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[オタク社長の世界映像紀行]Vol.56 Cine Gear 2019でスモールシネマカメラ、フルフレームレンズの盛り上がりを確認!

2019-06-10 掲載

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txt:手塚一佳 構成:編集部

Cine Gear EXPO LA 2019の見所をピックアップ

Cine Gearはアトランタ等、米国各地で開催されるが、その中でもハリウッドのCine Gear LAは最大規模を誇る

2019年の今年も、Cine Gear EXPO LA 2019がハリウッド、パラマウントスタジオにおいて5/31~6/2の間、初夏なのに10度前半という極寒の異常気象をものともせずに開催された。米国内のみならず、世界中から映画関連機材が集結するこのイベントは、映画関係者の間ではとても重要で、特に、今後の規格フォーマットやメインとなる機材を予測するには欠かせない存在となっている。

振り返ってみると、今年のCine Gearは、スチルカメラサイズのスモールシネマカメラと、フルフレームシネマレンズがメインテーマと言えるだろう。2019年の今、「シネマカメラ」の定義は「映画館のスクリーンで光学的に破綻の無い絵が撮れること」「動画がRAWで撮れること」「DCI 4K24P以上の画素数で撮れること」の3点ではないだろうか。

ここに「できればフルサイズ(ライカ判)以上のセンサーサイズである事」や「DCI 4K60P以上のオーバークランク撮影機能があること」が加わると、2019年6月現在のハイエンドなシネマカメラと言っていいだろう。

本稿においては、目立つブースやイベントを紹介しつつ、そうした今年のシネマ機材の大きな流れをご紹介できれば、幸いだ。

Sonyブース

Sonyブース。大変な人混みで撮影が困難だったブースの1つだ

2019年初夏、最も勢いのある映画機材、それはSonyのフルサイズセンサーシネマカメラ「VENICE」ではないだろうか。当地LAのヴェニスビーチをイメージして作られたという同カメラは、ガラパゴス化して世界に通じないと言われて久しい日本国産シネマカメラながら、ついにARRIの牙城の一角を崩し、ハリウッドに着実に進出しつつある事で知られている。

なんといっても注目は「VENICE」。今回Ver4のリリース開始と共に、Ver5の予告も発表され、大いに盛り上がっていた

記事冒頭から余談ながら、LA北西部の街ヴェニスビーチは今は治安も良く、隣町のマリーナ・デル・レイが定宿の筆者には非常に馴染みのあるエリアだ。

隣町のハイエンドな停泊型クルーザーヨットの街マリーナ・デル・レイと比べ、サーフィンやジェットスキーなどの運搬できるマリンスポーツの街であるヴェニスビーチは少々お行儀が悪い街ながら、先端のマリンスポーツを生活の一部として使いこなす非常にクールでワイルドな、ちょっとイカした街、という印象がある。そういう、ちょっとイカした反主流派、という印象はARRIの牙城に最新の周辺機器やEマウントレンズ群という電子化された飛び道具をもって戦いを挑むVENICEのイメージにぴったりだ。

世界最大のヨット泊地マリーナ・デル・レイから見たヴェニスビーチ側。26ftくらいの小型船が多いが荒れてる感じは無い。ジェットスキーやウェイクボードなどのニュースポーツは目立つが、一時期と異なり、ボート生活者もほぼいなかった

2018年2月上旬の発売から1年4ヶ月経ち、今回のCine Gear 2019では「VENICE」のファームウェアVer.5の発表が行われた。VENICEのファームアップは、毎回、別のカメラかと思うような思い切った新機能を搭載することで知られている。今回も、2.39:1アスペクトでの90fps 6K撮影、17:9アスペクトでの72fps 6K撮影を実現するなど、最新鋭のシネマカメラとしてど真ん中を突っ走っている、と言って良いだろう。

「VENICE」は決して安価なカメラでは無いが、一度導入すればそうした最先端のシネマカメラであり続けられるというのは、非常にコストパフォーマンスが良い。ハリウッドで受け入れられるのも納得だ。

ちなみに、フルフレームやアナモルフィック対応にはライセンス購入が必要であるところも面白い。従来のS35サイズで使うのであれば追加料金無しで使え、フルフレームのボケ足や6K解像度やアナモルフィックが必要なときのみ時限ライセンスを買えばいいので、これもまたコストパフォーマンスよく使えるだろう。筆者個人としては実はこういうライセンスでの機能アップは正直苦手なのだが、基本的なレンタル料を一晩(1泊2日)10万円前後に抑えるための工夫と思われるので、そこは素直に評価をしておきたい。

「VENICE」は別売りの「カメラヘッド延長システム」を使えば収録部とカメラ部分を伸ばせるのもまた面白い。カメラヘッド部分だけをジンバルに乗せて走り回ったり、クラッシュカメラ的に使う用途も考えられるので、より、撮影の幅が広がるだろう。

「カメラヘッド延長システム」は、VENICEの特徴の1つだ。「ろくろ首」ともあだ名されるこのシステムは、撮影の幅を大幅に広げる

他の機材では有機EL液晶を使ったスマートフォン「Xperia 1」が大注目だ。そう。驚くことに、Sonyのスマートフォンが「映画機材」としてこのCine Gearに現われたのだ。

NAB2019でも話題をさらった「Xperia 1」だが、その真価は映画機材として発揮される。NAB2019でも「VENICE」との連携でのスタッフの個人持ちモニタとしての運用方法を紹介していたが、今回は更にそれを一歩押し進め、実際にSonyの最新型マスターモニター「BVM-HX310」と「Xperia 1」を比較して展示を行っていた。

細部はともかく、全体の印象としては本当に良く近づけてあり、これならば大画面での細部がどうしても必要になる監督や撮影部はともかくとして、各スタッフが自分の担当部署を手元で確認するのに全く問題は無いだろう。マスターモニターの真下にスマホが並んでいて、スマホ画面に違和感がない、というのはなかなか半端なことでは無い。

マスターモニター「BVM-HX310」と「Xperia 1」が並べて展示されていた 無理を言って「Xperia 1」を「BVM-HX310」の下に並べて貰った。細部はともかく、全体の印象として本当にそっくりに出来ている

今回は「VENICE」との連動だけでなく、ヘッドマウント式で視野を広くする実験機材の展示まで行われ、そのディスプレイの高性能さを見せつけていた。

「Xperia 1」をヘッドマウントする仕組みも研究展示されていた。遮光できる上に疑似大画面になるので、使い道は色々とあるだろう 「Xperia 1」本体内蔵ソフト「シネマプロ」での撮影機能もなかなか面白い。「VENICE」の撮影項目になるべく近づけたという

「Xperia 1」は、トリプルレンズカメラ(標準レンズ/望遠レンズ/超広角レンズ)約1220万画素、内蔵メモリ6GBを誇る、6月発売予定の最新のスマートフォンだ。防水機能を搭載しているので、クラッシュカメラとしての役割が期待できる。

残念ながら、日本のキャリア版では64GB SSD ROMが標準と発表されているのでちょっと容量的に不安があるが、それ以外は本当にクリエイティブ向きのスマートフォンだと言える。

400万円クラスのマスターモニターと、10万円台のスマートフォンが横に並ぶ様は、まさに今年のCine Gear 2019を代表する絵面と言えるだろう。

Panasonicブース

Panasonicブースは、新製品「Lumix S1H」のモックを見に来る人の他は、VARICAMエリアでじっくり過ごす人が多い印象だった

Panasonicブースも大変な盛り上がりであった。

同社においては、従来の「EVA 1」「VARICAM35」シリーズのブース展示に加え、フルフレームセンサースチルカメラ型シネマカメラ「Lumix S1H」の開発発表がParamount Theaterで行われたのが特筆すべき点だろう。

そう、驚くことに「Lumix」。つまりは、民生用スチルカメラのシリーズが、ついにCine Gearの場所で、しかもメイン上映施設のParamount Theaterで会場の冒頭を飾る発表として上映されたのだ。これは歴史的な快挙と言える。

Paramount Theaterで、ついに民生スチルカメラの系譜がメインを張った!! モックアップ展示をみると、色々見えてくる部分がある 後部の排気口や録画ボタンの増設は気になるポイントだ。ファン排気が付くのであれば排気音も気になるが?

「S1H」の発表内容は、機能的にはまだまだ開発中の部分も多く、現状のスペックを見ても単に既発売の「LUMIX S1」の5.9Kファーム搭載機で詳細は未定、という程度の印象なのだが、ブースのモックアップを見ると、排気口と思われる穴や録画ボタンが新設されていて、かなり期待が持てそうだ。

シネマカメラを名乗るのにRAW部分の発表がない、というのはいささか不安があるが、6K近い高画素撮影がフルフレームセンサーで出来ることで、その分をカバーしている、という考え方なのだろうか。

正直、RAW機能は昨今のシネマカメラに必須なものであるので、これがないとシネマカメラとは呼びにくいが、VARICAMの横に添えるサブカメラとしての役割や、ビデオカメラユーザーやスチルカメラユーザーが映画的な絵が欲しいときに使うセミ・シネマカメラ的な使い方を想定しているのかも知れない。

しかし、圧縮映像は昨今流行りの半生RAWより処理も重く、使い勝手が悪い。同カメラは6K弱の高解像度を売りにしているが、高解像度であればあるほど、半生RAWの利便性は高まる。できれば秋の発売までの間に何らかの半生RAWに対応して貰えたら、言う事は無い。

他にも、Panasonicブースでは、マイクロフォーサーズ用新作アナモルフィックシネマレンズ「Vazen 1.8x Anamorphic」を「Lumix GH5 S」に付けて持ちあるいていたVZ anamorphic lensesのWeizen氏ご本人に遭遇した。

「Vazen 1.8x Anamorphic」を持ったVZ anamorphic lensesのWeizen氏 「Vazen 1.8x Anamorphic」はマイクロフォーサーズ用のアナモルフィックシネマレンズで、$3,250という低価格と抜群の性能で知られている

実は、Cine Gearの面白いところはこうした「出店」や「出張展示」などの出会いなのだが、Panasonicブースでの同氏との出会いは本当に素晴らしいものであった。Weizen氏は、筆者が同レンズの美しいフレアの大ファンであると告げると大変喜んでくれて大いに話が盛り上がった。

レンズの名前の意味を訪ねると、同氏は「実はこのレンズのVezenって、自分の中国語読みの名前なんだ」と照れながら教えてくれた。そしてなんと、話題のプロモ映像のかわいらしい被写体は、Weizen氏の娘さんであるという。メーカーと顧客が近い、シネマ機材ならではの話であると思う。

お互い英語が母国語では無いため中国語をちゃんぽんに混ぜた会話となったが、その際、Weizen氏は「次はそれ(Lumix S1H)用にフルサイズ用のプライムレンズを作るつもりだから期待してて」とビッグニュースを教えてくれた。最初は出来れば40mmのアナモルフィックシネマレンズを出したい、とのことで、これも出来ればS1H発売と同じ秋に発表できれば、ということであった。こうしたビッグな出会いがあるのが、Cine Gearの面白いところだ。

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WRITER PROFILE

手塚一佳 CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2019-06-10 ]
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