取材・撮影:鍋 潤太郎、取材協力:ウォルト・ディズニー・ジャパン

はじめに

ここ、明るく楽しいアメリカ地方では、6月21日(金)よりピクサーの新作「モンスターズ・ユニバーシティ」が全米公開の運びとなった。

週末のBOX OFFICEランキングでは、同じ日に公開されたブラッド・ピット主演の話題作「ワールド・ウォーZ」を2位に押さえ、$16million(約16億円相当)もの差をつけて堂々第1位で登場。興行収入は$82.4million(約82億4千万円相当)という大ヒットとなった。筆者も、週末にさっそく映画館に足を運んでみたが、劇場の前は長蛇の列・場内は満席・上映中は大爆笑、と三拍子そろって、もう大変な騒ぎであった。今回は、そのニュースを旬の話題としてお届けしよう。

どうせなら、ディズニー直営の映画館で観るべし

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長蛇の列が出来てごった返す、ハリウッドのエル・キャピタンシアター

筆者が足を運んだのは、アカデミー賞でお馴染み、ハリウッドのドルビー・シアター(旧コダック・シアター)のほぼ正面に鎮座する、ディズニー直営の映画館エル・キャピタン・シアター(El Capitan Theater)。ここは、ディズニー作品だけを上映するという珍しい映画館&劇場で、ディズニーが制作した新作映画が公開になると、必ずここでプレミアが行われ、その後は一般公開が行われる。ディズニーの新作映画が公開されていない時期は、過去の名作の特別上映などが行われ、これまでにも「白雪姫」(1937)のデジタル・リマスター版、「眠りの森の美女」(1959)、そして「トロン」(1982)等がリバイバル上映された事がある。

また、日本のスタジオ・ジブリ作品がロサンゼルスで公開される際にも、このエル・キャピタン・シアターで上映される事が多く、筆者も「千と千尋の神隠し」「ハウルの城」等をここで鑑賞した。さて、筆者がわざわざ足を運んだのには理由がある。このエル・キャピタン・シアターは、単なる映画館ではなく、演出にさまざまな趣向が凝らされているのが特徴なのだ。例えば、映画の上映前にはオルガンによるディズニーの名曲の生演奏が行われる。

VIPチケットを買おう

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VIP席特製のポップコーンバケツ

エル・キャピタンのチケット料金は一般席が16ドル(子供13ドル)、そしてVIP席が26ドルとなる。VIP席は一見割高に思えるが、スクリーン正面エリアを指定席でゲット出来、場内への優先入場、そして直径16cmサイズの特製バケツ(写真)に入った出来立てのポップコーン、そしてドリンクもついて、このお値段。LAの普通の映画館でコーラのMとポップコーンのSを買うと、Tax込みで大体8〜9ドルはチャージされるから、上記特典がつく事を考えれば総じてお得と言えるだろう。

特にこの特製バケツは、ポップコーンを食べた後、お土産としてもバッチリで、鑑賞の良い記念にもなる。これはVIPチケットを買わないと貰えないので、この特製バケツ目当てにVIPチケットを買うファンも多い。

楽しいライブ・ショー

NABE_vol36_03.jpg 楽しいライブ・ショー
©2013 Disney All Rights Reserved.

エル・キャピタンシアターでは、上映シーズンによっては、ステージ上でミッキーマウスやディズニー・キャラクター達によるミュージカルが上演される事もあり、まるでディズニーランドに来ているかのような楽しい気分に浸る事が出来る魅力もあるのだ。

今回は「モンスターズ・ユニバーシティ」の公開に合わせた演出という事で、MU大学のマーチング・ドラムとチアリーダー達による楽しいショーが展開された。ショーの途中には、観客席の小さいコ達からボランティアを募り、ステージ上で一緒にパフォーマンスをするという演出も盛り込まれていた。最後にはお馴染みマイクとサリバンも登場、盛り上がりがピークに達したところで上映開始となった。

短編「ブルー・アンブレラ」

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©2013 Disney・Pixar All Rights Reserved.

本編前には、恒例となりつつある短編作品の同時上映が行われた。今回登場したのは新作の短編「ブルー・アンブレラ」。雨降る中、都会の交差点の信号待ちで出会った「ブルー」と「レッド」の傘。この2人を取り巻くラブストーリーが、ほのぼのと繰り広げられる。

フォト・リアリスティックな描写が見事で、こちらも、オススメの1本である。

また、SIGGRAPH2013に参加される方は、Production Sessionでメーキング講演が行われるので、是非チェックしてみると良い。

The Making of Pixar’s “The Blue Umbrella”

Sunday,7/21,10:45AM-12:15PM

見所満載の「モンスターズ・ユニバーシティ」

「モンスターズ・インク」(2001)から、12年が経過(しかし、時が経つのは早いな〜)したが、この程公開された「モンスターズ・ユニバーシティ」。ネタばれの無い範囲で、感想をご紹介しておこう。

予告編にあるように、今回は「マイクとサリバンの大学時代」が舞台というお話である。どの映画でも言える事だが、子供達がキャイキャイ喜ぶところと、大人達が低い声でグフグフ笑う箇所は異なる。ピクサー作品の場合、[子供達]+[連れて来た大人(子供に無理やり連れてこられた人も含む[笑])]の両方の客層が存在するが、その辺がバランス良く演出に盛り込まれているのが楽しいところだ。

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©2013 Disney・Pixar All Rights Reserved.

この作品で筆者が個人的に関心したのは、まずCGIによる風景や建物描写の美しさ、時代考証、そしてプロダクション・デザインだった。90年代のアメリカで良く見掛けた角ばった市バスが出てきたり、キャンパス内の独特の様子、そして「ああ、学祭とかイベントになると、こんなヤツいたよな〜」と思わずニンマリさせられるようなキャラクターの登場など、「キャンパスあるある」ネタが満載。どこか懐かしい気分に浸った30代以上の観客も多かったのではないだろうか。この演出は、米オフィシャル・サイトにも盛り込まれている。米サイトは、大学のホームページ風に作られており、楽しい。こういう細かい演出が心ニクい限りである。
「モンスターズ・ユニバーシティ」米オフィシャル・サイト

描写面では、最新のレンダリング・テクニックを駆使した繊細な風景描写や、何気なく背景で使われている高度なFluidシミュレーション、サリバンのFurなど、表現力が一段と向上している事が伺えた。ストーリー展開も、最後の最後まで結末が読めないハラハラの連続。そしてクライマックスでは、場内から一斉に拍手が沸き起こっていた。

おまけ:「プレーンズ」の予告編

さて、エル・キャピタンシアターでの予告編で上映されていたのが、「プレーンズ」だ。これは、「カーズ」のスピンオフ作品で、飛行機が主人公の物語。コンピューター・アニメーションはDisneyToon Studiosが制作している。

NABE_vol36_07.jpg ©2013 Disney. All Rights Reserved.
12月21日(土)3D/2Dロードショー

「プレーンズ」は、8月9日から全米公開されるが、ここエルキャピタン・シアターでは9月18日まで上映される予定。この時期にLA観光される方は要チェック!であろう。日本では、冬休みの公開となるので、どうかお楽しみに。

『プレーンズ』

2013年12月21日(土) 2D・3D同時公開

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

おわりに

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©2013 Disney・Pixar All Rights Reserved.

さて、駆け足でご紹介した見所満載の「モンスターズ・ユニバーシティ」全米公開レポートだが、その魅力はご理解頂けた事と思う。エル・キャピタンシアターでは、8月8日まで上映されているので、SIGGRAPH2013や夏休みにLAを訪問の際に鑑賞してみたい方は、是非チェックしてみると良いだろう。

日本では7月6日から全国ロードショウがスタートしているので、是非ご家族揃って映画館に足を運んで頂ければと思う。

『モンスターズ・ユニバーシティ』

7月6日(土)2D・3Dロードショー
同時上映:短編『ブルー・アンブレラ』
オフィシャルサイト:http://www.disney.co.jp/monsters-university/home.html

さぁみんな!夏休みは、「モンスターズ・ユニバーシティ」へGO!!!!!

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。