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[オタク社長の機材買ってみた]Vol.17 Leica SL2ファーストインプレッション

2019-12-05 掲載

txt:手塚一佳 構成:編集部

ライカカメラ社のハイエンドミラーレス一眼「Leica SL2」が2019年11月23日に発売された。先代のLeica SLを仕事に活用していた筆者はさっそくこのSL2を導入してみたので、そのファーストインプレッションをお送りしたい。

Leica SLが開拓した地平の後継者誕生

4年前に発売された「Leica SL」は衝撃的であった。それまではハイエンド一眼レフ機の簡易版、あるいは廉価版、下手をすると趣味のオモチャという扱いだったミラーレスカメラでありながら、他社一眼レフハイエンド機を遥かに超える性能諸元を持ち、さらにはミラーレスの特長を生かした高性能な動画機能と、他の全てのカメラの追従を許さないリアルタイムなEVFを装備し、その画質は中判カメラに迫る圧倒的なものを示していたのだ。しかもサイズこそ小さめだったものの、重量はむしろそうした他社一眼レフよりも重いくらいであった。

これは、前提条件に制限を付けず(この無視した前提にはレフ機やレンジファインダー機といった機械的な部分や、金額を含む)に世界最高のパーツを集めて作ったカメラがこのLeica SLだからであって、そうした最高性能のフルサイズカメラを作ってみたらそれがたまたま時代背景的にミラーレスになったに過ぎず、まさにライカにしか作れない、ゲームチェンジャーと呼ぶに相応しい歴史的カメラであった。

さらにLeica SLはそのファームウェアバージョン2になって、動画機能を大幅に強化して更なる機能アップを示したことでも知られている。Log収録や、APS-CサイズにセンサークロップこそされてしまうもののDCI4Kでの24P撮影を搭載したその機能は、持ち運びできるシネマカメラと呼んでも差し支えないほどの高性能を誇っていたのだ。

その後継機のLeica SL2がついに発売されたのだから、これを導入しない手は無い。

ついに登場したLeica SL2

Leica SL2は、スチル機能に関してはRGB各色14bitの深い色深度の47MP撮影、最高ISO感度50000の高感度性能、補正効果約5.5段分のボディ内5軸手ブレ補正機構と、Panasonicの「LUMIX DC-S1R」に近い性能を示している。

これを口の悪い人間はLeica SL2はS1Rのバッチエンジニアリング(いわゆるOEM生産でロゴだけ変えたもの)であるかのような言い方をするが、筆者は決してそうとは思わない。

というのも、両者の性能の違いがかなりある事はもちろん、そもそもLマウントフルサイズセンサーカメラの元祖は先代のLeica SLであり、Panasonic S1シリーズは明らかにこのLeica SLの系譜にある。その後継機であるSL2が自身の系譜のカメラに似るのは当たり前の話なのだ。

無論、大前提として元々の先代SLもPanasonicの技術が相当に入っていると考えられ、その後継のLeica SL2のスペックを見るだけでも確かに主要パーツの多くがS1Rと同じものであろう事は想像に難くないが、それでも、SL2がS1Rのバリエーションと言うよりも、Lマウントアライアンスの協力によってPanasonic S1シリーズで育った技術が本家Leica SLに帰って来たのがSL2である、という表現が正しいだろう。それに、先に書いた通り、両者の性能には同じところもあるが、明らかに様々な違いもある。

まずは、先代SLやこのS1Rなどと比べながら、このLeica SL2のご紹介をして行きたい。

SL2を特徴付けるのはなんといってもセンサーだ。カタログスペックはS1RやLeica Q2と同じ47.3M フルサイズCMOSセンサーで、先代SL同様にカバーグラスが1.5mm前後と極めて薄く作られており、Leica製Mマウントレンズやその他のフィルム向けオールドレンズの使用の際に、乱反射や屈折を起こさない仕組みとなっている。もちろんライカカメラ社のカメラだけに、ローパスフィルターレスだ。

Leica SL2のセンサーは極めて薄いカバーガラスに覆われている。これは先代SLからの特徴で、ライカカメラ社製のフィルムカメラ向けレンズ群をゴーストやフレア無く使うための工夫だ

また先代SLの特徴を継いだEVF「EyeRes電子ビューファインダー」の見やすさは圧倒的で、恐らく同じ約576万ドットEVF液晶を使っているであろうPanasonicのS1Rと比べても断然に見やすい。これはEVF液晶の後ろの光学系にLeica得意の極めてしっかりと磨き込んだハイエンドな光学系を奢っているためと思われる。S1Rや先代SLでは本体に押し込まれていたクイックシューがSL2では上部に突き出していることからも、軍艦部に光学系が詰め込まれていることが一目で見て取れる。こうした光学系の優位は、まさにLeicaの特徴と言える。

Leica SL(左)とSL2(右)の比較。特徴的な巨大なEVF部分は更に強調され、光学系が更に強化されている事がわかる。後述するがボタンに名前が書かれたのも特徴的

また、収録メディアもS1系のXQD/SDダブルスロットではなく、SDXC UHS-IIのダブルスロットになっているところも特徴的だ。Leica SL系はプロフェッショナルラインのカメラなので、データの受け渡しやバックアップの意味合いで2つのメディアにクローンで同時に書き込む需要があるため、これは極めて正しい選択だろう。ただし、動画収録時のSDカード速度条件はシビアなので注意。ネット上でLeica SL2のファーストインプレッションでバグがあると騒いでいる内容をいくつか見たが、そのいずれもバグと言うよりも単に非対応速度のSDカードを使っているトラブルのようだ。

収録メディアはSDXC UHS-IIのダブルスロット。初代SLの時代から4年経ち、SDカードの速度向上で4K 29.97Pまでであれば10bit 4:2:2 L-Log収録、4K 59.94Pなら8bit 4:2:0での収録が可能だ

コネクタ類は背面から見て左側にあるソフトカバーの下に隠れている。マイク、ヘッドフォン、HDMI、USB-C(充電用)と一通り揃っている。マイクとヘッドフォンを統一端子とせず、クイックシューに付けることの多いマイク端子が一番上で、規格上どうしても強度の弱いHDMI端子がフルサイズで2.0b対応な点に、初代SLのユーザーの声が伝わっているのを実感する。

コネクタ類はマイク、ヘッドフォン、HDMI、USB-C(充電用)だ。マイク端子が一番上で、HDMI端子がフルサイズな点に「わかってる」感が強い

操作系は先代SLやLeica Q2、Leica Mの系譜の操作系となっており、Panasonic S1シリーズの操作感とは全く異なっていて、反対に、ライカカメラ社のユーザーには非常に馴染みやすい構成だ。

ただ、先代SLに比べて背面液晶周辺のボタンが一つ減って左側にまとめられ、ボタンに文字が書かれるようになり、メニュー階層が一段深まって、最上位に表示されるクイックメニューからのタッチアクセスが重視されるようになったのが先代SLとの大きな違いだ。先代SLの一切説明書きが無いボタンの数々は、ライカカメラ社の「カメラは手に馴染ませて使う道具」というコンセプトが鮮明だっただけに、少々残念に思う。

先代SLのメリットは接眼したまま目視せずに素早く操作を切り替えられるところにあったので、いちいちクイックメニューを見て操作をしなければならないのはイライラする。そのうち慣れるのかも知れないが、プロ用のカメラは目を瞑っていても操作できるようにするべきであり、この点は導入後1週間程度ではまだ馴染めない。

クイックメニューは最近の流行だが、プロ向けカメラにはどうだろう?現状筆者にとってはボタンを押す回数が1回増えて邪魔でしか無いが、そのうち慣れるのだろうか?

更に、動画系はかなりS1Rと異なっている。Leica SL2はS1系にはないAPS-Cセンサー切り取りサイズでの5K 10bit 4:2:0の動画機能を搭載し、さらに、Leica独自のLogガンマであるL-Log2020を搭載している。

また、なによりもフルサイズセンサーサイズでのDCI4Kサイズでの内蔵10bit4:2:2収録に29.97Pまで対応しており、同じく内蔵で8bit4:2:0であれば59.94Pにまで対応している点が大きく異なる。特に24Pは23.98Pのドロップフレームではない本物の24Pで、しかも軽くて耐性の高い10bit 4:2:2収録であり、LOG収録と合わせるとCGエフェクトや本物のシネマカメラとの連携がとても楽になる。

これは、Panasonic S1シリーズでいうところのS1HとS1の別売アップグレードソフトウェアキーDMW-SFU2を使用したバージョンとの中間的な性能であり、動画機としても充分な性能を持っていることがわかる。HDMIから収録機にも出力は出来るが、そうしたハイエンドな画質で収録できる上に前述のピントの鮮明に見えるEVFを持っているのだから、わざわざ収録機に出力をするまでも無く、大抵の収録は内蔵SDカードで充分だろう。

5K 10bit 4:2:0内蔵収録が可能な点がSL2最大の特徴の一つ。S35センサー向けオールドレンズ対応と考えると非常に納得できる機能だ DCI4Kは定番の24Pから59.94Pまで多彩な撮影が可能だ。特に24Pは23.98Pのドロップフレームではない本物の24Pで、しかも軽くて耐性の高い10bit 4:2:2収録であり、CGエフェクトや本物のシネマカメラとの連携が楽になる

また、動画機能の中にシネマ(Cine)と一般動画(動画)の切り替え機能を持っており、シネマモードにすると、ISOがフィルム時代のASA表記となり、使える感度が400ASA以上に制限されるが、その代わりになんとシャッター開角度での設定が出来るようになる。このシャッター開角度モードでは様々な開角度の中に180度と172.8度の両方が用意されており、フリッカー低減で定番の172.8度(1/50秒)の他、通常の動画モードにはないシャッター速度である180度=1/48秒が使えるのが魅力的だ。本来のフィルムでの屋外撮影では1/48が定番なので、この速度があるのはありがたい(とはいえ、人工光に溢れる現代においては172.8度の設定が大本命であるのは当然であるが)。

Cineに切り替えると表示がISOからASAに、シャッタースピードからシャッター開角度に変わる。単に変わるだけじゃなく、180度のシャッター開角度のような通常の動画モードでは出て来ない機能も選べる

先に書いたAPS-Cサイズセンサー切り取りでの5K収録はLeica SL2の特徴の一つだが、これは先述の通りオールドシネマレンズ対応と考えられる。10bit 4:2:0内蔵収録であるところから、LOG撮影をすればそれなりのグレーディング耐久性が見込まれるのも嬉しい。

もちろん、スクリーンサイズとだいぶ異なる形状の映像は使い方に悩むし、APS-Cサイズ切り出しからのさらなる編集ソフトでの切り出しとなるとさすがに画質の問題も出てくるだろう。折角フルフレームセンサー搭載のLマウントカメラなのだから、できればライカの誇るLマウントレンズ群や、そうで無くともフルフレームセンサー対応の新時代のシネマレンズを使いたいものだ。

とはいえ、資産としてS35対応のシネマレンズを持っているユーザーは非常に多い事と思われるため、そのレンズ資産を生かすにはAPS-Cサイズで5Kのサイズでの撮影が出来るこのモードは、素晴らしいモードと言える。オールドレンズを大切にするライカらしい機能と言えるだろう。

一目でわかりにくいところでは、先代SLは一体成形アルミ削り出しボディであったところを、SL2では本体側は数ピースのマグネシウム合金製フレームとなっている。これは、先代SLで落下事故などで本来アルミフレームが歪んでしまうと本体を再度変形させない限りバッテリーが抜けなくなるトラブルが多かったことに起因しているようだ。これもS1Rでは全体がマグネシウム合金フレームであるところを、SL2では上部軍艦部のみアルミ削り出しとして、先代SLの手触り感は残してある。

こうしたボディの工夫などによって大幅なコストダウンに成功し、先代SLが税別92万円での発売開始だったところ、なんとLeica SL2では税別81万円と11万円もの値下げをしてのリリースとなっている。性能が上がって安くなるというとても嬉しい現象が起きているのだ。先代SLは手作り感あふれる量産試作的なカメラであったところを、このSL2ではいよいよ本格的にプロ用に「使える道具」としてリリースしてきた、とも言えるだろう。

先代SLは一体成形アルミ削り出しボディだったが、SL2は一般的なマグネシウム合金製フレームに軍艦部だけアルミ削り出しを乗せてある。手触り感は維持しつつメンテナンス性を高める工夫だ。そのため、マグネシウム合金フレームの構造を利用してグリップ部に持ちやすい凹みを付けるなど、削り出しの先代では難しかった工夫も為されている

反面、Leica SL2がPanasonic S1シリーズに明らかに劣る部分もある。それは、動画連続録画時間の29分制限だ。既にEUのビデオカメラ関税制限が撤廃され、S1系でもS1Hなら全て無制限、S1でもFHDまでなら既に制限時間無しになっているにもかかわらず、Leica SL2には相変わらずこの29分制限がつきまとっている。つまり、インタビューやドキュメンタリーにSL2を使用することは困難であり、折角小さなボディにシネマカメラ機能を持つ、ドキュメンタリー向きの素晴らしいカメラであるというのにこの点は大変に残念でならない。この点はファームアップでの改善を強く願いたい。

また、ファームウェア1.0での話だが、収録タイムスタンプに異常があり、日本時間にカメラの時計を設定すると実際の時間+9時間で記録されてしまう。これは恐らくタイムゾーンが2回足されてしまっていると思われる。更に折角鳴り物入りでSL2と同時発表されたスマホアプリ「Leica Fotos 2.0」も肝心のAndroid版の画像読み出し機能がまだSL2とはリンクしない。2.0からは動画機能に有料で対応しているが、そうした機能を考えると年2,180円の高額アプリなのにまともに動作しないのは、正直残念な思いだ。こちらも合わせて改善に期待したい。

しかし、こうしたトラブルは現状、あまり筆者は気にしていない。というのも、先代のSLのファームウェアバージョンアップは極めて頻繁でなおかつ根本的な更新が何度も行われているものであり、SL2も先代同様にユーザーフレンドリーなファームウェアバージョンアップが期待できるからだ。そうしたかゆいところに手の届くサービスは世界中の全てのカメラメーカーの中でライカカメラ社が最も得意としている部分であり、期待して良いだろう。

探ってみよう、Leica SL2の実力!

では、概説は横に置いて、実際に撮影をしてみたので、映像をご覧頂きたい。

内部収録データをDaVinci Resolveでグレーディング後、H.264圧縮にてUHDサイズに切り取り再出力

試してみたのは、横パン、FHD180Pdテスト、手持ちでの手ぶれテスト、左右方向への手ぶれテスト、モアレテスト、ナイトシーンでのASA6400、ASA3200テスト、縦パンテストだ。

いずれもレンズはSL標準ズームである、Leica VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.を使用した。三脚利用の場合にはマンフロットのトラベル三脚「Befree Live」を利用しているが、実は神社のシーンと、マンションを映したモアレテスト以外はそれすら使わずに基本的に手持ちである。本体5.5段、レンズ5.5段の合わせて11段の手ぶれ補正が強烈に効いているのがわかる。

また、クリスマスツリーのカット以外は全てL-Log 2020で撮影し、DaVinci Resolveで簡単なグレーディング処理をしてある。落ち葉が落ちるFHD180Pのシーン以外はいずれもC4K24P撮影、シャッター開角度は172.8度の設定となっている。オートフォーカス(AF)は、特にiAFがまだよく動作特性がわからないので、今回は使わずに全てマニュアル(MF)撮影となっている。

順を追っていこう。まず、パンテストでは、ローリングシャッターの少なさに注目したい。神社境内の複雑な描写だが、この程度の速度では破綻が無いことがわかる。また、落ち葉の描写も細かく、モアレも偽色も出ていない。

パンテストのフィルムストリップ。ローリングシャッターも気にならず、落ち葉の描写にモアレも偽色も無い事がわかる

続いてFHD180Pのテストでは、90mmにレンズを延ばして撮影した。高速度撮影のためシャッター速度(1/350)とISO(3200)を上げる必要があり、UHD4Kフィニッシュのためか背景ボケが汚くなってしまっているが、この機体でこれだけのオーバークランク撮影が出来るのであれば御の字だろう。

FHD180P撮影では、落ち葉をふわりと落としてみせることに成功している。背景はやや汚いボケになっている

手持ちでの手ぶれテストでは、和竿教室大川の大川清一和竿師にご協力頂いた。大川師匠の素晴らしい漆塗りの技術、削りの技術がおわかり頂けるだろう。無照明手持ち撮影にもかかわらず全くブレがないため、机の構造物の隙間からかなり近づいての撮影が可能になっている。

ジンバルを使うにしてもサイズ的に困難な、従来のシネマカメラでは有り得ない角度からの撮影であり、合計11段の手ぶれ補正の恩恵を実感した瞬間だった。また、削り粉の微細な描写も正確であり、グレーディング後の色彩も、塗り立て直後の漆の濁りやテカリまで映し出しているのには驚嘆する他無い。江戸和竿の技法を受け継いだ同氏の技術を鮮明に記録できている。

和竿教室大川の大川和竿師の技術が鮮明に映し出されている。こうした隙間からの撮影で、しかも特に照明を焚いたわけでもなく、ジンバルもない撮影であるのに、充分にクオリティを保った撮影が出来ているのにはただただ驚く。RIGすら組んでいないのだ

横方向への移動テストでは、動く廊下を利用して横スライドを試してみた。手ぶれ補正は横方向への動きが苦手な事が多いが、比較的効果良く抑えられているのがわかる。時々しゃっくりのような動きになるのは手ぶれ補正の限界に達したのだろう。

動く廊下を利用して横方向への手ぶれ補正を試してみた。結果、手ぶれ補正の苦手な横方向でも、ややギクシャクはするが比較的見れなくはない程度の絵作りは出来た

モアレテストでは、格子模様の多いマンションを映してみた。ネットの情報や海外ファーストインプレッションではSL2はモアレが酷いというので覚悟をして望んだ撮影であるが、全くモアレもなく、偽色もほとんど見られず、拍子抜けした。ローパスレスにしてはかなりそうした問題は非常に良く抑制されている方だと言えるだろう。タイル部分を拡大してみても、ほぼ問題がない。あの噂や酷評をして居た海外ファーストインプレションは何だったのだろうか?

ほぼモアレも偽色も無い。ローパスレスセンサーにしては極めて良く抑制された映像が撮れていた。海外でのこのあたりの性能に対する酷評は何だったのだろう?

夜間撮影は、ASA(ISO)6400でL-Log撮影をしたものと、ASA(ISO)3200で通常色(ナチュラル)撮影をしたものの2つを用意してその効果を試してみた。

まず、ノイズだが、なぜかASA1600(ISO1600)までは上昇し、その後3200から抑制される傾向があった。これはISO3200以降は何らかの画像処理エンジンが機能しているものと思われる。両者はこの抑制下での撮影なので、何ら問題が無い絵になっている。

ASA(ISO)6400でL-Log撮影をしたものはDaVinci Resolveで持ち上げてみているが、さすが10bit 4:2:2だけあって、カラーバンドもなく、破綻せずにきちんと見られる絵になっている。

ASA(ISO)3200で通常色(ナチュラル)での撮影は、実は雨天撮影だった。しかし、Leica SL2はIP54のかなりしっかりとした防塵防滴が付いているため、気にせずに撮影をすることが出来た。全くグレーディングをしていないが、本体内の自動調整だけでかなりしっかりとした色づけが出来ているのには驚く。

ASA(ISO)6400でL-Log撮影をした調整池。元画像はかなり真っ暗だったがグレーディングでここまで見られる絵になった ASA(ISO)3200で通常色(ナチュラル)撮影。雨天撮影でもIP54のLeica SL2には問題がない!

最後に、縦パンのテスト。これもかなり乱暴に縦にえいやっと動かしてみたのだが、特に破綻が無かった。しいて言えば敢えて手ぶれ防止をオンにしたまま動かしたので、動き出しに若干の揺れ返しが見られる程度だろうか。空の部分は敢えて飛ばしてみたが、全体をざっくりとプライマリグレーディングしただけなのに案外色が戻ってきて驚いた。銀杏の木の頂点あたりは真っ白になるかと思っていたのだが、最終的にはきちんと色が見られる。

縦パンテストはかなり乱暴にやったが、全く問題なかった。空の白飛びも、グレーディングでそれなりに色が戻ってきて驚いた

また、折角の世界最高峰のフルサイズスチルカメラの1台なので、スチルも撮影してみた。まず、定番のLeica VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.で50mm前後にしてスナップショット撮影。

Leica VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.使用。46mm、1/100秒、f3.5、ISO 200。何も考えずにシャッターを押しただけで、ボケに違和感がなく、人の視界に極めて近い絵が出てくる。さすが世界最高峰

中距離の木にピントを合わせてあるが、端正にまとまっているのがわかる。レンズ性能の高さもあるが、ボケも綺麗に違和感なく入り、人の視界に極めて近い。都会らしい渋みのある紅葉の色味が映し出されているのは,実にライカだ。

続いて夜間撮影もしてみた。同じくLeica VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.使用で、ISOを6400まで上げてみた。やはり動画の時同様、高ISOでは何らかのノイズリダクションが働くらしく、極めてノイズが少ない、そのまま使える絵が普通に出てきて驚いた。現像で多少持ち上げてみると、背景の街並みの一軒一軒の色味や、空の雲の形状まで出てきた。なんだこれ。凄すぎる。

Leica VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.使用。25mm、1/20秒、f2.8、ISO 6400。夜間撮影も、EyeResビューファインダーで見たままの絵が出てくる。多少のノイズは見られるが、到底無照明ISO6400とは思えない。色味もはっきりと映し出されている。若干照明回りにフレアゴーストがあるのは、プロテクトフィルタを付けているためだろう

最後に、折角元々横8468ピクセルの巨大画像だからという事で切り出しを狙ってみた。SIGMA 45mm F2.8 DG DN |Contemporaryを用いて日の丸構図で愛犬を撮影し、その真ん中部分を切り出してみた。オールドテイストの四隅の濁りが美しいレンズだが、それをあえて切り捨てる形で中央のスイートスポットだけ取り出し、デジタルズーム的にしてみた。元が巨大ファイルなので切り出しでも横2500ピクセルを軽く超えている。L版程度までなら充分に実用に耐える。というか、無照明で適当に撮ったのに、毛の一本一本まではっきりと映っているのにはただただ驚く。

SIGMA 45mm F2.8 DG DN |Contemporary 1/80秒、f2.8、ISO 1000。スナップショット的に中央を切り出し、デジタル拡大をしてみた。巨大画素からの切り出しなので全く違和感がない。無照明でこれ。なにこれすごい

狭いところや伝統工芸などの撮影に最適の、ジンバル要らずのミニシネマカメラLeica SL2

さて、このように撮影してきて驚いたのが、そのグレーディング耐性の良さだ。先代SLのL-Logは8bit 4:2:0(HDMI1.4で外部レコーダー出力したときのみ10bit 4:2:2)ということもあって、正直あまり使えるものでは無かった。しかし、SL2のL-Logはちょっとした色の持ち上げや夜間の色補正程度なら充分に実戦投入が可能だろう。しかもそれが内蔵SDカードで撮影可能なのだからただただ驚く。

高速度撮影は、まあそれなりに使える。60P(59.94P)のUHD4Kもちゃんと使えるので、テレビ放送系の仕事もそれなりに受けられることだろう。しかしそれよりも、やはり、DCI4K24Pなどのシネマ系の機能をきちんと抑えてきたことを筆者は高く評価したい。折角のライカカメラなのだから、いくら今はプログレッシブ化されたとはいえ、インターレース文化発祥のドロップフレームの絵ではなく、やはり、一枚一枚の絵がしっかりと見られる本物の24Pの世界での活躍を期待してしまうのだ。

本業としてはしがないCG屋稼業の筆者ではあるが、そうした映画エフェクトや映画での合成加工は全てばらばらの一枚絵の連番処理で行われている。そうした場面にドロップフレームの出番はないわけで、スチルカメラのおまけ機能の枠を越えてちゃんとDCI4K規格のノンドロップフレームのトゥルー24Pを実装してきてくれたのには、ちゃんとわかってるカメラだな、という実感がある(とはいえ現実問題として、日本の映画の場合23.98fpsで撮っちゃってることがかなり多いんですけどね…)。

RAW連番収録のハイエンドシネマカメラにはそうしたカメラにしか出来ない処理が山ほどあるので、当然にその立ち位置を脅かすことは出来ないが、それでもこのLeica SL2であれば、かなりの撮影シチュエーションでRAW連番カメラの代わりに使う事が出来るだろう。特に、手ぶれ補正が強烈に効くため、狭いところや伝統工芸などの危険な作業の撮影などではかなりの威力を発揮する。

しかも、それで出てくる絵は、コマの一枚一枚が紛れもないライカの絵だ。これはもう、惚れ込むしかないだろう。

スポーツシーンでの歩留まり確保のためのAF機能ばかりが注目されやすいプロ向けカメラの世界だが、こうした、絵作りそのものを追求したプロ向けカメラが必要な場面も増えている。Leica SL2のオートフォーカス機能はまだ筆者がSL2のAFに不慣れなこともあって正直あまり当てにはしていないが、MFでじっくりと映画的に撮るのであれば、これは素晴らしい絵を作り出せるカメラだ。

ライカのカメラは、元々スナップショットや狭い場所での撮影に強い特徴を持っている。大判カメラを携帯できるように再発明したのが同社の実績のスタートであるところからも、この特性はライカカメラ社のアイデンティティのようなものだと言って良いだろう。そうした特性が、街中の撮影や狭いところや伝統工芸などでの撮影シーンで強く生きていると感じられたのが、今回のファーストインプレッションだ。

これがファームウェアバージョン1.0でのレビューなのだから、その完成度の高さには驚く他無い。このLeica SL2は、ある程度ファームウェアが熟れてきたところで、もう一度レビューをしてみたい。

協力:和竿教室大川(埼玉県戸田市下前1丁目14-26-201 TEL:048-444-3694)

WRITER PROFILE

手塚一佳 CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2019-12-05 ]
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株式会社ガイプロモーション代表。企業VP制作や撮影業務に力を入れつつ、自社Facebookページでは不定期にコアな映像ネタを発信中。
山下大輔
フリーランスの映像講師。Adobe Community Evangelist。アドビ製品でビデオ編集をどのようにやっていくか日々模索中。FacebookではAfter Effects User Groupの管理人として勉強会なども随時行なっている。
山本加奈
山本加奈 KANA YAMAMOTO デジタル・フィルム・フェスティバルRESFESTのディレクターを経てウェブマガジンwhite-screen.jpの編集長を務める。2017年11月より映像表現カルチャーを紹介するNEWREELを創設。伊藤ガビン氏とともに編集長を務める。他、海外のクリイティブイベントのプロデュースやインタビューを通して才能の発掘や、業界の意識改革に貢献する。2018年は Motion Plus Design(パリ)のTokyo meet up総合司会や、ILMのDoug Chiangを迎えたTHU(ポルトガル)の東京ギャザリングをプロデュース。
柏原一仁
日本大学芸術学部写真学科卒、銀一株式会社海外商品部勤務。 銀一が世界中から輸入する写真・映像用品ブランドのマーケティング担当。静止画・動画・音声と様々な技術に翻弄される日々。好きな食べ物はからあげ。
曽我浩太郎
未来予報株式会社 代表取締役・プロジェクトデザイナー。新ビジネスに特化したリサーチ・コンセプトデザイン・コンサルティングを専門に行う。SXSW LLC.公式コンサルタント。著書『10年後の働き方「こんな仕事、聞いたことない!」からイノベーションの予兆をつかむ』が好評発売中。
井上晃
映像制作会社「有限会社マキシメデイア」代表、制作プロデューサー&キャメラマン。Facebookグループ「ATEM Tech Labo」、「Grass Valley EDIUS ユーザーグループ」を主催して、ATEMやEDIUSの布教に、日々勤しんでおるでよ。
石多未知行
クリエイティブディレクター、映像クリエイター、空間演出家。PMAJ代表、東京芸大 非常勤講師。空間演出やプロジェクションマッピングを中心に様々なメディアを使った企画演出を手掛ける。
奥本宏幸
大阪を拠点にしているフリーランスの映像ディレクター。演出・編集・モーショングラフィックをバランス良くこなす。フィンランドサウナが好きです。のびしろラボ管理人。
小林譲
イギリスにて大学卒業後、現地の会社にて映像編集を学ぶ。2006年に帰国。大手ポスプロIMAGICAにてテレビ番組を中心に日本のキャリアをスタート。後にドラマ、音楽系、CM系へと活躍の幅を広げる。2017年に独立。オフラインからアートデザインまで、作品の全体パッケージを監修することも多い。
染瀬直人
写真家、映像作家、360°VRコンテンツ・クリエイター。日本大学芸術学部写真学科卒。勉強会「VR未来塾」を主宰し、360°VR動画のセミナー、ワークショップなどを開催。
安藤幸央
無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。
高野光太郎
Cosaelu株式会社 代表取締役 / 映像ディレクター ミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。
ヒマナイヌ
頓知を駆使した創造企業
駿河由知
中央区築地出身。マルチカメラ収録&配信ユニット「LiveNinja」メンバー。2006年より株式会社スタートライン設立。外務省、国連機関、国際NGOなどの国際会議やシンポジウム、企業イベントなどのライブ配信を担当
山本久之
映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。
ベン マツナガ
未来シネマ/ディレクター。ハリウッドでの大型映像制作、短編時代劇の自主映画制作を経て、現在は、映像を通じて人と人をつなぐことをテーマに様々な映像制作に取り組んでいる
河尻亨一
1974年大阪生まれ。雑誌「広告批評」を経て現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰、企業コンテンツの企画制作なども行う。デザイナー石岡瑛子の伝記「TIMELESS」(http://eiko-timeless.com/)をウェブ連載中。
茂出木謙太郎
株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員
稲田出
映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。
小池拓
(有)PST 代表取締役。1994年より Avid、Autodesk、Apple、Adobeなどの映像系ソフトのデモ、トレーニンングを行っている。
黒田伴比古
報道・ドキュメンタリーエディターでありながら、放送機器に造詣が深く、放送局のシステム構築などにも携わるマルチプレーヤー。
ヒラタモトヨシ
ファッションとテクノロジーを繋ぎイノヴェーションを生み出す事をライフワークとし、WEB/ライブメディア/高精細映像表現を追求。
猪蔵
いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。
須藤高宏
東京・国分寺市に於いて録音スタジオ「マイクロサウンド」を運営し各種録音編集に携わる傍ら最近では各種イベント配信音声を担当。
林永子
映像制作会社勤務を経て、2002年よりMVライターとして独立。映像サロン『スナック永子』主催。日本初監督別MVストリーミングサイト『TOKYO VIDEO MAGAZINE VIS』の編集長。2016年初エッセイ集『女の解体』を上梓。
ViewingLab
未来の映像体験を考える有志の研究会。映画配給会社、映像作家、TV局員と会員は多岐に渡る
石川幸宏
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
山下香欧
米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。
岡田智博
クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。
萩原正喜
米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。
坪井昭久
映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。
しらいあきひこ
カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。
秋山謙一
映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。
今間俊博
アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。
金田浩樹
映画・テレビの映像制作を中心に、USTやニコ生等、ライブメディア各分野を横断して活動中。ジャンルや固定概念にとらわれない構成力と発想に定評あり。
伊藤裕美
オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。
UserReport
業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。
System5 Labs
SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。

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