Mini LF」の発表にあわせて、レンズメーカー各社からシネマレンズが大量に出ていたのが今回のNAB2019の最大の特徴であった。まさに今回のNABの主役の一つといっていいだろう。

Blackmagic Designブース:8K祭りの中に光る撮影支援機器の充実

Blackmagic Designブースは大盛況だ

NABといえば欠かせないのがBlackmagic Designだろう。同社は必ずNABあわせで初日早朝に新機材をリリースする製品リリースペースを保ち続けている。

今回の目玉は「HyperDeck Extreme 8K HDR」などの多くの機器の8K版のリリースと、それに対応して編集機能を強化したDaVinci Resolve 16の発表、さらに強化された編集機能を生かすためのDaVinci Resolve用キーボード「DaVinci Resolve Editor Keyboard」、エフェクトソフト「Fusion 16 Studio」、そしてBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K(BMPCC4K)用のバッテリーグリップ「Blackmagic Pocket Camera Battery Grip」だ。

8Kの新機器類は他の方のレポートに任せるとして、筆者としては、DaVinci Resolve用キーボード「DaVinci Resolve Editor Keyboard」と「Blackmagic Pocket Camera Battery Grip」に注目してブース紹介をしたい。

「DaVinci Resolve 16」では新しく短納期むけ簡易編集「カット」のページタグが追加され、ソーステープモードやA/Bトリムツールなどの既存のテレビ用ツールでおなじみの素早い手法での編集作業が出来るようになっている。テープモードは疑似リニア編集で、視覚的に一本のテープに収録したデータのように見える編集手法であり、そこから映像を選択して取って行く過程は確かにテープ編集時代を思い出させるもので、大変に面白い。

さらに、「DaVinci Neural Engine」というAI機能も追加された。「DaVinci Neural Engineは、最先端のニューラルネットワークと学習システム、人工知能(AI)を採用。これらを使用した、スピードワープのリタイミングの動き推定、フッテージをアップスケールするSuper Scale、自動カラーおよびカラーマッチング、顔認識などの新機能が追加された」としている。こうしたAI支援は複雑なシーンを構成する際には大変に役立つものであり、非常に心強い。

こうした新機能によって、「DaVinci Resolve 16」はカラーグレーディングソフトというだけでなく編集ソフトとしてもプロ向けの機能を揃えたといえる。それに対応して満を持して発売されたのがDaVinci Resolve用キーボード「DaVinci Resolve Editor Keyboard」で、これを使う事によって、あたかもターンキーシステムであるかのように機能に素早くアクセスしながら編集を行うことが出来る。

既存のカラーグレーディングパネルとの併用も可能で「DaVinci Resolve Editor Keyboard」に付いているUSBコネクターにそれらのグレーディングパネルを繋ぐことで、編集とカラーグレーディング環境の両立も出来る(もちろんその場合テーブルは非常に広大になるので、上手いこと配置を考える必要はあるだろう)。

「DaVinci Resolve Editor Keyboard」これで「DaVinci Resolve 16」でもターンキーシステムのような素早い編集が可能になる

さらに、BMPCC4Kのバッテリーグリップ「Blackmagic Pocket Camera Battery Grip」は、待望の製品と言えるだろう。BMPCC4Kはとにかくバッテリーの持ちが悪く、公称1時間弱ながら、実運用では十数分で電源が落ちてしまう。このバッテリーグリップを使う事によって、公称2時間までバッテリー時間を延ばすことができ、実運用で40分弱の運用時間を狙える。使用するバッテリーは、SonyのLバッテリーを2本。本体内のCanon LP-E6互換バッテリーとは異なるバッテリーを敢えて使うのが面白いが、消費電力やバッテリーの普及率を考えると妥当な選択だろう。

「Blackmagic Pocket Camera Battery Grip」は待望のBMPCC4K向けの追加バッテリーシステムだ

特に、同社の新RAWフォーマットである「Blackmagic RAW」においては、カメラ内デモザイクでそれなりの電力を食うことが予想され、また、再生環境が他のソフトに整うまではカメラ内での再生が大変重要になってくるので、こうしたバッテリーの増強は大変にありがたい。

「Blackmagic Pocket Camera Battery Grip」のバッテリーはSonyのLバッテリー互換を2つ使う

Blackmagic Designではこうした急激な機能の追加に合わせてトレーニングを積極的に開催している。NABでも専用ブースを作ってトレーニングセッションが行われており、筆者も2セッションばかり参加してきた。自書を書いている新進気鋭のトレーナーを講師として一人一台のマシンとソフトを贅沢に使って行われるセッションはなんと無料であり、あっという間に受講チケットが無くなってしまっていた。新機能に触れるだけでなく、ついつい自己流になりがちなソフトウェアの使い方の標準方法に立ち戻るいい機会であり、筆者も、新機能もさることながら、既存機能の復習に大変役に立った。

積極的にトレーニングを行っているBMD社だけあって、NABでは無償でのトレーニングセッションが行われていた

単に最先端の機材を安価に売るだけで無く、ソフトウェアやそのトレーニングまでトータルでの環境作りを行うのがBlackmagic Design社の最大の特徴であり、人気の秘密だ。特に、低バジェットデジタルシネマにおいては「DaVinci Resolve」は欠かせない存在となっており、NAB2019においても、その底力がはっきりと見えた。同社はNABにデジタルシネマを持ち込んだ張本人の一人であり、デジタルシネマが注目される今年、さすがにその実力を見せつけていたといえる。

SHARPブース:マイクロフォーサーズ8Kカメラ発表!

SHARPブースにおける同社新型8Kカメラの発表と、そのマイクロフォーサーズマウントでの発売発表は大変な注目を集めていた。他の方も多く書いているので詳細は省くが、マイクロフォーサーズセンサーでの圧縮8K30P映像というのは、ビデオ系を考えれば必要充分であり、身近に8K映像をもたらす確実な方法の一つと言える。

シネマ系とはひとあじ違うが、筐体はスチルカメラライクな一眼動画を彷彿とさせるもので、マイクロフォーサーズという様々なレンズを付けやすいマウントの採用もあり、低バジェットシネマや学生映画のような用途も充分に考えられるだろう。

また、収録もSDカードに恐らくはH.264あたりで行うということで、そのあたりの低コストさも魅力だ。今年後半の発売が楽しみでならない。

SHARPの新しい8Kカメラも、シネマ系機材とは少し違うがENG系では無くシネマ系や番組制作系の使い方をされるであろう機材だ。注目しておいて損はない
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WRITER PROFILE

手塚一佳 CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2019-04-11 ]
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